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用語集 / 民法 / 契約の成立

契約の成立(申込みと承諾・到達主義・意思実現)とは

けいやくのせいりつ

民法 契約総論

契約の成立とは、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(申込み)に対して相手方が承諾をしたときに、契約が効力を持つ合意として成り立つことです。法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式は要りません(522条)。

店先で「これをください」「はい、どうぞ」と言葉を交わせば、それだけで売買契約は成り立ちます。契約書を作らなくても、申込みと承諾がかみ合えば契約は成立するのが原則です。手紙やメールで離れた相手とやり取りする場合は、承諾がいつ契約を成立させるかが問題になります。現在の民法は、承諾の通知が申込者に届いた時に契約が成立するとしています。通信が速くなった今では、届くまで待っても取引は滞らないので、意思表示の一般原則にそろえたのです。

古い日本家屋の玄関先の郵便受けの前の場面。先生が掛け軸を買いたい人の役(札「申込者」)で、郵便受けから封筒を取り出して読んでいる。封筒の表書き「承諾します 掛け軸甲を100万円で」。玄関の柱に日めくりカレンダー「4月6日」。先生の吹き出し「

契約は申込みと承諾が合致した時に成立し、原則として書面などの方式は要りません

522条1項は、契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(申込み)に対して相手方が承諾をしたときに成立すると定めています。申込みといえるには、相手方が「はい」と答えれば契約が成り立つ程度に内容が示されていなければなりません。売買の目的物も代金も示さずに「お譲りくださるお気持ちはありませんでしょうか」と尋ねる手紙は、相手方に申込みを促す申込みの誘引にとどまります。この場合は、相手方が「100万円でよろしければ甲をお譲りします」と返事をしたのが申込みで、それに対する「ありがとうございます」という返事が承諾です。司法2009の事例でこの承諾の手紙は4月7日に出され4月9日に届いたので、「甲の売買契約は4月4日に成立する」という肢は誤りです(現在の結論は到達した4月9日です)。贈与(549条)も、どちらが先に申し入れたかを問わず意思の合致で成立するので、「贈与を受ける者が贈与の申込みをし,相手方がこれを承諾しても贈与の効力は生じない」という肢は誤りです。522条2項により、法令に特別の定めがある場合を除いて書面の作成その他の方式は要りません。書面が要る契約は別の語で一覧にしています。

承諾も到達主義によるので、承諾の通知が申込者に届いた時に契約が成立します

意思表示は、その通知が相手方に到達した時から効力を生じます(97条1項)。平成29年の債権法改正(令和2年4月施行)前は、隔地者間の契約は承諾の通知を発した時に成立するという特則(旧526条1項)がありましたが、改正で削除され、承諾も到達主義に一本化されました。司法2009の事例で、「甲を100万円でお譲りください」という申込みに対しBが4月4日に承諾の手紙を出し、4月6日にAに届いた場合に「甲の売買契約が4月6日に成立する」という肢は、現在は正しいです。出題当時は発信した4月4日に成立したので、正解は誤りでした。同じ理由で、「隔地者間の契約が成立するのは,承諾の意思表示が相手方に到達した時である」という肢も、出題当時は誤りでしたが、現在は正しいです。承諾も到達するまでは効力を生じないので、承諾の通知を発した後に承諾を撤回する通知を発し、これが先に届けば承諾は効力を生じません。そのため、「Bがその後に承諾を撤回する通知を発し、これが承諾の通知よりも先にAに到達したときであっても、契約が成立する」という肢は誤りです。承諾期間の定めのある申込みでは、改正前から期間内に承諾の通知が届くことが必要だったので、「その承諾の通知が申込者に到達しなかったときであっても,契約は成立し」という肢は、出題当時も現在も誤りです。

教室の黒板の前の場面。黒板に左から右へ時間の矢印を引き、目盛りに「4/1 申込みを発信」「4/3 申込みが到達」「4/4 承諾を発信」「4/6 承諾が到達」と書く。「4/4」の上に小さく「改正前の成立日(発信主義)」、「4/6」の上に大きく

