未成年者の行為能力(4条〜6条・成年年齢18歳)とは
みせいねんしゃのこういのうりょく
未成年者とは、年齢18歳に達していない者のことで(4条)、未成年者が法律行為をするには法定代理人の同意を得なければならず、同意を得ないでした法律行為は取り消すことができます(5条1項・2項)。
高校生が親に黙って高額のバイクをローンで買ったとします。若い人は経験が浅く、不利な契約を結ばされやすいので、民法は18歳未満の者を未成年者とし、法律行為をするには親などの法定代理人の同意を要求しています。同意なしにした契約は、後から取り消して無かったことにできます。その代わり、もらうだけの行為や、親が自由に使ってよいと渡した小遣いの使い道、親が許した営業についての取引は、未成年者が一人でしても取り消せません。
成年は18歳で、未成年者が同意なしにした法律行為は取り消すことができますが、同意が要らない行為は三つに限られます
4条は年齢18歳をもって成年としています(令和4年4月施行。それまでは20歳)。未成年者が法律行為をするには法定代理人の同意を得なければならず(5条1項本文)、これに反する法律行為は取り消すことができます(同条2項)。同意が要らないのは、①単に権利を得、又は義務を免れる法律行為(5条1項ただし書)、②法定代理人が目的を定めて処分を許した財産をその目的の範囲内で処分すること、目的を定めないで処分を許した財産を処分すること(同条3項)、③一種又は数種の営業を許された未成年者がその営業に関してする行為(6条1項)です。負担のない贈与の申込みを承諾するのは①に当たり、「負担のない贈与をする旨の申込みを受けた未成年者が法定代理人の同意を得ないでした承諾は,取り消すことができない」という肢は正しいです。「未成年者は,単に義務を免れる法律行為について,その法定代理人の同意を得ないですることができる」という肢も正しく、書面によらない贈与を解除して贈与者としての債務を免れるのも①に当たるので、同意がなくても取り消すことはできません。「未成年者は,その法定代理人が目的を定めないで処分を許した財産を自由に処分することができる」という肢は②により正しいです。成年被後見人には日用品の購入その他日常生活に関する行為を取消しの対象から外す規定(9条ただし書)がありますが、未成年者には同じ規定がありません。「未成年者がした売買契約は,親権者の同意を得ないでした場合であっても,その契約が日常生活に関するものであるときは,取り消すことができない」という肢は誤りです。
- 単に権利を得、又は義務を免れる行為負担のない贈与の承諾・債務の免除を受けること(5条1項ただし書)
- 処分を許された財産目的を定めて許した財産はその目的の範囲内で、目的を定めないで許した財産は自由に処分できます(5条3項)
- 許された営業に関する行為その営業に関しては成年者と同一の行為能力を有します(6条1項)。営業に関しない行為は取り消せます
- 日常生活に関する行為未成年者には例外規定がなく、同意がなければ取り消せます
営業を許された未成年者が成年者と同じ行為能力を持つのはその営業に関してだけで、営業に関しない行為は取り消すことができます
6条1項は、一種又は数種の営業を許された未成年者は、その営業に関しては、成年者と同一の行為能力を有すると定めています。「未成年者であっても,許可された特定の営業に関しては,行為能力を有する」という肢は正しいです。許可の効果は営業の範囲に限られるので、「営業を許された未成年者がした法律行為は、その営業に関しないものであっても、取り消すことができない」という肢は誤りです。未成年者がその営業に堪えることができない事由があるときは、法定代理人は許可を取り消し、又は制限することができます(6条2項)。
取消しは未成年者が単独でできますが、成年に達するまでに未成年者自身が追認するには法定代理人の同意が要ります
行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、制限行為能力者本人も取り消すことができ(120条1項)、取消しに法定代理人の同意は要りません。取消しは行為の効力を遡って失わせるだけで、未成年者に新たな負担を負わせないからです。「未成年者は,法定代理人の同意を得ずにした法律行為を単独で取り消すことができる」という肢は正しく、「成年に達するまでは、親権者の同意を得なければ、自らその契約を取り消すことができない」という肢は誤りです。取り消すことができると知って契約したときでも、未成年者は取り消すことができます。これに対し追認は、取消しの原因となっていた状況が消滅した後でなければ効力を生じませんが(124条1項)、法定代理人の同意を得て追認するときはその必要がありません(同条2項2号)。「成年に達するまでは、親権者の同意を得なければ、自らその契約の追認をすることができない」という肢は正しいです。相続の放棄も財産上の法律行為なので5条の適用を受け、15歳という年齢は遺言能力(961条)の基準にすぎません。「15歳に達している未成年者が法定代理人の同意を得ないでした相続の放棄は、取り消すことができない」という肢は誤りで、919条2項により取り消すことができます。
未成年者も代理人になることができ、未成年者の子の親権は未成年者の親権者が代わって行います
代理行為の効果は本人に帰属し、代理人自身は不利益を受けないので、制限行為能力者が代理人としてした行為は、行為能力の制限によっては取り消すことができません(102条本文)。「未成年者は代理人になれない」という肢や「未成年者は,代理人となることができない」という肢は誤りです(代理人の行為能力の語で扱います)。未成年者が子を持った場合、その子に対する親権は、未成年者について親権を行う者が代わって行います(833条)。「未成年者Aの子に対する親権は,Aの親権者がAに代わって行使する」という肢は正しいです。未成年者に対して親権を行う者がないとき、又は親権を行う者が管理権を有しないときは、後見が開始します(838条1号)。「未成年者に対して親権を行う者がいないときは,後見が開始する」という肢は正しく、未成年後見人の選任と職務は後見の機関の語で扱います。
成年年齢の引下げで、19歳の者を未成年者とする問題や婚姻による成年擬制を前提とする問題は、前提が成り立たなくなりました
令和4年4月から成年は18歳となり、婚姻適齢も男女とも18歳になって、未成年者の婚姻(旧737条)と婚姻による成年擬制(旧753条)の規定は削除されました。司法・予備2017年の問題は「Aが19歳で,親権に服する男性であることを前提として」各肢の正誤を問いましたが、現在では19歳の者は成年者で、この前提は成り立ちません。肢の内容を未成年者に置き換えて読めば、出題当時の正誤はそのまま通用します。「その売買契約がその営業に関しないものであっても,Aは,その売買契約を取り消すことができない」という肢は誤り、アルバイトで得る金銭の処分を許されていたAがその金銭で自転車を買った売買契約は取り消すことができないという肢は正しく、書面によらない贈与を撤回(現行法では解除)したAが「贈与の撤回を取り消すことができる」という肢は誤りです。未成年者の婚姻と身分行為の扱いは、身分行為と行為能力の語で扱います。
民法4条
年齢十八歳をもって、成年とする。
民法5条
未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。2 前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。3 第一項の規定にかかわらず、法定代理人が目的を定めて処分を許した財産は、その目的の範囲内において、未成年者が自由に処分することができる。目的を定めないで処分を許した財産を処分するときも、同様とする。
民法6条1項
一種又は数種の営業を許された未成年者は、その営業に関しては、成年者と同一の行為能力を有する。
論文ではこう使う
論文で未成年者の行為が出るのは、取消しとその効果をめぐる場面です。5条2項で取り消せることを示し、同意が不要な三つの例外に当たらないかを確認します。取り消した後は、121条の2第3項により未成年者は現に利益を受けている限度で返還すれば足り、相手方の原状回復義務と同時履行の関係に立つこと、未成年者が詐術を用いていれば21条で取り消せないことまで続けて書きます。
この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。