責任無能力者の監督義務者等の責任(714条)とは
せきにんむのうりょくしゃのかんとくぎむしゃとうのせきにん
責任無能力者の監督義務者等の責任とは、未成年者や精神上の障害のある者が責任能力を欠いて賠償責任を負わない場合に、その者を監督する法定の義務を負う者や代理監督者が負う損害賠償責任のことで、監督義務を怠らなかったこと又は怠らなくても損害が生ずべきであったことを証明すれば免責されます(714条)。
5歳の子どもが自転車で歩行者にけがをさせても、子ども自身は責任能力がないので賠償責任を負いません。それでは被害者が救われないので、民法は、子どもを監督する法定の義務を負う親に賠償責任を負わせました。ただし親が、監督の義務を怠らなかったこと、又は怠らなくても損害が生じたことを証明すれば責任を免れます。被害者の救済と、できる限りの監督をした親の保護とを両立させる仕組みです。
責任無能力者が責任を負わないとき、監督する法定の義務を負う者が賠償責任を負い、義務を怠らなかったこと等を証明すれば免責されます
714条1項は、712条・713条により責任無能力者が責任を負わない場合に、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負うと定めています。ただし書は、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは責任を負わないとしています。過失の立証責任を監督義務者側に移した中間責任なので、監督義務を怠らなかったことは監督義務者が抗弁として主張立証します。その旨の肢は正しいです。5歳の幼児Aが自転車で歩行者Bにけがをさせた事例で、AはBに損害賠償義務を負わず、親権者Cが、監督義務を怠らなかったとき及び怠らなくても損害が生ずべきであったときを除いて賠償義務を負うという肢は正しいです。同条2項は、監督義務者に代わって責任無能力者を監督する者(代理監督者。保育園や学校など)も同じ責任を負うとしています。代理監督者がいても監督義務者の責任はなくならないので、監督義務者が「監督義務者のほかに代理監督者がいることを抗弁として主張することができる」という肢は誤りです。
714条の責任の構造
- 前提: 責任無能力者(712条の未成年者・713条の精神上の障害のある者)が責任を負わないこと
- 責任を負う者: 責任無能力者を監督する法定の義務を負う者(親権者・未成年後見人など。714条1項)と代理監督者(同条2項)
- 免責(監督義務者が主張立証): 監督義務を怠らなかったこと、又は怠らなくても損害が生ずべきであったこと
- 代理監督者がいることは監督義務者の抗弁にならない
責任能力のある未成年者の加害でも、監督義務者の義務違反と結果に相当因果関係があれば、監督義務者は709条で責任を負います
714条は責任無能力者が責任を負わない場合の規定なので、14歳の中学生のように責任能力のある未成年者が加害した場合には適用されません。しかし判例は、未成年者が責任能力を有する場合であっても、監督義務者の義務違反と未成年者の不法行為によって生じた結果との間に相当因果関係を認め得るときは、監督義務者について709条に基づく不法行為が成立するとしています(最判昭和49年3月22日)。この場合の監督義務者の過失と因果関係は被害者が主張立証します。その旨の肢は正しく、Aが14歳の中学生である場合に「Aの親権者であるCはBに対して損害賠償義務を負うことはない」という肢は誤りです。
精神障害者と同居する配偶者というだけでは法定の監督義務者に当たらず、日常の行為から偶然生じた事故では親権者が免責されることもあります
判例は、民法752条の夫婦の同居・協力・扶助の義務は夫婦間の義務で、第三者との関係で配偶者を監督する義務を基礎づけるものではないから、精神障害者と同居する配偶者であるからといって714条1項の法定の監督義務者に当たるとすることはできないとしています(最判平成28年3月1日。認知症の高齢者が線路に立ち入って列車と衝突した事案)。そのうえで、法定の監督義務者でなくても、監督義務を引き受けたとみるべき特段の事情がある者は、法定の監督義務者に準ずべき者として714条1項が類推適用されるとしました。同居する妻は監督義務者として責任を負うとする肢は誤りです。また判例は、責任能力のない未成年者の親権者は、直接の監視下にない子の行動について日頃から指導監督する義務を負うものの、通常は人身に危険が及ぶとはみられない行為によってたまたま人身に損害を生じさせた場合は、具体的に予見可能であったなどの特別の事情がない限り監督義務を尽くさなかったとはいえないとして、親権者を免責しました(最判平成27年4月9日。校庭でのフリーキックの練習でボールが道路に出た事案)。
責任無能力者の失火では、失火責任法の重大な過失は監督義務者の監督について判断します
失火ノ責任ニ関スル法律(失火責任法)は、失火者に重大な過失がある場合に限って709条の責任を負わせています。責任無能力者の未成年者が火災を起こした場合について、判例は、714条1項に基づき監督義務者が責任を負うかは、未成年者の行為の態様ではなく、監督義務者に未成年者の監督について重大な過失があったかで判断し、重大な過失がなかったときに監督義務者は免責されるとしています(最判平成7年1月24日)。責任無能力者に重大な過失を問うことは意味がないからです。未成年者に「その火災につき重大な過失がなかったときは,その未成年者を監督する法定の義務を負う者はその火災により生じた損害を賠償する責任を負わない」という肢は誤りです。
民法714条1項
前二条の規定により責任無能力者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
民法714条2項
監督義務者に代わって責任無能力者を監督する者も、前項の責任を負う。
論文ではこう使う
論文では、加害者が未成年者なら、まず責任能力の有無(712条)を判断します。責任能力がなければ714条1項で監督義務者の責任を検討し、監督義務者が免責事由(義務を怠らなかったこと等)を立証できるかを、日頃の指導監督の内容と行為の危険性から当てはめます(最判平成27年4月9日)。責任能力があれば、監督義務者自身の監督義務違反と結果との相当因果関係を立てて709条で構成します(最判昭和49年3月22日)。認知症の高齢者など成年者の加害では、同居の家族が法定の監督義務者に当たるか、当たらなくても監督義務を引き受けた準ずべき者かを検討します(最判平成28年3月1日)。
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