賃貸借の存続期間・更新・終了と原状回復(民法601条〜622条)とは
ちんたいしゃくのそんぞくきかんこうしんしゅうりょうとげんじょうかいふく
賃貸借の存続期間とは、賃貸借が続く期間のことで、50年を超えることができず(604条)、期間の定めの有無に応じて期間満了・黙示の更新・解約申入れによって終了し、終了時に賃借人は通常損耗を除く損傷を原状に復します(617条〜621条)。
アパートや資材置場を借りるとき、契約はいつまで続き、いつどうやって終わるのかが一番気になるところです。民法は、賃貸借の長さに上限を置き、期間を決めなかった場合は解約の申入れから一定期間で終わるとし、期間が過ぎても黙って使い続けていれば更新されたと推定します。終わった後は、借主は通常の使い方で傷んだ分を除いて元に戻して返します。建物所有目的の土地や建物の賃貸借には、借地借家法の特則がかかります。
賃貸借は賃料を払う約束で成立する諾成契約で、存続期間は50年を超えられません
賃貸借は、当事者の一方がある物の使用収益を相手方にさせることを約し、相手方が賃料を支払うことと契約終了時に返還することを約することで効力を生じます(601条)。書面は要らず、「賃貸借は,書面でしなければ,その効力を生じない」という肢は誤りです。書面によらない使用貸借の受取り前の解除(593条の2)は賃貸借には準用されていないので、「賃貸借が書面によらないでされた場合、Aは、Bが甲の引渡しを受けるまで、契約の解除をすることができる」という肢も誤りです。賃料は使用収益の対価といえるものでなければならず、判例は、通常よりはるかに安い室代を払っていた親族間の間借りを、対価ではなく謝礼にすぎないとして使用貸借としています(最判昭和35年4月12日)。「借主が金銭を支払うことを約束して契約を締結すれば,その額の多寡にかかわらず賃貸借契約が成立する」という肢は誤りです。存続期間は50年を超えることができず、長く定めても50年になります(604条1項)。資材置場とする土地の賃貸借について「賃貸借の存続期間は,20年を超えることができない」という肢は、出題当時の604条(20年)では正しいとされましたが、現在は50年なので誤りです。処分の権限を有しない者は、602条の期間(土地5年・建物3年・動産6か月など)を超える賃貸借をすることができません。「処分の権限を有しない者は,短期賃貸借の存続期間を超える賃貸借をすることはできない」という肢は正しいです。
期間を定めない賃貸借はいつでも解約を申し入れられますが、終了するのは土地1年・建物3か月・動産1日を経過した時です
当事者が期間を定めなかったときは、各当事者はいつでも解約の申入れをすることができ、土地は1年、建物は3か月、動産と貸席は1日を経過すると終了します(617条1項)。相手に次の手当てをする余裕を与えるためで、申入れで直ちに終わるわけではありません。「期間の定めのない賃貸借は,いつでも解約の申入れをすることができ,これによって賃貸借は直ちに終了する」という肢、「賃貸借は,解約申入れの意思表示が相手方に到達した時に終了する」という肢、「Aが解約の申入れをしたときは、賃貸借は直ちに終了する」という肢は誤りで、「期間の定めのない動産賃貸借契約の賃貸人は、いつでも解約の申入れをすることができる」という肢は正しいです。解約の申入れをしても法定の期間が経過するまでは賃貸借が続いているので、借主はその間返還しなくても遅滞の責任を負いません。期間を定めても、当事者の一方又は双方が期間内に解約する権利を留保したときは、617条が準用され、いつでも解約を申し入れられます(618条)。「賃貸人がその期間内に解約をする権利を合意により留保したときは,賃貸人は,いつでも解約の申入れをすることができる」という肢と、同じ趣旨の動産賃貸借の肢は正しいです。
期間満了後に使用を続け、賃貸人が知りながら異議を述べなければ、同じ条件で更新したものと推定されます
619条1項は、期間満了後に賃借人が使用収益を続ける場合、賃貸人がこれを知りながら異議を述べないときは、従前の賃貸借と同一の条件で更に賃貸借をしたものと推定し、各当事者は617条により解約の申入れができると定めています。「賃貸人がこれを知りながら異議を述べないときは,従前の賃貸借と同一の条件で更に賃貸借をしたものと推定される」という肢は正しく、使用の継続だけで更新を推定する「賃貸借の期間が満了した後もBが甲の使用を継続する場合には、これをもって賃貸借は更新されたものと推定される」という肢は、賃貸人が知りながら異議を述べないという要件を欠くので誤りです。従前の担保は期間満了で消滅しますが、敷金は消滅しません(同条2項)。
賃借物の全部が使えなくなれば当然に終了し、解除は将来に向かってだけ効力を生じます
