代位者相互の関係・一部代位・担保保存義務(501条3項・502条・504条)とは
だいいしゃそうごのかんけいいちぶだいいたんぽほぞんぎむ
代位者相互の関係とは、保証人・物上保証人・第三取得者など代位できる者が複数いるときに、誰が誰にどの割合で代位できるかの規律で、あわせて一部代位(502条)と債権者の担保保存義務(504条)が定められています(501条3項)。
一つの借金に、保証人と、自分の土地を担保に出した物上保証人の両方がついていたとします。保証人が全額を払って債権者の抵当権を全部使えるとすると、物上保証人だけが土地を失います。逆も同じで、先に払った者が得をするのは不公平です。そこで民法は、代位できる者が複数いるときの割合を決め、損を頭数や担保の価格で分け合うようにしています。あわせて、一部だけ払った者と債権者の関係や、債権者が担保を手放した場合の扱いも定めています。
債務者から担保の目的物を譲り受けた第三取得者は保証人や物上保証人に代位しませんが、保証人は第三取得者に代位できます
501条3項1号は、第三取得者(債務者から担保の目的となっている財産を譲り受けた者)は、保証人及び物上保証人に対して債権者に代位しないと定めています。第三取得者は担保の負担を知って目的物を取得しているので、保証人や物上保証人に負担を回させないためです。「保証人に対して債権者に代位しない」という肢は正しいです。反対に、弁済した保証人は第三取得者に対して債権者に代位できます。出題当時の旧501条1号は、保証人は代位の付記登記をしなければ第三取得者に代位できないとしていましたが、弁済前に目的物を取得した第三取得者には付記登記は要らないとされていました(最判昭和41年11月18日)。現在は付記登記の規定が削除されています。弁済前に抵当不動産が譲渡されていれば保証人は「その第三者に対して債権者に代位することはできない」とする肢は、出題当時も現在も誤りです。第三取得者の間は各財産の価格に応じて代位し(501条3項2号)、第三取得者や物上保証人から目的物を譲り受けた者はそれぞれ第三取得者・物上保証人とみなされます(同項5号)。
保証人と物上保証人の間では頭数に応じて代位し、物上保証人が数人いれば保証人の負担部分を除いた残額を財産の価格に応じて分けます
501条3項4号は、保証人と物上保証人との間においては、その数に応じて債権者に代位し、物上保証人が数人あるときは、保証人の負担部分を除いた残額について、各財産の価格に応じて債権者に代位すると定めています。1,200万円の債権に保証人C、物上保証人D(900万円)、E(300万円)がいれば、Cは頭数3人の3分の1で400万円、残りの800万円をDとEが3対1で分けて600万円と200万円になり、「2対3対1となる」という肢は正しいです。保証人が全額を弁済しても、物上保証人に対しては頭数で割った限度でしか代位できないので、「当該債務者に対する求償権の全額について,甲土地に設定された抵当権を行使することができる」という肢は誤りです。保証人と物上保証人を兼ねる者は1人と数えるので(最判昭和61年11月27日)、900万円の債務で連帯保証人2人のうち1人が物上保証人を兼ねていれば頭数は2人で、他方の連帯保証人が代位する額は450万円になり、「600万円である」という肢は誤りです。物上保証の目的不動産が弁済の前に3人に共同相続されて共有になったときは、弁済の時の共有者をそれぞれ1人と数えるので(最判平成9年12月18日)、頭数は4人、1人あたり250万円で、連帯保証人が代位する額は3人分の「750万円である」という肢は正しいです。保証人と物上保証人がこの割合と異なる特約をすれば、その特約は後順位抵当権者などの利害関係人にも主張でき(最判昭和59年5月29日)、「その特約の効力を当該不動産の後順位抵当権者に主張することはできない」という肢は誤りです。
一部だけ代位弁済した者は債権者の同意を得て債権者とともに権利を行使し、担保の売却代金からは債権者が優先して配当を受けます
502条1項は、債権の一部について代位弁済があったときは、代位者は、債権者の同意を得て、その弁済をした価額に応じて、債権者とともにその権利を行使することができると定めています。債権者は単独で権利を行使でき(2項)、債権者が行使する権利は、担保の目的となっている財産の売却代金などについて代位者が行使する権利に優先します(3項)。債務不履行による契約の解除は債権者だけがすることができます(4項)。一部代位者は単独では行使できないので、「その弁済をした価額の限度において,代位により取得した被担保債権及びその担保権を単独で行使することができる」という肢は誤りです。配当では債権者が優先するので、「代位弁済者は債権者に劣後する」という肢は正しく、「按分して配当を受ける」という肢は誤りです。債務者所有と物上保証人所有の不動産に共同抵当が設定され、物上保証人の不動産が先に競売されて債権者が一部の満足を受けた場合も、物上保証人は一部代位者として債権者とともに債務者の不動産の抵当権を実行できますが、配当では債権者に劣後し(最判昭和60年5月23日)、「一部代位者として債権者と共に前者の不動産に設定された抵当権を実行することができるが,競落代金の配当においては債権者に劣後する」という肢は正しいです。出題当時は債権者の同意は条文上要件ではありませんでしたが、現在は502条1項により債権者の同意を得て行使することになり、配当で劣後するという結論は3項で明文化されています。これに対し、一つの抵当権が数個の債権を担保し、そのうち一つの債権の保証人がその債権の残額全部を弁済した場合は、一部代位ではなく、抵当権は債権者と保証人の準共有になり、特段の合意がなければ売却代金は残債権額と代位で取得した債権額に応じて按分されます(最判平成17年1月27日)。「債権者が有する残債権額と保証人が代位によって取得した債権額に応じて案分して弁済を受ける」という肢は正しいです。
