保証人の抗弁と主債務者との影響関係(452条・453条・457条・458条)とは
ほしょうにんのこうべんとしゅさいむしゃとのえいきょうかんけい
保証人の抗弁とは、債権者から履行を請求された保証人が主張できる防御で、催告の抗弁・検索の抗弁(452条・453条)と、主たる債務者の抗弁の援用・相殺権等による履行拒絶(457条2項・3項)があります。主たる債務者に生じた事由は原則として保証人に及び、保証人に生じた事由は原則として主たる債務者に及びません。
保証人は、主たる債務者が払わないときに代わりに払う立場です。そのため、主たる債務者に請求も執行もしないでいきなり保証人に請求されたら、まず本人に請求してほしいと言えますし、本人が持っている言い分は保証人も使えます。逆に、保証人に請求したり保証人が承認したりしても、それは保証人だけの話で、主たる債務者の債務には影響しません。保証債務が主たる債務に従う債務であることから、影響は主たる債務者から保証人への一方向に流れるのが原則です。
単純保証人は催告の抗弁と検索の抗弁を持ちますが、連帯保証人はどちらも持ちません
債権者が保証人に債務の履行を請求したときは、保証人は、まず主たる債務者に催告をすべき旨を請求できます(452条本文)。主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたとき、又はその行方が知れないときは、この催告の抗弁は使えません(同条ただし書)。債権者が主たる債務者に催告をした後でも、保証人が主たる債務者に弁済をする資力があり、かつ、執行が容易であることを証明したときは、債権者はまず主たる債務者の財産について執行しなければなりません(453条)。「主たる債務者に弁済の資力があること及び主たる債務者の財産が執行の容易なものであることを証明する必要がある」という肢は正しいです。保証人の請求又は証明があったのに、債権者が催告又は執行を怠ったために主たる債務者から全部の弁済を得られなかったときは、保証人は、債権者が直ちに催告又は執行をすれば弁済を得ることができた限度で、その義務を免れます(455条)。「債権者が直ちに催告をすれば弁済を得ることができた限度において,その義務を免れる」という肢は正しいです。保証人が主たる債務者と連帯して債務を負担したときは、催告の抗弁と検索の抗弁を有しません(454条)。
保証人は主たる債務者の抗弁を対抗でき、主たる債務者が相殺権・取消権・解除権を持つときはその限度で履行を拒めます
保証人は、主たる債務者が主張することができる抗弁をもって債権者に対抗できます(457条2項)。主たる債務者が債権者に対して相殺権、取消権又は解除権を有するときは、これらの権利の行使によって主たる債務者がその債務を免れるべき限度において、保証人は債権者に対して債務の履行を拒むことができます(457条3項)。主たる債務者が反対債権を持っているのに保証人が常に払わなければならないわけではないので、「保証人は,債権者から保証債務の履行を請求されたときは,保証債務を履行しなければならない」という肢は誤りです。改正前の旧457条2項は、保証人は主たる債務者の債権による相殺をもって債権者に対抗できると定めていました。そのため、「主たる債務者がその有する債権をもって相殺するまでは,債権者に対して相殺を対抗することができない」という肢と、「主たる債務者の意思に反して保証人となった者は,主たる債務者が債権者に対して有する債権と保証債権との相殺をもって債権者に対抗することができない」という肢は誤りとされました。現在は、保証人は他人の債権で相殺することはできず、履行を拒めるにとどまりますが、主たる債務者の相殺を待つ必要がないこと、主たる債務者の意思に反して保証したかどうかで区別しないことは同じです。旧457条2項を、保証人に主たる債務者の債権で相殺する権限を与えたものと考える見解からは、保証人は相殺の意思表示によって債務を消滅させることになり、履行を拒絶する抗弁権を有するとするのは別の見解の帰結です。この見解の組合せとして、「保証人は,対当額について保証債務の履行を拒絶する抗弁権を有すると解することになる」という肢は誤りとされました。現行法は履行拒絶の形を採っています。
主たる債務者に生じた時効の完成猶予・更新や免除、債権の譲渡は、付従性・随伴性により保証人にも効力を生じます
主たる債務者に対する履行の請求その他の事由による時効の完成猶予及び更新は、保証人に対しても、その効力を生じます(457条1項)。主たる債務者が時効完成前に債務の一部を弁済すれば承認として主たる債務の時効が更新され、保証人にも及ぶので、保証人が保証債務の消滅時効を援用したのに対し、「主たる債務の消滅時効が完成する前にBがその債務の一部を弁済したことは,時効中断の再抗弁となる」という肢は正しいです。現在の言葉では時効の更新の再抗弁と言い換えられます。主たる債務が免除で消滅すれば保証債務も付従性で消滅し、連帯保証でも同じです。「主たる債務者について債務の免除があった場合には,連帯保証人の債務は消滅する」という肢と、「債権者が主たる債務者に対し債務を免除したときは、連帯保証人の債務は、消滅する」という肢は正しいです。保証付きの債権が譲渡されると保証債権も随伴して移転し、主たる債務者への通知又はその承諾があれば保証人に別に通知しなくても譲受人は保証人に請求できます(最判昭和45年4月21日・大判大正3年5月30日)。「保証人に対して通知をしなくても,譲受人は保証人に対して保証債務の履行を請求することができる」という肢は正しく、「Cに対する債権譲渡の通知がされるまで保証債務を弁済しない旨の抗弁を提出して請求棄却の判決を得ることができる」という肢は誤りです。
