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契約不適合責任の期間制限と特則(566条・568条・572条・数量超過)とは

けいやくふてきごうせきにんのきかんせいげんととくそく

民法 契約各論

契約不適合責任の期間制限とは、種類又は品質の不適合について、買主が不適合を知った時から1年以内に売主に通知しなければ責任を追及できなくなる制限のことで(566条)、競売の特則(568条)と免責特約の制限(572条)が付随します。

売った物の品質に問題があると何年も後に言われても、売主は調べようがありません。そこで民法は、種類・品質の不適合に限って、買主が不適合を知ってから1年以内に売主へ知らせなければ責任を追及できないとしました。数量不足や権利の不適合は外から分かりやすいので、この制限はかかりません。そのほか、競売で買った場合の特則と、責任を負わない特約の限界が定められています。

引っ越し後の新居の玄関の場面。男性(札「買主」)が雨漏りの染みのある天井を見上げながら、売主宛ての封書に「不適合のお知らせ」と書いている。壁のカレンダーに「知った日」の印と、そこから1年後の日付に丸印。先生が相談員役(札「相談員」)で玄関に

種類・品質の不適合は、知った時から1年以内に売主へ通知しなければ責任を追及できません

566条本文は、売主が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない目的物を引き渡した場合、買主がその不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知しないときは、追完請求、代金減額請求、損害賠償請求及び解除ができないと定めています。引渡しで履行を終えたという売主の期待を守り、時間がたって証拠が失われるのを防ぐ趣旨です。1年以内にしなければならないのは不適合がある旨の通知で、権利の行使そのものではありません。起算点も契約の時ではなく不適合を知った時なので、「買主は売買契約が成立した時から1年以内にこれをしなければならない」という肢は誤りです(出題当時の旧566条3項も「事実を知った時から」でした)。売主が引渡しの時に不適合を知り又は重大な過失によって知らなかったときは、この制限はかかりません(同条ただし書)。「Bが引渡し時に不適合を過失なく知らなかった場合において、Aが不適合を知った時から法定の期間内にその旨をBに通知しなかったときは、Aは、Bに対し、損害賠償を請求することができない」という肢は正しいです。

数量と権利の不適合には、566条の期間制限がかかりません

566条が対象にするのは種類又は品質の不適合だけです。数量の不足は引渡しの時に分かりやすく、権利の不適合も売主が履行を終えたと期待する状況にないからです。「Bが数量の不足を知った時から1年以内にその旨をAに通知しない場合には,……Bは損害賠償の請求をすることができない」という肢は誤りです。権利の不適合(565条)にも期間制限はなく、旧566条3項が地役権の不存在や地上権の制限に定めていた「事実を知った時から1年」の制限はなくなりました。「売買の目的物である土地のために存すると称した地役権が存しなかった場合における買主の契約の解除は,買主が事実を知った時から1年以内にしなければならない」という肢は、出題当時は正しいとされましたが、現在の民法では誤りです。「目的物に地上権による制限があった場合の担保責任追及には期間制限があるが,抵当権の行使によって買主が権利を失った場合の担保責任追及には期間制限がない」という肢も、出題当時は正しいとされましたが、現在は前半が成り立たず誤りです。

1年の通知期間とは別に、引渡しの時から消滅時効が進行します

判例は、改正前の瑕疵担保による損害賠償請求権も売買契約に基づく金銭債権として消滅時効の規定の適用を受け、その時効は買主が目的物の引渡しを受けた時から進行するとしました(最判平成13年11月27日)。引渡しを受ければ買主は目的物を検査でき、権利を行使できるからです。現在も、契約不適合を理由とする損害賠償請求権は166条1項に服し、引渡しの時から10年(知った時から5年)で時効が完成します。「買主の売主に対する瑕疵担保による損害賠償請求権の消滅時効は,買主が目的物の引渡しを受けた時から進行を始める」という肢と、「買主が瑕疵の存在に気付かなくても,目的物が買主に引き渡された時から10年の時効消滅にかかる」という肢は正しいです。「特定物売買の目的物の品質が契約の内容に適合しないことを理由とする損害賠償請求権の消滅時効は、売買契約の締結時から進行する」という肢は誤りです。知った時から1年以内に請求していても、引渡しから10年が過ぎていれば時効は完成するので、「その時点で買主が目的物の引渡しを受けた時から10年を経過していたときであっても,その損害賠償請求権につき消滅時効は完成しない」という肢は誤りです。

板書の図解。黒板に左から右へ時間の矢印を引き、左端に「引渡し」、途中に「不適合を知った」、その1年後に「通知期限」、右端に「引渡しから10年=時効完成」と書かれている。矢印の上に二本の帯「通知期間(566条)」「消滅時効(166条1項)」が

