制限行為能力者の相手方の保護(20条の催告・21条の詐術)とは
せいげんこういのうりょくしゃのあいてがたのほご
制限行為能力者の相手方の保護とは、取り消されるかどうかわからない不安定な立場に置かれた相手方のために、追認するかどうかの確答を求める催告権(20条)と、詐術を用いた制限行為能力者の取消権を失わせる規定(21条)を置く仕組みのことです。
未成年者と売買契約を結んだ店は、いつ取り消されるかわからず落ち着きません。そこで民法は、相手方が「追認するかどうか、1か月以上の期間内にはっきり答えてください」と催告できるようにし、答えがなければどちらかに確定させます。答えがないときの効果は、追認できる立場の人に催告したなら追認、保護者の追認を得てくるよう本人に求めたなら取消しです。また、自分は大人だとだまして契約した制限行為能力者までは保護しません。
行為能力者となった本人や法定代理人・保佐人・補助人に催告して確答がなければ、追認したものとみなされます
制限行為能力者の相手方は、本人が行為能力者となった後は本人に、まだ行為能力者とならない間は法定代理人・保佐人・補助人に、その権限内の行為について、1か月以上の期間を定めて追認するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができます。期間内に確答を発しないときは、その行為を追認したものとみなされます(20条1項・2項)。これらの者は自分で追認できる立場にあるので、黙っていることを追認と評価しても不当ではないからです。「Aが成年に達した後」に催告して確答がなければ「Aの行為を追認したものとみなされる」という肢や、行為能力者となった被保佐人に催告して確答がなければ追認したものとみなされるという肢は正しいです。成年後見人に催告して確答がない場合に「Aの行為を取り消したものとみなされる」という肢や、未成年者の法定代理人が確答を発しないときは「その契約を取り消したものとみなされる」という肢は誤りです。保佐人にも直接催告することができ、確答がなければ追認したものとみなされるので、「保佐人に直接追認するか否かの回答を求める催告をすることはできない」という肢は誤りです。確答は期間内に「発する」ことで足ります(発信主義)。
被保佐人・被補助人に保護者の追認を得るよう催告して通知がなければ、取り消したものとみなされます
相手方は、被保佐人と、補助人の同意を要する旨の審判を受けた被補助人に対しては、1か月以上の期間内にその保佐人又は補助人の追認を得るべき旨の催告をすることができます。期間内に追認を得た旨の通知を発しないときは、その行為を取り消したものとみなされます(20条4項)。被保佐人・被補助人は自分だけでは追認できないので、催告の中身は保護者の追認を得てくることになり、黙っていれば本人の保護を優先して取消しが確定します。「Aがこの期間内にその追認を得た旨の通知を発しないときは,Aの行為を取り消したものとみなされる」という肢は正しく、追認を得た旨の通知がなければ以後取り消されることはないという肢は誤りです。未成年者と成年被後見人に催告しても、意思表示の受領能力がないので効果は生じません(98条の2参照)。
- 行為能力者となった本人(20条1項)確答を発しなければ追認擬制
- 法定代理人・保佐人・補助人(20条2項)権限内の行為について確答を発しなければ追認擬制
- 特別の方式を要する行為(20条3項)後見監督人の同意を要する行為などは、方式を具備した旨の通知を発しなければ取消し擬制
- 被保佐人・同意権付与の審判を受けた被補助人(20条4項)保護者の追認を得た旨の通知を発しなければ取消し擬制
- 未成年者・成年被後見人催告しても効果は生じません
特別の方式を要する行為では方式を備えた旨の通知がなければ取消しとみなされますが、保佐監督人の同意はこれに当たりません
20条3項は、特別の方式を要する行為については、期間内にその方式を具備した旨の通知を発しないときは取り消したものとみなすと定めています。後見人が被後見人に代わって13条1項の行為をするには、後見監督人があるときはその同意を得なければならない(864条)ので、この同意が特別の方式の例です。もっとも保佐人については864条が準用されていないので、保佐監督人がいても保佐人の追認は特別の方式を要する行為に当たりません。保佐人が確答を発しなければ20条2項により追認したものとみなされ、「保佐人が保佐監督人の同意を得てその期間内に追認の確答を発しなければ,当該売買契約を取り消したものとみなされる」という肢は誤りです。
行為能力者であると信じさせるため詐術を用いた制限行為能力者は取り消せませんが、錯誤による取消しは妨げられません
21条は、制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができないと定めています。相手方をだました者まで保護する必要はないからです。成年被後見人も除かれていないので、「成年被後見人は,行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときであっても,その行為を取り消すことができる」という肢は誤りです。判例は、制限行為能力者であることを黙っていただけでは詐術に当たらないが、他の言動と相まって相手方を誤信させ、又は誤信を強めた場合は詐術に当たるとしています(最判昭和44年2月13日)。法定代理人の同意があると偽った場合も、21条の趣旨が及ぶので取り消せなくなります。「未成年者が、親権者の同意があると誤信させるために詐術を用いて契約を締結した場合、その契約は取り消すことができる」という肢は誤りです。他方で、21条が奪うのは行為能力の制限を理由とする取消権だけで、錯誤は別の目的の制度なので、要素の錯誤があれば錯誤による取消し(出題当時は無効)を主張できます。「錯誤による無効を主張することはできない」という肢は誤りです。
民法20条1項
制限行為能力者の相手方は、その制限行為能力者が行為能力者(行為能力の制限を受けない者をいう。以下同じ。)となった後、その者に対し、一箇月以上の期間を定めて、その期間内にその取り消すことができる行為を追認するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、その者がその期間内に確答を発しないときは、その行為を追認したものとみなす。
民法20条4項
制限行為能力者の相手方は、被保佐人又は第十七条第一項の審判を受けた被補助人に対しては、第一項の期間内にその保佐人又は補助人の追認を得るべき旨の催告をすることができる。この場合において、その被保佐人又は被補助人がその期間内にその追認を得た旨の通知を発しないときは、その行為を取り消したものとみなす。
民法21条
制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができない。
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