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用語集 / 民法 / 転用物訴権

転用物訴権とは

てんようぶつそけん

民法 事務管理・不当利得・不法行為

転用物訴権とは、契約に基づいて給付をした者が、契約の相手方の無資力で対価を回収できないときに、その給付で利益を受けた第三者に不当利得の返還を請求することで、判例は、建物所有者が賃貸借契約を全体としてみて対価関係なしに利益を受けたときに限って認めています。

借りている建物を改装したい賃借人が工務店に工事を頼み、代金を払わないまま倒産すると、工務店は代金を回収できません。工事で建物の価値が上がったのは所有者なので、工務店は所有者に払ってもらいたくなります。この請求を転用物訴権といいます。しかし所有者が賃料を安くするなど、賃借人との間ですでに工事費の負担に見合う手当てをしていたなら、所有者に払わせると二重の負担になります。判例は、所有者がただで利益を得たときに限って請求を認めました。

改装工事を終えた貸店舗の前の場面。店舗のシャッターに「閉店 賃借人倒産」の貼り紙。男性(札「請負人」)が工事代金の請求書を持って、先生(札「建物所有者」)に詰め寄っている。先生の吹き出し「工事費は借り手が負担する約束で、その代わり権利金をも

転用物訴権とは、契約の相手方が無資力になった給付者が、給付で利益を受けた第三者に不当利得の返還を請求することです

請負人Aが建物賃借人Bとの請負契約に基づいて建物の修繕工事をし、Bが代金を払わないまま無資力になった場合、Aは建物所有者Cに対し、工事に要した財産及び労務に相当する利益の返還を不当利得として請求できるかが問題になります。AにはBに対する請負代金債権があるので、本来はBから回収すべきで、Cに請求するのは契約の相手方以外への請求になります。判例は、ブルドーザーの修理代金を賃借人から回収できなかった修理業者が所有者に請求した事案で、賃借人が無資力で代金債権が無価値である限度で、所有者の利得は修理業者の財産と労務に由来するとして、請求を認める余地を示しました(最判昭和45年7月16日)。この判決は、所有者が賃借人との間で修理費に見合う負担をしていたかを問わない点で広すぎると批判されました。

建物所有者が法律上の原因なく利益を受けたといえるのは、賃貸借契約を全体としてみて、所有者が対価関係なしに利益を受けたときに限られます

判例は、建物所有者が賃借人に権利金を免除する代わりに修繕等の工事費用はすべて賃借人が負担するという約定で賃貸していた事案で、所有者が法律上の原因なくして工事に要した財産及び労務の提供に相当する利益を受けたといえるのは、所有者と賃借人との間の賃貸借契約を全体としてみて、所有者が対価関係なしにその利益を受けたときに限られるとしました(最判平成7年9月19日)。所有者が賃貸借契約で何らかの形でその利益に相応する出捐ないし負担をしたときは、受けた利益は法律上の原因に基づくもので、請負人の請求を認めれば所有者に二重の負担を強いることになるからです。この事案では、権利金の免除が利益に相応する負担に当たるとして、請求が否定されました。

天秤の板書の場面。黒板に大きな天秤が描かれ、左の皿に「工事で上がった建物の価値」、右の皿に「権利金の免除・賃料の値下げ」と書かれた重りが載って釣り合っている。先生が指し棒で右の皿を指している。先生の吹き出し「所有者がすでに見合う負担をしてい

賃借人が無資力になったことや修繕費負担の特約があることだけでは、所有者が法律上の原因なく利益を受けたことにはなりません

判例の規範によれば、決め手は、所有者が対価関係なしに利益を受けたかどうかです。そのため、「Aが請負代金を支払わないまま無資力になったときは,建物の所有者Cは,法律上の原因なくして利益を受けたことになる」という肢は、対価関係の有無を問わずに不当利得を認めている点で誤りです。同じく、修繕費を賃借人が負担する特約があるときは「建物所有者が対価関係なしにその工事に要した財産及び労務の提供に相当する利益を受けたかどうかにかかわらず,建物所有者は,法律上の原因なくしてその利益を受けたことになる」という肢も誤りです。特約があって、その分だけ賃料を安くしたり権利金を免除したりしていれば、所有者は負担をしているので利益に法律上の原因があり、反対に、特約の見返りが何もなく所有者がただで利益を得ていれば、法律上の原因がないことになります。

転用物訴権の判断(最判平成7年9月19日)

  • 前提: 請負人の賃借人に対する代金債権の全部又は一部が、賃借人の無資力で無価値であること
  • 法律上の原因がない場合: 賃貸借契約を全体としてみて、所有者が対価関係なしに利益を受けたとき
  • 法律上の原因がある場合: 所有者が賃料の減額・権利金の免除など利益に相応する出捐・負担をしたとき(二重の負担の回避)

民法703条

法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。

論文ではこう使う

論文では、請負人Aから所有者Cへの不当利得返還請求(703条)として立て、①Cの受益とAの損失の因果関係は社会通念上の因果関係で足りること、②法律上の原因については、Bの無資力でAの代金債権が無価値であることを前提に、BC間の賃貸借契約を全体としてみてCが対価関係なしに利益を受けたときに限り欠けること(最判平成7年9月19日)を示し、賃料の額・権利金・修繕費負担の特約・契約の解除の経緯を当てはめます。昭和45年判決との違い(所有者の二重負担の回避)を一言添えると規範の理由が伝わります。

試験ではこう問われる

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