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用語集 / 民法 / 弁済の提供と弁済の場所・費用・受取証書

弁済の提供と弁済の場所・費用・受取証書(484条〜487条・492条・493条)とは

べんさいのていきょうとべんさいのばしょひようとうけとりしょうしょ

民法 債権の消滅

弁済の提供とは、債務者が給付の実現に必要な準備をして債権者に受領を求めることで、債務の本旨に従って現実にするのが原則ですが、債権者があらかじめ受領を拒み、又は債務の履行について債権者の行為を要するときは、弁済の準備をしたことを通知してその受領の催告をすれば足ります(493条)。

借りたお金を返す日に、借主がお金を持って貸主の家に行ったのに、貸主が受け取らなかったとします。借主は自分の側でできることをすべてしたのに、遅れた責任を負わされるのは不公平です。そこで民法は、債務者が給付の準備をして受け取るよう求めれば、その時から履行しないことによる責任を免れるとしています。これが弁済の提供です。どこまで準備すれば足りるかは、債権者の態度と債務の性質によって変わります。

貸主の家の玄関先の場面。先生が借主役(札「債務者」)で、返済日に現金の入った封筒を両手で差し出している。玄関の内側で男性(札「債権者」)が腕を組んで顔をそむけている。先生の吹き出し「返済日にお金を持って来て受け取るよう求めたので、ここからは

弁済の提供は現実にするのが原則で、提供をした債務者はその時から履行しないことによって生ずべき責任を免れます

493条本文は、弁済の提供は債務の本旨に従って現実にしなければならないと定めています。現実の提供とは、債権者が受け取りさえすれば弁済が完了する状態を作ることです。代金を持参すべき債務で、買主が履行期に履行場所へ代金を持参していれば、売主が来なかったために支払えなくても現実の提供になり、「売主が来なかったために代金を支払うことができなくても,現実の提供があったと認められる」という肢は正しいです。判例は、現金を債権者の住所に持参して受領を催告したのに拒絶された事案で、相手が受け取ると言えばいつでも支払える状態だったとして現実の提供を認めています(最判昭和23年12月14日)。「債権者の面前に現金を提示しなくても,現実の提供となる」という肢は正しいです。492条により、債務者は弁済の提供の時から債務を履行しないことによって生ずべき責任を免れるので、履行遅滞を理由とする解除・損害賠償・違約金を負わず、「提供後の遅延損害金の支払義務を負わない」という肢も正しいです。提供には相手方の同時履行の抗弁権を失わせる効果もあります。催告期間が過ぎて解除権が生じた後でも、解除の意思表示の前に債務者が弁済の提供をすれば、債権者はこれを拒めず解除権は消滅するので(大判大正6年7月10日)、「売主は,これを拒絶して解除権を行使することができる」という肢は誤りです。

本旨に従った提供かどうかは、金額のわずかな不足や提供に付けた条件まで見て判断されます

金銭債務の提供は全額が原則ですが、判例は、元利合計154,500円に対して1,300円余りが不足していた事案で、不足がわずかであることだけで弁済の提供と供託の効果を否定できないとしました(最判昭和35年12月15日)。「債務の全額を提供していない以上,弁済の提供の効力が生ずることはない」という肢は誤りです。債務者個人が振り出した小切手は支払が確実とはいえないので、特別の意思表示又は慣習がない限り債務の本旨に従った提供にならず(最判昭和35年11月22日)、「債務の本旨に従った弁済の提供とならない」という肢は正しいです。銀行の自己宛小切手のように支払が確実なものは別に扱われます。交通事故の損害賠償訴訟の控訴審の係属中に、加害者が第一審判決で命じられた全額を提供した場合は、控訴審で額が増えても原則としてその範囲で有効な提供になります(最判平成6年7月18日)。「Aがした弁済の提供は,無効となる」という肢は誤りです。反対に、賃貸借の目的でない土地も含めた賃料を、その全額を受領しなければ支払わない意思で提供しても、債権者に争いのある部分を認めさせることになるので本旨に従った提供にはならず(最判昭和31年11月27日)、「債務の本旨に従った弁済の提供があったものとはいえない」という肢は正しいです。

