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用語集 / 民法

民法の用語集

短答式で問われる民法の用語を章ごとに。全262語。定義・条文・判例と図解で、肢の正誤を判断する根拠を押さえます。

民法の基礎と権利の主体

18語

信義則と権利濫用の禁止(1条2項・3項)

信義則とは、権利の行使と義務の履行は信義に従い誠実に行わなければならないという原則(1条2項)で、権利の濫用の禁止とは、形式上は権利の行使に当たっても権利の濫用となるものは許さないという原則(1条3項)です。

権利能力と胎児(3条1項・886条・721条・965条)

権利能力とは、権利や義務の主体となることができる資格のことで、私権の享有は出生に始まります(3条1項)。胎児は原則として権利能力を持ちませんが、損害賠償の請求権・相続・遺贈については既に生まれたものとみなされます(721条・886条1項・965条)。

意思能力と意思無能力の効果(3条の2)

意思能力とは、自分の行為の法的な意味や結果を判断することができる精神的な能力のことで、法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は無効となります(3条の2)。

未成年者の行為能力(4条〜6条・成年年齢18歳)

未成年者とは、年齢18歳に達していない者のことで(4条)、未成年者が法律行為をするには法定代理人の同意を得なければならず、同意を得ないでした法律行為は取り消すことができます(5条1項・2項)。

後見・保佐・補助の開始の審判(7条〜19条・任意後見との関係)

後見・保佐・補助の開始の審判とは、精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者・著しく不十分である者・不十分である者について、家庭裁判所が一定の者の請求により、それぞれ成年後見人・保佐人・補助人を付ける審判のことです(7条・11条・15条)。

制限行為能力者の行為の効力(日用品・13条1項の行為・同意に代わる許可・代理権の付与)

制限行為能力者の行為の効力とは、成年被後見人・被保佐人・被補助人がした法律行為をどのような場合に取り消すことができるかという規律のことで、成年被後見人の行為は日用品の購入その他日常生活に関する行為を除き取り消すことができ(9条)、被保佐人・被補助人の行為は同意を要する行為を同意又はこれに代わる許可なくしたときに取り消すことができます(13条4項・17条4項)。

制限行為能力者の相手方の保護(20条の催告・21条の詐術)

制限行為能力者の相手方の保護とは、取り消されるかどうかわからない不安定な立場に置かれた相手方のために、追認するかどうかの確答を求める催告権(20条)と、詐術を用いた制限行為能力者の取消権を失わせる規定(21条)を置く仕組みのことです。

身分行為と行為能力(婚姻・認知・遺言・縁組と制限行為能力者)

身分行為と行為能力とは、婚姻・離婚・認知・縁組・遺言のような身分上の行為には、財産上の行為を対象とする行為能力の制限の規定(5条・9条・13条・17条)がそのままは適用されず、意思能力があれば本人が単独ですることができるという規律のことです。

不在者の財産管理(25条〜29条)

不在者の財産管理とは、従来の住所又は居所を去った者(不在者)の財産が放置されないよう、管理人を置かなかったときなどに、家庭裁判所が利害関係人又は検察官の請求により管理人の選任などの必要な処分を命じる制度のことです(25条〜29条)。

失踪宣告とその取消し(30条〜32条・同時死亡の推定)

失踪宣告とは、不在者の生死が7年間(危難に遭遇した者は危難が去った後1年間)明らかでないときに、家庭裁判所が利害関係人の請求により行う宣告で、宣告を受けた者は一定の時に死亡したものとみなされます(30条・31条)。失踪宣告の取消しとは、生存や異なる時の死亡の証明があったときに家庭裁判所がその宣告を取り消すことです(32条)。

法人の権利能力と目的の範囲(34条)

法人の権利能力とは、法人が権利義務の主体となる資格のことで、法人は、法令の規定に従い、定款その他の基本約款で定められた目的の範囲内において、権利を有し、義務を負います(34条)。

法人の不法行為責任と代表者の権限外の行為(一般法人法77条・78条と110条)

法人の不法行為責任とは、代表理事その他の代表者がその職務を行うについて第三者に加えた損害を法人が賠償する責任のことです(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律78条)。代表者の権限外の行為とは、定款などで制限された代表権を超えて代表者がした行為のことで、相手方は善意であれば制限を対抗されず(同法77条5項)、制限が解除されたと信じたことに正当な理由があれば110条の類推適用で保護されます。

一般社団法人・一般財団法人の機関と剰余金(一般法人法)

一般社団法人とは、人の集まり(社員)を基礎として設立の登記によって成立する非営利の法人で、一般財団法人とは、設立者が拠出した財産を基礎として成立する非営利の法人のことです(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律)。

権利能力なき社団(成立要件・財産の総有・債務・不動産の登記)

権利能力なき社団とは、団体としての組織を備え、多数決の原則が行われ、構成員が変わっても団体が存続し、代表の方法・総会の運営・財産の管理など団体としての主要な点が確定しているのに、法人格を持たない団体のことです。

物の意義と不動産(85条・86条・一筆の土地の一部・建物の独立性)

不動産とは、土地及びその定着物のことで(86条1項)、不動産以外の物はすべて動産です(同条2項)。民法上の物は有体物をいいます(85条)。

主物と従物(87条・従たる権利)

従物とは、物の所有者がその物(主物)の常用に供するために附属させた、自己の所有に属する他の物のことで、従物は主物の処分に従います(87条)。

果実(88条・89条)

果実とは、物から生じる収益のことで、物の用法に従い収取する産出物を天然果実(88条1項)、物の使用の対価として受けるべき金銭その他の物を法定果実(同条2項)といいます。

民法上の催告の一覧(確答がない場合の効果)

民法上の催告とは、相手方に一定の行為や確答を促す意思の通知のことで、催告に対して期間内に確答や行為がない場合の効果(追認擬制・取消し擬制・追認拒絶擬制・権利の消滅・承認擬制など)は、制度ごとに条文で定められています。

法律行為と意思表示

11語

法律行為と準法律行為(意思表示・観念の通知・意思の通知・単独行為)

法律行為とは、意思表示を要素とし、表示された意思の内容どおりの法律効果が生じる行為のことで、契約・単独行為・合同行為があります。準法律行為は、意思の通知や観念の通知のように、表示があっても法律が定めた効果が生じるにとどまる行為をいいます。

公序良俗違反と強行法規・取締法規違反(90条・91条)

公序良俗違反とは、法律行為が公の秩序又は善良の風俗に反することで、その法律行為は無効になります(90条)。強行規定に反する法律行為も無効ですが、行政上の目的で行為を取り締まる取締法規に違反しただけでは直ちに無効にはならず、規定の目的や当事者の認識から私法上の効力を判断します。

心裡留保(93条)

心裡留保とは、表意者が真意ではないことを自ら知りながら意思表示をすることです。その意思表示は原則として有効ですが、相手方が真意ではないことを知り、又は知ることができたときは無効となり、その無効は善意の第三者に対抗することができません(93条)。

虚偽表示の無効と94条2項の「第三者」

虚偽表示とは、相手方と通じてした虚偽の意思表示のことで、当事者間では無効です(94条1項)。その無効は善意の第三者に対抗することができず(94条2項)、第三者とは、虚偽表示の当事者又はその包括承継人以外の者で、虚偽表示の外形を基礎として新たに法律上の利害関係を有するに至った者をいいます。

94条2項の類推適用(意思外形対応型・外形自己作出型・110条の法意の併用)

94条2項の類推適用とは、通謀による虚偽表示がない場合でも、虚偽の外観が作られ、その作出に本当の権利者が関わっていたときに、94条2項を類推して、外観を信頼した第三者に権利者が無効を対抗できないとすることです。権利者の意思を超えた外観や帰責性が重いにとどまる場合は、110条の法意も併せて第三者に善意無過失を求めます。

錯誤の要件(表示の錯誤と基礎事情の錯誤・重要性・基礎事情の表示)

錯誤とは、表意者の認識と事実が食い違っていることで、意思表示に対応する意思を欠く錯誤(表示の錯誤)と、法律行為の基礎とした事情についての認識が真実に反する錯誤(基礎事情の錯誤)があります。錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、意思表示を取り消すことができ、基礎事情の錯誤は、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限ります(95条1項・2項)。

錯誤の効果と主張者(取消権者・表意者の重過失・取消し前の第三者・他制度との関係)

錯誤の効果とは、95条1項・2項の要件を満たす錯誤に基づく意思表示を取り消すことができることで、取り消せるのは表意者又はその代理人若しくは承継人に限られます(120条2項)。表意者に重大な過失があるときは、相手方が錯誤を知り又は重大な過失で知らなかったときと相手方が同一の錯誤に陥っていたときを除いて取り消せず(95条3項)、取消しは善意でかつ過失がない第三者に対抗することができません(95条4項)。

詐欺による意思表示と96条3項の「第三者」

詐欺による意思表示とは、相手方又は第三者に欺かれて錯誤に陥り、その錯誤によってした意思表示のことで、取り消すことができます(96条1項)。第三者が詐欺を行った場合は、相手方がその事実を知り、又は知ることができたときに限り取り消すことができ(96条2項)、詐欺による取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができません(96条3項)。

強迫による意思表示

強迫による意思表示とは、不法に害悪を示されて畏怖し、その畏怖によってした意思表示のことで、取り消すことができます(96条1項)。第三者が強迫した場合も相手方の事情を問わずに取り消すことができ、取消しは善意でかつ過失がない第三者にも対抗することができます。

意思表示の到達と効力発生(97条・到達の意義・到達妨害・発信後の死亡と能力喪失)

意思表示の到達とは、意思表示の通知が相手方の了知可能な状態に置かれること、つまり相手方の支配圏内に置かれることで、意思表示はその時から効力を生じます(97条1項)。相手方が正当な理由なく到達を妨げたときは通常到達すべきであった時に到達したものとみなされ、通知の発信後に表意者が死亡し又は能力を失っても効力は妨げられません(97条2項・3項)。

公示による意思表示と意思表示の受領能力(98条・98条の2)

公示による意思表示とは、表意者が相手方を知ることができず、又はその所在を知ることができないときに、裁判所の掲示場への掲示と官報への掲載によってする意思表示のことで、最後の掲載日等から2週間を経過した時に到達したものとみなされます(98条)。意思表示の受領能力は意思表示を受け取って理解する能力のことで、受領時に意思能力を有しなかった者・未成年者・成年被後見人には、その法定代理人等が知るまで意思表示を対抗することができません(98条の2)。

代理

14語

代理の要件と顕名(99条・100条・署名代理・受働代理)

顕名とは、代理人が相手方に対して本人のためにすることを示すことです。代理人がその権限内において顕名をしてした意思表示は本人に対して直接にその効力を生じ(99条1項)、相手方が代理人に対してした意思表示にもこの規定が準用されます(99条2項)。

代理行為の瑕疵(101条)

代理行為の瑕疵とは、代理人がした意思表示又は代理人が受けた意思表示に、意思の不存在・錯誤・詐欺・強迫や、ある事情についての悪意・有過失があることです。その事実の有無は原則として代理人について決し(101条1項・2項)、特定の法律行為を委託された代理人がした行為では、本人は自ら知り又は過失によって知らなかった事情について代理人の不知を主張できません(101条3項)。

代理人の行為能力(102条)

代理人の行為能力とは、代理人になるために行為能力が要るかという問題です。制限行為能力者も代理人になることができ、代理人としてした行為は行為能力の制限によっては取り消すことができませんが、制限行為能力者が他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為は取り消すことができます(102条)。

代理権の範囲と消滅(103条・111条)

代理権の範囲とは代理人がどこまでの行為を本人のためにすることができるかであり、代理権の消滅とは代理権が失われることです。権限の定めのない代理人は保存行為と性質を変えない範囲内の利用・改良行為だけをすることができ(103条)、代理権は本人の死亡や代理人の死亡・破産手続開始の決定・後見開始の審判などで消滅します(111条)。

復代理(104条〜106条)

復代理とは、代理人が自己の名で選任した者に本人を代理させることであり、選任された者を復代理人といいます。復代理人は代理人の代理人ではなく本人の代理人で、その権限内の行為について本人を代表します(106条1項)。

自己契約・双方代理と利益相反行為(108条)

自己契約とは代理人が自ら相手方となって本人を代理することであり、双方代理とは同一人が当事者双方の代理人となることです。いずれも、代理人と本人との利益が相反する行為と同じく、代理権を有しない者がした行為とみなされますが、債務の履行と本人があらかじめ許諾した行為は除かれます(108条)。

