保証債務の成立と性質(446条〜449条・付従性・随伴性・補充性)とは
ほしょうさいむのせいりつとせいしつ
保証債務とは、主たる債務者がその債務を履行しないときに保証人がその履行をする責任を負う債務で、債権者と保証人の間の書面による保証契約で成立し(446条)、主たる債務に従う付従性、債権の移転に伴う随伴性、まず主たる債務者に請求させる補充性を持つ債務です。
友人の借金の保証人になってほしいと頼まれ、その場の情で引き受けてしまい、後で全額の請求を受けて困る人は少なくありません。民法は、保証人が軽い気持ちで重い責任を負わないように、保証契約は書面でしなければ効力を生じないとしています。保証債務は主たる債務を担保するための債務なので、主たる債務が消えれば消え、主たる債務より重くなることもありません。連帯の特約がなければ、まず主たる債務者に請求するよう求めることもできます。
保証契約は債権者と保証人の間の契約で、書面又は電磁的記録でしなければ効力を生じません
保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負います(446条1項)。保証債務を生じさせる保証契約の当事者は債権者と保証人で、主たる債務者の委託は要らず、主たる債務者の意思に反しても保証できます(462条2項はそれを前提にしています)。保証契約は、書面でしなければその効力を生じず(446条2項)、その内容を記録した電磁的記録によってされたときは書面によってされたものとみなされます(同条3項)。単純保証も連帯保証も同じなので、「単純保証契約であれば書面によらなくても効力を生じる」という肢は誤りです。「保証契約は,書面でしなければ効力を生ぜず,電磁的記録によってされたときは,書面によってされたものとみなされる」という肢と、「書面又はその内容を記録した電磁的記録によってされなければ,その効力を生じない」という肢は正しく、「電磁的記録によってされたときは、その効力を生じない」という肢は誤りです。債務者が保証人を立てる義務を負う場合の保証人は、行為能力者で弁済の資力を有する者でなければなりませんが、債権者が保証人を指名した場合はこの要件は適用されません(450条)。「債権者が保証人を指名した場合でも,行為能力者であることを要する」という肢は誤りです。不動産の売主の引渡債務のような不代替的な債務も、不履行で損害賠償債務に変わることに備えて保証できるので、「不動産の売買契約における売主の債務を保証することはできない」という肢は誤りです。
連帯保証は債権者と保証人の間の連帯の特約で成立し、主たる債務者との間の特約は要りません
保証人が主たる債務者と連帯して債務を負担したときは、催告の抗弁と検索の抗弁を有しません(454条)。この連帯保証も保証契約の一種なので、連帯の特約は契約の当事者である債権者と保証人の間でされれば足ります(大判大正6年9月25日)。「AC間で連帯保証契約が締結されるのに加えて,BC間で連帯の特約がされた場合である」という肢と、「BC間のみならず、AC間においても連帯の特約がされなければ,Cは,連帯保証債務を負担しない」という肢は、いずれも主たる債務者との特約を要求している点で誤りです。連帯保証を、補充性を奪って債権者の権利を強めるために保証契約に付ける特約と考えると、債権者は請求原因で保証契約の成立を主張立証すれば足り、連帯の約定は保証人の催告・検索の抗弁に対する再抗弁になります。この考え方からの帰結として、「連帯の約定は,請求原因で主張立証する必要はなく,催告又は検索の抗弁に対する再抗弁となる」という肢は正しいとされました。
- 付従性(成立・内容・消滅)主たる債務がなければ成立せず、主たる債務より重くならず(448条)、主たる債務が消滅すれば消滅する
- 随伴性主たる債務の債権が譲渡されれば、保証債務も譲受人に移る
- 補充性催告の抗弁(452条)・検索の抗弁(453条)。連帯保証にはない(454条)
- 要式性書面又は電磁的記録でしなければ効力を生じない(446条2項・3項)
保証債務は主たる債務より重くなりませんが、保証債務についてだけ違約金や損害賠償の額を約定することはできます