申込みに変更を加えた承諾は、申込みの拒絶とともに新たな申込みをしたものとみなされます

528条は、承諾者が申込みに条件を付し、その他変更を加えてこれを承諾したときは、その申込みの拒絶とともに新たな申込みをしたものとみなすと定めています。内容が合致しない以上は承諾にならない一方で、変更後の内容なら契約してよいという意思は表れているので、法はこれを新たな申込みとして扱います。「承諾者が申込みに条件を付して承諾し,その他変更を加えてこれを承諾したときは,その申込みの拒絶とともに新たな申込みをしたものとみなされる」という肢は正しいです。司法2009の事例で、100万円の申込みに対しBが「120万円でよろしければ甲をお譲りします」と返事をした場合は、この返事が新たな申込みになり、Aが4月7日に出し4月9日に届いた「それでは120万円で甲をお譲りください」という手紙が承諾になります。したがって、「甲の売買契約が4月7日に成立する」という肢は、現在は誤りで、成立は4月9日です。出題当時は承諾を発信した4月7日に成立したので、正解は正しいでした。

承諾期間を過ぎて届いた承諾では契約は成立せず、申込者はその承諾を新たな申込みとみなすことができます

承諾の期間を定めてした申込みは、申込者がその期間内に承諾の通知を受けなかったときは効力を失います(523条2項)。承諾期間を申込みから1週間と定めた申込みに対し、Bが申込みから10日後に承諾した場合は、申込みがすでに効力を失っているので契約は成立していません(司法2020の「契約が成立していないもの」に当たります)。もっとも、申込者は、遅延した承諾を新たな申込みとみなすことができ(524条)、これに承諾すれば契約が成立します。「申込者は,遅延した承諾を新たな申込みとみなすことができる」という肢は正しいです。改正前は、通常なら期間内に届くはずだった承諾が延着したとき、申込者が延着の通知をしなければ期間内に届いたものとみなす制度(旧522条)がありましたが、改正で削除されました。そのため、「Aが遅滞なくBに対して承諾の通知が延着したことを通知しなければ、期間内に到達したものとして契約が成立する」という肢は誤りです。

承諾の通知を必要としない場合は、承諾の意思表示と認めるべき事実があった時に契約が成立します

527条は、申込者の意思表示又は取引上の慣習により承諾の通知を必要としない場合には、契約は、承諾の意思表示と認めるべき事実があった時に成立すると定めています。申込みに沿う行為そのものを承諾とみて成立を認めるもので、意思実現と呼ばれます。注文書に「返事は要らないので製造に着手してください」とある場合の製造の着手、返信不要として商品の発送を求められた場合の発送、宿泊の申込みを受けた旅館が客室を用意することがその例です。「申込者の意思表示又は取引上の慣習により承諾の通知を必要としない場合には,契約は,承諾の意思表示と認めるべき事実があった時に成立する」という肢は正しいです。成立の時期は製造に着手した時であって、申込者がそれを知った時ではないので、「Aが着手の事実を知るまでは、契約は、成立しない」という肢は誤りです。

契約の成立の時に履行が不能であっても、そのことだけで契約は無効になりません

改正前は、契約の時にすでに目的物が滅失しているなど給付が不能な契約(原始的不能)は無効と解されるのが一般でした。412条の2第2項は、契約に基づく債務の履行がその契約の成立の時に不能であったことは、415条によりその履行の不能によって生じた損害の賠償を請求することを妨げないと定め、原始的不能の契約も有効に成立することを前提にしています。そのため、「売買契約の締結の前日に甲が焼失していたときは,当該売買契約は効力を生じない」という肢は誤りです。買主は履行を請求できませんが(412条の2第1項)、債務不履行の一般原則に従って損害賠償を請求したり契約を解除したりできます。原始的不能と代償請求権、契約交渉の段階で生じる説明義務などの責任は、債権の効力の語で扱います。

民法522条

契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。2 契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。

民法527条

申込者の意思表示又は取引上の慣習により承諾の通知を必要としない場合には、契約は、承諾の意思表示と認めるべき事実があった時に成立する。

民法528条

承諾者が、申込みに条件を付し、その他変更を加えてこれを承諾したときは、その申込みの拒絶とともに新たな申込みをしたものとみなす。

試験ではこう問われる

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