代理権の濫用(107条)

代理権の濫用とは、代理人が自己又は第三者の利益を図る目的で代理権の範囲内の行為をすることです。相手方がその目的を知り、又は知ることができたときは、その行為は代理権を有しない者がした行為とみなされます(107条)。

無権代理行為の追認・追認拒絶と相手方の催告権・取消権(113条〜116条)

無権代理行為とは、代理権を有しない者が他人の代理人としてした行為のことです。その契約は本人が追認しなければ本人に効力を生じず(113条1項)、相手方には、本人に追認するかどうかの確答を求める催告権(114条)と、本人が追認するまでの取消権(115条)が与えられています。

無権代理人の責任(117条)

無権代理人の責任とは、他人の代理人として契約をした者が、自己の代理権を証明できず本人の追認も得られないときに、相手方の選択に従い相手方に対して負う履行又は損害賠償の責任です(117条1項)。相手方が悪意のとき、過失で知らなかったとき(無権代理人が悪意の場合を除く)、無権代理人が制限行為能力者のときは生じません(117条2項)。

無権代理と相続

無権代理と相続とは、無権代理行為の後に本人と無権代理人の間で相続が起きた場合に、無権代理行為の効力がどうなるかという問題です。判例は、無権代理人が本人を単独相続すれば当然に有効になるとする一方、本人が追認を拒絶した後の相続、共同相続、本人が無権代理人を相続した場合には当然には有効にならないとしています。

代理権授与表示による表見代理(109条)

代理権授与表示による表見代理とは、第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者が、その代理権の範囲内でその他人が第三者との間でした行為について責任を負うことです(109条1項)。第三者が代理権のないことを知り又は過失によって知らなかったときは責任を負わず、範囲外の行為には正当な理由がある場合に限り責任を負います(109条2項)。

権限外の行為の表見代理(110条・基本代理権・正当な理由)

権限外の行為の表見代理とは、代理人がその権限外の行為をした場合に、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるとき、本人がその行為について責任を負うことです(110条)。代理人に何らかの代理権(基本代理権)があることが前提になります。

代理権消滅後の表見代理(112条)

代理権消滅後の表見代理とは、他人に代理権を与えた者が、代理権の消滅後にその他人が元の代理権の範囲内で第三者とした行為について、代理権の消滅を知らず過失もなかった第三者に対して責任を負うことです(112条1項)。元の範囲外の行為には、第三者に正当な理由がある場合に限り責任を負います(112条2項)。

日常家事債務の連帯責任と110条の趣旨の類推(761条)

日常家事債務とは、夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたことによって生じた債務で、他方も連帯してその責任を負います(761条)。判例は、夫婦が日常の家事について相互に代理権を持つとし、その範囲を超えた行為には、相手方が日常の家事の範囲内と信ずるにつき正当な理由がある場合に限り110条の趣旨を類推します。

無効・取消し、条件・期限・期間、時効

18語

無効と無効行為の追認・転換(119条・他人の権利の処分の追認)

無効とは、法律行為が形式的には成立していても、初めから効力を生じないことです。無効な行為は追認によっても効力を生じませんが、当事者が無効であることを知って追認したときは新たな行為をしたものとみなされ(119条)、ある行為としては無効でも別の行為の要件を満たしていればその行為として効力を認めることがあり、これを無効行為の転換といいます。

取消権者と取消しの方法(120条・123条)

取消権者とは、取り消すことができる行為を取り消すことができる者のことで、行為能力の制限による取消しでは制限行為能力者とその代理人・承継人・同意権者、錯誤・詐欺・強迫による取消しでは瑕疵ある意思表示をした者とその代理人・承継人に限られます(120条)。取消しは、相手方が確定していれば相手方に対する意思表示によってします(123条)。

取消しの効果と原状回復(121条・121条の2)

取消しの効果とは、取り消された行為が初めから無効であったものとみなされること(121条)で、無効な行為に基づいて給付を受けた者は相手方を原状に復させる義務を負います(121条の2第1項)。ただし、無償行為の善意の受領者、意思能力を欠いていた者、制限行為能力者だった者は、現に利益を受けている限度で返還すれば足ります(同条2項・3項)。

取り消すことができる行為の追認と法定追認(122条〜125条)

取り消すことができる行為の追認とは、取消権者が取消権を放棄して行為を確定的に有効とする意思表示で、追認すると以後取り消すことができなくなります(122条)。法定追認とは、追認をすることができる時以後に取消権者が履行や権利の譲渡などをしたときに、追認したものとみなされることです(125条)。

取消権の期間制限(126条)

取消権の期間制限とは、取消権が追認をすることができる時から5年間行使しないときと、行為の時から20年を経過したときに消滅することです(126条)。追認をすることができる時とは、取消しの原因となっていた状況が消滅し、かつ、取消権を有することを知った時をいいます。

条件の種類と効力(停止条件・解除条件・既成条件・不能条件・不法条件・随意条件・条件に親しまない行為)

条件とは、法律行為の効力の発生又は消滅を、将来発生するかどうか不確実な事実にかからせる定めのことで、成就によって効力が生じる停止条件と、成就によって効力が失われる解除条件があります(127条)。既成条件・不法条件・不能条件・随意条件は、条文により法律行為が無効又は無条件となります(131条〜134条)。

条件の成就の妨害と不正な成就(130条)

条件の成就の妨害とは、条件が成就することによって不利益を受ける当事者が故意に条件の成就を妨げることで、相手方はその条件が成就したものとみなすことができます(130条1項)。条件の成就によって利益を受ける当事者が不正に条件を成就させたときは、相手方はその条件が成就しなかったものとみなすことができます(同条2項)。

条件付権利の保護(128条・129条)

条件付権利とは、条件が成就すれば権利を取得し又は義務を免れるという、条件の成否未定の間の当事者の法的地位のことです。各当事者は条件の成否未定の間も相手方の利益を害することができず(128条)、条件付きの権利義務は一般の規定に従って処分・相続・保存・担保供与ができます(129条)。

期限と期限の利益(135条〜137条・出世払い)

期限とは、法律行為の効力の発生・消滅や債務の履行を、将来到来することが確実な事実にかからせる定めのことで、時期が決まっている確定期限と決まっていない不確定期限があります。期限の利益とは期限が到来するまで当事者が受ける利益で、債務者のために定めたものと推定され、放棄できますが相手方の利益を害することはできません(136条)。

期間の計算(138条〜143条)

期間の計算とは、日・週・月・年などで定めた期間の起算点と満了点を決めるルールのことで、時間で定めた期間は即時から起算し、日・週・月・年で定めた期間は午前零時から始まる場合を除いて初日を算入しません(139条・140条)。期間は末日の終了で満了し、月や年は暦に従って起算日に応当する日の前日に満了します(141条・143条)。

時効の援用と援用権者(145条・144条)

時効の援用とは、時効の利益を受けようとする者がその意思を表示することで、時効は当事者が援用しなければ裁判所がこれによって裁判をすることができません(145条)。援用権者は時効によって直接利益を受ける者で、消滅時効では保証人・物上保証人・第三取得者その他権利の消滅について正当な利益を有する者が含まれ、援用されると時効の効力は起算日にさかのぼります(144条)。

時効の利益の放棄と時効完成後の債務の承認

時効の利益の放棄とは、時効が完成した後に、時効による権利の得喪を生じさせないことを確定させる意思表示のことで、時効の利益はあらかじめ放棄することはできません(146条)。時効の完成を知らずに債務を承認した場合は放棄に当たりませんが、判例は、信義則上その後に時効を援用することは許されないとしています。

時効の完成猶予と更新の事由(147条〜152条・旧「中断」)

時効の完成猶予とは、一定の事由がある間や一定の期間は時効が完成しないことで、時効の更新とは、一定の事由があったときにそれまでの期間が効力を失い、新たに時効が進行を始めることです(147条〜152条)。改正前の時効の「中断」「停止」に代わる仕組みで、裁判上の請求・強制執行・仮差押え・催告・協議の合意・承認などの事由ごとに効果が定められています。

完成猶予・更新の効力の及ぶ者(153条・154条・物上保証人・連帯債務・保証)

完成猶予・更新の効力の及ぶ者とは、時効の完成猶予又は更新の効力が及ぶ人の範囲のことで、原則として事由が生じた当事者とその承継人の間でだけ効力をもちます(153条)。物上保証人への競売は債務者への通知を要し(154条)、主たる債務者に生じた事由は保証人に及びます(457条1項)が、保証人や連帯債務者の一人に生じた事由は原則として他の者に及びません(441条)。

取得時効の要件(162条・所有の意思・平穏公然・善意無過失・占有の継続・自己物)

取得時効とは、所有の意思をもって平穏かつ公然と他人の物を一定期間占有した者が、その所有権を取得する制度のことです(162条)。期間は20年、占有開始時に善意無過失であれば10年で、所有の意思・善意・平穏・公然と占有の継続は推定されます(186条)。

所有権以外の財産権の取得時効(163条・賃借権・地上権・地役権)

所有権以外の財産権の取得時効とは、地上権・地役権・賃借権など所有権以外の財産権を、自己のためにする意思をもって平穏かつ公然と行使する者が、162条の区別に従い20年又は10年でその権利を取得することです(163条)。土地賃借権は、継続的な用益の外形があり、それが賃借の意思に基づくことが客観的に表現されているときに時効取得できます。

消滅時効の期間(166条〜169条)

消滅時効の期間とは、権利を行使しない状態が続いたときに権利が時効で消滅するまでの期間のことで、債権は権利を行使できることを知った時から5年・行使できる時から10年(166条1項)、債権・所有権以外の財産権は20年(同条2項)です。生命・身体の侵害による損害賠償請求権(167条)、定期金債権(168条)、確定判決で確定した権利(169条)には特則があり、所有権は時効によって消滅しません。

消滅時効の起算点

消滅時効の起算点とは、消滅時効の期間を数え始める時点のことで、債権では、権利を行使することができる時(客観的起算点)と、債権者が権利を行使することができることを知った時(主観的起算点)の二つがあります(166条1項)。権利を行使することができる時とは、法律上の障害がなくなった時をいいます。

物権総論と物権変動

18語

物権の意義と客体(物権法定主義・一物一権主義・一筆の土地の一部・集合物・金銭)

物権とは、特定の物を直接に支配し、他人を排除できる権利です(175条)。物権は民法その他の法律に定めるもののほかは創設できず(物権法定主義)、1個の物権の客体は独立した1個の物であることを原則とします(一物一権主義)。

物権的請求権の性質と要件(相手方の故意過失不要・時効消滅しない・費用負担)

物権的請求権とは、物権の円満な支配が妨げられ又は妨げられるおそれがあるときに、物権者がその回復や予防を相手方に求める権利で、返還請求権・妨害排除請求権・妨害予防請求権の3つがあります。相手方の故意・過失や責任能力を要件とせず、所有権に基づくものは時効で消滅せず、物権から切り離して譲渡することもできません。

物権的請求権の相手方(建物収去と登記名義人・間接占有者・建物賃借人)

物権的請求権の相手方とは、物権的請求権を行使して返還や妨害の除去を求める相手で、現に物を占有し又は妨害状態を支配している者をいいます。他人の土地上の建物については現実に建物を所有して土地を占拠している者が建物収去土地明渡しの相手方になり、自らの意思で所有権取得の登記をした者は建物を譲渡しても登記名義を保有する限り収去義務を免れません。

物権変動の時期と意思主義(176条・所有権移転時期・物権行為の独自性)

意思主義とは、物権の設定及び移転は当事者の意思表示のみによって効力を生じ、登記や引渡しなどの形式を要しないとする考え方です(176条)。判例は、特定物の売買では特段の事情のない限り契約の成立と同時に所有権が移転するとし、特約があればその時期に移転するとしています。

177条の「第三者」の範囲(制限説・不法占拠者・前主・賃借人・差押債権者)

177条の「第三者」とは、当事者及びその包括承継人以外の者で、不動産に関する物権の得喪及び変更の登記の欠缺を主張する正当の利益を有する者をいいます(制限説)。二重譲受人・差押債権者・賃借人・抵当権者などは第三者に当たり、不法占拠者・前主・相続人は当たりません。

