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用語集 / 民法 / 名誉毀損・プライバシーと救済方法

名誉毀損・プライバシーと救済方法(710条・723条)とは

めいよきそんぷらいばしーときゅうさいほうほう

民法 事務管理・不当利得・不法行為

名誉毀損とは、人の品性・徳行・名声・信用などについて社会から受ける客観的評価を低下させることで、被害者は財産以外の損害の賠償(710条)に加えて名誉を回復するのに適当な処分(723条)を求められますが、プライバシーの侵害には723条の処分は使えません。

新聞や雑誌が人の不正を報じれば、その人の社会的評価は下がります。しかし、政治家の汚職のように社会が知るべき事実まで報じられなくなっては困ります。そこで判例は、公共の利害に関わる事実を公益のために報じ、それが真実か、真実と信じる相当な理由があれば責任を負わないとしました。名誉を傷つけられた人は、慰謝料のほか謝罪広告などの名誉回復の処分も求められますが、この処分は名誉毀損の場合に限られます。

新聞社の編集室の場面。机の上にゲラ刷り(見出し「市長 裏金疑惑」)と取材メモの束。記者の男性(札「報道機関」)がメモを指している。先生が裁判官役(札「裁判所」)で机の横に立っている。先生の吹き出し「公共の利害に関わる事実を公益のために報じ、

名誉毀損は、公共の利害に関する事実を専ら公益を図る目的で摘示し、真実と証明されるか真実と信じる相当の理由があれば不法行為になりません

名誉とは、人の品性、徳行、名声、信用などの人格的価値について社会から受ける客観的な評価をいい、これを低下させる行為が名誉毀損です。判例は、事実を摘示して名誉を毀損した場合でも、その行為が公共の利害に関する事実に係り、専ら公益を図る目的に出たもので、摘示された事実が真実であると証明されたときは、違法性がなく不法行為は成立しないとしています。さらに、真実と証明されなくても、行為者がその事実を真実と信ずるについて相当の理由があるときは、故意又は過失がなく不法行為は成立しないとしています(最判昭和41年6月23日)。報道機関が真実と信ずるについて相当な理由があったとしても「その事実が真実であると証明できなかったときは,不法行為責任を負う」という肢は誤りです。

意見・論評による名誉毀損は、前提事実の重要な部分が真実と証明され、人身攻撃に及ぶなど論評の域を逸脱しない限り違法性を欠きます

事実を基礎とする意見や論評の表明による名誉毀損について、判例は、その行為が公共の利害に関する事実に係り、目的が専ら公益を図ることにあった場合に、意見・論評の前提としている事実が重要な部分について真実であることの証明があったときは、人身攻撃に及ぶなど意見・論評としての域を逸脱したものでない限り、違法性を欠くとしています(最判平成元年12月21日、最判平成9年9月9日)。前提事実を真実と信ずるについて相当の理由があるときは、故意又は過失が否定されます。論評の自由を広く認める一方、論評の土台になる事実の真実性は求めているわけです。前提事実の重要な部分が真実であることの証明という要件を落として「人身攻撃に及ぶなど論評としての域を逸脱したものでない限り,その行為は,違法でない」とする肢は誤りです。

名誉毀損の違法性・責任が否定される場合

  • 事実の摘示: 公共の利害に関する事実+専ら公益を図る目的+摘示事実の真実性の証明があれば違法性なし。真実と信ずる相当の理由があれば故意又は過失なし(最判昭和41年6月23日)
  • 意見・論評: 公共の利害+公益目的+前提事実の重要な部分の真実性の証明+論評の域を逸脱しないこと(最判平成元年12月21日、最判平成9年9月9日)

名誉を毀損された者は損害賠償に代えて又はとともに名誉を回復する処分を求められますが、名誉感情やプライバシーの侵害にはこの処分は使えません

723条は、他人の名誉を毀損した者に対しては、裁判所は、被害者の請求により、損害賠償に代えて、又は損害賠償とともに、名誉を回復するのに適当な処分を命ずることができると定めています。代表例が謝罪広告で、判例は、事態の真相を告白し陳謝の意を表明するにとどまる程度の謝罪広告を命じることは憲法19条に反しないとしています(最大判昭和31年7月4日)。判例は、723条の名誉は社会から受ける客観的評価である社会的名誉を指し、人が自分自身の人格的価値について持つ主観的な評価である名誉感情は含まないとしています(最判昭和45年12月18日)。名誉感情を侵害された被害者は名誉感情を回復する処分を請求できないとする肢は正しいです。また、723条は名誉毀損に限った規定で、私生活をみだりに公開されないプライバシーの侵害は社会的評価の低下を要件としないので、同条の処分の対象になりません。「プライバシーを侵害した者に対しては,裁判所は,被害者の請求により,損害賠償に代えて,又は損害賠償とともに,謝罪広告を命ずることができる」という肢は誤りです。プライバシーや名誉の侵害に対しては、損害賠償(709条・710条)のほか、人格権に基づく侵害行為の差止めを求めることもできるとされています。

裁判所の窓口の場面。二人の申立人が並んでいる。左の男性(札「名誉毀損」)は新聞の謝罪広告の見本を持ち、右の女性(札「プライバシー侵害」)は週刊誌を持っている。先生が窓口の内側から左の男性の見本を指している。先生の吹き出し「謝罪広告などの名誉

名誉毀損の慰謝料請求権は金額が客観的に確定するまで代位の対象にならず、法人も金銭に評価できる無形の損害の賠償を請求できます

710条は、他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、709条の責任を負う者は財産以外の損害も賠償しなければならないと定めています。判例は、名誉侵害を理由とする慰謝料請求権は、被害者が行使の意思を表示しただけでは、具体的な金額が当事者間で客観的に確定するまでは一身専属性を失わず、被害者の債権者が代位行使することはできないとしています(最判昭和58年10月6日)。その旨の肢は正しいです。また、法人には精神的苦痛はありませんが、判例は、法人の名誉が侵害された場合にも金銭で評価できる無形の損害は生じ得るので、710条により加害者は賠償責任を負うとしています(最判昭和39年1月28日)。「法人は財産以外の損害について不法行為に基づき損害賠償を請求することができない」という肢、「法人は、名誉毀損によって受けた無形の損害について、その賠償を請求することができない」という肢は、いずれも誤りです。

民法710条

他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。

民法723条

他人の名誉を毀損した者に対しては、裁判所は、被害者の請求により、損害賠償に代えて、又は損害賠償とともに、名誉を回復するのに適当な処分を命ずることができる。

論文ではこう使う

論文で名誉毀損を論じるときは、まず摘示されたのが事実か意見・論評かを分け、事実なら①公共の利害に関する事実、②専ら公益を図る目的、③真実性の証明又は真実と信ずる相当の理由(最判昭和41年6月23日)を、論評なら前提事実の重要な部分の真実性と論評の域の逸脱の有無(最判平成9年9月9日)を当てはめます。救済は、損害賠償(709条・710条)、名誉回復処分(723条。社会的名誉の侵害に限る)、人格権に基づく差止めを分けて検討し、プライバシー侵害では723条が使えないことを押さえます。

試験ではこう問われる

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