第三取得者の保護(代価弁済・抵当権消滅請求・費用償還・買受人)とは
だいさんしゅとくしゃのほご
第三取得者とは、抵当権が設定された不動産の所有権などを抵当権設定者から取得した者のことです。民法は、その者が抵当権の負担から抜け出す方法として代価弁済(378条)と抵当権消滅請求(379条以下)を用意し、競売では買受人になることや、支出した費用を優先して償還されることを認めています(390条・391条)。
抵当権の付いた土地を買った人は、売主が借金を返さなければ、いつ競売で土地を失うかわかりません。そこで民法は、買った人が抵当権の負担から抜け出す道を用意しています。銀行の求めに応じて買った代金を銀行に払えば抵当権が消える代価弁済と、買った人の方から金額を示して抵当権を消してほしいと申し出る抵当権消滅請求です。競売になっても、自分で買い受けることや、土地のために使った費用を真っ先に返してもらうことができます。
代価弁済は、所有権又は地上権を買い受けた第三者が抵当権者の請求に応じて代価を弁済したときに、その第三者のために抵当権を消滅させます
378条は、抵当不動産について所有権又は地上権を買い受けた第三者が、抵当権者の請求に応じてその抵当権者にその代価を弁済したときは、抵当権は、その第三者のために消滅すると定めています。代価弁済は抵当権者の請求から始まり、第三者が応じることで効力を生じる仕組みなので、第三者に応じる義務はありません。「抵当権者が第三取得者に対して代価弁済の請求をした場合,第三取得者は,その請求に応じなければならない」という肢は誤りです。土地を買い受けた者が抵当権者の請求に応じて代価を弁済したときに抵当権が消滅するという肢は正しく、地上権を買い受けた第三者でも代価弁済ができるので、地上権の買受人について抵当権が消滅するという肢も正しいです。
抵当権消滅請求ができるのは抵当不動産の所有権を取得した第三取得者で、主たる債務者・保証人とその承継人や、確定的に所有権を取得していない譲渡担保権者はできません
379条は、抵当不動産の第三取得者は抵当権消滅請求をすることができると定めています。平成15年の改正で、地上権や永小作権を取得した者は請求権者から外れ、所有権を取得した者に限られました。「地上権の設定を受けた者は,抵当権消滅請求をすることができない」という肢は正しいです。380条は、主たる債務者、保証人及びこれらの者の承継人は、抵当権消滅請求をすることができないと定めています。もともと債務の全額を払う義務がある者に、評価額で抵当権を消させるのはおかしいからです。連帯保証人も保証人に含まれるので、「その債務の連帯保証人は,抵当権消滅請求を行うことができる」という肢や、第三取得者が連帯保証人でも消滅請求ができるという肢は誤りで、主たる債務者の承継人はできないという肢は正しいです。判例は、譲渡担保権者は、担保権を実行して確定的に所有権を取得しない限り、抵当権消滅請求ができないとしました(最判平成7年11月10日)。停止条件付第三取得者が条件の成否未定の間はできない(381条)のと同じ考え方で、譲渡担保権の実行前でも消滅請求ができるとする肢は誤りです。
抵当権消滅請求は競売による差押えの効力が生じる前にしなければならず、登記をした債権者が2か月以内に競売を申し立てなければ承諾したものとみなされます
382条は、第三取得者は、抵当権の実行としての競売による差押えの効力が発生する前に、抵当権消滅請求をしなければならないと定めています。「抵当権の実行としての競売による差押えの効力が生じた後であっても,Bに対し,抵当権消滅請求をすることができる」という肢は誤りです。手続は、第三取得者が登記をした各債権者に、取得の原因や代価を記した書面、登記事項証明書、2か月以内に競売の申立てがなければ代価又は指定した金額を弁済し又は供託する旨の書面を送ります(383条)。債権者が書面の送付を受けた後2か月以内に抵当権を実行して競売の申立てをしないときは、提供された金額を承諾したものとみなされ(384条1号)、登記をしたすべての債権者が承諾し、第三取得者がその金額を払い渡し又は供託したときに抵当権は消滅します(386条)。抵当権の登記がある不動産の買主が抵当権消滅請求の手続が終わるまで代金の支払を拒める点(577条)は、売買の付随規定の語で扱います。
- 代価弁済(378条)所有権又は地上権を買い受けた第三者が、抵当権者の請求に応じて代価を弁済したときに抵当権が消滅します。応じる義務はありません
- 抵当権消滅請求の主体(379条〜381条)抵当不動産の所有権を取得した第三取得者です。主たる債務者・保証人・承継人、停止条件の成否未定の間の者、実行前の譲渡担保権者はできません
- 抵当権消滅請求の時期(382条)競売による差押えの効力が発生する前です
- みなし承諾(384条)書面の送付から2か月以内に競売の申立てがないときなどです
- 買受け(390条)第三取得者も競売で買受人になれます
- 費用の償還(391条)必要費・有益費を196条の区別に従い、他の債権者より先に償還されます
第三取得者は競売で買受人になることができ、支出した必要費・有益費は196条の区別に従って最先順位の抵当権者にも優先して償還されます
390条は、抵当不動産の第三取得者は、その競売において買受人となることができると定めているので、「その競売において買受人となることができない」という肢は誤りです。391条は、第三取得者が抵当不動産について必要費又は有益費を支出したときは、196条の区別に従い、抵当不動産の代価から、他の債権者より先にその償還を受けることができると定めています。支出で保たれ又は増えた価値は競売代金として債権者に渡るので、最優先で返すのが公平だからです。「他の債権者」には抵当権者も含まれ、必要費を支出した買主が「最先順位の抵当権者より先にその支出した額の償還を受けることができる」という肢や、必要費を支出したときに他の債権者より先に償還を受けられるという肢は正しいです。ただし、196条1項ただし書により、果実を取得したときは通常の必要費は自分の負担になるので、「果実を取得したときであっても」通常の必要費の優先償還を受けられるという肢は誤りです。
民法378条
抵当不動産について所有権又は地上権を買い受けた第三者が、抵当権者の請求に応じてその抵当権者にその代価を弁済したときは、抵当権は、その第三者のために消滅する。
民法380条
主たる債務者、保証人及びこれらの者の承継人は、抵当権消滅請求をすることができない。
民法382条
抵当不動産の第三取得者は、抵当権の実行としての競売による差押えの効力が発生する前に、抵当権消滅請求をしなければならない。
民法391条
抵当不動産の第三取得者は、抵当不動産について必要費又は有益費を支出したときは、第百九十六条の区別に従い、抵当不動産の代価から、他の債権者より先にその償還を受けることができる。
論文ではこう使う
論文では、抵当不動産の買主の地位が問われたときに、代価弁済・抵当権消滅請求・競売での買受け・費用の優先償還・被担保債権の消滅時効の援用を並べ、事案に合う手段の要件(請求権者・時期・手続)を当てはめます。消滅請求では、請求者が所有権を確定的に取得したか(譲渡担保・停止条件付取得)と、380条の除外者に当たらないかを確認します。
この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。