背信的悪意者排除論と背信的悪意者からの転得者

背信的悪意者とは、実体上物権変動があった事実を知る者で、その物権変動についての登記の欠缺を主張することが信義に反すると認められる事情がある者をいい、177条の第三者に当たりません。背信的悪意者からの転得者は、転得者自身が第一譲受人との関係で背信的悪意者と評価されるのでない限り、177条の第三者として保護されます。

取消しと登記(取消し前の第三者・取消し後の第三者)

取消しと登記とは、不動産の売買などが取り消された場合に、取消権者が取消しによる所有権の復帰を第三者に主張するのに登記が要るかという問題です。判例は、取消し前の第三者は96条3項・95条4項などの第三者保護規定で処理し、取消し後の第三者とは復帰的物権変動による対抗関係に立つとして177条で処理します。

解除と登記(解除前の第三者・解除後の第三者)

解除と登記とは、不動産の売買契約が解除された場合に、解除者が所有権の復帰を第三者に主張するのに登記が要るかという問題です。判例は、解除前の第三者は545条1項ただし書で保護されるが権利保護要件として登記を要し、解除後の第三者とは対抗関係に立つとして177条で処理します。

取得時効と登記(時効完成前後の第三者・起算点の固定・再度の時効取得)

取得時効と登記とは、不動産を時効取得した者が、その取得を第三者に主張するのに登記が要るかという問題です。判例は、時効完成前に所有権を取得した者に対しては登記なしに対抗でき、時効完成後に取得した第三者とは対抗関係に立つとし、起算点は占有開始時に固定して任意に選べないとしています。

相続と登記(共同相続・相続放棄・遺産分割・遺贈・特定財産承継遺言・遺言執行者)

相続と登記とは、相続によって不動産を取得した者が、その取得を第三者に主張するのに登記が要るかという問題です。自己の法定相続分は登記なしに対抗でき、相続放棄の効力も登記なしに主張できますが、遺産分割や特定財産承継遺言で法定相続分を超えて取得した部分は登記がなければ第三者に対抗できず(899条の2第1項)、遺贈も登記がなければ対抗できません。

登記請求権と中間省略登記・真正な登記名義の回復

登記請求権とは、実体の権利関係と登記が一致しないときに、登記の当事者の一方が他方に登記手続への協力を求める権利です。所有権などの物権に基づくもの、売買などの契約に基づくもの、物権変動の過程を登記に反映させるために物権変動の事実から生じるものがあり、物権変動の過程を省いた中間省略登記の請求は登記名義人と中間者の同意がなければ認められません。

登記の有効要件と推定力(流用・不法抹消・無効登記の追認・権利推定)

推定力とは、登記があればその登記どおりの権利関係があると事実上推定される登記の効力をいいます。登記は実体の権利関係に符合して初めて有効で、公信力はないので、登記を信じて無権利者から買っても権利は取得できず、他方で権利者の関与なく不法に抹消された登記は対抗力を失いません。

動産物権変動の対抗要件(178条・引渡しの4方法・登録自動車)

動産物権変動の対抗要件とは、動産に関する物権の譲渡を第三者に対抗するために必要な引渡しのことです(178条)。引渡しには現実の引渡し・簡易の引渡し・占有改定・指図による占有移転の4つがあり、登録を受けた自動車のように登録制度がある物は登録が対抗要件になります。

即時取得の要件(取引行為・占有の取得方法・善意無過失の推定・対象外の場面)

即時取得とは、取引行為によって平穏かつ公然と動産の占有を始めた者が、前主に処分の権利がないことについて善意無過失であるときに、即時にその動産について行使する権利(所有権・質権)を取得する制度です(192条)。動産の占有を信頼して取引した者を守るためのもので、取引行為が有効であること、占有改定ではない占有の取得があることが要ります。

盗品・遺失物の回復請求と代価弁償(193条・194条)

盗品・遺失物の回復請求とは、即時取得の要件を満たす占有者に対しても、占有物が盗品又は遺失物であるときは、被害者又は遺失者が盗難又は遺失の時から2年間その物の回復を請求できる制度です(193条)。占有者が競売・公の市場・同種の物を販売する商人から善意で買い受けたときは、被害者らは占有者が支払った代価を弁償しなければ回復できません(代価弁償、194条)。

明認方法と立木(立木法の登記がない立木)

明認方法とは、立木などについて、木の皮を削って所有者名を書く、立札を立てるなどの方法で、現在の所有者が誰かを第三者に示す慣習上の公示方法をいいます。立木は原則として土地の一部ですが、立木法の登記がない立木も、明認方法を施せば土地と別に所有権の移転や留保を第三者に対抗できます。

物権の混同(179条)

物権の混同とは、同一物について所有権と他の物権が同一人に帰属したときに、その他の物権が消滅することです(179条1項本文)。ただし、その物又はその他の物権が第三者の権利の目的であるときは消滅せず(179条1項ただし書)、所有権以外の物権とこれを目的とする権利が同一人に帰属した場合も同じ規律になります(179条2項)。

物権変動・物権的請求権の要件事実(所有権喪失の抗弁・対抗要件の抗弁・占有権原の抗弁)

要件事実とは、一定の法律効果が生じるために必要な具体的な事実で、訴訟ではその効果を主張する側が主張立証します。所有権に基づく明渡請求では、原告は自分のもと所有と被告の現在の占有を主張し、被告は所有権喪失の抗弁・対抗要件の抗弁・占有権原の抗弁などを出し、原告は背信的悪意などの再抗弁で応じます。

占有権・所有権

15語

占有権の成立と占有の態様(所持・占有補助者・代理占有・自主占有と他主占有・186条の推定)

占有権とは、自己のためにする意思をもって物を所持することによって取得する権利です(180条)。占有は、自ら所持する直接占有と占有代理人を通じた代理占有、所有の意思の有無による自主占有と他主占有に分かれ、占有者は所有の意思・善意・平穏・公然の占有が推定されます。

占有の承継と相続(185条の新権原・187条・相続と占有)

占有の承継とは、売買や相続によって前の占有者の占有を引き継ぐことです。承継人は前の占有者の占有を併せて主張するか自己の占有のみを主張するかを選べ(187条1項)、他主占有を自主占有に変えるには所有の意思の表示か新たな権原による占有の開始が必要です(185条)。

占有者と回復者の関係(果実の取得・滅失損傷の責任・費用償還 189条〜196条)

占有者と回復者の関係とは、本権のない占有者が物を回復者に返すときに、果実の帰属、占有物を滅失・損傷した責任、支出した必要費・有益費の償還を精算する規律です(189条〜191条・196条)。

占有の訴え(占有回収・占有保持・占有保全の要件と期間)

占有の訴えとは、占有者が本権の有無にかかわらず、占有を奪われたときは物の返還を、妨害されたときは妨害の停止を、妨害されるおそれがあるときは予防を求める権利です。占有回収の訴え・占有保持の訴え・占有保全の訴えの三つがあり、損害賠償や担保もあわせて請求できます(197条〜201条)。

占有の訴えと本権の訴えの関係(202条・本権に基づく反訴・自力救済)

本権の訴えとは、所有権・地上権・賃借権など占有を正当化する権利(本権)に基づいて物の返還などを求める訴えです。占有の訴えと本権の訴えは互いに妨げず(202条1項)、占有の訴えでは本権に関する理由に基づいて裁判できませんが(202条2項)、本権に基づく反訴は許されます。

相隣関係(隣地使用・竹木の枝と根・境界標・水・境界線付近の建築・継続的給付の設備)

相隣関係とは、隣り合う土地の所有者どうしが、隣地の使用、竹木の枝と根、水の流れ、境界標と囲障、境界線付近の建築、電気・ガス・水道の設備の設置について、互いの所有権を調整し合う関係です(209条〜238条)。

囲繞地通行権(210条〜213条)

囲繞地通行権とは、他の土地に囲まれて公道に通じない土地(袋地)の所有者が、公道に至るため、その土地を囲んでいる他の土地(囲繞地)を通行できる権利です(210条)。分割や一部譲渡で袋地が生じたときは、他の分割者や譲渡人の土地だけを無償で通行できます(213条)。

不動産の付合(242条・権原・建前・増築)

不動産の付合とは、不動産に従として結合して分離できなくなった物の所有権を、不動産の所有者が取得することです(242条本文)。権原によって附属させた者の権利は妨げられませんが(同条ただし書)、附属させた物が独立性を失えば不動産の所有者のものになり、所有権を失った者は償金を請求できます(248条)。

動産の付合・混和・加工(243条〜248条)

動産の付合とは、所有者の違う動産が結合して損傷しなければ分離できなくなることで、混和は物が混ざって識別できなくなること、加工は他人の動産に工作を加えて新しい物を作ることです。合成物・混和物・加工物の所有権の帰属は243条〜246条で決まり、所有権を失った者は償金を請求できます(248条)。

共有持分の処分と放棄・相続人不存在(255条・958条の2との関係)

共有持分とは、各共有者が共有物について持つ所有権の割合です。各共有者は持分を自由に譲渡・担保設定・放棄でき、持分を放棄したときや相続人なく死亡したときは他の共有者に帰属しますが(255条)、相続人がないときはまず特別縁故者への財産分与(958条の2)の対象になります。

共有物の使用・管理・変更(249条〜252条の2・令和3年改正)

共有物の使用・管理・変更とは、共有物の扱いの重さに応じた決め方の規律です。各共有者は持分に応じて全部を使用でき(249条)、保存行為は単独で、管理は持分の価格の過半数で決め(252条)、形状や効用の著しい変更を伴う変更には全員の同意が要ります(251条)。

共有者の一人による権利行使(保存行為・不実登記の抹消・損害賠償・共有者間の明渡し)

共有者の一人による権利行使とは、各共有者が単独で共有物を守るためにできる請求の範囲の問題です。保存行為(252条5項)として不法占拠者への明渡しや無権利者の登記の抹消は単独で全部について請求できますが、損害賠償は持分の割合に限られ、共有者間では多数持分権者でも当然には明渡しを求められません。

共有物の管理費用と共有物に関する債権(253条・254条・259条)

共有物の管理費用とは、各共有者が持分に応じて負う共有物の管理の費用その他の負担です(253条1項)。共有物について他の共有者に対して持つ債権は特定承継人にも行使でき(254条)、1年以内に負担を履行しない共有者の持分は償金を払って取得でき(253条2項)、分割の際は債務者の取り分で弁済させられます(259条)。

共有物分割(256条〜262条の2・遺産共有との区別・全面的価格賠償)

共有物分割とは、共有者の請求によって共有関係を解消し、共有物を各共有者に分けることです(256条)。協議が調わなければ裁判所が現物分割か賠償分割(全面的価格賠償を含む)で分け、それができないか著しく価格を減少させるおそれがあるときは競売を命ずることができます(258条)。

所有者不明土地・建物の管理命令と管理不全土地・建物の管理命令(264条の2〜264条の14・令和3年改正)

所有者不明土地・建物の管理命令とは、所有者やその所在がわからない土地や建物について、利害関係人の請求で裁判所が管理人を選任し、管理を命ずる処分です(264条の2・264条の8)。所有者がわかっていても管理が不適当で他人の権利を害するおそれがある土地・建物には管理不全土地・建物管理命令が発せられます(264条の9・264条の14)。

用益物権

7語

地上権の内容と性質(265条〜269条の2・存続期間・地代・譲渡・区分地上権)

地上権とは、他人の土地において工作物又は竹木を所有するため、その土地を使用する物権です(265条)。地下又は空間だけを上下の範囲を定めて目的とする地上権(区分地上権)も設定できます(269条の2)。

地上権と土地賃借権の比較

地上権とは他人の土地を工作物又は竹木の所有のために使用する物権で、土地賃借権とは賃貸借契約に基づいて土地を使用収益する債権です。同じように土地を使う権利でも、物権か債権かで登記請求権・譲渡・修繕・担保の扱いが分かれます。

永小作権(270条〜279条)

永小作権とは、小作料を支払って他人の土地において耕作又は牧畜をする物権です(270条)。小作料の支払が権利の内容に含まれるので必ず有償で、存続期間は20年以上50年以下です(278条)。

地役権の性質(付従性・随伴性・不可分性・承役地所有者の義務)

地役権とは、設定行為で定めた目的に従い、他人の土地(承役地)を自己の土地(要役地)の便益に供する物権です(280条)。要役地の所有権に従たる権利として、その所有権とともに移転し、要役地から切り離して譲渡することはできません(281条)。

