契約不適合責任の救済手段(562条〜564条・追完・代金減額・損害賠償・解除)とは
けいやくふてきごうせきにんのきゅうさいしゅだん
契約不適合責任とは、引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないときに売主が負う責任で、買主は追完請求・代金減額請求・損害賠償請求・解除をすることができます(562条〜564条)。
中古の冷蔵庫を買ったら冷えなかった、10箱頼んだのに8箱しか届かなかった、という場面では、売主は約束どおりの物を渡すという債務を果たしていません。平成29年改正は、この場面を売主の債務不履行として整理し、買主に、直してもらう・足りない分を渡してもらう(追完)、代金を減らす、損害賠償を求める、契約を解除する、という四つの手段を用意しました。
引き渡された目的物が種類・品質・数量に関して契約の内容に適合しないとき、買主は四つの救済手段を使えます
562条から564条は、引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しない場合について、追完請求(562条)、代金減額請求(563条)、損害賠償請求と解除(564条による415条・541条・542条)を定めています。改正前の瑕疵担保責任は「隠れた瑕疵」を要件とし、判例・通説は買主の善意無過失を意味すると解していましたが、現在は「隠れた」という要件がなく、目的物が契約の内容に適合しているかどうかで決まります。「売買の目的物に瑕疵があった場合,買主が瑕疵があることを知らずに目的物を買い受けた以上,隠れた瑕疵といえる」という肢は、出題当時も善意だけでは足りなかったので誤りで、現在も買主の不知から直ちに契約不適合が導かれるわけではないので誤りです。契約の時に既に建物の一部が滅失していたときも、契約は当然に無効とはならず(412条の2第2項)、引き渡された建物が数量・品質に関して契約に適合しないものとして代金減額を請求できます。「売買の目的物である建物の一部が契約の時に既に滅失していた場合において,買主がその滅失を知らなかったときは,買主は,その滅失していた部分の割合に応じて代金の減額を請求することができる」という肢は正しいです。
- 追完請求(562条)修補・代替物の引渡し・不足分の引渡し。買主の責めに帰すべき不適合ならできません
- 代金減額請求(563条)相当期間を定めた追完の催告が原則で、追完不能などなら無催告。買主の責めに帰すべき不適合ならできません
- 損害賠償(564条・415条)売主の責めに帰することができない事由による不適合なら請求できません
- 解除(564条・541条・542条)売主の帰責事由は要りません。買主の責めに帰すべき不適合なら解除できません(543条)
追完の方法は買主が選びますが、売主は買主に不相当な負担を課さなければ別の方法で追完できます
買主は、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しのうちから追完の方法を選んで請求できます(562条1項本文)。ただし、売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法で追完できます(同項ただし書)。「Bは、Aから甲の修補の請求を受けた場合であっても、Aに不相当な負担を課するものでないときは、代替物の引渡しによる履行の追完をすることができる」という肢は正しいです。不適合が買主の責めに帰すべき事由によるときは、追完を請求できません(562条2項)。「数量の不足がBの責めに帰すべき事由によって生じた場合,不足分の引渡しが可能であっても,Bは不足分の引渡しを請求することができない」という肢は正しいです。
代金減額は追完の催告を経るのが原則で、追完が不能なら直ちに請求できます
代金減額は、買主が相当の期間を定めて追完の催告をし、その期間内に追完がないときに、不適合の程度に応じて請求できます(563条1項)。売主にまず契約どおりの物を渡す機会を与える趣旨なので、売主が不足分の引渡しを申し出ているのにそれを拒んで直ちに減額を求めることはできません。「不足分の引渡しが可能であり,Aがその引渡しを申し出た場合であっても,Bは,その申出を拒んで直ちに代金の減額を請求することができる」という肢は誤りです。他方、追完が不能なとき、売主が追完を拒絶する意思を明確に表示したときなどは、催告をせずに直ちに減額を請求できます(563条2項)。「不適合が追完不能であるためにAのBに対する履行の追完の請求が認められないときは、Aは、Bに対し、代金の減額を請求することができない」という肢は誤りです。代金減額は対価の均衡を回復する手段なので売主の帰責事由は要らず、請求できないのは不適合が買主の責めに帰すべき事由によるときだけです(563条3項)。「不適合がAB双方の責めに帰することができない事由によるものであるときは、Aは、Bに対し、代金の減額を請求することができない」という肢は誤りで、「不適合がAの責めに帰すべき事由によるものであるときは、Aは、Bに対し、甲の修補と代金の減額のいずれの請求もすることができない」という肢は正しいです。
