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用語集 / 民法 / 共同抵当

共同抵当(392条・393条・物上保証人と後順位抵当権者)とは

きょうどうていとう

民法 担保物権

共同抵当とは、債権者が同一の債権の担保として数個の不動産に抵当権を有することです。同時に配当するときは各不動産の価額に応じて債権の負担を按分し(392条1項)、一つの不動産の代価だけを配当するときは、次順位の抵当権者が他の不動産について代位できます(392条2項)。

銀行が土地と建物の二つに一番抵当権を付けて貸したとします。銀行はどちらからでも全額を回収できますが、どちらを先に競売するかで、片方にだけ二番抵当権を持つ人の取り分が大きく変わってしまいます。銀行の気まぐれで後順位の人の運命が決まらないよう、民法は、同時に配当するときは価額に応じて負担を割り振り、片方だけ先に競売したときは、後順位の人が銀行に代わってもう片方の抵当権を使えるようにしています。

競売の配当の場面。机の上に二つの札束「甲土地の代価」「乙土地の代価」。先生が執行官役(札「執行官」)で、銀行員の男性(札「共同抵当権者A」)と男性(札「甲土地の後順位抵当権者C」)の間で札束を分けている。先生の吹き出し「同時に配当するので、

同時に配当するときは、後順位抵当権者がいなくても、各不動産の価額に応じて共同抵当権者の債権の負担を按分します

392条1項は、債権者が同一の債権の担保として数個の不動産につき抵当権を有する場合において、同時にその代価を配当すべきときは、その各不動産の価額に応じて、その債権の負担を按分すると定めています。判例は、後順位抵当権者がいない場合にもこの規定が適用されるとしています(大判昭和10年4月23日)。「後順位抵当権者がいないとしても、各土地の価額に応じてα債権の負担を按分する」という肢は正しいです。例えば、Aの1000万円の債権のために価額1000万円の甲土地と乙土地に一番抵当権があり、甲土地にCの1000万円の二番抵当権があるとき、同時に競売されればAは各土地から500万円ずつを受け、Cは甲土地の残り500万円しか受けられません。Cが1000万円の配当を受けられるとする肢は誤りです。

一つの不動産の代価だけを先に配当するときは、共同抵当権者は全額を受け、その不動産の後順位抵当権者は同時配当なら受けられた額を限度に他の不動産の抵当権に代位します

392条2項は、ある不動産の代価のみを配当すべきときは、抵当権者は、その代価から債権の全部の弁済を受けることができ、この場合、次順位の抵当権者は、その弁済を受ける抵当権者が前項の規定に従い他の不動産の代価から弁済を受けるべき金額を限度として、その抵当権者に代位して抵当権を行使することができると定めています。代位は共同抵当権者が完済を受けた後に現実化します(大連判大正15年4月8日)。代位した者は抵当権の登記にその代位を付記できます(393条)。Aの600万円の債権のために甲土地(500万円)と乙土地(1000万円)に一番抵当権があり、甲土地にCの400万円の二番抵当権がある事例では、同時配当ならAは甲土地から200万円、乙土地から400万円、Cは甲土地から300万円を受けます。甲土地が先に競売されてAが500万円を受けた後、乙土地が競売されたときは、Aは残り100万円を受け、Cは代位の限度400万円からAの100万円を引いた300万円を受けます。反対に乙土地が先に競売されてAが600万円を受ければ、Aの抵当権は消え、Cは甲土地の第一順位として400万円を受けるので、Cが300万円の配当を受けるとする肢は誤りです。

板書の図解。黒板に甲土地と乙土地の二つの四角があり、甲土地に「A 500万円」「C 0円」、乙土地に「A 100万円」「C 300万円(代位)」と書かれ、乙土地の「C 300万円(代位)」に矢印が伸びている。先生が教師役(札「先生」)で矢印

共同抵当権者が一方の抵当権を放棄しても、後順位抵当権者が代位できたはずの限度では、その者に優先することができません

判例は、共同抵当権者が一方の不動産の抵当権を放棄した後に他方の不動産の抵当権を実行した場合、放棄がなかったならば後順位抵当権者が代位できた限度で、共同抵当権者は後順位抵当権者に優先することができないとしています(大判昭和11年7月14日)。上の事例でAが乙土地の抵当権を放棄した後に甲土地の抵当権を実行すると、Cは放棄がなければ乙土地に300万円の限度で代位できたので、甲土地の500万円からCが300万円、Aが200万円を受けます。この配当を示す肢は正しく、「乙土地に抵当権が設定されていたことを考慮せずに配当が実施される」という肢は誤りです。

392条2項後段の代位は債務者所有又は同一の物上保証人所有の不動産の共同抵当に限られ、債務者所有と物上保証人所有が混ざるときは物上保証人の弁済による代位が優先します