地役権の時効取得と消滅時効(283条・289条〜293条)

地役権の時効取得とは、継続的に行使され、かつ、外形上認識することができる地役権を、163条の要件を満たす行使によって取得することです(283条)。地役権の消滅時効は20年で(166条2項)、起算点は行使が継続的かどうかで分かれます(291条)。

通行地役権と承役地の譲受人(未登記地役権の対抗)

通行地役権とは、要役地から公道などへ出るために承役地を通行することを内容とする地役権です。登記のない通行地役権でも、承役地の譲受人が通路の使用を客観的に明らかな状況で認識し又は認識できたときは、譲受人に対抗できます(最判平成10年2月13日)。

入会権(263条・294条)

入会権とは、村落の住民の集団が慣習に基づいて山林原野などを共同で使用収益する物権です。共有の性質を有する入会権には共有の規定が(263条)、共有の性質を有しない入会権には地役権の規定が準用され(294条)、どちらも各地方の慣習が優先します。

担保物権

27語

担保物権の通有性と効力の比較(付従性・随伴性・不可分性・物上代位性・優先弁済的効力・留置的効力・競売申立権)

担保物権の通有性とは、担保物権におおむね共通して認められる付従性・随伴性・不可分性・物上代位性のことです。民法の担保物権は留置権・先取特権・質権・抵当権の4つで、どの性質と効力(優先弁済的効力・留置的効力・競売申立権)を持つかが少しずつ違います。

留置権の成立要件(物と債権の牽連性・弁済期・占有が不法行為で始まらないこと)

留置権とは、他人の物の占有者がその物に関して生じた債権を有するときに、その債権の弁済を受けるまでその物を留置できる法定担保物権です(295条1項)。債権が弁済期にあること、占有が不法行為によって始まったものでないことも成立の要件です。

留置権の効力と消滅(引換給付判決・果実・保存に必要な使用・無断賃貸・代担保・占有喪失・期限の許与)

留置権の効力とは、留置権者が債権の全部の弁済を受けるまで目的物の全部を留め置き、果実を収取して弁済に充てることができることです(296条・297条)。留置権は、債務者の承諾のない使用・賃貸に対する消滅請求、代わりの担保の提供、占有の喪失などによって消滅します(298条3項・301条・302条)。

一般の先取特権(306条〜310条・335条・336条)

一般の先取特権とは、共益の費用・雇用関係・子の監護の費用・葬式の費用・日用品の供給の5つの原因によって生じた債権を持つ者が、債務者の総財産について他の債権者に先立って弁済を受けることができる法定担保物権です(306条)。

動産の先取特権(311条〜324条・333条の追及効の制限)

動産の先取特権とは、不動産の賃貸借・旅館の宿泊・運輸・動産の保存・動産の売買など8つの原因によって生じた債権を持つ者が、債務者の特定の動産について優先弁済を受ける法定担保物権です(311条)。目的の動産が第三取得者に引き渡されると、その動産には行使できなくなります(333条)。

不動産の先取特権(325条〜328条・337条〜340条)

不動産の先取特権とは、不動産の保存・工事・売買によって生じた債権を持つ者が、債務者の特定の不動産について優先弁済を受ける法定担保物権です(325条)。効力を保存するには登記が要り、登記した保存・工事の先取特権は先に登記された抵当権にも優先します(337条〜340条)。

先取特権の順位と他の担保物権との競合(329条〜334条)

先取特権の順位とは、同じ財産の上に複数の先取特権や他の担保物権が競合したときに、どれが先に弁済を受けるかの順序です(329条〜334条)。一般の先取特権より特別の先取特権が優先し、動産の先取特権どうしは330条の3つの順位に従い、動産質権者は第一順位の先取特権者と同じ扱いになります。

動産売買先取特権の物上代位(304条・転売代金・請負代金・差押えの意義)

動産売買先取特権の物上代位とは、動産の売主が、買主の転売によって生じた代金債権など目的動産に代わる債権に対し、払渡し又は引渡しの前に差し押さえて先取特権を行使することです(304条1項)。

質権総論と動産質(342条〜355条・要物性・代理占有の禁止・転質・流質・占有喪失)

質権とは、債権者が債権の担保として債務者又は第三者から受け取った物を占有し、その物について他の債権者に先立って弁済を受ける約定担保物権です(342条)。質権の設定は目的物の引渡しによって効力を生じ、質権者は設定者に代わりに占有させることができません(344条・345条)。

不動産質(356条〜361条)

不動産質とは、不動産を目的とする質権です。不動産質権者は目的不動産を用法に従い使用収益でき、その代わりに管理の費用を負担し、利息を請求できません(356条〜358条)。存続期間は10年を超えることができません(360条)。

債権質(362条〜366条・対抗要件・直接取立て・担保価値維持義務)

債権質とは、債権を目的とする質権です(362条1項)。対抗要件は債権譲渡と同じく第三債務者への通知又はその承諾で(364条)、質権者は目的債権を直接に取り立てることができます(366条)。

抵当権の設定と付従性・物上保証人の地位(369条・将来債権・流用登記・不法原因給付)

抵当権とは、債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、他の債権者に先立って弁済を受ける約定担保物権です(369条1項)。抵当権は被担保債権に付き従い、被担保債権がなければ成立せず、消滅すれば消滅します(付従性)。自分の不動産を他人の債務の担保に供した者を物上保証人といいます。

抵当権の効力の及ぶ範囲(370条・371条・付加一体物・従物・従たる権利・果実・分離物)

抵当権の効力の及ぶ範囲とは、抵当権が抵当不動産のほかにどの物・権利・果実に及ぶかの問題です。抵当権は、抵当地の上の建物を除き、抵当不動産に付加して一体となっている物に及び(370条)、被担保債権の不履行の後に生じた果実にも及びます(371条)。

抵当権に基づく物上代位(賃料・転貸賃料・保険金・損害賠償請求権・差押えの意義・債権譲渡・相殺・敷金・転付命令)

抵当権に基づく物上代位とは、抵当権者が、抵当不動産の売却・賃貸・滅失・損傷によって債務者(所有者)が受けるべき金銭その他の物に対しても、払渡し又は引渡しの前に差押えをして抵当権を行使することです(372条・304条1項)。

抵当権侵害(妨害排除請求・抵当権者への直接明渡し・損害賠償・期限の利益の喪失)

抵当権侵害とは、抵当不動産の損傷・不法占有・競売妨害目的の占有など、抵当不動産の交換価値の実現を妨げ、抵当権者の優先弁済請求権の行使を困難にする行為のことです。抵当権者は、妨害排除請求・所有者の妨害排除請求権の代位行使・損害賠償請求・期限の利益の喪失の主張で対抗できます。

法定地上権の成否(388条)

法定地上権とは、土地とその上の建物が同一の所有者に属する場合に、その土地又は建物に設定された抵当権の実行で所有者が別々になったとき、建物のために設定されたものとみなされる地上権のことです(388条)。地代は、当事者の請求により裁判所が定めます。

一括競売(389条)

一括競売とは、抵当権の設定後に抵当地に建物が築造されたとき、抵当権者が土地とともにその建物を競売することです(389条1項本文)。抵当権者の優先権は土地の代価についてだけ行使でき、建物の所有者が抵当地の占有を抵当権者に対抗できる権利を持つときはできません。

抵当権と賃借権(395条の明渡猶予・387条の同意の登記による対抗)

抵当権と賃借権とは、同じ不動産の上で対抗要件の先後によって優劣が決まる二つの権利のことです。抵当権設定登記に後れる賃借権は競売で効力を失いますが、抵当権者全員の同意の登記があれば対抗でき(387条)、建物の賃借人には買受けから6か月の引渡しの猶予があります(395条)。

第三取得者の保護(代価弁済・抵当権消滅請求・費用償還・買受人)

第三取得者とは、抵当権が設定された不動産の所有権などを抵当権設定者から取得した者のことです。民法は、その者が抵当権の負担から抜け出す方法として代価弁済(378条)と抵当権消滅請求(379条以下)を用意し、競売では買受人になることや、支出した費用を優先して償還されることを認めています(390条・391条)。

抵当権の処分(376条・377条・転抵当・抵当権の譲渡と放棄・順位の譲渡と放棄・順位の変更)

抵当権の処分とは、抵当権者が、抵当権を他の債権の担保とすること(転抵当)と、同一の債務者に対する他の債権者の利益のために抵当権又はその順位を譲渡し又は放棄することです(376条1項)。各抵当権者の合意で順位そのものを入れ替える順位の変更(374条)とは区別されます。

共同抵当(392条・393条・物上保証人と後順位抵当権者)

共同抵当とは、債権者が同一の債権の担保として数個の不動産に抵当権を有することです。同時に配当するときは各不動産の価額に応じて債権の負担を按分し(392条1項)、一つの不動産の代価だけを配当するときは、次順位の抵当権者が他の不動産について代位できます(392条2項)。

抵当権の消滅(396条・397条・混同・消除主義・目的物の滅失)

抵当権の消滅とは、被担保債権の弁済などによる付従性での消滅のほか、目的物の滅失、競売による売却、混同、第三者による抵当不動産の時効取得(397条)、代価弁済・抵当権消滅請求によって抵当権がなくなることです。債務者と抵当権設定者に対しては、抵当権は被担保債権と同時でなければ時効で消滅しません(396条)。

根抵当権の設定と変更(398条の2〜398条の18・被担保債権の範囲・債務者・譲渡・相続)

根抵当権とは、設定行為で定めるところにより、債務者との一定の種類の取引などから生ずる一定の範囲に属する不特定の債権を、極度額の限度において担保する抵当権のことです(398条の2)。元本の確定前は、個々の債権との付従性・随伴性がなく、被担保債権の範囲・債務者・確定期日を後順位抵当権者の承諾なしに変更でき、設定者の承諾を得て譲渡できます。

根抵当権の元本の確定と確定後の権利(398条の19〜398条の22)

根抵当権の元本の確定とは、根抵当権が担保する元本債権が特定され、その後に生じる元本は担保されなくなることです。確定すると随伴性などが生じて普通の抵当権に近づきますが、利息・損害金は最後の2年分に限られず極度額まで全部担保され、設定者には極度額の減額請求(398条の21)、物上保証人などには消滅請求(398条の22)が認められます。

譲渡担保の法的構成と実行(受戻権・清算義務・弁済期後の処分・設定者の地位)

譲渡担保とは、債務の担保のために目的物の所有権を債権者に移転し、債務が弁済されれば設定者に戻り、弁済されなければ債権者が目的物を処分するか自分のものにして清算する担保の方法のことです。判例は、所有権の移転は債権担保の目的を達するのに必要な範囲でだけ効力を持つとし、設定者には換価処分が完結するまで受戻権を、債権者には清算義務を認めています。

集合動産・集合債権の譲渡担保

集合動産・集合債権の譲渡担保とは、倉庫の在庫商品のように構成部分が入れ替わる動産の集まりを種類・所在場所・量的範囲などで特定して一個の集合物として、又は将来発生するものを含む多数の債権をまとめて、譲渡担保の目的とすることです。

所有権留保(仮登記担保・代理受領を含む)

所有権留保とは、売買で目的物を買主に引き渡した後も、代金が完済されるまで目的物の所有権を売主に留めておき、代金債権の担保とすることです。仮登記担保は代物弁済の予約などを所有権移転請求権の仮登記で保全する担保、代理受領は債務者が第三債務者から受ける弁済の受領を債権者に委任して担保とする方法です。

債権の目的と効力

17語

特定物債権と保存義務(400条)・注意義務の程度の一覧

特定物債権とは、この絵画・この建物のように、当事者が物の個性に着目して定めた特定物の引渡しを目的とする債権のことで、債務者は引渡しをするまで、契約その他の債権の発生原因及び取引上の社会通念に照らして定まる善良な管理者の注意をもってその物を保存しなければなりません(400条)。注意義務の程度は、善良な管理者の注意、自己の財産に対するのと同一の注意、固有財産におけるのと同一の注意などに分かれ、制度ごとに条文で決まっています。

種類債権の特定と選択債権(401条・406条〜411条)

種類債権とは、ビール1ダース・米1トンのように、目的物を種類と数量だけで指定した債権のことで、債務者が物の給付をするのに必要な行為を完了するか、債権者の同意を得て給付すべき物を指定したときに、以後その物が債権の目的物になります(401条2項。特定)。選択債権とは、数個の給付の中から選択によって目的が定まる債権のことで、選択権は別段の意思表示がなければ債務者に属します(406条)。

