司法試験・予備試験AIブートラボ 司法試験AIブートラボ
用語集 / 民法 / 譲渡担保の法的構成と実行

譲渡担保の法的構成と実行(受戻権・清算義務・弁済期後の処分・設定者の地位)とは

じょうとたんぽのほうてきこうせいとじっこう

民法 担保物権

譲渡担保とは、債務の担保のために目的物の所有権を債権者に移転し、債務が弁済されれば設定者に戻り、弁済されなければ債権者が目的物を処分するか自分のものにして清算する担保の方法のことです。判例は、所有権の移転は債権担保の目的を達するのに必要な範囲でだけ効力を持つとし、設定者には換価処分が完結するまで受戻権を、債権者には清算義務を認めています。

工場の機械や自宅の土地を担保にお金を借りるとき、抵当権や質権ではなく、いったん所有権を貸主に移しておき、返したら戻してもらうという形をとることがあります。これが譲渡担保です。民法に規定はありませんが、裁判所の手続を通さずに実行できる便利さから広く使われています。ただ、形のとおり貸主が完全な所有者になるとすると、借りた人は少しの借金で大きな財産を失いかねません。そこで判例は、担保に必要な範囲でだけ所有権が移ると見て、借主を守るルールを積み上げてきました。

町工場の場面。工場の機械に札「譲渡担保(所有権は担保のため移転)」が貼られ、工場主(札「設定者」)が機械を使い続けている。先生が貸主役(札「譲渡担保権者」)で書類「所有権移転」を持ち、吹き出し「所有権は担保に必要な範囲で移っているだけなので

判例は、所有権の移転は担保の目的に必要な範囲でだけ効力を持つとし、設定者は不法占有者に返還を求められ、被担保債権の範囲は当事者が自由に定められるとしています

判例は、譲渡担保は債権担保のために目的物件の所有権を移転するものであるが、その所有権移転の効力は債権担保の目的を達するのに必要な範囲内においてのみ認められるとして、正当な権原なく目的物件を占有する者がある場合には、特段の事情のない限り、設定者はその占有者に返還を請求できるとしました(最判昭和57年9月28日)。設定者は被担保債権が弁済されない限り不法占有者に明渡しを請求できないという肢や、動産の譲渡担保の設定者は不法占有者に返還を請求できないという肢は誤りです。他方、譲渡担保権者も、設定者の一般債権者が目的物を差し押さえたときは、特段の事情がない限り第三者異議の訴えで強制執行の不許を求められます(最判昭和56年12月17日)。被担保債権の範囲は、強行法規や公序良俗に反しない限り当事者が自由に定めることができ、抵当権の375条や398条の3に準ずる制約を受けません(最判昭和61年7月15日)。その肢は正しいです。借地上の建物に譲渡担保を設定すれば、建物だけを目的としたことが明らかなど特別の事情がない限り、効力は土地の賃借権に及び、実行で建物が第三者に移れば賃借権も譲渡されます(最判昭和51年9月21日)。効力が賃借権に及ばないとする肢は誤りです。ただし、譲渡担保権者が建物の引渡しを受けて使用収益するときは、実行前でも敷地の賃借権の譲渡又は転貸があったとされ、信頼関係を破壊しない特段の事情がない限り、賃貸人は612条2項で解除できます(最判平成9年7月17日)。受戻しが可能だから解除できないとする肢は誤りです。動産の譲渡担保は占有改定による引渡しで第三者に対抗でき、占有改定では効力を生じない質権(345条)と違います。その肢は正しいです。なお、同一の動産について数個の質権を設定することもでき(355条)、重複して設定できるかで質権と譲渡担保を区別して、質権は複数設定できないとする肢は誤りです。

設定者は、弁済期が過ぎても換価処分が完結するまでは債務を弁済して受け戻せますが、債権者が目的物を第三者に譲渡すれば、譲受人が背信的悪意者でも受け戻せなくなります

判例は、債務者は、債務の弁済期の到来後も、債権者による換価処分が完結するに至るまでは、債務を弁済して目的物を取り戻すことができるとしています(最判昭和57年1月22日)。弁済期の経過後は実行の完了前でも受け戻せないという肢は誤りです。他方、債務者が弁済期に弁済しなければ、債権者は、帰属清算型か処分清算型かを問わず目的物を処分する権能を取得します(最判平成6年2月22日)。帰属清算の合意があっても処分する権限を取得するという肢は正しいです。債権者がこの権能に基づいて目的物を第三者に譲渡したときは、譲受人は所有権を確定的に取得し、債務者は清算金の支払を求められるだけで受け戻せなくなり、この理は譲受人が背信的悪意者でも同じです。背信的悪意者の譲受人に対しては受け戻せるとする肢は誤りで、背信的悪意者でも受け戻せないという肢は正しいです。弁済期後に譲渡担保権者の債権者が目的不動産を差し押さえて登記がされたときも、設定者はその後に全額を弁済しても第三者異議の訴えで強制執行の不許を求められません(最判平成18年10月20日)。その肢は正しいです。

板書の図解。黒板に時間の矢印「弁済期」「換価処分の完結(第三者への譲渡)」が引かれ、その間の区間に「受け戻せる」、右側に「受け戻せない(背信的悪意者でも)」と書かれている。先生が教師役(札「先生」)で右側を指し、吹き出し「第三者に譲渡された

