所有権留保(仮登記担保・代理受領を含む)とは
しょゆうけんりゅうほ
所有権留保とは、売買で目的物を買主に引き渡した後も、代金が完済されるまで目的物の所有権を売主に留めておき、代金債権の担保とすることです。仮登記担保は代物弁済の予約などを所有権移転請求権の仮登記で保全する担保、代理受領は債務者が第三債務者から受ける弁済の受領を債権者に委任して担保とする方法です。
自動車をローンで買うと、車はすぐ乗れても、車検証の所有者欄は販売店やローン会社のままになっていることがあります。代金を払い終えるまで所有権を売主に残しておき、支払が滞れば車を引き揚げて残代金に充てるためです。これが所有権留保です。売主はもともと持っていた所有権を手放さないだけなので、譲渡担保のように所有権を移す手間もかかりません。もっとも、実質は代金の担保なので、判例は担保としての性質も考えながら、売主や第三者との関係を決めています。
代金完済まで所有権は売主に留まるので、買主から譲渡担保の設定を受けた者や集合動産の譲渡担保権者は、売主に権利を主張できず、売主は目的物を処分して残代金を回収できます
所有権留保の特約がある動産売買では、代金が完済されるまで所有権は買主に移らず、売主は買主を通じた代理占有で留保所有権を第三者に対抗できます(178条)。買主の債権者が目的物に強制執行をしたときは、売主は第三者異議の訴えで強制執行の排除を求められます(最判昭和49年7月18日)。買主が代金完済前に第三者のために譲渡担保を設定して占有改定で引き渡しても、第三者は無権利者から担保を取ったことになり、占有改定では即時取得もできない(最判昭和35年2月11日)ので、譲渡担保権を取得できません。判例も、所有権留保付きで仕入れた動産が集合動産の譲渡担保の目的である在庫に加わっても、代金が完済されるまで所有権は売主から移らず、譲渡担保権者は売主に譲渡担保権を主張できないとしています(最判平成30年12月7日)。買主が代金を怠れば、売主は甲を処分して残代金を回収できるので、「Aは、甲を処分して残代金の回収をすることはできない」という肢は誤りです。集合動産の譲渡担保権者が代金未払いの動産に譲渡担保の効力を主張できるとする肢も誤りです。
留保所有権者は、残債務の弁済期が到来するまでは第三者の土地上の動産の撤去義務を負いませんが、弁済期の経過後は撤去義務や不法行為責任を免れません
判例は、留保所有権者が有する留保所有権は、原則として残債務弁済期が到来するまでは当該動産の交換価値を把握するにとどまるが、残債務弁済期の経過後は当該動産を占有し処分することができる権能を有するとしました(最判平成21年3月10日)。そのため、弁済期が来るまでは、動産が第三者の土地所有権の行使を妨げていても、特段の事情がない限り撤去義務や不法行為責任を負いませんが、弁済期が経過した後は、留保所有権が担保権の性質を持つことを理由にこれらを免れることはできません。買主が代金を遅滞して期限の利益を喪失した後に第三者の土地に動産を放置した事例で、土地所有者が留保売主に撤去を請求できないとする肢は誤りです。
所有権の移転時期を代金完済時とする特約があっても、引渡し後の滅失の危険は買主が負い、代金の支払を拒むことはできません
567条1項は、売主が買主に目的物を引き渡した場合において、その引渡しがあった時以後にその目的物が当事者双方の責めに帰することができない事由によって滅失し、又は損傷したときは、買主は履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができず、代金の支払を拒むことができないと定めています。危険は所有権の移転ではなく引渡しで移るので、所有権は代金完済時に移転する旨の特約があっても同じです。引渡し後の滅失について、買主が危険負担の抗弁を主張して代金の支払を拒めるとする肢は誤りです。留保売主の所有権に基づく返還請求も無制限ではなく、ディーラーがサブディーラーのユーザーへの転売に協力し、ユーザーが代金を完済していたような事情があると、ユーザーへの返還請求は権利の濫用(1条3項)として許されないとした判例があります(最判昭和50年2月28日)。
仮登記担保では、清算金の支払と引渡しが引換えになり、清算金を払わずに目的不動産を譲り受けた第三者にも留置権を主張できます
仮登記担保とは、債務を弁済しないときは不動産の所有権を移転するという代物弁済の予約や売買の予約をし、所有権移転請求権保全の仮登記をしておく担保です。仮登記担保契約に関する法律が適用され、担保権者は清算金の見積額などを通知し、清算期間が経過した時に所有権を取得しますが、清算金の支払と所有権移転登記・引渡しは引換えになります。判例は、仮登記担保権者が清算金を支払わないまま不動産を第三者に譲渡した場合、清算金支払請求権は同じ不動産に関する代物弁済予約から生じた債権なので、債務者は、仮登記担保権者だけでなく譲受人に対しても、清算金の支払を受けるまで留置権を行使して明渡しを拒めるとしました(最判昭和58年3月31日)。その肢は正しいです。代理受領は、債権者が債務者から第三債務者に対する債権の取立てと受領の委任を受け、第三債務者がそれを承認する方法です。債権は債務者に残るので、承認した第三債務者が債務者に弁済してしまっても、債権者は債務不履行の責任は問えず、不法行為による損害賠償を請求できるにとどまるとされています(最判昭和44年3月4日)。
- 所有権留保の対抗売主は代理占有で留保所有権を第三者に対抗でき、買主の債権者の強制執行に第三者異議を出せます
- 買主による譲渡担保・集合物への搬入代金完済までは買主の物でないので、譲渡担保権者は売主に権利を主張できません
- 撤去義務弁済期の到来前は特段の事情がない限り負わず、弁済期の経過後は免れません
- 引渡し後の滅失所有権の移転時期にかかわらず買主が危険を負い、代金の支払を拒めません(567条1項)
- 仮登記担保の清算金引渡しと引換えになり、譲受人にも留置権を主張できます
- 代理受領第三債務者が承認に反して弁済すれば不法行為責任を負います
民法567条1項
売主が買主に目的物(売買の目的として特定したものに限る。以下この条において同じ。)を引き渡した場合において、その引渡しがあった時以後にその目的物が当事者双方の責めに帰することができない事由によって滅失し、又は損傷したときは、買主は、その滅失又は損傷を理由として、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。この場合において、買主は、代金の支払を拒むことができない。
最判平成21年3月10日
留保所有権者は、残債務弁済期が到来するまでは、当該動産が第三者の土地上に存在して第三者の土地所有権の行使を妨害しているとしても、特段の事情がない限り、当該動産の撤去義務や不法行為責任を負うことはないが、残債務弁済期が経過した後は、留保所有権が担保権の性質を有するからといって上記撤去義務や不法行為責任を免れることはない。
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