金銭債権と利息債権(402条〜405条・外国通貨・重利)

金銭債権とは、一定額の金銭の支払を目的とする債権のことで、債務者は各種の通貨で弁済でき、外国の通貨で債権額を指定したときも日本の通貨で弁済できます(402条・403条)。利息債権とは、元本債権から一定の割合で生じる利息の支払を目的とする債権のことで、利息は特約がなければ生じず(589条1項)、弁済期の到来した利息債権は元本債権から独立した債権になります。

法定利率と金銭債務の特則(404条・419条・417条の2)

法定利率とは、当事者が利率を定めなかったときに使う法律上の利率のことで、年3パーセントを出発点とし、3年を一期として基準割合の変動に応じて見直されます(404条)。金銭債務の特則とは、金銭債務の不履行の損害賠償は遅滞の責任を負った最初の時点の法定利率(約定利率がそれを超えるときは約定利率)で定まり、債権者は損害を証明しなくてよく、債務者は不可抗力を抗弁にできないという規律のことです(419条)。

履行遅滞の時期(412条・期限の種類と債務の性質別の一覧)

履行遅滞とは、債務者が履行期に履行できるのに履行しないことで、遅滞の責任を負う時期は、確定期限があれば期限の到来した時、不確定期限があれば期限到来後に履行の請求を受けた時又は期限の到来を知った時のいずれか早い時、期限の定めがなければ履行の請求を受けた時です(412条)。

履行不能・原始的不能と代償請求権(412条の2・413条の2・422条の2)

履行不能とは、債務の履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして不能であることで、債権者はその履行を請求できなくなり、損害賠償や解除に進みます(412条の2第1項)。原始的不能とは、契約の成立の時にすでに履行が不能であることで、契約は無効にならず、債権者は履行の不能によって生じた損害の賠償を請求できます(同条2項)。

債務不履行の要件(帰責事由・履行補助者・主張立証責任)

債務不履行とは、債務者がその債務の本旨に従った履行をしないこと又は債務の履行が不能であることで、債権者はこれによって生じた損害の賠償を請求できますが、その不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りではありません(415条1項)。

損害賠償の範囲と算定時期(416条)

損害賠償の範囲とは、債務不履行によって生じた損害のうち賠償させる部分のことで、通常生ずべき損害が原則で、特別の事情によって生じた損害は、当事者がその事情を予見すべきであったときに限り賠償の対象になります(416条)。算定時期とは、目的物の価格が変動する場合にいつの時点の価格で賠償額を算定するかの問題で、判例は416条の枠組みで判断しています。

損害賠償の方法・賠償額の予定・過失相殺(417条〜422条)

損害賠償の方法とは、債務不履行による損害をどのような形で賠償するかのことで、別段の意思表示がなければ金銭で定めます(417条)。賠償額の予定とは、当事者が債務不履行の場合の損害賠償の額をあらかじめ約束しておくことで、履行の請求や解除権の行使を妨げず、違約金は賠償額の予定と推定されます(420条)。

信義則上の義務(安全配慮義務・契約締結過程の説明義務)

安全配慮義務とは、ある法律関係に基づいて特別な社会的接触の関係に入った当事者間において、その法律関係の付随義務として、相手方の生命や健康等を危険から保護するよう配慮すべき信義則上の義務のことです(最判昭和50年2月25日)。契約締結過程の説明義務とは、契約を結ぶかどうかの判断に影響する情報を相手方に提供すべき信義則上の義務のことで、その違反は不法行為責任を生じることがあっても、後に結ばれた契約上の債務不履行責任は生じません。

受領遅滞(413条)と受領義務

受領遅滞とは、債務者が債務の本旨に従った履行の提供をしたのに、債権者が債務の履行を受けることを拒み、又は受けることができないことで、特定物の保存義務の軽減(413条1項)、増加した履行の費用の債権者負担(同条2項)、受領遅滞中の不能の債権者への帰責(413条の2第2項)という効果が生じます。

履行の強制(414条・直接強制・代替執行・間接強制・意思表示の擬制)

履行の強制とは、債務者が任意に債務を履行しないときに、債権者が民事執行法などの手続に従い、直接強制、代替執行、間接強制その他の方法で債務の内容を実現するよう裁判所に請求することで、債務の性質がこれを許さないときはできず、損害賠償の請求も妨げられません(414条)。

債権者代位権の要件(被保全債権・保全の必要性・被代位権利)

債権者代位権とは、債権者が自己の債権を保全するため必要があるときに、債務者に属する権利(被代位権利)を債務者に代わって行使できる権利のことで、債務者の一身に専属する権利と差押えを禁じられた権利は行使できず、被保全債権の期限が到来しない間は保存行為しかできません(423条)。

債権者代位権の行使と効果(423条の2〜423条の6)

債権者代位権の行使とは、債権者が自己の名で、債務者に属する権利(被代位権利)を相手方(第三債務者)に対して行使することで、目的が可分なら自己の債権の額の限度でしか行使できず(423条の2)、金銭の支払や動産の引渡しは自己に対してするよう求めることができます(423条の3)。代位行使の後も債務者は被代位権利を処分でき(423条の5)、相手方は債務者に対する抗弁を債権者に対抗できます(423条の4)。

債権者代位権の転用(423条の7・登記請求権・妨害排除請求権)

債権者代位権の転用とは、債務者の責任財産を保全するという本来の目的を離れて、登記請求権や賃借権のような特定の債権を実現するために債権者代位権を使うことで、債務者の無資力は要件になりません。登記請求権の代位は423条の7で明文化され、賃借人による妨害排除請求権の代位や抵当権者による代位は判例で認められています。

詐害行為取消権の要件と類型別の特則(424条〜424条の4)

詐害行為取消権とは、債務者が債権者を害することを知ってした財産権を目的とする行為の取消しを、債権者が裁判所に請求できる権利のことで、被保全債権は詐害行為の前の原因に基づいて生じたもので強制執行により実現できるものでなければならず、受益者が行為の時に債権者を害することを知らなかったときは取り消せません(424条)。相当の対価を得た処分・偏頗行為・過大な代物弁済には要件の特則があります(424条の2〜424条の4)。

詐害行為取消権の行使と効果(424条の5〜426条)

詐害行為取消権の行使とは、債権者が受益者又は転得者を被告とする訴えによって、債務者がした行為の取消しとその行為で移転した財産の返還(返還が困難なら価額の償還)を請求することで、転得者に対しては取得の時の悪意が必要です(424条の5〜424条の9)。取消しの効果とは、認容判決が債務者とその全ての債権者に効力を及ぼし(425条)、受益者・転得者の反対給付の返還などで調整されることをいいます(425条の2〜425条の4)。

多数当事者の債権債務・保証・債権譲渡・債務引受

15語

多数当事者の債権債務の類型(分割・不可分・連帯・不真正連帯)

多数当事者の債権債務の類型とは、債権者又は債務者が数人いる場合の関係を、別段の意思表示がない限り等しい割合で分かれる分割債権・分割債務(427条)、給付の目的が性質上不可分な不可分債権・不可分債務(428条・430条)、法令の規定又は当事者の意思表示によって各自が全部について権利を有し又は責任を負う連帯債権・連帯債務(432条・436条)に分けた区別です。

連帯債務の影響関係(絶対的効力と相対的効力、437条〜441条)

連帯債務とは、性質上可分な給付について、法令の規定又は当事者の意思表示によって数人の債務者が各自全部の履行をする義務を負い、一人が弁済すれば全員の債務が消滅する債務です(436条)。連帯債務者の一人に生じた事由は、更改・相殺・混同を除き、他の連帯債務者に効力を生じないのが原則です(441条)。

連帯債務者間の求償(442条〜445条)

連帯債務者間の求償とは、連帯債務者の一人が弁済その他自己の財産をもって共同の免責を得たときに、その額が自己の負担部分を超えるかどうかにかかわらず、他の連帯債務者に対して各自の負担部分に応じた額の償還を求めることです(442条1項)。

連帯債権・不可分債権・不可分債務(428条〜435条の2)

連帯債権とは、性質上可分な給付について、法令の規定又は当事者の意思表示によって数人の債権者が各自全ての債権者のために全部の履行を請求できる債権です(432条)。不可分債権・不可分債務とは、給付の目的が性質上不可分なために数人の債権者又は債務者の間で分割できない債権・債務で、連帯債権・連帯債務の規定が一部を除いて準用されます(428条・430条)。

保証債務の成立と性質(446条〜449条・付従性・随伴性・補充性)

保証債務とは、主たる債務者がその債務を履行しないときに保証人がその履行をする責任を負う債務で、債権者と保証人の間の書面による保証契約で成立し(446条)、主たる債務に従う付従性、債権の移転に伴う随伴性、まず主たる債務者に請求させる補充性を持つ債務です。

保証人の抗弁と主債務者との影響関係(452条・453条・457条・458条)

保証人の抗弁とは、債権者から履行を請求された保証人が主張できる防御で、催告の抗弁・検索の抗弁(452条・453条)と、主たる債務者の抗弁の援用・相殺権等による履行拒絶(457条2項・3項)があります。主たる債務者に生じた事由は原則として保証人に及び、保証人に生じた事由は原則として主たる債務者に及びません。

保証人の求償(459条〜465条)と物上保証人

保証人の求償とは、保証人が債務の消滅行為をしたときに主たる債務者に償還を求めることで、委託を受けた保証人は支出額と法定利息等を求償でき、委託を受けない保証人は主たる債務者が当時利益を受けた限度、意思に反する保証人は現に利益を受けている限度で求償できます(459条〜462条)。

根保証と継続的保証(465条の2〜465条の5・身元保証・賃借人の保証)

根保証とは、一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証で、保証人が法人でない個人根保証契約は、極度額を書面で定めなければ効力を生じず、元本確定事由が生じるとその時の元本とそれに従たるものだけを極度額の範囲で保証します(465条の2〜465条の4)。賃借人の債務の保証や身元保証のような継続的保証も根保証に当たります。

保証人保護の情報提供義務と保証意思宣明公正証書(458条の2・458条の3・465条の6・465条の10)

保証人保護の情報提供義務とは、事業のための債務の保証を委託する主たる債務者の契約締結時の情報提供(465条の10)、委託を受けた保証人の請求に応じた債権者の履行状況の情報提供(458条の2)、主たる債務者が期限の利益を喪失したときの債権者の通知(458条の3)をいいます。保証意思宣明公正証書とは、事業のための貸金等債務を個人が保証する前1か月以内に作成し、保証債務を履行する意思を表示する公正証書です(465条の6)。

債権譲渡の自由と譲渡制限の意思表示(466条〜466条の5)

債権譲渡とは、債権の同一性を保ったまま契約によって債権を移転することで、債権は原則として自由に譲渡できます(466条1項)。譲渡制限の意思表示とは、当事者が債権の譲渡を禁止し又は制限する意思表示で、これがあっても譲渡は有効ですが、債務者は悪意又は重大な過失のある譲受人に履行を拒めます(466条2項・3項)。

将来債権の譲渡(466条の6)

将来債権の譲渡とは、意思表示の時にまだ発生していない債権を譲渡することで、その時に債権が現に発生していることは要らず、譲受人は債権が発生した時に当然に取得します(466条の6第1項・2項)。

債権譲渡の対抗要件と二重譲渡の優劣(467条・債権譲渡登記)

債権譲渡の対抗要件とは、譲受人が債権の取得を債務者その他の第三者に主張するための要件で、債務者に対しては譲渡人の通知又は債務者の承諾、債務者以外の第三者に対しては確定日付のある証書による通知又は承諾が必要です(467条)。二重譲渡の優劣は、確定日付のある通知が債務者に到達した日時の先後で決まります。

債権譲渡と債務者の抗弁(468条・異議をとどめない承諾の廃止)

債権譲渡と債務者の抗弁とは、債権が譲渡されても、債務者が対抗要件具備時までに譲渡人に対して生じた事由をもって譲受人に対抗できることです(468条1項)。改正前の異議をとどめない承諾による抗弁の切断は廃止されました。

併存的債務引受(470条・471条)

