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用語集 / 民法 / 先取特権の順位と他の担保物権との競合

先取特権の順位と他の担保物権との競合(329条〜334条)とは

さきどりとっけんのじゅんいとたのたんぽぶっけんとのきょうごう

民法 担保物権

先取特権の順位とは、同じ財産の上に複数の先取特権や他の担保物権が競合したときに、どれが先に弁済を受けるかの順序です(329条〜334条)。一般の先取特権より特別の先取特権が優先し、動産の先取特権どうしは330条の3つの順位に従い、動産質権者は第一順位の先取特権者と同じ扱いになります。

倒産した会社の冷蔵庫ひとつに、家電店の代金、大家の家賃、従業員の給料がいっせいに群がることがあります。誰から先に払うかを決めておかないと配当ができません。民法は、その物と結びつきの強い債権を先にし、物の価値を保った人や、他の債権者の存在を知らずに信頼した人を守る方向で順位を組み立てています。同じ順位なら債権額で按分します。順位の表と、表をひっくり返す例外を一緒に押さえることが大切です。

倒産した会社の事務所で、冷蔵庫(札「差し押さえた動産」)の前に人が並ぶ場面。先頭に執行官(札「執行費用」)、次に大家の男性(札「不動産の賃貸」)、その後ろに家電店の男性(札「動産の売買」)、最後に作業着の男性(札「雇用関係(一般)」)。先生

一般の先取特権と特別の先取特権が競合すれば特別の先取特権が優先しますが、共益の費用はその利益を受けた債権者に対しては優先します

329条2項本文は、一般の先取特権と特別の先取特権とが競合する場合には、特別の先取特権が一般の先取特権に優先すると定めています。特定の物と結びついた債権の方が保護の必要が強いからです。会社の冷蔵庫について、電器店の動産売買の先取特権(特別)は、従業員の雇用関係の先取特権(一般)に優先します。「電器店が当該冷蔵庫について有する先取特権は,従業員が当該冷蔵庫について有する先取特権に優先する」という部分を含む肢は正しく、「雇用関係の先取特権と不動産の賃貸の先取特権とが競合するときは、雇用関係の先取特権が優先する」という肢は誤りです。ただし、共益の費用の先取特権は、その利益を受けたすべての債権者に対して優先します(同項ただし書)。賃借人が備え付けた家具の競売の執行費用は、賃貸人の利益にもなっているので、賃貸人の先取特権に優先します。「その執行費用に関する先取特権は,その家屋の賃貸人が賃料債権に基づき家具について有する先取特権に優先する」という部分を含む肢と、「執行費用を被担保債権とする共益の費用の先取特権は、その動産について存在する不動産賃貸の先取特権に優先する」という部分を含む肢は正しいです。利益を受けた債権者に対してだけ優先するので、「共益の費用の先取特権は,全ての特別の先取特権に優先する」という肢は誤りです。

同じ動産の上の特別の先取特権は、第一順位が不動産賃貸・旅館宿泊・運輸、第二順位が動産保存、第三順位が動産売買などです

330条1項は、同一の動産について特別の先取特権が競合する場合の順位を、第一に不動産の賃貸・旅館の宿泊・運輸、第二に動産の保存、第三に動産の売買・種苗又は肥料の供給・農業の労務・工業の労務と定めています。第一順位は、債権者がその動産を担保として当てにしていたことを、第二順位は物の価値を保ったことを重く見たものです。動産の保存者が数人あるときは、後の保存者が前の保存者に優先します(同項後段)。家具店がタンスに持つ動産売買の先取特権(第三順位)は、建物の賃貸人がそのタンスに持つ先取特権(第一順位)に劣後します。「家具店が当該タンスについて有する先取特権は,建物の賃貸人が当該タンスについて有する先取特権に優先する」という部分を含む肢は誤りです。果実については、第一順位が農業の労務、第二順位が種苗又は肥料の供給、第三順位が土地の賃貸人です(同条3項)。「農地の天然果実については,農業労務の先取特権が不動産賃貸の先取特権に優先する」という肢は正しく、果実について農業労務の先取特権を持つBに対し賃貸人Aが「その優先権を行使することができる」とする肢は誤りです。

