請負人の契約不適合責任(636条・637条・559条準用)とは
うけおいにんのけいやくふてきごうせきにん
請負人の契約不適合責任とは、引き渡した仕事の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないときに、売買の規定の準用(559条)により請負人が負う追完・報酬減額・損害賠償・解除の責任です。注文者の材料や指図による不適合は除かれ(636条)、注文者は不適合を知った時から1年以内に通知しなければなりません(637条)。
頼んだ家に雨漏りがあったとき、施主は工務店に直してもらうか、代金を減らしてもらうか、損害を賠償してもらうか、契約をやめるかを選べます。請負も売買と同じく有償契約なので、売買の契約不適合責任の規定がそのまま準用されるからです。ただし、施主が渡した材料や施主の指図が原因の欠陥は工務店の責任ではなく、欠陥に気づいたら1年以内に知らせないと権利を失います。
請負の目的物が契約に適合しないときは売買の規定が準用され、修補・報酬減額・損害賠償・解除ができます
請負は有償契約なので、売買の規定が準用されます(559条)。引き渡された仕事の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないときは、注文者は修補などの履行の追完(562条)、報酬の減額(563条)、損害賠償(564条・415条)、解除(564条・541条・542条)を求められます。出題当時の旧634条以下は「瑕疵」の語で同じ場面を定めていました。売買の旧規定と違い、請負では不適合が隠れていることは要件ではありません。「その引渡しの時に目的物の瑕疵が明らかであったときは,請負人は瑕疵担保責任を負わない」という肢は誤りです。注文者は、修補に代えて、又は修補とともに損害賠償を請求できます。旧634条2項の明文は削除されましたが、債務不履行の一般規定で同じ結論になります。「その瑕疵の修補に代えて,又はその修補とともに,損害賠償の請求をすることができる」という肢と「瑕疵の修補に代わる損害賠償を請求することができる」という肢は正しいです。不適合が重要でなく修補に過分の費用を要するときは、修補は取引上の社会通念に照らして不能と解され、修補を請求できません(412条の2第1項)。旧634条1項ただし書が明文で定めていた結論です。「その瑕疵が重要でなく,その修補に過分の費用を要するときは,瑕疵の修補を請求することができない」という肢は正しいです。
建物の請負でも契約の目的を達せないなら解除でき、建て替えるほかないときは建替費用を賠償させられます
出題当時の旧635条ただし書は、建物その他の土地の工作物については瑕疵を理由とする解除を認めていませんでした。平成29年改正でこの規定は削除され、建物の請負でも541条・542条の要件を満たせば解除できます。「仕事の目的物である建物に瑕疵があり,そのために契約した目的を達することができないときは,注文者は,そのことを理由として契約の解除をすることができる」という肢は、出題当時は誤りでしたが、現在は正しいです。もっとも、修補が不能というだけで当然に解除できるのではありません。「その瑕疵を修補することが不能であるときは,注文者は,請負契約を解除することができる」という肢は誤りです。判例は、建物に重大な瑕疵があって建て替えるほかない場合には、建替えに要する費用相当額を損害として賠償請求できるとしました(最判平成14年9月24日)。「建物の建替えに要する費用相当額を損害としてその賠償を請求することができる」という肢は正しく、「建替えに要する費用相当額の損害賠償を請求することはできない」という肢は誤りです。
修補に代わる損害賠償債務と報酬債務は同時履行で、注文者は賠償を受けるまで報酬全額の支払を拒め、相殺もできます
注文者の修補に代わる損害賠償債権と請負人の報酬債権は同時履行の関係にあります(533条括弧書、最判令和2年9月11日)。注文者が修補を請求したときも、修補がされるまで報酬の支払を拒めます。「注文者が瑕疵の修補を請求したときは,注文者は,報酬の支払を拒むことができる」という肢と「注文者の報酬支払義務と、請負人の修補に代わる損害賠償義務とは、同時履行の関係にある」という肢は正しいです。判例は、注文者は、瑕疵の程度などから信義則に反する特段の事情のない限り、損害賠償を受けるまで報酬全額の支払を拒めるとしています(最判平成9年2月14日)。「その賠償を受けるまでは報酬全額の支払を拒むことができる」という肢は正しく、「損害相当額を限度として報酬の支払を拒むことができる」という肢は誤りです。同時履行の抗弁権が付いた債権を自働債権とする相殺は原則として許されませんが、この二つの債権は実質的に報酬を減額して清算するものなので、判例は相殺を認めています(最判昭和53年9月21日)。「瑕疵の修補に代わる損害賠償債権を自働債権として,請負人の注文者に対する報酬債権と相殺することはできない」という肢と、同時履行の関係にあるため「共に相殺することができない」とする肢は誤りです。請負人の側から報酬債権を自働債権として相殺することもできます。「請負人は、注文者に対する請負報酬債権を自働債権とし、注文者の請負人に対する目的物の修補に代わる損害賠償債権を受働債権とする相殺をすることができる」という肢は正しいです。注文者が相殺したときは、相殺後の報酬残債務について相殺の意思表示をした日の翌日から履行遅滞の責任を負います(最判平成9年7月15日)。それまでは同時履行の抗弁で遅滞していなかったからです。「相殺後の報酬債務について,相殺適状時から履行遅滞による責任を負う」という肢は誤りです。