併存的債務引受とは、引受人が債務者と連帯して、債務者が債権者に対して負担する債務と同一の内容の債務を負担し、債務者の債務もそのまま存続する債務の引受けです(470条1項)。債権者と引受人となる者の契約で債務者の意思に反してもでき、債務者と引受人となる者の契約なら債権者の承諾の時に効力を生じます。

免責的債務引受(472条〜472条の4)

免責的債務引受とは、引受人が債務者の債務と同一の内容の債務を負担し、債務者は自己の債務を免れる債務の引受けです(472条1項)。債権者と引受人となる者の契約なら債権者が債務者に通知した時に、債務者と引受人となる者の契約なら債権者の承諾によって効力を生じます。

債権の消滅

16語

弁済の提供と弁済の場所・費用・受取証書(484条〜487条・492条・493条)

弁済の提供とは、債務者が給付の実現に必要な準備をして債権者に受領を求めることで、債務の本旨に従って現実にするのが原則ですが、債権者があらかじめ受領を拒み、又は債務の履行について債権者の行為を要するときは、弁済の準備をしたことを通知してその受領の催告をすれば足ります(493条)。

第三者弁済(474条)

第三者弁済とは、債務者以外の第三者が他人の債務を弁済することで、債務の性質が許さないときや当事者が禁止・制限したときを除いて認められますが、弁済をするについて正当な利益を有する者でない第三者は、債務者の意思又は債権者の意思に反して弁済することができません(474条)。

受領権者としての外観を有する者に対する弁済(478条〜481条)

受領権者としての外観を有する者に対する弁済とは、債権者や受領権限を与えられた者ではないのに、取引上の社会通念に照らして受領権者らしく見える者にした弁済のことで、弁済者が善意であり、かつ、過失がなかったときに限り有効になります(478条)。

弁済の充当(488条〜491条)

弁済の充当とは、債務者の給付が債務の全部を消滅させるのに足りないときに、その給付をどの債務又はどの部分に当てるかを決めることで、合意があればそれにより、なければ弁済者・受領者の指定、それもなければ法定の順序によりますが、元本・利息・費用の間は合意がない限り費用、利息、元本の順になります(488条〜490条)。

代物弁済(482条)

代物弁済とは、弁済者が債権者との間で、債務者の負担した給付に代えて他の給付をすることにより債務を消滅させる旨の契約をし、その他の給付をすることで、その給付は弁済と同一の効力を有します(482条)。

預金・預貯金債権をめぐる判例の横断(誤振込み・払戻し・取引経過の開示・遺産分割)

預貯金債権とは、預金口座又は貯金口座に係る預金又は貯金に係る債権のことで(466条の5第1項)、預金契約は消費寄託の性質を持ちますが、誤振込み・口座への払込みによる弁済・譲渡制限・相続について預金に特有の規律と判例があります。

弁済による代位の要件と効果(499条〜501条・原債権と求償権)

弁済による代位とは、債務者のために弁済をした者が、債務者に対する求償権の範囲内で、債権者が有していた債権の効力及び担保としての一切の権利を行使できることです(499条・501条)。

代位者相互の関係・一部代位・担保保存義務(501条3項・502条・504条)

代位者相互の関係とは、保証人・物上保証人・第三取得者など代位できる者が複数いるときに、誰が誰にどの割合で代位できるかの規律で、あわせて一部代位(502条)と債権者の担保保存義務(504条)が定められています(501条3項)。

弁済供託(494条〜498条)

弁済供託とは、弁済者が、債権者の受領拒絶・受領不能又は過失なく債権者を確知できないことを理由に、債権者のために弁済の目的物を供託所に供託することで、供託をした時に債権は消滅します(494条)。

相殺の要件と方法(505条・506条・508条)

相殺とは、二人が互いに同種の目的を有する債務を負担し、双方の債務が弁済期にあるときに、一方の意思表示によって対当額で双方の債務を消滅させることで、その効力は相殺に適するようになった時にさかのぼります(505条・506条)。

相殺の禁止(509条〜510条・505条2項)

相殺の禁止とは、相殺適状にあっても相殺が許されない場合のことで、悪意による不法行為や人の生命・身体の侵害による損害賠償債務を受働債権とする相殺(509条)、差押禁止債権を受働債権とする相殺(510条)、当事者が禁止・制限した相殺(505条2項)などがあります。

差押えと相殺(511条)

差押えと相殺とは、差し押さえられた債権の第三債務者が、差押債務者に対する自分の債権で相殺して差押債権者に対抗できるかの問題で、差押え前に取得した債権なら対抗でき、差押え後に取得した債権でも差押え前の原因に基づくものなら対抗できます(511条)。

債権譲渡と相殺(469条)

債権譲渡と相殺とは、譲渡された債権の債務者が譲渡人に対する債権で相殺して譲受人に対抗できるかの問題で、対抗要件具備時より前に取得した債権、又はそれより前の原因や譲渡された債権と同じ契約に基づいて生じた債権なら対抗できます(469条)。

更改(513条〜518条)

更改とは、当事者が従前の債務に代えて、給付の内容について重要な変更をするもの、債務者が第三者と交替するもの、又は債権者が第三者と交替するものである新たな債務を発生させる契約をすることで、従前の債務は消滅します(513条)。

免除(519条)

免除とは、債権者が債務者に対して債務を免除する意思を表示することで、債権者の単独行為として債権を消滅させます(519条)。

債権の混同(520条)

債権の混同とは、債権と債務が同一人に帰属することで、その債権は消滅しますが、その債権が第三者の権利の目的であるときは消滅しません(520条)。

契約総論

12語

契約の成立(申込みと承諾・到達主義・意思実現)

契約の成立とは、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(申込み)に対して相手方が承諾をしたときに、契約が効力を持つ合意として成り立つことです。法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式は要りません(522条)。

申込みの撤回・失効と申込者の死亡(523条〜526条)

申込みの撤回とは、申込者が自分のした申込みを将来に向かってなかったことにすることで、承諾期間を定めた申込みは撤回できず、期間を定めない申込みも承諾の通知を受けるのに相当な期間を経過するまでは撤回できません(523条1項・525条1項)。申込みの失効とは、承諾期間の経過などにより申込みが効力を失うことです。

定型約款(548条の2〜548条の4)

定型約款とは、定型取引(ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引で、内容の全部又は一部が画一的であることがその双方にとって合理的なもの)において、契約の内容とすることを目的としてその特定の者により準備された条項の総体です(548条の2第1項)。

同時履行の抗弁権の成否(533条・肯定例と否定例の一覧)

同時履行の抗弁権とは、双務契約の当事者の一方が、相手方がその債務の履行(債務の履行に代わる損害賠償の債務の履行を含む)を提供するまで、自己の債務の履行を拒むことができる権利です(533条)。相手方の債務が弁済期にないときは主張できません。

同時履行の抗弁権の効果(存在効果・提供の継続・引換給付判決)と留置権との比較

同時履行の抗弁権の効果とは、同時履行の抗弁権が付いている債務について、履行期を過ぎても履行遅滞の責任を負わず(存在効果)、訴訟で主張されれば反対給付と引換えに給付を命じる引換給付判決がされることなど、この抗弁権が生じさせる法律上の働きです。

危険負担(536条・履行拒絶権としての構成)

危険負担とは、双務契約の一方の債務が当事者双方の責めに帰することができない事由によって履行できなくなった場合に、その債務の債権者が反対給付の履行を拒むことができるかという問題で、民法は債権者に反対給付の履行を拒む権利を与えています(536条1項)。

解除の要件(催告解除・無催告解除・軽微な不履行・帰責事由不要)

解除の要件とは、債務不履行を理由に契約を解除するために満たすべき条件で、催告による解除(541条)は相当の期間を定めた催告と期間内の不履行を、催告によらない解除(542条)は履行不能や明確な履行拒絶などを要件とし、どちらも債務者の帰責事由を要しません。

解除権の行使と消滅(540条・544条・547条・548条)

解除権の行使とは、契約又は法律の規定により解除権を有する当事者が、相手方に対する意思表示によって契約を解除することで、その意思表示は撤回できません(540条)。解除権の消滅とは、相手方の催告に対する不確答(547条)や解除権者による目的物の著しい損傷(548条)などによって解除権が失われることです。

解除の効果(545条・原状回復・使用利益・利息・損害賠償)

解除の効果とは、解除権の行使によって生じる法律効果で、契約は遡って消滅し、各当事者は相手方を原状に復させる義務を負い、金銭には受領の時からの利息を、物には受領の時以後の果実を付けて返還し、なお損害があれば賠償を請求できることです(545条)。

第三者のためにする契約と契約上の地位の移転(537条〜539条の2)

第三者のためにする契約とは、契約により当事者の一方(債務者)が第三者に対してある給付をすることを約し、その第三者が債務者に対して直接にその給付を請求する権利を取得する契約です(537条1項)。契約上の地位の移転とは、契約の当事者の一方が第三者との合意で契約上の地位を譲渡し、相手方の承諾によってその地位が第三者に移ることです(539条の2)。

書面・方式を要する契約と要物契約の一覧(横断)

要物契約とは、合意に加えて目的物の引渡しがあって初めて成立する契約で、現行民法では書面によらない消費貸借がこれに当たります(587条)。書面・方式を要する契約とは、保証契約や書面でする消費貸借のように、法律が書面(電磁的記録を含む)や公正証書でしなければ効力を生じないと定めた契約です。

契約類型別の終了・任意解除・報酬の比較(貸借型・役務提供型の横断)

任意解除とは、債務不履行がなくても当事者の一方がいつでも契約を終わらせることができることで、委任の各当事者(651条)や請負の注文者(641条)に認められます。契約類型別の比較とは、使用貸借・賃貸借・消費貸借・雇用・請負・委任・寄託・組合について、当事者の死亡による終了、期間の定めのない場合の終了、任意解除、報酬の支払時期と中途終了の報酬を並べて整理するものです。

契約各論

29語

書面によらない贈与の解除(550条)

書面によらない贈与とは、贈与の意思が書面に表されていない贈与のことで、各当事者が解除をすることができますが、履行の終わった部分については解除することができません(550条)。

贈与の効力(551条〜554条・負担付贈与・定期贈与・死因贈与)

贈与の効力とは、贈与者が負う引渡義務の内容と特殊な贈与の扱いのことで、贈与者は目的物を特定した時の状態で引き渡すことを約したものと推定され(551条1項)、負担付贈与・定期贈与・死因贈与にはそれぞれ特則があります(551条2項・552条〜554条)。

他人物売買(561条)

他人物売買とは、他人の権利(権利の一部が他人に属する場合のその一部を含みます)を売買の目的とする売買で、契約は有効に成立し、売主はその権利を取得して買主に移転する義務を負います(561条)。

契約不適合責任の救済手段(562条〜564条・追完・代金減額・損害賠償・解除)

契約不適合責任とは、引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないときに売主が負う責任で、買主は追完請求・代金減額請求・損害賠償請求・解除をすることができます(562条〜564条)。

契約不適合責任の期間制限と特則(566条・568条・572条・数量超過)

契約不適合責任の期間制限とは、種類又は品質の不適合について、買主が不適合を知った時から1年以内に売主に通知しなければ責任を追及できなくなる制限のことで(566条)、競売の特則(568条)と免責特約の制限(572条)が付随します。

手付(557条・解約手付と履行の着手)

手付とは、契約の締結の際に当事者の一方から相手方に交付される金銭で、売買では解約手付と推定され、買主は手付を放棄し、売主は倍額を現実に提供して、相手方が履行に着手するまで契約を解除することができます(557条1項)。

売買の付随規定と買戻し(573条〜581条)

売買の付随規定とは、代金の支払期限・支払場所、果実と代金の利息の帰属、代金の支払拒絶といった売買に付随する事項を定めた規定のことで(573条〜578条)、買戻しとは、不動産の売主が売買契約と同時にした特約により代金と契約の費用を返還して売買を解除することです(579条〜581条)。

危険の移転(567条)と売買の受領遅滞

危険の移転とは、売買の目的物が当事者双方の責めに帰することができない事由で滅失・損傷した場合の損失が、目的物の引渡し(又は契約に適合する物の提供に対する受領拒絶)の時から売主から買主に移ることで、その後は買主は代金の支払を拒めません(567条)。

消費貸借と準消費貸借(587条〜592条)

消費貸借とは、借主が種類、品質及び数量の同じ物をもって返還することを約して貸主から金銭その他の物を受け取る契約で(587条。書面でするときは合意だけで成立します。587条の2)、準消費貸借とは、既存の金銭その他の物を給付する義務を消費貸借の目的とする契約です(588条)。