共同抵当の目的が全部債務者の所有か、全部同一の物上保証人の所有なら、392条2項後段がそのまま使えます(同一の物上保証人所有の場合につき最判平成4年11月6日)。同一の物上保証人が所有する土地で甲土地だけ先に配当されたときに甲土地の後順位抵当権者が乙土地の抵当権に代位できるとする肢は正しく、代位できないとする肢は誤りです。これに対し、債務者所有の甲土地と物上保証人所有の乙土地の共同抵当では、392条2項は適用されません(大判昭和4年1月30日)。物上保証人は、自分の土地が先に競売されれば、弁済による代位(499条・501条1項)で債務者所有の土地の一番抵当権を取得し、その権利は債務者所有の土地の後順位抵当権者に優先します(最判昭和44年7月3日)。物上保証人は債務者の土地から先に責任を負わせることを期待しているからです。債務者所有の甲土地が先に競売された事例で甲土地の後順位抵当権者が乙土地の抵当権に代位できるとする肢は誤りで、物上保証人所有の乙土地が先に競売された事例で物上保証人が甲土地の抵当権に代位できるとする肢は正しいです。物上保証人の代位は、債務者に求償できる範囲内に限られます(501条2項)。物上保証人所有の土地の後順位抵当権者は、物上保証人が代位で取得した一番抵当権の上に、物上代位をするのと同様の権利を持ち、物上保証人に優先します(大判昭和11年12月9日、最判昭和53年7月4日)。

  • 全部が債務者所有(又は同一の物上保証人所有)392条を適用し、異時配当では先に競売された不動産の後順位抵当権者が他の不動産の抵当権に代位します
  • 債務者所有の不動産が先に競売後順位抵当権者は物上保証人所有の不動産に代位できません
  • 物上保証人所有の不動産が先に競売物上保証人が債務者所有の不動産の一番抵当権に代位し、その不動産の後順位抵当権者に優先します
  • 物上保証人所有の不動産の後順位抵当権者物上保証人が代位で取得した抵当権から、物上保証人に優先して弁済を受けます
  • 共同抵当権者による一方の放棄後順位抵当権者が代位できた限度で、共同抵当権者は優先できません

同じ数字の事例でも、二つの土地の所有者の組合せによって後順位抵当権者の配当が変わります

この区別を価額1000万円の甲土地・乙土地、Aの1000万円の債権、甲土地にCの1000万円、乙土地にDの1000万円の二番抵当権という事例に当てはめます。両方が債務者Bの所有なら、甲土地が先に競売されると、後の乙土地の競売でCは代位により500万円、Dは500万円を受けるので、その肢は正しいです。甲土地が債務者B、乙土地が物上保証人Eの所有なら、甲土地が先に競売されてもCは乙土地に代位できず、乙土地の競売ではDが1000万円を受けるので、その肢は正しいです。乙土地が先に競売されると、Eが甲土地の一番抵当権に代位し、Dがその上で優先するので、後の甲土地の競売ではDが1000万円を受け、Cは配当を受けられません。Cが1000万円を受けDは受けられないとする肢は誤りです。

二軒の家の前の場面。左の家に札「債務者所有」、右の家に札「物上保証人所有」。右の家の前に先生が物上保証人役(札「物上保証人」)で立ち、手に札「一番抵当権(代位)」を持って左の家を指している。左の家の前で男性(札「後順位抵当権者」)が困った顔

民法392条

1 債権者が同一の債権の担保として数個の不動産につき抵当権を有する場合において、同時にその代価を配当すべきときは、その各不動産の価額に応じて、その債権の負担を按分する。2 債権者が同一の債権の担保として数個の不動産につき抵当権を有する場合において、ある不動産の代価のみを配当すべきときは、抵当権者は、その代価から債権の全部の弁済を受けることができる。この場合において、次順位の抵当権者は、その弁済を受ける抵当権者が前項の規定に従い他の不動産の代価から弁済を受けるべき金額を限度として、その抵当権者に代位して抵当権を行使することができる。

民法393条

前条第二項後段の規定により代位によって抵当権を行使する者は、その抵当権の登記にその代位を付記することができる。

論文ではこう使う

論文では、共同抵当の目的不動産が誰の所有かをまず確定し、全部が債務者所有又は同一の物上保証人所有なら392条1項の割付けと2項後段の代位で計算し、債務者所有と物上保証人所有が混ざるなら物上保証人の弁済による代位(499条・501条)を優先させます。後順位抵当権者の期待(割付けによる余剰)と物上保証人の期待(債務者の財産から先に責任を負わせること)のどちらを保護するかで結論が分かれることを、判例の理由として書きます。

試験ではこう問われる

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読んだあとに、民法の肢別演習を

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