注文者の材料や指図による不適合は責任を負わず、不適合を知った時から1年以内に通知しないと権利を失います
不適合が注文者の供した材料の性質又は注文者の与えた指図によって生じたときは、注文者は、追完・報酬減額・損害賠償・解除をすることができません(636条本文)。ただし、請負人がその材料又は指図が不適当であることを知りながら告げなかったときは、責任を負います(同条ただし書)。「その材料又は指図が不適当であることを知りながら注文者に告げなかったときを除き,瑕疵担保責任を負わない」という肢は正しく、「知りながら注文者に告げなかったときであっても,瑕疵担保責任を負わない」という肢は誤りです。期間について、現行637条1項は、注文者が不適合を知った時から1年以内にその旨を請負人に通知しないときは権利を失うとしています。引渡しの時に請負人が不適合を知り又は重大な過失で知らなかったときは、この制限はかかりません(同条2項)。求められるのは通知で、訴えの提起ではありません。「その不適合を知った時から1年以内にその訴えを提起しなければならない」という肢と「建物が完成した時から1年以内にしなければならない」という肢は誤りです。出題当時の旧637条は引渡しの時(引渡しを要しない場合は仕事の終了の時)から1年としていたので、「目的物を引き渡した時から1年以内にしなければならない」という肢と「その仕事が終了した時から起算する」という肢は出題当時は正しいとされましたが、現行法では起算点が知った時になったので誤りです。期間の規定は任意規定なので、契約で伸長できます。「請負人の担保責任の存続期間は,これを契約で伸長することができない」という肢は誤りです。担保責任を負わない旨の特約をしても、知りながら告げなかった事実については責任を免れません(559条・572条)。「知りながら告げなかった事実については,その責任を免れない」という肢は正しいです。
- 準用(559条)追完(562条)・報酬減額(563条)・損害賠償と解除(564条)
- 修補の限界(412条の2第1項)重要でない不適合で過分の費用を要する修補は不能として請求できません
- 解除建物でも541条・542条の要件で解除できます(旧635条ただし書は削除)
- 材料・指図による不適合(636条)責任を負いません。知りながら告げなかったときは負います
- 期間(637条)知った時から1年以内の通知。引渡し時に悪意・重過失なら制限なし
- 免責特約(559条・572条)知りながら告げなかった事実は免れません
民法636条
請負人が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない仕事の目的物を注文者に引き渡したとき(その引渡しを要しない場合にあっては、仕事が終了した時に仕事の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないとき)は、注文者は、注文者の供した材料の性質又は注文者の与えた指図によって生じた不適合を理由として、履行の追完の請求、報酬の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。ただし、請負人がその材料又は指図が不適当であることを知りながら告げなかったときは、この限りでない。
民法637条1項
前条本文に規定する場合において、注文者がその不適合を知った時から一年以内にその旨を請負人に通知しないときは、注文者は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、報酬の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。
民法533条
双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行(債務の履行に代わる損害賠償の債務の履行を含む。)を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない。
論文ではこう使う
欠陥住宅の事案では、559条で売買の規定が準用されることを示し、修補請求(562条)、修補に代わる損害賠償(564条・415条)、解除(564条・541条・542条)の順に要件を検討します。建て替えるほかない重大な欠陥なら建替費用相当額を損害として請求できると書きます(最判平成14年9月24日)。請負人の報酬請求に対しては、損害賠償との同時履行(533条括弧書)で報酬全額の支払を拒めること、相殺すれば残額は意思表示の翌日から遅滞になることを書き分けます。
この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。