競売では、種類・品質の不適合について担保責任を追及できません

民事執行法などに基づく競売の買受人は、数量不足や権利の不適合について、債務者に対して解除又は代金減額を請求でき(568条1項)、債務者が無資力なら代金の配当を受けた債権者に代金の返還を請求できます(同条2項)。損害賠償は、債務者が物や権利の不存在を知りながら申し出なかったときなどに限られます(同条3項)。他方、種類又は品質の不適合には568条が適用されません(同条4項)。競売は債務者の意思によらない換価で、買受人は現況を前提に買い受けるからです。「強制競売も売買であるから,担保責任は通常の売買と同じように課される」という肢と、「中古の建物について強制競売が行われた場合,その建物の買受人は,その建物の元の所有者に対し,その建物に隠れた瑕疵があることを理由として損害賠償を請求することができる」という肢は誤りです。競売の土地が留置権の目的であるのは権利の不適合なので、「買受人は,……契約の解除をすることができない」という肢は誤りです。判例は、借地権の存在を前提に建物の強制競売が実施されたのに代金納付時に借地権が存在しなかった場合、買受人は解除し、債務者が無資力なら配当を受けた債権者に代金の返還を請求できるとしています。「建物の買受人は,強制競売による建物の売買契約を解除した上,売却代金の配当を受けた債権者に対し,その代金の返還を請求することができる」という肢は正しいです。

責任を負わない特約をしても、知りながら告げなかった事実と自ら設定した権利については免れません

担保責任の規定は任意規定なので、売主は責任を負わない旨の特約をすることができます。しかし572条は、その特約をしたときでも、売主が知りながら告げなかった事実と、自ら第三者のために設定し又は第三者に譲り渡した権利については、責任を免れないと定めています。不適合を知りながら黙って免責を受けるのは信義に反するからです。「その当時売買の目的物について瑕疵があることを売主が知りながらその瑕疵があることを告げなかったときには,売主は瑕疵担保責任を免れない」という肢と、「担保責任を免除する特約を結ぶことはできるが,その場合も,目的物について売主が自分で第三者のために設定した権利があったときは,売主は,責任を免れない」という肢は正しいです。

数量を指示した売買で数量が超過していても、売主は代金の増額を請求できません

判例は、数量を指示してした売買で数量が超過する場合、改正前565条は数量が不足する場合などの売主の責任を定めた規定にすぎないから、その類推適用を根拠に売主が代金の増額を請求することはできないとしています(最判平成13年11月27日。消滅時効の判例とは別の事件です)。超過部分の代金を払う合意が認められるときに限って追加代金を請求できます。現在の563条でも同じで、「売主は,数量が不足する場合の代金の減額に関する民法の規定の類推適用により,代金の増額を請求することができる」という肢と、「売主は,契約締結時にその超過の事実を知らなかったときは,買主に対する意思表示により,超過した部分の割合に応じて代金の増額を請求することができる」という肢は誤りで、「数量指示売買において数量が多すぎた場合,売主は,民法の担保責任の規定の類推適用を根拠として代金増額を請求することはできない」という肢は正しいです。

  • 種類・品質の不適合知った時から1年以内に通知が要ります(566条)。売主が悪意・重過失なら不要です
  • 数量・権利の不適合566条の期間制限はありません
  • 消滅時効引渡しから10年・知った時から5年(166条1項)で、通知期間とは別に進みます
  • 競売数量・権利の不適合だけ解除・代金減額ができ、種類・品質の不適合は対象外です(568条)
  • 免責特約知りながら告げなかった事実と自ら設定・譲渡した権利は免れません(572条)

民法566条

売主が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合において、買主がその不適合を知った時から一年以内にその旨を売主に通知しないときは、買主は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。ただし、売主が引渡しの時にその不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、この限りでない。

民法568条4項

前三項の規定は、競売の目的物の種類又は品質に関する不適合については、適用しない。

民法572条

売主は、第五百六十二条第一項本文又は第五百六十五条に規定する場合における担保の責任を負わない旨の特約をしたときであっても、知りながら告げなかった事実及び自ら第三者のために設定し又は第三者に譲り渡した権利については、その責任を免れることができない。

論文ではこう使う

論文では、引渡しから時間がたって種類・品質の不適合が見つかった場面で、566条の通知期間と消滅時効を分けて検討します。まず買主が不適合を知った時から1年以内に通知したか(売主が引渡し時に悪意・重過失なら不要)を確かめ、通知していれば権利は保存されると書きます。そのうえで、損害賠償請求権などは166条1項の消滅時効に服し、客観的起算点は引渡しの時であること(最判平成13年11月27日)を指摘して、引渡しから10年、知った時から5年の経過を当てはめます。

試験ではこう問われる

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