  • 第一順位(330条1項1号)不動産の賃貸、旅館の宿泊、運輸
  • 第二順位(同項2号)動産の保存(数人あれば後の保存者が優先)
  • 第三順位(同項3号)動産の売買、種苗又は肥料の供給、農業の労務、工業の労務
  • 果実(同条3項)農業の労務、種苗又は肥料の供給、土地の賃貸の順
  • 例外(同条2項)第一順位の者が債権取得時に後順位者を知っていたとき、又は自分のために物を保存した者に対しては優先できません
質店のカウンターの場面。カウンターの上に工作機械の写真と「質権設定契約書」。客の男性(札「買主B」)の後ろから、家電商社の男性(札「売主A(動産売買の先取特権)」)がのぞき込んでいる。店主役の先生(札「質権者C」)がカウンターの内側に立つ。

第一順位の先取特権者は、債権取得時に後順位の先取特権者を知っていたときや、自分のために物を保存した者に対しては、優先権を行使できません

330条2項は、第一順位の先取特権者は、その債権取得の時において第二順位又は第三順位の先取特権者があることを知っていたときは、これらの者に対して優先権を行使することができないとし、第一順位の先取特権者のために物を保存した者に対しても同様としています。後順位者の存在を知りながら債権を取得した者まで保護する必要はなく、自分のために物の価値を保ってくれた者に優先するのは不公平だからです。不動産賃貸の先取特権の目的である動産について、賃貸人の利益となる保存をして動産保存の先取特権を取得した者に対しては、賃貸人は優先権を行使できません。「Aは、Bに対し、その優先権を行使することができない」という部分を含む肢は正しいです。

動産質権者は第一順位の先取特権者と同じ権利を持つので動産売買の先取特権に原則として優先しますが、質権取得時に先取特権を知っていれば優先できません

334条は、先取特権と動産質権とが競合する場合には、動産質権者は330条の規定による第一順位の先取特権者と同一の権利を有すると定めています。動産売買の先取特権は第三順位なので、原則として動産質権が優先します。「動産売買の先取特権の目的物について質権が設定された場合,動産売買の先取特権が質権に優先する」という肢と、「Aは、Cの質権に先立って、その先取特権を行使することができる」という部分を含む肢は誤りです。「動産先取特権は,動産質権に優先する」という肢も誤りです。もっとも、動産質権者は第一順位の先取特権者と同じ扱いなので、330条2項もそのまま当てはまり、質権の取得時に先取特権の存在を知っていたときは優先できません。「Cが質権を取得した時点でAの先取特権があることを知らなかったときは、Cの質権は、Aの先取特権に優先する」という部分を含む肢は正しいです。反対に、質権の取得時の認識を問わずに「動産質権は動産売買先取特権より先順位となる」と言い切る肢は、330条2項の場合を落としているので誤りです。

同じ順位の先取特権者が数人あるときは、債権額の割合に応じて弁済を受けます

332条は、同一の目的物について同一順位の先取特権者が数人あるときは、各先取特権者はその債権額の割合に応じて弁済を受けると定めています。「同一の目的物について同一順位の先取特権者が数人あるときは,各先取特権者は,その債権額の割合に応じて弁済を受ける」という肢は正しいです。一般の先取特権どうしの順位は一般の先取特権の語で、同じ不動産の上の先取特権の順位と抵当権との関係は不動産の先取特権の語で扱います。

民法329条2項

一般の先取特権と特別の先取特権とが競合する場合には、特別の先取特権は、一般の先取特権に優先する。ただし、共益の費用の先取特権は、その利益を受けたすべての債権者に対して優先する効力を有する。

民法330条2項

前項の場合において、第一順位の先取特権者は、その債権取得の時において第二順位又は第三順位の先取特権者があることを知っていたときは、これらの者に対して優先権を行使することができない。第一順位の先取特権者のために物を保存した者に対しても、同様とする。

民法334条

先取特権と動産質権とが競合する場合には、動産質権者は、第三百三十条の規定による第一順位の先取特権者と同一の権利を有する。

試験ではこう問われる

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