債権者があらかじめ受領を拒むときや債権者の行為を要するときは口頭の提供で足り、受領しない意思が明確なら口頭の提供も要りません

493条ただし書は、債権者があらかじめその受領を拒み、又は債務の履行について債権者の行為を要するときは、弁済の準備をしたことを通知してその受領の催告をすれば足りると定めています(口頭の提供)。特定物を契約の時から売主の住所に保管していれば、484条1項によりその住所が履行場所となり、買主が取りに来る必要がある取立債務になるので、「引渡しの準備をしたことを通知してその受領の催告をすれば足りる」という肢は正しいです。取立債務では、債権者が履行期に取立てに来なければ債務者は履行遅滞にならず、「Aが口頭の提供をしていないときは,Aは債務不履行責任を免れない」という肢は誤りです(もっとも、相手方の同時履行の抗弁権を失わせるには口頭の提供が要ります)。さらに判例は、債権者が契約の存在を否定するなど弁済を受領しない意思が明確な場合には、口頭の提供をしなくても債務不履行の責任を免れるとしています(最大判昭和32年6月5日)。賃貸人が解除を主張して賃料の受領を拒んでいる場合がその例で、「口頭の提供をしなくても,履行遅滞の責任を負わない」という肢は正しいです。ただし、弁済の準備ができない経済状態にあって口頭の提供もできない債務者は、債権者が受領しない意思が明確でも責任を免れず(最判昭和44年5月1日)、「弁済の提供をしないことによる債務不履行の責任を免れない」という肢は正しいです。

板書の図解。黒板を左右に分け、左に「原則:現実の提供(493条本文)」として現金を債権者に差し出す絵、右に「例外:口頭の提供(493条ただし書)」として電話で「準備ができました。受け取りに来てください」と伝える絵。右の下にさらに小さく「受領

弁済の場所は特定物なら債権発生の時の所在地、その他は債権者の現在の住所で、弁済の費用は債務者が負担します

484条1項は、弁済をすべき場所について別段の意思表示がないときは、特定物の引渡しは債権発生の時にその物が存在した場所において、その他の弁済は債権者の現在の住所において、それぞれしなければならないと定めています。特定物の引渡しを「債権者の現在の住所においてしなければならない」とする肢は誤りで、「その他の弁済は債権者の現在の住所においてしなければならない」という肢は正しいです。特定物の引渡債務が履行不能で損害賠償債務に変われば金銭の支払になるので、債権者の現在の住所で弁済することになり、「債権者の現在の住所において弁済しなければならない」という肢は正しいです。債権が譲渡されて債務者対抗要件が備わると、債権者は譲受人になるので、弁済の場所は譲受人の住所です(大判大正7年2月12日)。「売買代金債権の譲渡人の現在の住所においてすれば足りる」という肢は誤りです。484条2項は、法令又は慣習により取引時間の定めがあるときはその時間内に限り弁済又は請求ができるとしますが、時間外の提供でも債権者が任意に受領し、それが弁済期日内であれば債務者は遅滞の責任を負いません(最判昭和35年5月6日)。「売主が任意に弁済を受領したときは,それが弁済期日内であれば,買主は,遅滞の責任を負わない」という肢は正しいです。485条は、弁済の費用について別段の意思表示がないときはその費用は債務者の負担とし、ただし債権者が住所の移転その他の行為によって弁済の費用を増加させたときはその増加額は債権者の負担とすると定めています。債権者と債務者を入れ替えて「その費用は債権者の負担となるが」とする肢、「債権者と債務者の双方が等しい割合でその費用を負担する」とする肢は、いずれも誤りです。持参債務の債権者が履行期前に遠方へ転居すれば、新しい住所が弁済の場所になり、増えた運送費は債権者が負担するので、「目的物の運送費は債務者の負担となる」という肢は誤りです。