保証債務は、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たるすべてのものを包含します(447条1項)。保証人の負担が債務の目的又は態様において主たる債務より重いときは主たる債務の限度に減縮され(448条1項)、主たる債務の目的又は態様が保証契約の締結後に加重されても保証人の負担は加重されません(同条2項)。他方、保証人は、その保証債務についてのみ、違約金又は損害賠償の額を約定できます(447条2項)。これは保証債務の履行を確保するための約定で、主たる債務の内容を重くするものではないからです。「BC間の保証契約において違約金の定めをすることはできない」という肢と、「保証債務についてのみ違約金を約定することができない」という肢は誤りで、「保証人の負担は,主たる債務者の負担より重くなることがある」という肢は正しいです。主たる債務の弁済期限が延長されると、保証人に不利にならないので、その効力は保証債務にも及びます(大判明治40年6月18日)。「主たる債務につき期限が延長されても,その効力は保証債務には及ばない」という肢は誤りです。
特定物の売主のための保証人は、特に反対の意思表示がない限り、解除による売主の代金返還義務についても責任を負います
判例は、特定物の売買における売主のための保証は、通常、売主の債務不履行に基因して売主が買主に対し負担することのある債務について責任を負う趣旨でされるものと解されるので、保証人は、債務不履行による損害賠償義務はもちろん、特に反対の意思表示のない限り、売主の債務不履行により契約が解除された場合の原状回復義務についても保証の責任を負うとしています(最大判昭和40年6月30日)。「売主のための保証人は,反対の特約のない限り,当該代金返還義務について保証の責任を負う」という肢と、「Cは、Aの代金返還債務について保証の責任を負う」という肢は正しいです。原状回復義務を本来の債務と同一性のない別個の債務と解しても、保証の範囲を当事者の意思解釈の問題と考えれば同じ結論を導けます。この考え方からの帰結として、「原状回復義務についても保証の責任を負うと解することは可能である」という肢は正しいとされました。
制限行為能力を理由に取り消せる債務を保証した者は取消権を持たず、取消原因を知って保証したときは独立の債務を負担したものと推定されます
取消権を行使できるのは制限行為能力者とその代理人・承継人・同意権者に限られるので(120条1項)、保証人は、保証人の資格で主たる債務者の行為を取り消すことはできません(大判昭和20年5月21日)。保証契約の時に主たる債務者が未成年者であることを知らなかったかどうかは関係ないので、「未成年者のした貸金契約を保証人としての資格で取り消すことはできない」という肢は正しいです。保証人は、主たる債務者が取消権を有するときは、その行使によって主たる債務者が債務を免れる限度で履行を拒めるだけです(457条3項)。行為能力の制限によって取り消すことができる債務を保証した者は、保証契約の時にその取消しの原因を知っていたときは、主たる債務の不履行の場合又はその債務の取消しの場合において、これと同一の目的を有する独立の債務を負担したものと推定されます(449条)。「Aの負担していた債務と同一の目的を有する独立の債務を負担したものと推定される」という肢と、「これと同一の目的を有する独立の債務を負担したものと推定される」という肢は正しいです。効果は「みなす」ではなく「推定する」です。
民法446条2項
保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない。
民法447条2項
保証人は、その保証債務についてのみ、違約金又は損害賠償の額を約定することができる。
民法449条
行為能力の制限によって取り消すことができる債務を保証した者は、保証契約の時においてその取消しの原因を知っていたときは、主たる債務の不履行の場合又はその債務の取消しの場合においてこれと同一の目的を有する独立の債務を負担したものと推定する。
論文ではこう使う
論文では、売買契約が売主の債務不履行で解除された場面で、売主のための保証人に買主が代金の返還を求めることができるかとして使います。保証債務の範囲(447条1項)を示したうえで、解除による原状回復義務は本来の債務と同一とはいえないという問題を立て、保証の範囲は当事者の意思解釈で決まり、特定物の売主のための保証は債務不履行に基因する売主の債務を担保する趣旨と解されるから、特に反対の意思表示がない限り原状回復義務にも及ぶとする判例に当てはめます。
この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。