永小作権(270条〜279条)とは
えいこさくけん
永小作権とは、小作料を支払って他人の土地において耕作又は牧畜をする物権です(270条)。小作料の支払が権利の内容に含まれるので必ず有償で、存続期間は20年以上50年以下です(278条)。
他人の田畑を長い期間借りて耕すとき、小作人の立場を物権として強く守るのが永小作権です。地上権が建物や木を所有するための権利であるのに対し、永小作権は耕作と牧畜のための権利です。農地の利用は長期にわたる一方で、土地所有者の負担が永久に続くのも困るので、民法は小作料の支払を必ず伴わせ、存続期間にも上限と下限を設けています。用益物権の中で、必ず有償なのも期間に枠があるのも永小作権だけです。
永小作権は小作料の支払を内容とする権利なので、無償の永小作権は設定できません
270条は、永小作人は小作料を支払って他人の土地において耕作又は牧畜をする権利を有すると定めています。小作料の支払が権利の内容そのものに組み込まれているので、無償の永小作権は設定できません。「無償の永小作権は、設定することができない」という肢と、「無償の永小作権を設定することはできない」という肢は正しいです。無償でも設定できる地上権(265条)・地役権(280条)との違いが問われます。永小作人は、不可抗力により収益に損失を受けても小作料の免除又は減額を請求できず(274条)、引き続き2年以上小作料の支払を怠ったときは、土地の所有者は永小作権の消滅を請求できます(276条)。不可抗力で引き続き3年以上全く収益を得ず、又は5年以上小作料より少ない収益しか得なかったときは、永小作人は権利を放棄できます(275条)。
存続期間は20年以上50年以下で、定めがなければ30年になり、譲渡や賃貸は設定行為で禁じることができます
278条1項は、永小作権の存続期間は20年以上50年以下とし、設定行為で50年より長い期間を定めても50年とすると定めています。更新もできますが、更新の時から50年を超えることはできません(同条2項)。設定行為で存続期間を定めなかったときは、別段の慣習がある場合を除き30年になります(同条3項)。約定の期間に制限がない地上権との違いが問われます。永小作人は、その権利を他人に譲り渡し、又は存続期間内で耕作若しくは牧畜のため土地を賃貸できますが、設定行為で禁じたときはこの限りではありません(272条)。設定行為で禁じることのできる点が、譲渡禁止の特約をしても譲受人に効かない地上権と違います。永小作人は、土地に対して回復することのできない損害を生ずべき変更を加えることができません(271条)。
永小作権は抵当権の目的になり、抵当権を設定した永小作人は権利の放棄を抵当権者に対抗できません
369条2項は、地上権及び永小作権も抵当権の目的とすることができると定めています。「抵当権は,永小作権を目的として設定することができる」という肢は正しいです。永小作権に抵当権を設定した永小作人が、あとで永小作権を放棄すると、抵当権者が把握した担保の価値が一方的に奪われます。そこで398条は、地上権又は永小作権を抵当権の目的とした地上権者又は永小作人は、その権利を放棄しても、これをもって抵当権者に対抗することができないと定めています。放棄が無効になるのではなく、抵当権者との関係でだけ放棄を主張できない扱いです。「永小作権を目的として抵当権を設定した永小作人は、その永小作権を放棄したとしても、その放棄をもって抵当権者に対抗することができない」という肢は正しいです。建物に抵当権を設定した後に敷地の地上権を放棄した場合も同じ趣旨で考えることは、抵当権の効力の及ぶ範囲の語で扱います。
民法270条
永小作人は、小作料を支払って他人の土地において耕作又は牧畜をする権利を有する。
民法278条1項
永小作権の存続期間は、二十年以上五十年以下とする。設定行為で五十年より長い期間を定めたときであっても、その期間は、五十年とする。
民法398条
地上権又は永小作権を抵当権の目的とした地上権者又は永小作人は、その権利を放棄しても、これをもって抵当権者に対抗することができない。
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