離婚の成立と離婚意思(763条〜771条)とは
りこんのせいりつとりこんいし
離婚の成立とは、夫婦が協議で離婚意思を合致させて戸籍法の届出をすること(協議上の離婚。763条・764条・739条1項)、又は770条1項の離婚原因に基づく離婚請求を認容する判決が確定すること(裁判上の離婚)によって、婚姻が解消されることです。
離婚には、夫婦の話合いで決めて届け出る協議離婚と、話合いがつかないときに裁判所に離婚を認めてもらう裁判離婚があります。協議離婚は役所に届け出た時に、裁判離婚は判決が確定した時に離婚の効力が生じます。結婚のときと違い、離婚は「法律上の夫婦をやめる」という意思があれば足り、生活保護を受け続けるための離婚届でも有効とされています。子の養育費や財産の分け方が決まっていなくても離婚はできますが、未成年の子がいれば親権者を決める必要があります。
協議離婚は戸籍法の届出によって効力を生じ、裁判離婚は離婚請求を認容する判決の確定によって効力を生じます
夫婦はその協議で離婚でき(763条)、協議上の離婚は婚姻の届出の規定(739条)の準用により、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって効力を生じます(764条)。裁判上の離婚は、離婚請求を認容する判決が確定した時に効力を生じ、その後の届出は報告的なものです。「協議上の離婚は戸籍法の定めるところにより届け出ることによって効力を生じ,判決による離婚は離婚請求を認容する判決が確定した時に効力を生ずる」という肢(司法2011・2017、予備2011・2017)は正しいです。成年被後見人が協議離婚をするにも成年後見人の同意は要りません(764条・738条)。「成年被後見人が協議上の離婚をするときには、その後見人の同意を得なければならない」という肢は誤りです。詐欺又は強迫による協議離婚は、家庭裁判所に取消しを請求できます(764条・747条)。
離婚意思は法律上の婚姻関係を解消する意思の合致で足りますが、届出の時に翻意していれば離婚は無効です
判例は、生活保護費の不正受給分の返還を免れ従前と同額の保護費を受け続けるための方便として離婚届を出し、その後も夫婦の生活を続けた事案で、届出は法律上の婚姻関係を解消する意思の合致に基づくもので離婚意思があり、離婚を無効とすることはできないとしています(最判昭和57年3月26日)。婚姻意思に実質的な夫婦関係を求める判例(最判昭和44年10月31日)と向きが違う点に注意が要ります。「その後も夫婦としての実質的生活関係を継続したときは,離婚は,無効である」という肢は誤りです。他方で、協議離婚の届出は離婚意思の表示とみるべきなので、離婚届を作成した後、一方が届出時までに翻意していたことが明確であったときは、その届出による離婚は無効です(最判昭和34年8月7日)。「他方が届出時までに翻意していたことが明確であったときは、離婚は、無効である」という肢は正しいです。
- 生活保護を受け続けるための方便の離婚届(最判昭和57年3月26日)法律上の婚姻関係を解消する意思があるので有効
- 届書作成後、届出時までに一方が翻意(最判昭和34年8月7日)届出時に離婚意思がないので無効
- 便法の婚姻届(最判昭和44年10月31日)社会観念上の夫婦になる意思がないので無効(婚姻の成立の語)
未成年の子がいれば親権者を定める必要がありますが、監護費用や財産分与の協議が調わなくても協議離婚はできます
離婚の届出は、夫婦間に未成年の子がある場合には、親権者の定めがされていること又は親権者の指定を求める家事審判・家事調停の申立てがされていることを認めた後でなければ受理されません(765条1項)。他方、子の監護をすべき者、父又は母と子との交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は協議で定めるとされていますが(766条1項)、協議が調わなければ家庭裁判所が定めるので(同条2項)、その協議は離婚の要件ではありません。「子の監護をすべき者その他監護について必要な事項に関する協議が調わない限り,協議離婚はできない」という肢と「子の監護に要する費用の分担に関する協議が調わない限り,協議上の離婚をすることはできない」という肢は誤りで、「子の監護に要する費用の分担に関する協議が調わない場合であっても、協議上の離婚をすることができる」という肢は正しいです。財産分与も離婚の後に協議や家庭裁判所の処分で定められるので(768条)、「財産分与に関する協議が調わなくても,協議離婚はできる」という肢は正しいです。
裁判上の離婚原因は770条1項の4つで、令和6年の改正で強度の精神病は独立の離婚原因から外れました
夫婦の一方は、配偶者に不貞な行為があったとき、配偶者から悪意で遺棄されたとき、配偶者の生死が3年以上明らかでないとき、その他婚姻を継続し難い重大な事由があるときに限り、離婚の訴えを提起できます(770条1項)。裁判所は、1号から3号までの事由があっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却できます(同条2項)。出題当時は「配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき」が4号の離婚原因で、2項の裁量棄却の対象だったため、「一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは,他の一方による離婚の請求を棄却することができる」という肢は正しいとされました。令和6年の改正(2026年4月施行)でこの号は削除され、強度の精神病は「婚姻を継続し難い重大な事由」に当たるかの判断の中で考慮されるので、現在は2項の裁量棄却を問う前提が成り立ちません。
- 1号配偶者に不貞な行為があったとき
- 2号配偶者から悪意で遺棄されたとき
- 3号配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
- 4号その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき(旧5号)
- 2項1号〜3号の事由があっても婚姻の継続を相当と認めれば棄却できる
有責配偶者からの離婚請求も、長期の別居・未成熟子の不存在・苛酷な状態の不存在がそろえば許されます
判例は、婚姻を継続し難い重大な事由(当時の770条1項5号、現在の4号)を自ら作った有責配偶者からの離婚請求も、信義誠実の原則に照らして容認されうるものかを問うとし、夫婦の別居が両当事者の年齢及び同居期間との対比において相当の長期間に及び、その間に未成熟の子が存在しない場合には、相手方配偶者が離婚により精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状態におかれる等離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情の認められない限り、有責配偶者からの請求であるとの一事をもって許されないとすることはできないとしています(最大判昭和62年9月2日)。相手方が離婚で受ける経済的不利益は、財産分与や慰謝料で解決されるべきものとされています。
民法763条
夫婦は、その協議で、離婚をすることができる。
民法764条
第七百三十八条、第七百三十九条及び第七百四十七条の規定は、協議上の離婚について準用する。
民法770条1項
夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。一 配偶者に不貞な行為があったとき。二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。四 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
民法770条2項
裁判所は、前項第一号から第三号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。
論文ではこう使う
論文では、別居の原因を作った配偶者からの離婚請求の場面で使います。770条1項4号の婚姻を継続し難い重大な事由を認定したうえで、有責配偶者からの請求は信義則に照らして容認されうるものであることを要するとし、別居期間の長さ(年齢と同居期間との対比)、未成熟の子の有無、相手方が苛酷な状態に置かれるかという三つの要素を事実に当てはめる判例の枠組みで書きます。離婚意思が問われる場面では、婚姻意思(実質的意思)と離婚意思(法律上の婚姻関係を解消する意思)の判例の違いを示します。
この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。