制限行為能力者の行為の効力(日用品・13条1項の行為・同意に代わる許可・代理権の付与)とは
せいげんこういのうりょくしゃのこういのこうりょく
制限行為能力者の行為の効力とは、成年被後見人・被保佐人・被補助人がした法律行為をどのような場合に取り消すことができるかという規律のことで、成年被後見人の行為は日用品の購入その他日常生活に関する行為を除き取り消すことができ(9条)、被保佐人・被補助人の行為は同意を要する行為を同意又はこれに代わる許可なくしたときに取り消すことができます(13条4項・17条4項)。
同じ判断能力の衰えた人の契約でも、毎日の食料品の買物まで後から取り消されるとしたら、店は売るのをためらい、本人がかえって暮らしにくくなります。民法は、成年被後見人の行為は原則として取り消せるが、日用品の購入その他日常生活に関する行為は取り消せないとし、被保佐人については借金や不動産の売買のような重要な行為だけに保佐人の同意を要求しています。被補助人については、家庭裁判所が選んだ一部の行為だけが同意の対象になります。
成年被後見人の行為は、成年後見人の同意を得ていても取り消すことができますが、日用品の購入その他日常生活に関する行為は取り消せません
9条本文は、成年被後見人の法律行為は、取り消すことができると定めています。成年被後見人は事理を弁識する能力を欠く常況にあり、同意を与えてもそのとおりに行動できるとは限らないので、成年後見人の同意を得ていても取り消すことができます。「成年被後見人がした売買契約は,成年後見人の同意を得てした場合であっても,その契約が日常生活に関するものであるときを除き,取り消すことができる」という肢は正しいです。未成年者と違い、単に権利を得る行為を除く規定もないので、建物や土地の贈与を受けた場合も取り消すことができます。「成年被後見人が土地の贈与を受けた場合、その後見人は、その贈与を取り消すことができない」という肢は誤りです。他方で、日用品の購入その他日常生活に関する行為は取り消せません(9条ただし書)。本人に残る能力と自己決定を尊重し、日常の取引から締め出されないようにするためで、相手方が成年被後見人であることを知っていたかどうかは関係ありません。「Aが成年被後見人であることをBが知らなかったとしても,Aの成年後見人Cは,当該日用品の売買契約を取り消すことができる」という肢や、日用品の購入を成年後見人が取り消すことができるという肢は誤りで、電気料金の支払も取り消せません。9条ただし書は取消しを制限する規定にすぎず、成年後見人は日常生活に関する行為についても成年被後見人を代理することができます(859条1項)。
被保佐人は、13条1項に掲げる重要な行為をするときだけ保佐人の同意を要し、同意を得た行為は取り消せなくなります
13条1項は、元本の領収・利用、借財・保証、不動産その他重要な財産に関する権利の得喪、訴訟行為、贈与・和解・仲裁合意、相続の承認・放棄・遺産分割、新築・改築・増築・大修繕、602条の期間を超える賃貸借などを、保佐人の同意を要する行為として掲げています。貸付金の弁済を受けるのは元本の領収に当たるので、同意なしにすれば取り消すことができます。訴えの提起は訴訟行為に当たり同意を要しますが、相手方が提起した訴えに応訴するには同意は要りません(民事訴訟法32条1項)。相手方が被保佐人を訴えられなくなるのを避けるためです。同意又はこれに代わる許可を得ないでした行為は取り消すことができ(13条4項)、反対に同意を得てした保証契約は取り消せません。保佐人は同意権を持つ者として取消権(120条1項)も、追認権も持つので、「保佐人は,その行為を追認することはできるが,その行為を取り消すことはできない」という肢は誤りです。また、同意は行為を有効に確定させるだけで、被保佐人に行為をする義務を負わせるものではないので、同意を得た後に保証契約の締結を取りやめることもできます。同意を得て締結した契約でも、要素に錯誤があれば錯誤による取消し(出題当時は無効)を主張することはできます。行為能力の制度と錯誤の制度は別の目的で表意者を守るからです。
- 1号元本を領収し、又は利用すること(貸付金の弁済の受領)
- 2号借財又は保証をすること
- 3号不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為
- 4号訴訟行為(相手方の提起した訴えへの応訴は同意不要。民事訴訟法32条1項)
- 5号〜7号贈与・和解・仲裁合意、相続の承認・放棄・遺産分割、贈与の申込みの拒絶・遺贈の放棄・負担付贈与の承諾
- 8号〜10号新築・改築・増築・大修繕、602条の期間を超える賃貸借、以上の行為を制限行為能力者の法定代理人としてすること
保佐人・補助人が本人の利益を害するおそれがないのに同意しないときは、家庭裁判所が同意に代わる許可を与えます
保佐人の同意を要する行為について、保佐人が被保佐人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は、被保佐人の請求により、保佐人の同意に代わる許可を与えることができます(13条3項)。補助人についても同じです(17条3項)。保護者の不当な拒否で本人の行動が止められるのを防ぐためです。「家庭裁判所は,被保佐人の請求により,保佐人の同意に代わる許可を与えることができる」という肢や、被補助人の請求により補助人の同意に代わる許可を与えることができるという肢は正しいです。許可を得た行為は取り消せず、同意も許可も得ないでした行為は取り消すことができます(13条4項・17条4項)。「その同意又はこれに代わる家庭裁判所の許可を得ないでしたときは,その行為は取り消すことができる」という肢は正しいです。
補助人に代理権を付与しても被補助人の行為能力は制限されず、被補助人は自らその行為をすることができます
家庭裁判所は、特定の法律行為について補助人に代理権を付与する審判をすることができます(876条の9第1項)。代理権の付与は補助人がその行為を本人に代わってできるようにするだけで、被補助人の行為能力を制限するものではありません。「家庭裁判所が特定の法律行為について補助人に代理権を付与する旨の審判をした場合であっても,被補助人は,その法律行為を自らすることができる」という肢は正しいです。保佐人に代理権を付与する場合(876条の4第1項)も同じです。被補助人の行為を取り消せるのは、17条1項の審判で補助人の同意を要するとされた行為を同意なくした場合に限られます。
取り消すことができるのは制限行為能力者側に限られ、制限行為能力者が他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為も取り消せます
行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、制限行為能力者又はその代理人、承継人若しくは同意をすることができる者に限り、取り消すことができます(120条1項)。制限行為能力者を守るための取消しなので、相手方には取消権がありません。「制限行為能力者及びその法定代理人が取消権を有するときは,契約の相手方も取消権を有する」という肢は誤りです。相手方を守る仕組みは、20条の催告と21条の詐術で、制限行為能力者の相手方の保護の語で扱います。制限行為能力者が代理人としてした行為は行為能力の制限によっては取り消すことができませんが、他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為は取り消すことができます(102条)。法定代理では本人が代理人を選んでいないからです。「成年被後見人Aが未成年者Bの法定代理人としてした行為は、Aの行為能力の制限によっては取り消すことができない」という肢は誤りです。
民法9条
成年被後見人の法律行為は、取り消すことができる。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りでない。
民法13条3項・4項
保佐人の同意を得なければならない行為について、保佐人が被保佐人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は、被保佐人の請求により、保佐人の同意に代わる許可を与えることができる。4 保佐人の同意を得なければならない行為であって、その同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる。
民法102条
制限行為能力者が代理人としてした行為は、行為能力の制限によっては取り消すことができない。ただし、制限行為能力者が他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為については、この限りでない。
この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。