保証人に生じた事由は主たる債務者に及ばず、連帯保証人でも更改・相殺・混同を除き相対的効力にとどまります
保証人に対する請求や保証人の承認は、主たる債務の時効に影響しません。連帯保証人について生じた事由には、438条(更改)・439条1項(相殺)・440条(混同)・441条(相対的効力の原則)が準用されます(458条)。「保証人に対する履行の請求による時効の中断は,主たる債務者に対しても効力を生ずる」という肢と、「債権者に対して保証債務を承認したときは,主たる債務についての消滅時効が中断する」という肢は誤りです。保証人の一部弁済は保証債務の時効を更新するだけなので、保証人が主たる債務の消滅時効を援用したのに対し、「主たる債務の消滅時効が完成する前にCが保証債務の一部を弁済したことは,時効中断の再抗弁となる」という肢は誤りです。連帯保証人を訴えても主たる債務者との関係で時効の完成は猶予されないので、「Bとの関係でも,時効の完成が猶予される」という肢は誤りです。改正前は、旧458条が準用する旧434条により連帯保証人に対する請求は主たる債務者にも効力を生じたので、「債権者から保証債務の履行を裁判上請求されたときは,主たる債務についての消滅時効が中断する」という肢は、出題当時は正しいとされましたが、現在は誤りです。保証人が自己の債権で相殺を援用すれば、債権者は弁済を受けたのと同じ満足を得るので、主たる債務も対当額で消滅します。「主たる債務は対当額において消滅する」という肢は正しいです。保証人が債権者を単独で相続すれば、保証債権と保証債務が同一人に帰属して混同で消滅します(520条、連帯保証では458条・440条)。「Cの保証債務は消滅する」という肢と、「保証人が債権者を相続したときは,保証債務は消滅する」という肢は正しいです。
- 主たる債務者に生じた事由原則として保証人にも及ぶ(付従性・457条1項)。時効の完成猶予・更新、免除、債権の譲渡
- 単純保証人に生じた事由主たる債務者に及ばない。請求・承認・一部弁済による時効の更新は保証債務だけ
- 連帯保証人に生じた事由(458条)更改・相殺・混同は主たる債務者にも及ぶ。請求・承認・免除などは相対的効力(441条)
保証人は主たる債務の消滅時効を自ら援用でき、主たる債務者が時効の利益を放棄しても援用できます
保証人は、権利の消滅について正当な利益を有する者として、主たる債務の消滅時効を援用できます(145条)。主たる債務者が援用していなくても保証人は援用でき、主たる債務者が援用すれば保証人はその効果を主張できます。「Bが主たる債務の消滅時効を援用したことを抗弁として主張することができる」という肢と、「Bが主たる債務の消滅時効を援用していない場合でも,主たる債務の消滅時効を援用して抗弁を主張することができる」という肢は正しいです。時効の援用の効果は援用した者との関係でだけ生じるので(大判大正8年6月24日)、保証人が援用しても主たる債務者が援用しない限り、債権者は主たる債務者に請求できます。「Bが消滅時効を援用しない限り,AはBに対して1000万円の支払を請求することができる」という肢は正しいです。時効の利益の放棄も相対的な効力しかないので、主たる債務者が放棄しても保証人は援用できます(大判大正5年12月25日)。「Cは,もはや時効の援用をすることができない」という肢は誤りです。判例は、保証人が主たる債務を相続したことを知りながら保証債務を弁済した場合、その弁済は、特段の事情のない限り、主たる債務者による承認として主たる債務の消滅時効を中断する効力を有するとしています(最判平成25年9月13日)。「その弁済は,特段の事情のない限り,主たる債務者による承認として,Cが相続したAのBに対する債務についての消滅時効を更新する効力を有する」という肢は正しいです。
民法457条3項
主たる債務者が債権者に対して相殺権、取消権又は解除権を有するときは、これらの権利の行使によって主たる債務者がその債務を免れるべき限度において、保証人は、債権者に対して債務の履行を拒むことができる。
民法458条
第四百三十八条、第四百三十九条第一項、第四百四十条及び第四百四十一条の規定は、主たる債務者と連帯して債務を負担する保証人について生じた事由について準用する。
民法453条
債権者が前条の規定に従い主たる債務者に催告をした後であっても、保証人が主たる債務者に弁済をする資力があり、かつ、執行が容易であることを証明したときは、債権者は、まず主たる債務者の財産について執行をしなければならない。
論文ではこう使う
論文では、債権者が保証人に履行を請求した場面で、保証人の反論として使います。主たる債務の時効消滅(145条で保証人も援用権者)、主たる債務者の相殺権・取消権・解除権による履行拒絶(457条3項)、単純保証なら催告・検索の抗弁(452条・453条)を順に検討し、債権者の再反論として主たる債務者に生じた時効の更新が保証人に及ぶこと(457条1項)を示します。連帯保証人への請求が主たる債務者に及ばないこと(458条・441条)も、時効の主張が絡む事案で確かめます。
この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。