損害賠償と解除は債務不履行の一般規定によるので、解除には売主の帰責事由が要りません
564条は、追完請求と代金減額請求の規定が、415条による損害賠償と541条・542条による解除を妨げないと定めています。解除は債権者を契約の拘束から解放する制度なので売主の帰責事由は要りませんが、不履行が買主の責めに帰すべき事由によるときは解除できません(543条)。「数量の不足がABいずれの責めにも帰することができない事由によって生じた場合,BはAB間の売買契約を解除することができない」という肢は誤りで、「数量の不足がBの責めに帰すべき事由によって生じた場合,BはAB間の売買契約を解除することができない」という肢は正しいです。不適合のために契約をした目的を達することができないときは、542条1項により無催告で解除できます。「その瑕疵の存在により契約をした目的を達することができないときは,買主は,契約を解除することができる」という肢は、出題当時の旧570条・566条でも現在の564条・542条でも正しいです。解除権の行使は損害賠償の請求を妨げない(545条4項)ので、「買主は,契約を解除するとともに,売主に対して損害賠償を請求することもできる」という肢も正しいです。売主の損害賠償債務は債務の履行に代わる損害賠償の債務なので、買主の代金債務と同時履行の関係に立ちます(533条)。「買主は,残代金の支払について,損害賠償との同時履行の抗弁を主張することができる」という肢と、「売主の代金請求権と買主の損害賠償請求権は同時履行の関係にある」という肢は正しいです。
何が契約の内容に当たるかは、契約の目的と当事者の意思から決まります
判例は、土地の面積が表示されても、それが代金額決定の基礎とされたにとどまり、売買契約の目的を達成するうえで特段の意味を有するものでないときは、売主は、表示どおりの面積があれば買主が得たであろう利益について損害賠償の責めを負わないとしています(最判昭和57年1月21日)。「その面積の表示が契約の目的を達成する上で特段の意味を有しなくても,その土地が表示どおりの面積を有したとすれば買主が得たであろう利益について損害賠償の責めを負う」という肢は誤りです。また、建物とその敷地の賃借権が売買の目的とされた場合、売買の目的は敷地そのものではなく賃借権なので、賃貸人が修繕義務を負う敷地の欠陥は、賃貸人に修繕を求めるべきもので、売主に担保責任を追及することはできません(最判平成3年4月2日)。「敷地に欠陥があり,賃貸人がその欠陥について修繕義務を負担するときであっても,買主は,売主に対し,……瑕疵担保責任を追及することができる」という肢は誤りです。期間制限と免責特約は、契約不適合責任の期間制限と特則の語で扱います。
民法562条1項
引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。ただし、売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる。
民法563条1項
前条第一項本文に規定する場合において、買主が相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、その期間内に履行の追完がないときは、買主は、その不適合の程度に応じて代金の減額を請求することができる。
民法564条
前二条の規定は、第四百十五条の規定による損害賠償の請求並びに第五百四十一条及び第五百四十二条の規定による解除権の行使を妨げない。
論文ではこう使う
論文では、まず契約の解釈によって目的物が備えるべき種類・品質・数量を確定し、引き渡された物がそれに適合しないことを認定します。そのうえで、買主が求める救済に応じて、追完(562条)、代金減額(563条、催告の要否)、損害賠償(564条・415条、売主の免責事由)、解除(564条・541条・542条、軽微性と543条)の要件を当てはめます。性状について買主の錯誤もある場合は、契約不適合責任と錯誤取消し(95条1項2号・2項)は要件と効果を異にする別の制度で、錯誤も取消しとなり期間制限に服するので、買主はどちらも選んで主張できると論じます。
この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。