賃借物の全部が滅失その他の事由で使用収益できなくなった場合、賃貸借はこれによって終了します(616条の2)。使わせる債務が果たせない以上、解除を待たずに終わらせる趣旨で、滅失の原因が誰にあるかを問いません。「賃借物の全部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合には,賃貸借はこれによって終了する」という肢、「建物の全部が,契約成立後に不可抗力によって滅失したときは,賃貸借契約は履行不能により終了する」という肢、「賃借人の責めに帰すべき事由により建物が滅失した場合,その賃貸借契約は法律上当然に終了し,賃借人は,それ以降賃料を支払う義務を負わない」という肢は正しいです(賃借人に帰責事由があれば損害賠償の問題は残ります)。賃貸借を解除しても、解除は将来に向かってのみ効力を生じ、損害賠償は妨げられません(620条)。「賃貸借が解除されたときは,その賃貸借は,契約の時にさかのぼって効力を失う」という肢は誤りです。使用貸借と違い、賃貸人や賃借人が死亡しても賃貸借は終了せず、賃借権は相続されます。「賃貸借は,賃貸人の死亡又は賃借人の死亡のいずれの場合であっても,当然には終了しない」という肢は正しいです。
- 期間の定めあり期間の満了で終了します(622条・597条1項)。解約権を留保すれば617条の解約申入れができます(618条)
- 期間の定めなし解約申入れから土地1年・建物3か月・動産1日で終了します(617条1項)
- 黙示の更新使用継続を賃貸人が知りながら異議を述べなければ同一条件で更新と推定します(619条1項)
- 全部滅失等当然に終了します(616条の2)
- 解除将来に向かってのみ効力を生じます(620条)
- 当事者の死亡終了しません
賃借人は返還の際に損傷を原状に戻しますが、通常の損耗と経年変化は除かれ、失火の責任も免れません
賃借人は、賃借物を受け取った後に生じた損傷を、賃貸借の終了時に原状に復する義務を負いますが、通常の使用収益による損耗と経年変化は除かれ、賃借人の責めに帰することができない損傷も除かれます(621条)。通常の損耗は賃料に織り込まれているという判例の考え方を明文にしたものです。「賃借人は,通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗については,原状に復する義務を負わない」という肢は正しいです。賃借人は返還まで目的物を善良な管理者の注意で保管し、失火で焼失させれば返還債務の不履行として損害賠償責任を負います。失火責任法は709条の不法行為責任を重過失の場合に限る法律で、債務不履行責任には適用されません(最判昭和30年3月25日)。「賃借人は,故意がなく,かつ,重大な過失がなければ,賃貸人に対し損害賠償責任を負わない」という肢と、「賃貸人は,賃借人に重大な過失がない限り,債務不履行による損害賠償の請求をすることができない」という肢は誤りです。建物所有目的の土地の賃貸借と建物の賃貸借の存続期間・更新・解約の特則は、借地権と借家権の語で扱います。
民法604条1項
賃貸借の存続期間は、五十年を超えることができない。契約でこれより長い期間を定めたときであっても、その期間は、五十年とする。
民法617条1項
当事者が賃貸借の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合においては、次の各号に掲げる賃貸借は、解約の申入れの日からそれぞれ当該各号に定める期間を経過することによって終了する。
民法619条1項
賃貸借の期間が満了した後賃借人が賃借物の使用又は収益を継続する場合において、賃貸人がこれを知りながら異議を述べないときは、従前の賃貸借と同一の条件で更に賃貸借をしたものと推定する。この場合において、各当事者は、第六百十七条の規定により解約の申入れをすることができる。
民法616条の2
賃借物の全部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合には、賃貸借は、これによって終了する。
民法620条
賃貸借の解除をした場合には、その解除は、将来に向かってのみその効力を生ずる。この場合においては、損害賠償の請求を妨げない。
論文ではこう使う
論文では、賃貸人が明渡しを求める場面で、賃貸借がどの原因で終了したかを先に確定します。期間満了(619条1項の黙示の更新の推定を破る事情があるか)、期間の定めのない賃貸借の解約申入れと617条の期間の経過、全部滅失等による当然終了(616条の2)、債務不履行解除(620条により将来効)を区別し、建物所有目的の土地や建物なら借地借家法の正当事由・法定更新を重ねて検討します。終了後の原状回復は621条で通常損耗・経年変化を除いて当てはめます。
この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。