債権者が故意又は過失で担保を失わせたり減らしたりすれば、代位権者は償還を受けられなくなった限度で責任を免れますが、合理的な理由があれば免れません
504条1項は、弁済をするについて正当な利益を有する者(代位権者)がある場合において、債権者が故意又は過失によってその担保を喪失し、又は減少させたときは、代位権者は、代位をするに当たって担保の喪失又は減少によって償還を受けることができなくなる限度において、その責任を免れると定めています。代位権者が物上保証人である場合は、その者から担保の目的となっている財産を譲り受けた第三者とその特定承継人も同じです。効果は責任を免れることであって、放棄された担保が復活するわけではないので、抵当権の放棄の後に弁済した保証人が「抵当権が放棄されていないものとして,その抵当権を行使することができる」とする肢は誤りです。2項は、担保の喪失又は減少について取引上の社会通念に照らして合理的な理由があると認められるときは1項を適用しないとしているので、故意に担保を減少させても合理的な理由があれば保証人は「免責を主張することはできない」という肢と、抵当権の放棄に合理的な理由があれば保証人は「保証債務の全部又は一部を免れない」という肢は正しいです。担保保存義務を免除する特約のために物上保証人に免責が生じていなかった場合、その後に目的物を譲り受けた第三取得者は、免責の効果が生じていない担保の負担のある物件を取得したことになるので、免責を主張できません(最判平成7年6月23日)。「債権者に対して担保の減少に基づく自己の免責を主張することはできない」という肢は正しいです。
民法501条
3 第一項の場合には、前項の規定によるほか、次に掲げるところによる。一 第三取得者(債務者から担保の目的となっている財産を譲り受けた者をいう。以下この項において同じ。)は、保証人及び物上保証人に対して債権者に代位しない。二 第三取得者の一人は、各財産の価格に応じて、他の第三取得者に対して債権者に代位する。三 前号の規定は、物上保証人の一人が他の物上保証人に対して債権者に代位する場合について準用する。四 保証人と物上保証人との間においては、その数に応じて、債権者に代位する。ただし、物上保証人が数人あるときは、保証人の負担部分を除いた残額について、各財産の価格に応じて、債権者に代位する。五 第三取得者から担保の目的となっている財産を譲り受けた者は、第三取得者とみなして第一号及び第二号の規定を適用し、物上保証人から担保の目的となっている財産を譲り受けた者は、物上保証人とみなして第一号、第三号及び前号の規定を適用する。
民法502条
債権の一部について代位弁済があったときは、代位者は、債権者の同意を得て、その弁済をした価額に応じて、債権者とともにその権利を行使することができる。2 前項の場合であっても、債権者は、単独でその権利を行使することができる。3 前二項の場合に債権者が行使する権利は、その債権の担保の目的となっている財産の売却代金その他の当該権利の行使によって得られる金銭について、代位者が行使する権利に優先する。4 第一項の場合において、債務の不履行による契約の解除は、債権者のみがすることができる。この場合においては、代位者に対し、その弁済をした価額及びその利息を償還しなければならない。
民法504条
弁済をするについて正当な利益を有する者(以下この項において「代位権者」という。)がある場合において、債権者が故意又は過失によってその担保を喪失し、又は減少させたときは、その代位権者は、代位をするに当たって担保の喪失又は減少によって償還を受けることができなくなる限度において、その責任を免れる。その代位権者が物上保証人である場合において、その代位権者から担保の目的となっている財産を譲り受けた第三者及びその特定承継人についても、同様とする。2 前項の規定は、債権者が担保を喪失し、又は減少させたことについて取引上の社会通念に照らして合理的な理由があると認められるときは、適用しない。
論文ではこう使う
論文では、保証人と物上保証人が併存する事案で、弁済した者がどれだけ代位できるかを計算する場面で使います。まず501条3項4号により保証人と物上保証人の間は頭数、物上保証人が数人なら保証人の負担部分を除いた残額を財産の価格で分けると示し、二重資格者は1人と数え、弁済前の共同相続なら弁済時の共有者ごとに数えるという判例を当てはめます。一部弁済にとどまるときは502条1項の債権者の同意と3項の債権者優先を、債権者が担保を放棄していたときは504条1項の免責と2項の合理的な理由を検討します。
この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。