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用語集 / 民法 / 非債弁済・期限前の弁済・他人の債務の弁済

非債弁済・期限前の弁済・他人の債務の弁済(705条〜707条)とは

ひさいべんさいきげんまえのべんさいたにんのさいむのべんさい

民法 事務管理・不当利得・不法行為

非債弁済とは、債務が存在しないのに弁済として給付することで、債務の存在しないことを知っていた者は返還を請求できず(705条)、期限前の弁済は返還を請求できずに錯誤なら債権者が得た利益の返還にとどまり(706条)、他人の債務を錯誤で弁済した者は債権者が善意で証書の滅失・担保の放棄・時効による債権の喪失をしたときは返還を請求できません(707条)。

ない借金を払ってしまった、期限前に払ってしまった、他人の借金を自分のものと思って払ってしまった、という場面では、払った人は本来、不当利得として取り戻せるはずです。ところが民法は、債務がないと知りながらあえて払った人、期限前に払った人、債権者が証書を捨てるなど取り戻しを認めると債権者が困る場合には、取り戻しを制限しました。自分の意思で払った人を保護する必要はなく、弁済を信じた債権者を守る必要があるからです。

金融会社の受付の場面。カウンターで男性(札「弁済者」)が領収書を受け取っている。先生(札「債権者」)がカウンターの内側で帳簿(「この債務はありません」)を開いて首をかしげている。男性の吹き出し「ないと知っていましたが、払っておきます」。先生

債務が存在しないことを知りながら弁済した者は返還を請求できませんが、知らなかったなら過失があっても返還を請求できます

705条は、債務の弁済として給付をした者は、その時において債務の存在しないことを知っていたときは、その給付したものの返還を請求することができないと定めています。債務がないと知りながら自分の意思で払った者を保護する必要はないという趣旨で、知らなかったことを責める規定ではありません。そのため、知らなかったことに過失があっても、重大な過失があっても、返還を請求できます(大判昭和16年4月19日)。「過失により知らないで,債務の弁済として給付をした者は,その給付したものの返還を請求することができない」という肢、「又は重大な過失によって知らなかったときは,その給付したものの返還を請求することができない」という肢は、いずれも誤りです。また、705条の「債務の弁済」は任意にされた給付であることが必要です。判例は、強制執行を避けるためやむを得ず、後日返還を請求する旨を留保して支払った場合には、債務の不存在を知っていても705条は適用されず返還を請求できるとしています(最判昭和35年5月6日)。既に弁済したことを知りつつ返還請求を留保して強制執行を避けるために支払った者は「その金員の返還を請求することはできない」という肢は誤りです。

弁済期にない債務を弁済した債務者は給付の返還を請求できず、錯誤で弁済したときに債権者が得た利益の返還を求められるだけです

706条本文は、債務者は弁済期にない債務の弁済として給付をしたときは、その給付したものの返還を請求することができないと定めています。債務自体は存在し、期限前に払えば期限の利益を放棄したことになるので、給付は有効な弁済だからです。同条ただし書は、債務者が錯誤によってその給付をしたときは、債権者はこれによって得た利益を返還しなければならないと定めます。返還されるのは給付したものではなく、債権者が期限前に受け取ったことで得た中間利息や運用益にとどまります。「錯誤により弁済期にあると誤信して,弁済期にない自己の債務の弁済として給付をした場合には,その給付の返還を請求することができる」という肢、「その給付が錯誤によるものであるときは、給付したものの返還を請求することができる」という肢、過失により弁済期が到来したと誤信した者は「弁済期が到来するまでは,その給付したものの返還を求めることができる」という肢は、いずれも誤りです。弁済期前であることを知りながら弁済したときは、債権者が弁済期までに運用して利益を得ても不当利得にならないので、その利益は不当利得になるとする肢も誤りです。

他人の債務を自分の債務と誤信して弁済した者は返還を請求できますが、債権者が善意で証書を失わせ、担保を放棄し、時効で債権を失ったときは請求できず、債務者に求償します

他人の債務を自分の債務と誤信して弁済しても、他人の債務を弁済する意思がないので第三者弁済(474条)にはならず、弁済者は債権者に不当利得の返還を請求できます。「第三者による弁済も有効であるから,錯誤により他人の債務を弁済した場合であっても,その弁済をした者は,債権者に対して返還を請求することはできない」という肢は誤りです。ただし707条1項は、債務者でない者が錯誤によって債務の弁済をした場合に、債権者が善意で証書を滅失させ若しくは損傷し、担保を放棄し、又は時効によってその債権を失ったときは、弁済をした者は返還を請求できないと定めています。弁済を有効と信じて債権を回収する手段を失った債権者を守るためです。債権者が善意で債権証書を滅失させたときは返還を請求できないという肢、債権者が善意で債権を消滅時効により消滅させたときは返還を請求できないという肢は正しいです。この場合、707条2項により、弁済をした者は真の債務者に求償できます。

債権者の事務所の場面。シュレッダーに借用証書(「借用証書」)が吸い込まれていく。男性(札「他人の債務を弁済した者」)が慌てて駆け込んできており、先生(札「債権者」)がシュレッダーの横に立っている。先生の吹き出し「全額返してもらえたと思って、

返還請求の可否(705条〜707条)

  • 債務の不存在を知って弁済(705条): 返還請求できない。知らなかったなら過失・重大な過失があっても請求できる。強制執行を避けるため留保して支払ったときは任意の弁済でなく請求できる
  • 弁済期前の弁済(706条): 給付の返還は請求できない。錯誤によるときは債権者が得た利益(中間利息など)の返還だけ
  • 他人の債務の錯誤による弁済(707条): 原則として返還請求できる。債権者が善意で証書の滅失・損傷、担保の放棄、時効による債権の喪失をしたときは請求できず、債務者に求償する
  • 消滅時効の完成を知らずにした弁済: 援用前の債務の弁済であり、援用もできなくなるので返還請求できない

消滅時効の完成を知らずに弁済した債務者は、弁済金を不当利得として返還請求できません

消滅時効が完成しても、債務者が援用するまで債務は消滅しません(145条)。完成後に時効を知らずに弁済した債務者は、存在する債務を弁済したことになり、705条の問題にもなりません。さらに判例は、時効完成後に債務を承認した債務者は、時効完成を知らなかったときでも、信義則上その後に時効を援用することは許されないとしています(最大判昭和41年4月20日)。弁済は債務の承認に当たるので、債務者は援用もできず、弁済は有効なまま残ります。「時効の完成後に,そのことに気付かないで債務を弁済した債務者は,債権者に対して,弁済金を不当利得として返還請求することができる」という肢、同じく「債務者は,不当利得として弁済金相当額の返還を請求することができる」という肢は、いずれも誤りです。

民法705条

債務の弁済として給付をした者は、その時において債務の存在しないことを知っていたときは、その給付したものの返還を請求することができない。

民法706条

債務者は、弁済期にない債務の弁済として給付をしたときは、その給付したものの返還を請求することができない。ただし、債務者が錯誤によってその給付をしたときは、債権者は、これによって得た利益を返還しなければならない。

民法707条1項

債務者でない者が錯誤によって債務の弁済をした場合において、債権者が善意で証書を滅失させ若しくは損傷し、担保を放棄し、又は時効によってその債権を失ったときは、その弁済をした者は、返還の請求をすることができない。

民法707条2項

前項の規定は、弁済をした者から債務者に対する求償権の行使を妨げない。

試験ではこう問われる

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