使用貸借(593条〜600条)

使用貸借とは、当事者の一方がある物を引き渡すことを約し、相手方がその物を無償で使用及び収益をして契約が終了したときに返還することを約する契約です(593条)。

賃貸借の存続期間・更新・終了と原状回復(民法601条〜622条)

賃貸借の存続期間とは、賃貸借が続く期間のことで、50年を超えることができず(604条)、期間の定めの有無に応じて期間満了・黙示の更新・解約申入れによって終了し、終了時に賃借人は通常損耗を除く損傷を原状に復します(617条〜621条)。

賃貸人の修繕義務・賃料減額と賃借人の費用償還(606条〜611条)

賃貸人の修繕義務とは、賃貸人が負う賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務で(606条1項)、これに対応して、賃借人には必要費・有益費の償還請求権(608条)があり、賃借物の一部が使えなくなれば賃料が減額されます(611条)。

賃借権の対抗力・妨害排除と賃貸人の地位の移転(605条〜605条の4)

賃借権の対抗力とは、不動産賃借権を登記その他の対抗要件によって、その不動産を取得した第三者に主張できる効力のことで(605条、借地借家法10条・31条)、対抗要件を備えた賃借権の目的不動産が譲渡されると、賃貸人たる地位は当然に譲受人に移転します(605条の2)。

無断譲渡・転貸と信頼関係破壊の法理(612条)

無断譲渡・転貸とは、賃借人が賃貸人の承諾を得ずに賃借権を譲渡し、又は賃借物を転貸することで、賃借人が第三者に使用収益させれば賃貸人は解除できますが(612条)、背信的行為と認めるに足りない特段の事情があれば解除できません(信頼関係破壊の法理)。

適法な転貸の効果(613条・合意解除と債務不履行解除)

適法な転貸とは、賃貸人の承諾を得てする転貸のことで、転借人は賃借人の債務の範囲を限度として賃貸人に直接義務を負い(613条1項)、賃貸人は原賃貸借の合意解除を転借人に対抗できません(613条3項)。

敷金(622条の2)

敷金とは、いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の金銭債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭です(622条の2第1項)。賃貸人は、賃貸借が終了し賃貸物の返還を受けたとき、又は賃借人が適法に賃借権を譲り渡したときに、債務の額を控除した残額を返還しなければなりません。

借地権(借地借家法:存続期間・更新・対抗力・建物買取請求・定期借地)

借地権とは、建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権です(借地借家法2条1号)。借地借家法は、存続期間を30年以上とし、正当の事由がなければ更新を拒めないものとし、借地上の登記した建物による対抗力と建物買取請求権を認めて借地権者を保護しています。

借家権(借地借家法:更新・解約申入れ・正当事由・定期建物賃貸借・造作買取・居住権の承継)

借家権とは、借地借家法の適用を受ける建物の賃借権です。借地借家法は、賃貸人の更新拒絶と解約申入れに正当の事由を要求し、期間の定めのある賃貸借が法定更新されると期間の定めのないものになるとし、更新のない定期建物賃貸借は書面による契約と事前の説明を条件に認めています。

請負の報酬と仕事の完成・注文者の解除(632条〜634条・641条・642条)

請負とは、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対して報酬を支払うことを約する契約です(632条)。報酬は目的物の引渡しと同時に支払い(633条)、注文者は仕事の完成前ならいつでも損害を賠償して解除できます(641条)。

請負人の契約不適合責任(636条・637条・559条準用)

請負人の契約不適合責任とは、引き渡した仕事の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないときに、売買の規定の準用(559条)により請負人が負う追完・報酬減額・損害賠償・解除の責任です。注文者の材料や指図による不適合は除かれ(636条)、注文者は不適合を知った時から1年以内に通知しなければなりません(637条)。

完成建物の所有権の帰属(請負)

完成建物の所有権の帰属とは、建物の建築請負で完成した建物の所有権が注文者と請負人のどちらに原始的に帰属するかの問題です。判例は、特約がなければ材料の提供者を基準にし、請負人が材料を提供したときは請負人が原始取得して引渡しで注文者に移るとしつつ、注文者が代金の大半を支払っていれば完成と同時に注文者に帰属するとしています。

委任の受任者の義務(644条〜647条)

委任の受任者の義務とは、委任事務を処理する受任者が委任者に対して負う義務です。受任者は、無償でも善良な管理者の注意をもって事務を処理し(644条)、許諾かやむを得ない事由がなければ復受任者を選任できず(644条の2)、報告義務(645条)と受取物の引渡し・権利の移転義務(646条)を負います。

委任者の義務(648条〜650条・報酬・費用・代弁済・損害賠償)

委任者の義務とは、委任者が受任者に対して負う報酬・費用・損害についての義務です。報酬は特約がある場合に限られ後払いが原則ですが(648条)、費用の前払(649条)、必要な費用と利息の償還・代弁済・担保の供与(650条1項・2項)、受任者が過失なく受けた損害の賠償(650条3項)は、特約がなくても負います。

委任の解除と終了(651条〜656条)

委任の解除とは、委任の各当事者がいつでもすることができる解除です(651条1項)。相手方に不利な時期の解除や受任者の利益をも目的とする委任の解除は、やむを得ない事由がなければ損害賠償が必要です(同条2項)。委任は当事者の死亡・破産手続開始の決定と受任者の後見開始の審判で終了します(653条)。

寄託(657条〜666条・保管義務・返還・混合寄託・消費寄託)

寄託とは、当事者の一方がある物を保管することを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって効力を生ずる諾成契約です(657条)。無報酬の受寄者は自己の財産に対するのと同一の注意で保管し(659条)、寄託者は返還時期の定めがあってもいつでも返還を請求できます(662条1項)。

組合の業務執行と組合員の変動(667条〜683条・脱退・加入・解散)

組合の業務執行とは、民法上の組合の業務を決定し執行することです。組合の業務は組合員の過半数で決定し各組合員が執行しますが、業務執行者を置けば業務執行者が決定・執行します(670条)。組合員は、やむを得ない事由による脱退のほか、死亡・破産手続開始の決定・後見開始の審判・除名によって脱退します(678条・679条)。

組合財産と組合債務(675条〜677条・債権者の権利行使・団体の比較)

組合財産とは、各組合員の出資その他の組合の財産で、総組合員の共有に属します(668条)。組合員は持分の処分を組合と取引の相手方に対抗できず、清算前に分割を求められません(676条)。組合の債権者は組合財産と各組合員に権利を行使できますが(675条)、組合員の債権者は組合財産に権利を行使できません(677条)。

和解(695条・696条)

和解とは、当事者が互いに譲歩をしてその間に存する争いをやめることを約する契約です(695条)。争いの目的とした事項は、後に真実が判明しても和解の確定効により覆りません(696条)。

費用償還の一覧(必要費・有益費の横断)

費用償還の一覧とは、他人の物や事務について支出した必要費・有益費を誰がどの範囲で償還するかを、占有者・賃借人・使用借主・留置権者・第三取得者・受任者・事務管理者などの立場ごとに並べた整理です。必要費は原則として償還されますが、物を使い果実を得る立場の者は通常の必要費を負担し、有益費は価格の増加が現存する限り償還する側の選択で支出額か増価額を償還します。

事務管理・不当利得・不法行為

17語

事務管理の成立と管理者の義務(697条〜701条)

事務管理とは、義務なく他人のためにその事務の管理を始めることで、管理者は、事務の性質に従い最も本人の利益に適合する方法で、本人の意思を知り又は推知できるときはその意思に従って管理し、開始の通知・継続・報告などの義務を負います(697条〜701条)。

事務管理の効果(702条・費用償還・代弁済・報酬と損害賠償の否定・本人名義の法律行為)

事務管理の効果とは、事務管理が成立したときに本人と管理者の間に生じる権利義務のことで、管理者は本人のために有益な費用の償還と有益な債務の代わりの弁済を請求でき、本人の意思に反する管理ではそれが本人の現に受けている利益の限度に限られますが、報酬や損害の賠償は請求できず、本人の名でした法律行為の効果も本人には帰属しません(702条)。

不当利得の要件と効果(703条・704条・受益者の善意悪意・現存利益)

不当利得とは、法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼすことで、受益者は、善意ならその利益の存する限度で、悪意なら受けた利益に利息を付して返還し、なお損害があれば賠償する義務を負います(703条・704条)。

騙取金・横領金による弁済と不当利得

騙取金・横領金による弁済と不当利得とは、債務者が第三者から騙取又は横領した金銭で自己の債権者に弁済した場合に、被害者が弁済を受けた債権者に不当利得の返還を請求できるかの問題で、判例は、社会通念上被害者の金銭で債権者の利益を図ったと認められる連結があり、債権者が受領につき悪意又は重大な過失があるときに不当利得になるとしています。

転用物訴権

転用物訴権とは、契約に基づいて給付をした者が、契約の相手方の無資力で対価を回収できないときに、その給付で利益を受けた第三者に不当利得の返還を請求することで、判例は、建物所有者が賃貸借契約を全体としてみて対価関係なしに利益を受けたときに限って認めています。

非債弁済・期限前の弁済・他人の債務の弁済(705条〜707条)

非債弁済とは、債務が存在しないのに弁済として給付することで、債務の存在しないことを知っていた者は返還を請求できず(705条)、期限前の弁済は返還を請求できずに錯誤なら債権者が得た利益の返還にとどまり(706条)、他人の債務を錯誤で弁済した者は債権者が善意で証書の滅失・担保の放棄・時効による債権の喪失をしたときは返還を請求できません(707条)。

不法原因給付(708条)

不法原因給付とは、公序良俗に反するなど不法な原因のためにされた給付のことで、給付をした者はその返還を請求できませんが、不法な原因が受益者についてのみあるときは返還を請求できます(708条)。

一般不法行為の要件(709条・712条・713条・720条)

一般不法行為とは、故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害し、これによって損害を生じさせることで、加害者は損害を賠償する責任を負いますが、責任能力がない場合や正当防衛・緊急避難に当たる場合は責任を負いません(709条・712条・713条・720条)。

名誉毀損・プライバシーと救済方法(710条・723条)

名誉毀損とは、人の品性・徳行・名声・信用などについて社会から受ける客観的評価を低下させることで、被害者は財産以外の損害の賠償(710条)に加えて名誉を回復するのに適当な処分(723条)を求められますが、プライバシーの侵害には723条の処分は使えません。

損害と損害賠償請求権者(慰謝料の相続・近親者の慰謝料・胎児・逸失利益)

損害賠償請求権者とは、不法行為による損害の賠償を請求できる者のことで、被害者本人の慰謝料請求権は死亡すれば当然に相続され、生命侵害の場合は被害者の父母・配偶者・子も固有の慰謝料を請求でき(711条)、胎児は損害賠償の請求権については既に生まれたものとみなされます(721条)。

過失相殺・素因・損益相殺(722条2項)

過失相殺とは、被害者に過失があるときに裁判所がこれを考慮して損害賠償の額を定めることで(722条2項)、判例はこれを被害者側の過失や被害者の素因(心因的要因・疾患)にも類推して広げ、損益相殺とは、被害者が不法行為と同じ原因で得た利益を賠償額から差し引く調整のことです。

不法行為の損害賠償請求権の期間制限と遅延損害金(724条・724条の2)

不法行為の損害賠償請求権の期間制限とは、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年(人の生命・身体の侵害は5年)、不法行為の時から20年行使しないと、損害賠償請求権が時効によって消滅することです(724条・724条の2)。

責任無能力者の監督義務者等の責任(714条)

責任無能力者の監督義務者等の責任とは、未成年者や精神上の障害のある者が責任能力を欠いて賠償責任を負わない場合に、その者を監督する法定の義務を負う者や代理監督者が負う損害賠償責任のことで、監督義務を怠らなかったこと又は怠らなくても損害が生ずべきであったことを証明すれば免責されます(714条)。

使用者責任と求償(715条・失火責任法との関係)

使用者責任とは、ある事業のために他人を使用する者が、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任のことで、使用者が選任・監督に相当の注意をしたこと等を証明すれば免責され、賠償した使用者は被用者に求償できます(715条)。

工作物責任と動物占有者の責任(717条・718条)