受取証書の交付は弁済と引換えに請求できますが、債権証書の返還は全部の弁済をした後に請求するものです

486条1項は、弁済をする者は、弁済と引換えに、弁済を受領する者に対して受取証書の交付を請求することができると定めています。受取証書は二重払いを防ぐ証拠なので、交付と弁済は同時履行の関係に立ち、「その交付は,弁済と同時履行の関係に立つ」という肢は正しいです。一部弁済でもその限度で交付を請求でき、「一部弁済と引換えに、その弁済の限度で受取証書の交付を請求することができる」という肢も正しいです。弁済者が目的物を提供して受取証書を求めたのに受領者が応じないときは、弁済者は目的物を引き渡さなくても遅滞の責任を負いません(大判昭和16年3月1日)。「目的物の引渡しをしなくても,遅滞の責めを負わない」という肢は正しいです。これに対し、487条は、債権に関する証書がある場合に、全部の弁済をしたときにその証書の返還を請求できると定めるだけなので、債権証書の返還は弁済の後になり、「その証書の返還と引換えに弁済をするべき旨を主張することができる」という肢は誤りです。

弁済として他人の物を引き渡しても、債権者が善意で消費し又は譲り渡せば、その弁済は有効になります

475条は、弁済として他人の物を引き渡した者は、更に有効な弁済をしなければその物を取り戻すことができないと定めています。476条は、この場合に債権者が弁済として受領した物を善意で消費し又は譲り渡したときは、その弁済は有効とし、債権者が第三者から賠償の請求を受けたときは弁済者に求償できるとしています。他人の物の交付を受けた場合は「その弁済が有効となることはない」とする肢は誤りで、債権者が他人の物と知らずに消費した場合に「その弁済は有効となる」とする肢と、「債権者がその物を善意で消費したときは、その弁済は、有効である」とする肢は正しいです。

民法492条

債務者は、弁済の提供の時から、債務を履行しないことによって生ずべき責任を免れる。

民法493条

弁済の提供は、債務の本旨に従って現実にしなければならない。ただし、債権者があらかじめその受領を拒み、又は債務の履行について債権者の行為を要するときは、弁済の準備をしたことを通知してその受領の催告をすれば足りる。

民法484条

弁済をすべき場所について別段の意思表示がないときは、特定物の引渡しは債権発生の時にその物が存在した場所において、その他の弁済は債権者の現在の住所において、それぞれしなければならない。2 法令又は慣習により取引時間の定めがあるときは、その取引時間内に限り、弁済をし、又は弁済の請求をすることができる。

民法485条

弁済の費用について別段の意思表示がないときは、その費用は、債務者の負担とする。ただし、債権者が住所の移転その他の行為によって弁済の費用を増加させたときは、その増加額は、債権者の負担とする。

民法486条

弁済をする者は、弁済と引換えに、弁済を受領する者に対して受取証書の交付を請求することができる。

民法487条

債権に関する証書がある場合において、弁済をした者が全部の弁済をしたときは、その証書の返還を請求することができる。

論文ではこう使う

論文では、双務契約で一方が履行を求める場面や解除の可否が問題になる場面で、弁済の提供を検討します。まず493条本文の現実の提供があったかを、債権者が受け取りさえすれば足りる状態だったかで判断し、債権者があらかじめ受領を拒んでいた場合や取立債務の場合は、同条ただし書の口頭の提供で足りることを示します。受領しない意思が明確な場合は口頭の提供も不要とする判例に触れたうえで、提供の効果として492条の債務不履行責任の免除と、相手方の同時履行の抗弁権の消滅を導きます。受領遅滞(413条)の効果とは区別して書きます。

試験ではこう問われる

「弁済の提供と弁済の場所・費用・受取証書」が短答式でどう出題されてきたか、ひっかけの型10件と関係する過去問の肢35本は、無料のアカウントでログインすると読めます。

読んだあとに、民法の肢別演習を

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