免除(519条)とは
めんじょ
免除とは、債権者が債務者に対して債務を免除する意思を表示することで、債権者の単独行為として債権を消滅させます(519条)。
友人に貸した1万円を「もう返さなくていいよ」と伝えれば、その借金は消えます。これが免除です。借りた側にとっては得になるだけなので、借りた側の承諾は要らず、貸した側が一方的に伝えれば効力を生じます。債権を手放すのは債権者の自由だからです。ただし、保証人や連帯債務者がいる場合には、免除が誰にどこまで及ぶかが問題になり、また債権が質に入っている場合のように、免除によって他人の権利を害することは許されません。
免除は債権者が債務者に免除の意思を表示するだけで効力を生じ、債務者の承諾や受益の意思表示は要りません
519条は、債権者が債務者に対して債務を免除する意思を表示したときは、その債権は消滅すると定めています。免除は債権者の一方的な意思表示による単独行為で、意思表示の内容どおりに債権消滅の効果が生じる法律行為です。「債権者が債務者に対してその債務を免除する旨を表示することは,法律行為に当たる」という肢は正しいです。債務者の承諾は要らないので、「債務者の承諾がなければ,その債務を免除することができない」という肢、「債務者の同意がなければ,免除の効果は発生しない」という肢、「Aの意思に反しては,本件債務を免除することができない」という肢は、いずれも誤りです。効果は免除の意思表示が債務者に到達した時に生じるので、「債務者が債権者に対して免除の利益を享受する意思を表示した時に発生する」という肢も誤りです。
免除は債務者に不利益を与えないので、免除の意思表示には条件を付けることができます
単独行為に条件を付けると相手方の地位が不安定になるので、相殺の意思表示には条件も期限も付けられません(506条1項)。しかし免除は債務者の債務を消すだけで、条件を付けても債務者に不利益はないので、条件を付けることができます。「債務の免除の意思表示には、条件を付することができない」という肢は誤りです。
主たる債務者に対する免除で保証人の債務も消滅しますが、連帯債務者の一人に対する免除は他の連帯債務者に影響しません
保証債務は主たる債務に付従するので、主たる債務が免除で消滅すれば、連帯保証人の債務も消滅します。「主たる債務者について債務の免除があった場合には,連帯保証人の債務は消滅する」という肢と、「債権者が主たる債務者に対し債務を免除したときは、連帯保証人の債務は、消滅する」という肢は正しいです。これに対し、連帯債務者の一人に対する免除は、債権者と他の連帯債務者が別段の意思を表示しない限り、他の連帯債務者に効力を生じません(441条)。「Cは、Bに60万円の支払を請求することができない」という肢は誤りです。BCDが300万円の連帯債務を負う場合にCの債務を全額免除しても、B及びDは300万円の連帯債務を負い続けるので、「B及びDは,Aに対し,300万円の連帯債務を負う」という肢は現在は正しいです。出題当時の旧437条は免除を負担部分の限度で絶対的効力事由としていたので、B及びDは200万円になり、この肢は誤りとされました。免除を受けた連帯債務者に対しても、弁済した他の連帯債務者は求償できます(445条)。連帯の免除(連帯債務者の一人の債務を負担部分の額に減らすこと)をしても、他の連帯債務者の債務額は変わらず、「AがCについて連帯の免除をしたときでも,B及びDは,Aに対し,300万円の連帯債務を負う」という肢は正しいです。連帯債権者の一人が免除をしたときは、その債権者に分与されるべき利益の部分について他の連帯債権者は履行を請求できない(433条)ので、平等の割合の連帯債権で一人が免除すれば、他の債権者は「30万円の限度でのみ支払を請求することができる」という肢は正しいです。
免除を忘れて弁済した債務者は返還を求めることができ、債権質の設定者が目的債権を免除することは担保価値維持義務に反します
免除で債権は消滅するので、その後の弁済は存在しない債務の弁済になり、債権者は不当利得として返還する義務を負います。705条は、債務の不存在を知って弁済した者の返還請求を否定するだけなので、免除を忘れて弁済した債務者は、知らなかったことに過失があっても返還を請求できます(大判昭和16年4月19日)。「債務者が債務の免除を受けたことを忘れて弁済したときは,債務者はその返還を求めることはできない」という肢は誤りです。債権が質権の目的とされた場合、質権設定者は質権者に対して目的債権の担保価値を維持すべき義務を負い、債権の放棄・免除・相殺・更改など債権を消滅・変更させる行為は、この義務に違反して許されません(最判平成18年12月21日)。「当該債権の担保価値を維持すべき義務の違反となる」という肢は正しいです。
民法519条
債権者が債務者に対して債務を免除する意思を表示したときは、その債権は、消滅する。
民法441条
第四百三十八条、第四百三十九条第一項及び前条に規定する場合を除き、連帯債務者の一人について生じた事由は、他の連帯債務者に対してその効力を生じない。ただし、債権者及び他の連帯債務者の一人が別段の意思を表示したときは、当該他の連帯債務者に対する効力は、その意思に従う。
この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。