工作物責任とは、土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害が生じたときに、まず占有者が、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは所有者が負う損害賠償責任のことで(717条)、動物の占有者は相当の注意で管理したことを証明しない限り動物が加えた損害を賠償します(718条)。

共同不法行為(719条)と求償・影響関係

共同不法行為とは、数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えることで、各自が連帯して損害の全額を賠償する責任を負い、加害者が誰か分からないときや教唆・幇助をした者も同じ責任を負います(719条)。

債務不履行責任と不法行為責任の比較(横断)

債務不履行責任と不法行為責任の比較とは、同じ損害について契約上の債務の不履行(415条)と不法行為(709条)のどちらで賠償を求めるかによって変わる、立証責任・遅滞の時期・近親者の慰謝料・過失相殺・相殺の禁止・時効などの違いを並べた整理です。

親族・相続

28語

親族の範囲・親等と姻族関係の終了(725条〜730条)

親族の範囲とは、民法上の親族を六親等内の血族・配偶者・三親等内の姻族とする定めで(725条)、親等は世代数を数えて定め(726条)、姻族関係は離婚によって当然に終了し、夫婦の一方の死亡のときは生存配偶者が終了させる意思を表示したときに終了します(728条)。

婚姻の成立(婚姻意思・婚姻障害・無効と取消し)

婚姻の成立とは、当事者間に婚姻をする意思があり、婚姻障害(731条・732条・734条〜736条)がなく、戸籍法の定めるところにより届け出ることで婚姻が効力を生ずることで(739条1項)、婚姻をする意思がないときや届出をしないときは無効(742条)、婚姻障害に違反した婚姻や詐欺・強迫による婚姻は家庭裁判所に請求して取り消すことができ、その取消しは将来に向かってのみ効力を生じます(743条〜748条)。

婚姻の効力と夫婦財産制(750条〜762条・日常家事債務・夫婦間の時効)

婚姻の効力とは、婚姻によって夫婦の間に生じる効果で、夫婦の氏(750条)・同居協力扶助の義務(752条)・夫婦間の権利の時効の完成猶予(159条)などがあり、夫婦財産制とは、夫婦財産契約(755条〜759条)がないときの法定財産制として、婚姻費用の分担(760条)・日常の家事に関する債務の連帯責任(761条)・別産制と共有の推定(762条)を定めるものです。

離婚の成立と離婚意思(763条〜771条)

離婚の成立とは、夫婦が協議で離婚意思を合致させて戸籍法の届出をすること(協議上の離婚。763条・764条・739条1項)、又は770条1項の離婚原因に基づく離婚請求を認容する判決が確定すること(裁判上の離婚)によって、婚姻が解消されることです。

離婚の効果(復氏・婚氏続称・子の監護・親子交流・養育費・子の氏の変更)

離婚の効果とは、離婚によって生じる身分上・財産上の効果で、婚姻によって氏を改めた者の当然の復氏と婚氏続称(767条)、子の監護をすべき者・親子の交流・監護費用の分担の定め(766条〜766条の3)、親権者の定め(819条)、財産分与(768条)などがあり、子が父母の嫡出子である身分や親子間の扶養・相続の関係は離婚によって変わりません。

財産分与(768条)

財産分与とは、離婚をした者の一方が相手方に対して財産の分与を請求することで(768条1項・771条)、協議が調わなければ離婚の時から5年以内に家庭裁判所に協議に代わる処分を請求でき、家庭裁判所は婚姻中の財産の取得・維持への寄与の程度その他一切の事情を考慮して分与の可否・額・方法を定めます(同条2項・3項)。

内縁(準婚理論・不当破棄・死亡解消・居住権・扶養利益)

内縁とは、婚姻の届出をしていないが、男女が相協力して夫婦としての共同生活を営む結合のことで、判例は婚姻に準ずる関係(準婚関係)として、夫婦の共同生活の実体に基づく規定(760条・761条など)を類推し、不当な破棄に損害賠償を認めますが、届出を前提とする配偶者の相続権や嫡出推定は認めません。

嫡出推定と嫡出否認(772条〜778条の4・令和4年改正)

嫡出推定とは、妻が婚姻中に懐胎した子と、婚姻前に懐胎し婚姻成立後に生まれた子を、当該婚姻における夫の子と推定することで(772条1項)、嫡出否認とは、この推定を受ける子について、父・子・母・前夫が出訴期間内に嫡出否認の訴えによって父子関係を否定することです(774条〜778条の4)。

推定の及ばない子・親子関係不存在確認と生殖補助医療

推定の及ばない子とは、772条の要件を形式的には満たすものの、妻が夫の子を懐胎することが外観上明白に不可能な時期に懐胎したため嫡出推定が及ばない子のことで、その父子関係は、嫡出否認の訴えではなく、確認の利益がある限り誰でもいつでも提起できる親子関係不存在確認の訴えで争います。

認知(779条〜789条)

認知とは、嫡出でない子について、父又は母が戸籍法の届出又は遺言によって法律上の親子関係を生じさせることで(779条・781条)、出生の時に遡って効力を生じ(784条)、父が認知しないときは子・その直系卑属・これらの者の法定代理人が認知の訴えを提起でき(787条)、認知が事実に反するときは子・認知をした者・子の母などが7年以内に認知の無効の訴えを提起できます(786条)。

普通養子縁組(792条〜817条・要件・効果・離縁)

普通養子縁組とは、縁組の意思を持つ当事者が届出をすることで、養子が縁組の日から養親の嫡出子の身分を取得し(809条)、実方との親族関係も存続する縁組のことで、養親は20歳以上(792条)、未成年者を養子とするには原則として家庭裁判所の許可が要り(798条)、離縁は協議・裁判などによってできます(811条以下)。

特別養子(817条の2〜817条の11)

特別養子とは、家庭裁判所が養親となる者の請求により、817条の3から817条の7までの要件があるときに審判で成立させる、実方の父母及びその血族との親族関係が終了する縁組のことで(817条の2・817条の9)、離縁は養親による虐待等があり実父母が相当の監護をできる場合に、養子・実父母・検察官の請求によってだけ認められます(817条の10)。

親権者の決定・変更と親権の喪失・停止・辞任(818条〜819条・834条〜837条)

親権者の決定とは、誰が未成年の子の親権者になるかの定めで、父母の婚姻中は双方、子が養子なら養親(とその配偶者である父母)が親権者となり(818条)、離婚や認知の際は父母の協議又は裁判所が父母の双方又は一方を親権者と定め(819条1項〜5項)、家庭裁判所が子の利益のため親権者を変更し(同条6項)、親権の喪失・停止・管理権喪失の審判と辞任の許可をします(834条〜837条)。

親権の内容と利益相反行為(820条〜832条)

親権の内容とは、親権を行う者が子の利益のために持つ監護教育の権利義務(820条〜823条)と財産管理・代表の権限(824条〜832条)のことで、利益相反行為とは、親権を行う父又は母とその子との利益、又は親権に服する数人の子相互の利益が相反する行為をいい、親権者は子のために特別代理人の選任を家庭裁判所に請求しなければならず(826条)、親権者が自らした行為は無権代理になります。

後見の機関(未成年後見人・成年後見人・後見監督人の選任と職務)

後見の機関とは、被後見人の財産を管理し代表する後見人(未成年後見人・成年後見人)と、後見人の事務を監督する後見監督人のことで、未成年後見人は遺言による指定か請求による家庭裁判所の選任で、成年後見人は後見開始の審判の際に家庭裁判所の職権による選任で就任します(839条・840条・843条・849条)。

扶養(877条〜881条)

扶養とは、自力で生活できない親族の生活を他の親族が支えることで、直系血族と兄弟姉妹は当然に互いに扶養の義務を負い、3親等内の親族は特別の事情があるときに家庭裁判所の審判で扶養の義務を負わされます(877条)。

相続人(相続順位・代襲相続・同時死亡・胎児)

相続人とは、被相続人の財産上の権利義務を承継する者で、配偶者は常に相続人となり、子が第1順位、直系尊属が第2順位、兄弟姉妹が第3順位で配偶者と並び、子や兄弟姉妹が相続開始以前の死亡・欠格・廃除で相続権を失えばその子が代襲して相続人となります(887条・889条・890条)。

相続欠格と推定相続人の廃除(891条〜895条)

相続欠格とは、被相続人等を故意に死亡させようとして刑に処せられた者や遺言書を偽造・破棄した者など891条の事由に当たる者が当然に相続人となる資格を失うことで、推定相続人の廃除とは、被相続人を虐待するなどした遺留分を有する推定相続人の相続権を、被相続人の請求により家庭裁判所が奪うことです(891条・892条)。

相続分(法定相続分・指定相続分・特別受益・寄与分・特別寄与料・相続分の譲渡)

相続分とは、共同相続人が相続財産全体に対して持つ割合のことで、遺言で指定されなければ900条・901条の法定相続分により、特別受益(903条)と寄与分(904条の2)で調整した額を具体的相続分といいます。

相続財産の範囲と共同相続財産の帰属(896条〜899条・可分債権・預貯金・賃料・祭祀財産)

相続財産とは、相続人が相続開始の時から承継する被相続人の財産に属した一切の権利義務のことで、被相続人の一身に専属したものと祭祀財産は除かれ、相続人が数人あるときは共有に属し、可分の金銭債権・債務は相続分に応じて当然に分割されますが、預貯金債権と相続開始時の金銭は遺産分割の対象になります(896条〜899条)。

遺産分割(906条〜914条)

遺産分割とは、共同相続人の共有に属する相続財産を各相続人に分けて帰属させる手続で、共同相続人の協議により、協議が調わなければ家庭裁判所の審判によって行い、その効力は相続開始の時に遡りますが第三者の権利を害することはできません(906条〜909条)。

相続の承認と放棄(915条〜940条・熟慮期間・法定単純承認・限定承認)

相続の承認と放棄とは、相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月の熟慮期間内に、被相続人の権利義務を無限に承継する単純承認、相続財産の限度で債務を弁済する限定承認、初めから相続人とならなかったことになる相続放棄のいずれかを選ぶことです(915条・920条・922条・939条)。

相続人の不存在と特別縁故者(951条〜959条)

相続人の不存在とは、相続人のあることが明らかでない場合のことで、相続財産は法人となり、家庭裁判所が選任した相続財産清算人が清算をし、相続人が現れなければ、特別縁故者の請求により家庭裁判所が残った財産の全部又は一部を分与し、それでも残った財産は国庫に帰属します(951条〜959条)。

遺言の方式(960条〜984条)

遺言の方式とは、遺言が民法の定める方式に従わなければ効力を生じないとされる作成の決まりのことで、普通の方式として全文・日付・氏名を自書して押印する自筆証書遺言、証人2人以上の立会いの下で公証人に口授する公正証書遺言、封印した証書を公証人と証人の前に提出する秘密証書遺言があり、死亡の危急に迫った者などには特別の方式があります(960条・967条〜984条)。

遺言の効力・撤回と遺言執行者(985条〜1027条)

遺言の効力・撤回とは、遺言が遺言者の死亡の時から効力を生じ、遺言者はいつでも遺言の方式に従って撤回できることをいい、遺言執行者とは、遺言の内容を実現するため相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する者です(985条・1012条・1022条)。

遺贈と特定財産承継遺言(964条・986条〜1003条・1014条)

遺贈とは、遺言によって包括又は特定の名義で財産の全部又は一部を他人に無償で与えることで、特定財産承継遺言とは、遺産分割の方法の指定として遺産に属する特定の財産を共同相続人の一人又は数人に承継させる旨の遺言(いわゆる相続させる遺言)です(964条・1014条2項)。

遺留分(1042条〜1049条・算定・侵害額請求・放棄)

遺留分とは、兄弟姉妹以外の相続人に法律上保障された遺産の取り分で、直系尊属のみが相続人なら遺留分を算定するための財産の価額の3分の1、それ以外は2分の1に各自の法定相続分を乗じた額であり、遺贈や贈与で侵害された遺留分権利者は受遺者又は受贈者に遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求できます(1042条・1046条)。

配偶者居住権と配偶者短期居住権(1028条〜1041条)

配偶者居住権とは、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に居住していた配偶者が、遺産分割又は遺贈によって取得する、その建物の全部を原則として終身の間無償で使用及び収益をする権利で、配偶者短期居住権とは、無償で居住していた配偶者が遺産分割で帰属が確定するまで等の短い間その建物を無償で使用する権利です(1028条・1030条・1037条)。

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