工作物責任と動物占有者の責任(717条・718条)とは
こうさくぶつせきにんとどうぶつせんゆうしゃのせきにん
工作物責任とは、土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害が生じたときに、まず占有者が、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは所有者が負う損害賠償責任のことで(717条)、動物の占有者は相当の注意で管理したことを証明しない限り動物が加えた損害を賠償します(718条)。
古いビルの外壁が落ちて通行人がけがをしたとき、まず責任を負うのは建物を実際に使っている占有者です。占有者が事故を防ぐのに必要な注意を尽くしていれば、次は所有者が責任を負い、所有者は注意を尽くしても責任を免れません。危険な物を支配し利益を得ている者に、その危険が現実になった責任を負わせるという考え方です。飼っている動物が人をかんだときも、占有者が相当の注意で管理していなければ責任を負います。
土地の工作物の設置又は保存の瑕疵による損害は、まず占有者が負い、占有者が必要な注意をしたときは所有者が負います
717条1項本文は、土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者が被害者に対して損害を賠償する責任を負うと定めています。同項ただし書は、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならないとしています。占有者が必要な注意をしたときは所有者が責任を負うという肢はいずれも正しく、反対に、所有者が必要な注意をしたときは「その工作物の占有者が,その損害を賠償する責任を負う」という肢は、責任を負う順序を逆にしているので誤りです。所有者が責任を負うのは占有者が必要な注意をした場合に限られ、占有者が責任を負う場合にその占有者が無資力であっても、所有者が責任を負うことにはなりません。占有者が無資力であるときは「所有者も損害賠償の責任を負う」という肢は誤りです。
工作物責任の責任主体(717条1項)
- 第一次: 占有者。損害の発生を防止するのに必要な注意をしたことを証明すれば免責(中間責任)
- 第二次: 所有者。占有者が免責されたときに負い、注意を尽くしても免責されない(無過失責任)
- 占有者が無資力でも所有者の責任は生じない
- 求償: 損害の原因について他に責任を負う者がいれば、賠償した占有者・所有者は求償できる(717条3項)
所有者の責任は無過失責任で、注意を尽くしたことも責任無能力も抗弁にならず、瑕疵が前所有者の時代に生じていても現在の所有者が負います
所有者には占有者のような免責の規定がないので、所有者の責任は無過失責任と解されています。そのため、所有者は損害の発生を防止するために必要な注意をしたことを抗弁として主張できません。責任能力も不要と解されているので、所有者は自己の責任無能力を抗弁にすることもできず、注意を尽くしたことは主張できないが責任無能力は主張できるとする肢は誤りです。判例は、瑕疵のある工作物を買い受けた者は、瑕疵がないと信じて過失なく買い受けたとしても、現にその工作物を所有している以上責任を負うとしています(大判昭和3年6月7日)。瑕疵が前の所有者の時代に生じたものであっても現在の所有者が責任を負うという肢は正しいです。717条2項は、竹木の栽植又は支持に瑕疵がある場合に1項を準用するので、樹木の所有者も、相当の注意をもって管理していたことを理由に責任を免れることはできません。所有者が相当の注意をもって管理していたときは「Aが損害賠償の責任を負うことはない」という肢は誤りです。
占有者には間接占有者も含まれ、賠償した占有者・所有者は損害の原因について責任を負う者に求償できます
判例は、717条の占有者には、所有者でない間接占有者も含まれるとしています(最判昭和31年12月18日)。建物の賃借人が転貸した場合、転貸人である賃借人は転借人を通じて建物を占有し、瑕疵に対処できる立場にあるからです。所有者Aから賃借したBがCに転貸して引き渡した場合に「Bが占有者として損害賠償の責任を負うことはない」という肢は誤りです。717条3項は、損害の原因について他にその責任を負う者があるときは、占有者又は所有者はその者に対して求償権を行使できると定めています。欠陥のある工事をした請負人などが典型です。工作物の占有者として賠償したAが損害の原因について責任を負うBに求償できるという肢は正しいです。
動物の占有者は、種類と性質に従い相当の注意で管理したことを証明しない限り責任を負い、所有の意思のない世話人も占有者に当たります
718条1項は、動物の占有者はその動物が他人に加えた損害を賠償する責任を負い、動物の種類及び性質に従い相当の注意をもってその管理をしたときはこの限りでないと定めています。同条2項は、占有者に代わって動物を管理する者も同じ責任を負うとしています。占有者が相当の注意をもって管理したときは責任を負わないという肢は正しいです。ここでいう占有者は動物を事実上支配する者で、所有の意思は要りません。飼い主不明の犬を自宅に連れ帰って世話をしている人も動物の占有者に当たり、相当の注意をもって管理したことを自ら証明しない限り責任を負います。Aは所有の意思を持たないため動物の占有者としての責任を負わず、BがAの過失を立証しなければならないとする肢は誤りです。
民法717条1項
土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。
民法717条2項
前項の規定は、竹木の栽植又は支持に瑕疵がある場合について準用する。
民法717条3項
前二項の場合において、損害の原因について他にその責任を負う者があるときは、占有者又は所有者は、その者に対して求償権を行使することができる。
民法718条1項
動物の占有者は、その動物が他人に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、動物の種類及び性質に従い相当の注意をもってその管理をしたときは、この限りでない。
論文ではこう使う
論文で工作物責任を論じるときは、①土地の工作物(土地に接着して人工的作業を加えた物)に当たるか、②設置又は保存の瑕疵(通常有すべき安全性の欠如)があるか、③瑕疵と損害の因果関係を当てはめ、責任主体を占有者(中間責任)→所有者(無過失責任)の順に検討します。賃貸・転貸があれば間接占有者も占有者に含まれること(最判昭和31年12月18日)を示し、施工業者など損害の原因について責任を負う者への求償(717条3項)にも触れます。
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