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用語集 / 民法 / 配偶者居住権と配偶者短期居住権

配偶者居住権と配偶者短期居住権(1028条〜1041条)とは

はいぐうしゃきょじゅうけんとはいぐうしゃたんききょじゅうけん

民法 親族・相続

配偶者居住権とは、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に居住していた配偶者が、遺産分割又は遺贈によって取得する、その建物の全部を原則として終身の間無償で使用及び収益をする権利で、配偶者短期居住権とは、無償で居住していた配偶者が遺産分割で帰属が確定するまで等の短い間その建物を無償で使用する権利です(1028条・1030条・1037条)。

夫が亡くなり、妻が住み慣れた自宅に住み続けたいと思っても、自宅を相続すると預金などの取り分が減り生活費に困ることがあります。そこで平成30年の改正で、所有権とは別に、自宅に住み続ける権利だけを妻が取得できるようにしました。これが配偶者居住権です。所有権より評価額が低いので、他の財産も受け取りやすくなります。また、遺産分割が終わるまでの間、少なくとも半年は無償で住める配偶者短期居住権も設けられました。

住み慣れた一戸建ての玄関先の場面。高齢の女性(札「配偶者B」)が玄関に立ち、手に「配偶者居住権」と書かれた札を持っている。その横に息子(札「建物の所有者D」)が登記の書類を持って立っている。先生が説明役(札「先生」)。先生の吹き出し「配偶者

配偶者居住権は遺産分割か遺贈で取得しますが、被相続人が建物を配偶者以外の者と共有していたときは取得できません

被相続人の配偶者は、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に居住していた場合に、遺産の分割によって配偶者居住権を取得するものとされたとき又は配偶者居住権が遺贈の目的とされたときは、その建物の全部について無償で使用及び収益をする配偶者居住権を取得します(1028条1項)。ただし、被相続人が相続開始の時に居住建物を配偶者以外の者と共有していたときは取得しません(同項ただし書)。共有者の利益を害するからです。子Cが被相続人と建物を共有していた場合に「Bは,配偶者居住権を取得しない」という肢は正しいです。居住建物が配偶者の財産に属することになっても、他の者が共有持分を持つときは配偶者居住権は消滅しません(1028条2項)。遺産分割で配偶者と相続人Eが共有持分を持つに至った場合に「その配偶者居住権は消滅する」という肢は誤りです。家庭裁判所が遺産分割の審判で配偶者居住権の取得を定められるのは、共同相続人間に合意があるときか、配偶者が希望し所有者の不利益を考慮してもなお配偶者の生活維持に特に必要があるときに限られます(1029条)。存続期間は、遺産分割の協議・遺言・審判で別段の定めをしない限り配偶者の終身の間です(1030条)。

所有者は登記を備えさせる義務を負い、配偶者居住権は譲渡できず、配偶者は修繕ができ通常の必要費を負担します

居住建物の所有者は、配偶者に配偶者居住権の設定の登記を備えさせる義務を負い(1031条1項)、登記をすれば第三者に対抗できます(同条2項・605条)。相続で建物の所有権を取得したDは「配偶者居住権の設定の登記を備えさせる義務を負う」という肢は正しいです。配偶者は従前の用法に従い善良な管理者の注意をもって使用及び収益をしなければならず(1032条1項)、配偶者居住権は譲渡できず(同条2項)、所有者の承諾を得なければ改築・増築や第三者への使用収益をさせることができません(同条3項)。配偶者の生活の本拠を守るための権利で、配偶者の一身に専属するからです。「その配偶者居住権を譲渡することができる」という肢は誤りです。配偶者は居住建物の使用及び収益に必要な修繕をすることができ(1033条1項)、「甲建物の使用及び収益に必要な修繕をすることができる」という肢は正しいです。配偶者は通常の必要費を負担し(1034条1項)、それ以外の費用は583条2項の準用により所有者が196条に従って償還します(同条2項)。

  • 取得原因遺産分割・遺贈(1028条1項)。被相続人が配偶者以外の者と共有していたときは取得しない
  • 存続期間原則として終身(1030条)
  • 対抗要件所有者は設定の登記を備えさせる義務を負う(1031条)
  • 配偶者の義務と制限善管注意で使用収益、譲渡不可、承諾なく第三者に使用収益させられない(1032条)
  • 費用通常の必要費は配偶者、その他の費用は所有者が償還(1034条)
板書の図解の場面。黒板に時間の矢印。左端に「相続開始」、そこから「6か月」の目盛りと、右の方に「遺産分割で帰属が確定」の目盛り。二つの目盛りのうち遅い方に「ここまで無償で使用できる」と矢印。先生が指し棒で遅い方の目盛りを指している(札「先生

配偶者短期居住権は無償で居住していた配偶者に、遺産分割で帰属が確定した日と相続開始から6か月を経過する日の遅い方まで認められます

配偶者は、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に無償で居住していた場合には、居住建物について配偶者を含む共同相続人間で遺産の分割をすべきときは、遺産の分割により居住建物の帰属が確定した日又は相続開始の時から6か月を経過する日のいずれか遅い日まで、それ以外のときは居住建物取得者が消滅の申入れをした日から6か月を経過する日まで、無償で使用する配偶者短期居住権を持ちます(1037条1項)。配偶者短期居住権は使用だけの権利で収益は含まず、配偶者が配偶者居住権を取得したときは消滅します(1039条)。判例は、共同相続人の一人が相続開始前から被相続人の許諾を得て遺産である建物で同居してきたときは、遺産分割終了まで無償で使用させる旨の合意が推認され使用貸借関係が存続するとしています(最判平成8年12月17日)。この推認は被相続人の意思に頼るので、被相続人が反対の意思を示していれば及ばないのに対し、配偶者短期居住権は法律上当然に配偶者に認められます。同居の相続人に使用貸借が推認されるとする肢は正しく、同居の相続人が「当該建物を無償で使用することができない」という肢は誤りです。

民法1028条1項柱書

被相続人の配偶者(以下この章において単に「配偶者」という。)は、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に居住していた場合において、次の各号のいずれかに該当するときは、その居住していた建物(以下この節において「居住建物」という。)の全部について無償で使用及び収益をする権利(以下この章において「配偶者居住権」という。)を取得する。ただし、被相続人が相続開始の時に居住建物を配偶者以外の者と共有していた場合にあっては、この限りでない。

民法1032条2項

配偶者居住権は、譲渡することができない。

論文ではこう使う

論文では、被相続人と同居していた配偶者や相続人が遺産分割前に居住建物の明渡しを求められる場面で使います。配偶者であれば配偶者短期居住権(1037条)により遺産分割で帰属が確定するまで又は相続開始から6か月は無償で使用でき、相続人であれば被相続人との間の使用貸借の合意の推認(最判平成8年12月17日)で遺産分割終了まで無償使用ができることを示します。長期の居住を確保するには遺産分割又は遺贈で配偶者居住権を取得させる必要があり、被相続人が建物を第三者と共有していたときは取得できないことに触れます。

試験ではこう問われる

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