所有者不明土地・建物の管理命令と管理不全土地・建物の管理命令(264条の2〜264条の14・令和3年改正)とは
しょゆうしゃふめいとちたてもののかんりめいれいとかんりふぜんとちたてもののかんりめいれい
所有者不明土地・建物の管理命令とは、所有者やその所在がわからない土地や建物について、利害関係人の請求で裁判所が管理人を選任し、管理を命ずる処分です(264条の2・264条の8)。所有者がわかっていても管理が不適当で他人の権利を害するおそれがある土地・建物には管理不全土地・建物管理命令が発せられます(264条の9・264条の14)。
持ち主が誰かわからない、あるいは持ち主の行方がわからない空き地は、草が伸び放題になっても誰も手を入れられず、買いたい人がいても売買ができません。令和3年の改正で、こうした土地や建物について、裁判所が管理人を選んで管理を任せる制度ができました。持ち主がわかっていても手入れを放置して隣の人に迷惑をかけている土地や建物にも、別の管理命令が用意されています。管理人は持ち主のために働き、費用も持ち主が負担します。
所有者不明土地管理命令は、所有者やその所在がわからない土地について、利害関係人の請求で裁判所が発し、管理人を選任します
裁判所は、所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない土地について、必要があると認めるときは、利害関係人の請求により、所有者不明土地管理人による管理を命ずる処分(所有者不明土地管理命令)をすることができます(264条の2第1項)。共有の土地では、所在等のわからない共有者の持分だけを対象にすることもできます(同項括弧書)。命令の効力は、その土地にある所有者の動産にも及び(264条の2第2項)、裁判所は命令の中で所有者不明土地管理人を選任しなければなりません(264条の2第4項)。不在者の財産全体を管理する不在者財産管理人(25条)と違い、特定の土地だけを対象にして管理できる点に特徴があります。
管理命令が発せられると、土地の管理と処分をする権利は管理人に専属し、土地に関する訴えも管理人が原告又は被告になります
所有者不明土地管理人が選任されると、所有者不明土地等の管理及び処分をする権利は所有者不明土地管理人に専属します(264条の3第1項)。所有者と管理人の両方に属するのではありません。「甲土地の管理をする権利は、A及びCに属する」という肢は誤りです。所有者不明土地等に関する訴えについては、所有者不明土地管理人が原告又は被告になります(264条の4)。「甲土地に関する訴えについては、Cが原告又は被告となる」という肢は正しいです。管理と処分の権利が管理人に移るので、訴訟も管理人に担わせるのです。
管理人は所有者のために善良な管理者の注意で権限を行使し、保存・利用・改良を超える売却などには裁判所の許可が要ります
所有者不明土地管理人は、所有者不明土地等の所有者のために、善良な管理者の注意をもって、その権限を行使しなければなりません(264条の5第1項)。命令を申し立てた利害関係人のためではありません。「Cは、BではなくAのために、善良な管理者の注意をもって、所有者不明土地管理人の権限を行使しなければならない」という肢は正しいです。管理人は、保存行為と、性質を変えない範囲内の利用・改良行為を超える行為をするには、裁判所の許可を得なければなりません(264条の3第2項本文)。許可があれば土地を売却することもできます。「Cは、裁判所の許可を得たときは、甲土地を売却することができる」という肢は正しいです。許可がないことは善意の第三者に対抗できません(264条の3第2項ただし書)。
管理に必要な費用と管理人の報酬は、申立人ではなく土地の所有者が負担します
所有者不明土地管理人は、所有者不明土地等から裁判所が定める額の費用の前払と報酬を受けることができ(264条の7第1項)、管理に必要な費用と報酬は所有者不明土地等の所有者の負担になります(264条の7第2項)。管理は所有者の財産を守るためのものだからです。「甲土地の管理に必要な費用は、Bが負担する」という肢は誤りです。管理人は、任務違反などの重要な事由があれば利害関係人の請求で解任され、正当な事由があれば裁判所の許可を得て辞任できます(264条の6)。
所有者不明建物管理命令は敷地の利用権にも及び、管理不全土地・建物管理命令は所有者がわかっていても管理が不適当なら発せられますが、権限は管理人に専属しません
所有者や所在がわからない建物についても、同じ仕組みで所有者不明建物管理命令が発せられ、その効力は建物内の動産と建物の敷地の賃借権などにも及びます(264条の8)。所有者による土地や建物の管理が不適当であるために他人の権利や法律上保護される利益が侵害され、又は侵害されるおそれがある場合には、所有者がわかっていても、利害関係人の請求により管理不全土地管理命令・管理不全建物管理命令が発せられます(264条の9・264条の14)。管理不全土地管理人は管理と処分の権限を持ちますが、所有者不明の場合と違って権利は専属せず、土地を処分する許可には所有者の同意が要り、許可がないことは善意でかつ過失がない第三者に対抗できません(264条の10)。所有者がいるので、その意思を尊重するためです。このほか、相続などで取得した土地を一定の要件のもとで国庫に帰属させる別の法律の制度も、令和3年に設けられました。
- 所有者不明土地・建物管理命令(264条の2〜264条の8)所有者・所在不明が要件/管理処分権は管理人に専属/訴えは管理人が当事者/処分は裁判所の許可(善意の第三者には対抗不可)
- 管理不全土地・建物管理命令(264条の9〜264条の14)管理不適当で他人の権利侵害のおそれが要件/権限は専属しない/処分の許可に所有者の同意が必要(善意無過失の第三者には対抗不可)
- 共通利害関係人の請求/管理人は所有者のために善管注意/費用と報酬は所有者の負担
民法264条の3第1項
前条第四項の規定により所有者不明土地管理人が選任された場合には、所有者不明土地管理命令の対象とされた土地又は共有持分及び所有者不明土地管理命令の効力が及ぶ動産並びにその管理、処分その他の事由により所有者不明土地管理人が得た財産(以下「所有者不明土地等」という。)の管理及び処分をする権利は、所有者不明土地管理人に専属する。
民法264条の5第1項
所有者不明土地管理人は、所有者不明土地等の所有者(その共有持分を有する者を含む。)のために、善良な管理者の注意をもって、その権限を行使しなければならない。
民法264条の7第2項
所有者不明土地管理人による所有者不明土地等の管理に必要な費用及び報酬は、所有者不明土地等の所有者(その共有持分を有する者を含む。)の負担とする。
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