清算金の有無と額は清算金の支払・提供や清算金がない旨の通知などの時に確定し、設定者は受戻権を放棄して清算金を請求することはできません

帰属清算型の譲渡担保では、清算金の有無及びその額は、債権者が清算金の支払若しくはその提供をした時、目的不動産の適正評価額が債務額を上回らない旨の通知をした時、又は債権者が目的不動産を第三者に売却等をした時を基準として確定されます(最判昭和62年2月12日)。その肢は正しいです。判例は、設定者は、譲渡担保権者が清算金の支払又は提供をせず、清算金がない旨の通知もしない間に受戻権を放棄しても、清算金の支払を請求することはできないとしました(最判平成8年11月22日)。受戻権と清算金支払請求権は別の権利で、これを認めると設定者が実行の時期を決められることになるからです。弁済期後は受戻権を放棄して清算金を請求できるとする肢は誤りです。

清算金の支払と目的物の引渡しは引換えになり、譲受人にも留置権を主張できますが、債務の弁済は目的物の返還より先に履行しなければなりません

債権者が担保の実行として目的不動産の引渡しを求める訴えを提起し、債務者が清算金の支払との引換えを主張したときは、特段の事情のない限り、請求は清算金の支払と引換えにのみ認容されます(最判昭和46年3月25日)。その肢は正しいです。譲渡担保権者が実行として目的不動産を第三者に譲渡したときは、設定者は、譲受人からの明渡請求に対し、譲渡担保権者に対する清算金支払請求権を被担保債権とする留置権を主張することができます(最判平成9年4月11日)。留置権を主張できないとする肢は誤りです。弁済期後に目的物を譲り受けた第三者は、設定者の清算金支払請求権の消滅時効を援用できます(最判平成11年2月26日)。その肢は正しいです。これに対し、債務の弁済と目的物の返還は、弁済が先履行の関係にあり、同時履行の関係に立ちません(最判平成6年9月8日)。弁済と所有権移転登記手続や引渡しとの同時履行を主張できないとする肢は正しいです。

  • 弁済期前に弁済所有権は設定者に戻ります。弁済が先履行で、返還との同時履行はありません
  • 弁済期後・換価処分の完結前全額を弁済して受け戻せます
  • 弁済期後に第三者へ譲渡譲受人が確定的に所有権を取得し、背信的悪意者でも受け戻せません。清算金の請求だけが残ります
  • 弁済期後に譲渡担保権者の債権者が差押え・登記その後に弁済しても第三者異議の訴えはできません
  • 弁済後に譲渡担保権者が第三者へ譲渡設定者と第三者は登記の先後で決まり、背信的悪意者でない第三者には登記がなければ対抗できません
  • 受戻権の放棄清算金の請求はできません
  • 清算金と引渡し引換えになり、譲受人にも清算金支払請求権を被担保債権とする留置権を主張できます

弁済で譲渡担保権が消えた後に譲渡担保権者が第三者に譲渡したときは、設定者と第三者の優劣は登記で決まります

判例は、被担保債務の弁済等により譲渡担保権が消滅した後に目的不動産が譲渡担保権者から第三者に譲渡されたときは、その第三者が背信的悪意者に当たる場合は格別、そうでない限り、設定者は、登記がなければ、その所有権を第三者に対抗することができないとしました(最判昭和62年11月12日)。弁済によって所有権が設定者に戻り、譲渡担保権者からの二重譲渡と同じ関係になるからです。登記がなければ対抗できないとする肢は正しく、第三者は弁済の事実について善意無過失のときに限り所有権を取得するとする肢は誤りです。動産の譲渡担保を重ねて設定した場合、後れて設定を受けた譲渡担保権者は私的実行をすることができません(最判平成18年7月20日)。配当の手続がないまま後順位の者の実行を許すと先順位の者が優先権を行使できなくなるからで、後順位の者が私的実行の権限に基づいて引渡しを請求できないとする肢は正しいです。個別の動産の譲渡担保では、目的物の滅失による損害保険金請求権に物上代位でき(最決平成11年5月17日)、その肢は正しいです。

土地の明渡しの場面。土地の前で男性(札「譲受人」)が書類「明渡請求」を突き出し、先生が設定者役(札「設定者」)で門の前に立ち、手に札「清算金支払請求権」を持っている。先生の吹き出し「清算金を受け取るまでは、清算金支払請求権を被担保債権とする

最判平成6年2月22日

不動産を目的とする譲渡担保契約において、債務者が弁済期に債務の弁済をしない場合には、債権者は、右譲渡担保契約がいわゆる帰属清算型であると処分清算型であるとを問わず、目的物を処分する権能を取得するから、債権者がこの権能に基づいて目的物を第三者に譲渡したときは、原則として、譲受人は目的物の所有権を確定的に取得し、債務者は、清算金がある場合に債権者に対してその支払を求めることができるにとどまり、残債務を弁済して目的物を受け戻すことはできなくなるものと解するのが相当である。

論文ではこう使う

論文では、譲渡担保の法的構成について、所有権が担保の目的に必要な範囲で移転するとする判例の立場を示し、設定者に残る権利(受戻権・不法占有者への返還請求・清算金支払請求権と留置権)と譲渡担保権者の権能(弁済期後の処分権・清算義務)を事案の時点(弁済期の前か後か、換価処分の完結の前か後か、弁済の前か後か)で整理します。第三者が現れる場面では、弁済期後の処分なら受戻しができないこと、弁済後の処分なら177条の対抗問題になることを書き分けます。

試験ではこう問われる

「譲渡担保の法的構成と実行」が短答式でどう出題されてきたか、ひっかけの型12件と関係する過去問の肢43本は、無料のアカウントでログインすると読めます。

読んだあとに、民法の肢別演習を

この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。

関連する用語