保証人の求償(459条〜465条)と物上保証人とは
ほしょうにんのきゅうしょう
保証人の求償とは、保証人が債務の消滅行為をしたときに主たる債務者に償還を求めることで、委託を受けた保証人は支出額と法定利息等を求償でき、委託を受けない保証人は主たる債務者が当時利益を受けた限度、意思に反する保証人は現に利益を受けている限度で求償できます(459条〜462条)。
保証人が主たる債務者に代わって払えば、払った分を主たる債務者に返してもらえます。これが保証人の求償です。どこまで返してもらえるかは、主たる債務者に頼まれて保証したのか、頼まれずに保証したのか、さらに主たる債務者が嫌がっていたのに保証したのかで違います。頼まれた保証人は、まだ払う前でも一定の場合に前もって求償できます。他人の借金のために自分の土地に抵当権を付けた物上保証人には、この前もっての求償は認められていません。
求償の範囲は、委託を受けた保証人・委託を受けない保証人・主たる債務者の意思に反する保証人で異なります
委託を受けた保証人が主たる債務者に代わって弁済その他の債務の消滅行為をしたときは、支出した財産の額(消滅した主たる債務の額を超えるときはその額)の求償権を有し、法定利息や避けられなかった費用その他の損害の賠償も含まれます(459条1項・2項)。この求償には保証人の過失がないことは要件になっていません。「そのいずれのときでも保証人に過失がないときに限り,その保証人は主たる債務者に対して求償権を有する」という肢は、弁済後の求償にまで無過失を要求している点で誤りです。委託を受けない保証人は、主たる債務者がその当時利益を受けた限度で求償でき(462条1項・459条の2第1項)、主たる債務者の意思に反して保証をした者は、主たる債務者が現に利益を受けている限度においてのみ求償できます(462条2項)。「Aが現に利益を受けている限度でのみ,Aに対して求償をすることができる」という肢は正しく、意思に反した保証人について「その弁済の当時に主たる債務者が利益を受けた限度において求償権を有する」という肢は誤りです。連帯債務者の一人のために保証をした者は、その連帯債務者には全額を求償でき、他の連帯債務者に対しては、その負担部分のみについて求償権を有します(464条)。「その連帯債務者に対し,その者の負担部分についてのみ求償権を有する」という肢は誤りです。
- 委託を受けた保証人(459条)支出額+免責日以後の法定利息・避けられなかった費用その他の損害
- 委託を受けた保証人の弁済期前の弁済(459条の2)当時利益を受けた限度。行使は弁済期以後
- 委託を受けない保証人(462条1項)主たる債務者がその当時利益を受けた限度
- 主たる債務者の意思に反する保証人(462条2項)主たる債務者が現に利益を受けている限度
- 連帯債務者の一人のための保証人(464条)その連帯債務者には全額、他の連帯債務者には負担部分だけ
委託を受けた保証人は、債務が弁済期にあるときや過失なく弁済を命じる判決を受けたときに事前求償ができますが、物上保証人にはできません
保証人は、主たる債務者の委託を受けて保証をした場合に、主たる債務者が破産手続開始の決定を受け債権者がその配当に加入しないとき、債務が弁済期にあるとき、保証人が過失なく債権者に弁済をすべき旨の裁判の言渡しを受けたときは、主たる債務者に対して、あらかじめ求償権を行使できます(460条)。「主たる債務が弁済期にあるときは,自ら弁済をする前であっても主たる債務者に対して求償権を行使することができる」という肢と、「過失なく債権者に弁済をすべき旨の裁判の言渡しを受けたときは,その保証人は,主たる債務者に対して求償権を有する」という肢は正しいです。無過失が要件になるのは、この裁判の言渡しによる事前求償の場合です。判例は、債務者の委託を受けてその債務を担保するため抵当権を設定した物上保証人は、被担保債権の弁済期が到来しても、債務者に対してあらかじめ求償権を行使できないとしています(最判平成2年12月18日)。物上保証の委託は物権設定行為の委任にすぎず債務負担行為の委任ではないこと、求償権の範囲も存在も抵当不動産の売却代金の配当で初めて確定することが理由です。「あらかじめ求償権を行使することができない」という肢は正しく、「Aに対しあらかじめ求償権を行使することができる」という肢は誤りです。
