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用語集 / 民法 / 不動産の先取特権

不動産の先取特権(325条〜328条・337条〜340条)とは

ふどうさんのさきどりとっけん

民法 担保物権

不動産の先取特権とは、不動産の保存・工事・売買によって生じた債権を持つ者が、債務者の特定の不動産について優先弁済を受ける法定担保物権です(325条)。効力を保存するには登記が要り、登記した保存・工事の先取特権は先に登記された抵当権にも優先します(337条〜340条)。

古い家を修繕した工務店や、家を建てた建設会社は、その工事で家の価値を守り、又は高めています。家に抵当権を付けている銀行も、その工事のおかげで担保の価値が保たれます。そこで民法は、保存や工事の費用を持つ者に、その不動産から先に弁済を受ける権利を与え、きちんと登記をすれば先に登記した抵当権者よりも優先させることにしました。不動産の売主の先取特権は価値を増やすものではないので、登記の早い者勝ちに戻ります。

住宅の改修工事の現場。足場の組まれた家の前で、作業着の男性(札「工務店」)が「工事費用の予算額」と書かれた登記申請書を持ち、法務局へ向かおうとしている。家の持ち主の男性(札「債務者」)と、背広の男性(札「先に登記した抵当権者(銀行)」)が見

不動産の先取特権は保存・工事・売買の3つで、同じ不動産の上で競合すれば保存・工事・売買の順に優先します

325条は、不動産の保存、不動産の工事、不動産の売買によって生じた債権を有する者は、債務者の特定の不動産について先取特権を有すると定めています。不動産の保存の先取特権は保存のための費用について(326条)、不動産の工事の先取特権は、工事の設計、施工又は監理をする者が債務者の不動産に関してした工事の費用について存在し(327条1項)、工事による価格の増加が現存する場合に限り、その増価額についてのみ存在します(同条2項)。不動産の売買の先取特権は代価とその利息について存在します(328条)。同じ不動産の上で特別の先取特権が競合するときは、325条各号の順序、つまり保存、工事、売買の順に優先します(331条1項)。「同一の不動産について不動産保存の先取特権と不動産工事の先取特権が競合する場合,その優先権の順位は同一となる」という肢は誤りです。

効力を保存するには、保存は完了後直ちに、工事は着手前に費用の予算額を、売買は契約と同時に未払の旨を登記します

不動産の保存の先取特権の効力を保存するためには、保存行為が完了した後直ちに登記をしなければなりません(337条)。不動産の工事の先取特権の効力を保存するためには、工事を始める前にその費用の予算額を登記しなければならず、工事の費用が予算額を超えるときは超過額について先取特権は存在しません(338条1項)。不動産の売買の先取特権の効力を保存するためには、売買契約と同時に、代価又はその利息の弁済がされていない旨を登記しなければなりません(340条)。「不動産の保存の先取特権の効力を保存するためには,保存行為が完了した後直ちに登記をしなければならない」という肢と、「不動産の工事の先取特権の効力を保存するためには,工事を始める前にその費用の予算額を登記しなければならない」という肢は正しいです。

板書の図解。左の縦軸に「登記の順」、上から「抵当権(1番目に登記)」「不動産工事の先取特権(2番目に登記・着手前)」「不動産売買の先取特権(3番目に登記)」。右の縦軸に「配当の順」、上から「工事の先取特権」「抵当権」「売買の先取特権」。工事

登記した保存・工事の先取特権は先に登記された抵当権にも優先しますが、売買の先取特権と抵当権は登記の先後で決まります

339条は、337条・338条に従って登記をした先取特権は、抵当権に先立って行使することができると定めています。保存や工事は不動産の価値を守り、又は高めるもので、先に登記した抵当権者もその利益を受けるからです。「その先取特権は,その登記より前にその不動産について登記された抵当権に先立って行使することができない」という部分を含む肢は誤りです。「工事を始める前にその費用の予算額を登記した不動産工事の先取特権は,その登記に先立って設定登記がされている抵当権に優先する」という肢と、「Bの登記がCの登記に後れたとしても、Bは、Cの抵当権に先立って、その先取特権を行使することができる」という部分を含む肢は正しいです。これに対し、不動産の売買の先取特権には339条のような規定がなく、先取特権の効力には抵当権の規定が準用されるので(341条)、抵当権との優劣は登記の先後で決まります。「不動産売買の先取特権について登記があるときは,その先取特権者は,登記の先後を問わず,抵当権に先立って先取特権を行使することができる」という肢は誤りです。

工事の先取特権が債務者の不動産について認められていることは、請負で完成した建物の帰属をめぐる見解の論拠にもなります

建物の建築を請け負った請負人が材料を提供した場合でも、完成した建物は原始的に注文者に帰属するとする見解があります。327条1項は、工事をする者が債務者の不動産に関してした工事の費用について先取特権を認めているので、請負人が注文者を債務者として先取特権を持つ場面を民法が予定していることになります。この見解からは、不動産工事の先取特権の規定が民法に設けられていることは、完成建物が注文者の物になることの論拠として適切であると説明されます。「不動産工事の先取特権の規定が民法に設けられている」という肢は、この見解の論拠として適切なものとされています。判例が材料の提供者によって帰属を分けることを含め、完成建物の所有権の帰属は後半の契約各論の語で扱います。

民法338条1項

不動産の工事の先取特権の効力を保存するためには、工事を始める前にその費用の予算額を登記しなければならない。この場合において、工事の費用が予算額を超えるときは、先取特権は、その超過額については存在しない。

民法339条

前二条の規定に従って登記をした先取特権は、抵当権に先立って行使することができる。

民法340条

不動産の売買の先取特権の効力を保存するためには、売買契約と同時に、不動産の代価又はその利息の弁済がされていない旨を登記しなければならない。

試験ではこう問われる

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