委託を受けた保証人が事前の通知をせずに弁済すると、主たる債務者は債権者に対抗できた相殺などの事由で求償を拒めます
保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合に、主たる債務者にあらかじめ通知しないで債務の消滅行為をしたときは、主たる債務者は、債権者に対抗することができた事由をもってその保証人に対抗できます(463条1項前段)。相殺をもって対抗したときは、保証人は債権者に対し、相殺によって消滅すべきであった債務の履行を請求できます(同項後段)。主たる債務者Aが債権者に300万円の反対債権を持っていたのに、Cが通知せずに500万円を弁済したときは、Aは300万円の範囲で求償を拒めます。「相殺をすることができる地位にあったことを主張して,300万円の範囲でこれを拒むことができる」という肢と、「その反対債権との相殺をもって,求償権の行使をするCに対抗することができる」という肢は正しいです。主たる債務者が弁済したのに通知を怠ったため、保証人が善意で弁済したときに自己の弁済を有効とみなせるのは、委託を受けた保証人だけです(463条2項)。委託を受けない保証人の存在を主たる債務者は通常知らないからです。「保証人は,その弁済を有効とみなすことができる」という肢(委託を受けない保証人)は誤りです。
共同保証人は原則として分別の利益を持ちますが、連帯保証人は持たず、共同保証人間の求償は自己の負担部分を超えて弁済したときに限られます
数人の保証人がある場合には、各別の行為により債務を負担したときでも427条が適用され、各保証人は頭数で分けた額だけの保証債務を負います(456条)。これを分別の利益といいます。連帯保証人は分別の利益を持たず、各自が全額の保証債務を負います(大判大正6年4月28日)。「CとDが負う連帯保証債務の額は各500万円となる」という肢と、「貸金債務甲の額の2分の1となる」という肢は誤りです。主たる債務が不可分であるため又は各保証人が全額を弁済すべき旨の特約があるため、一人の保証人が全額又は自己の負担部分を超える額を弁済したときは、連帯債務者間の求償の規定(442条から444条)が準用されます(465条1項)。連帯債務者と違い、自己の負担部分を超えない弁済では他の保証人に求償できません。「その額が自己の負担部分を超えるかどうかにかかわらず,他の連帯保証人に対して求償をすることができる」という肢は誤りで、負担部分50万円のAが20万円を弁済した事例で「Bに10万円を求償することができない」という肢は正しいです。互いに連帯しない保証人の間では、委託を受けない保証人の求償の規定(462条)が準用されるだけで(465条2項)、検索の抗弁は準用されません。「債権者に弁済をした保証人は,まず主たる債務者に求償権を行使しなければならない」という肢は誤りです。
民法460条柱書
保証人は、主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、次に掲げるときは、主たる債務者に対して、あらかじめ、求償権を行使することができる。
民法462条2項前段
主たる債務者の意思に反して保証をした者は、主たる債務者が現に利益を受けている限度においてのみ求償権を有する。
民法465条1項
第四百四十二条から第四百四十四条までの規定は、数人の保証人がある場合において、そのうちの一人の保証人が、主たる債務が不可分であるため又は各保証人が全額を弁済すべき旨の特約があるため、その全額又は自己の負担部分を超える額を弁済したときについて準用する。
論文ではこう使う
論文では、物上保証人が債務者に事前求償を求めた場面で使います。委託を受けた保証人の事前求償権(460条)は、保証の委託が債務負担行為の委任で受任者の費用前払請求に類することに根拠があると示し、物上保証の委託は物権設定行為の委任にすぎないこと、求償権の範囲も存在も競売の配当で初めて確定することから、460条の類推適用は否定されるとする判例に当てはめます。事後求償は物上保証人にも認められます(372条・351条)。
この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。