共有物分割(256条〜262条の2・遺産共有との区別・全面的価格賠償)とは
きょうゆうぶつぶんかつ
共有物分割とは、共有者の請求によって共有関係を解消し、共有物を各共有者に分けることです(256条)。協議が調わなければ裁判所が現物分割か賠償分割(全面的価格賠償を含む)で分け、それができないか著しく価格を減少させるおそれがあるときは競売を命ずることができます(258条)。
共有は、使い方を決めるたびに話合いが必要で、もめやすい持ち方です。民法は、共有者がいつでも共有関係から抜け出せるよう、共有物の分割を請求する権利を認めています。話合いで決まらなければ裁判所が分け方を決め、土地を切り分ける方法、一人が全部を取って他の共有者にお金を払う方法、売ってお金を分ける方法があります。ただし、相続で共有になった財産は、まず遺産分割の手続で分けることになっています。
各共有者はいつでも共有物の分割を請求でき、協議が調わなければ裁判所に請求し、その訴えは共有者全員が当事者になります
各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができます(256条1項本文)。ただし、5年を超えない期間内は分割をしない旨の契約ができ、更新もできますが、更新の時から5年を超えられません(256条1項ただし書・2項)。「金塊の共有者は,分割をしない旨の契約をしていない場合には,いつでも,その動産の分割を請求することができる」という肢は正しいです。境界線上の境界標などの共有物は分割を請求できません(257条)。分割について協議が調わないとき、又は協議ができないときは、裁判所に分割を請求できます(258条1項)。共有物分割の訴えは、共有者全員の間で分け方を一度に決める必要があるので、共有者全員が当事者になる固有必要的共同訴訟です(大判大正12年12月17日)。「共有物分割訴訟においては,共有者の全員が当事者とならなければならない」という肢は正しいです。
裁判による分割は現物分割と賠償分割によって行い、一人に全部を取得させて他の共有者に価格を賠償させる全面的価格賠償も認められます
裁判所は、共有物の現物を分割する方法と、共有者に債務を負担させて他の共有者の持分の全部又は一部を取得させる方法によって、分割を命ずることができます(258条2項)。判例は、改正前から、共有物を共有者の一人の単独所有又は数人の共有とし、これらの者から他の共有者に持分の価格を賠償させる全面的価格賠償の方法も、共有物の性質や共有関係の発生原因などから相当であり、価格が適正に評価され、取得者に支払能力があって他の共有者の実質的公平を害しない特段の事情があれば許されるとしていました(最判平成8年10月31日)。令和3年改正で、この方法が258条2項2号に明記されました。「持分の価格を賠償させる方法によることはできない」という肢は誤りです。判例は、分割を請求する原告が多数のときは、被告の持分の限度で現物を分割し、残りを原告らの共有として残す方法も許されるとしています(最判平成4年1月24日)。「Cの持分の限度で現物を分割し,残りの部分をAとBの共有とする方法は許される」という肢は正しく、「その余は分割請求をした共有者の共有として残す方法により共有物の分割をすることはできない」という肢は誤りです。数か所に分かれた数個の不動産を一括して分割の対象とし、各共有者がそれぞれ別の不動産の単独所有権を取得する方法も現物分割として許されます(最大判昭和62年4月22日)。「共有者各自が各個の建物の単独所有権を取得する方法により共有物の分割をすることはできない」という肢は誤りです。
現物分割も賠償分割もできないときや、分割で価格を著しく減少させるおそれがあるときは、裁判所は競売を命ずることができます
258条2項の方法で分割することができないとき、又は分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるときは、裁判所は、その競売を命ずることができます(258条3項)。物理的に分割できない場合だけでなく、社会通念上適正な現物分割が著しく困難な場合も含まれます。「社会通念上適正な現物分割が著しく困難な場合にも,共有物の競売を命ずることができる」という肢は正しいです。競売は「命ずることができる」のであって、命じなければならないのではありません。「裁判所は,その競売を命じなければならない」という肢は誤りです。裁判所は分割の裁判で、金銭の支払や登記義務の履行などの給付も命じられます(258条4項)。
分割による取得は持分の交換や売買なので原始取得ではなく、各共有者は持分に応じて担保責任を負い、共有者の債権者は分割に参加できます
判例は、共有物の分割は、共有者が互いに共有物の各部分について持分を交換し又は売買することであり、各共有者が取得部分について単独所有権を原始的に取得するものではないとしています(最判昭和42年8月25日)。「その分割によってA所有とされた部分につき、単独所有権を原始取得する」という肢は誤りです。分割は持分の交換や売買の性質を持つので、各共有者は、他の共有者が分割によって取得した物について、売主と同じく、その持分に応じて担保の責任を負います(261条)。「その持分に応じて担保の責任を負う」という肢は正しいです。共有物について権利を有する者と各共有者の債権者は、自己の費用で分割に参加でき(260条1項)、参加の請求をしたのに参加させずに分割したときは、その分割を請求した者に対抗できません(260条2項)。「Aの債権者Eは、自己の費用で、甲土地の分割に参加することができる」という肢は正しいです。分割の際の共有に関する債権の弁済(259条)は、共有物の管理費用の語で扱います。
相続で共有になった財産は遺産分割の手続で分けますが、共同相続人から持分を譲り受けた第三者が共有関係を解消するには共有物分割訴訟によります
判例は、遺産相続によって相続人の共有となった財産の分割は家庭裁判所が審判で定めるべきもので、通常の裁判所が判決手続で判定すべきものではないとしています(最判昭和62年9月4日)。令和3年改正で、共同相続人間で遺産の分割をすべきときは、その共有物について258条による分割はできないと明記されました(258条の2第1項)。「被相続人が遺言をしないで死亡したことにより相続人の共有となった財産の分割は,裁判所が判決手続によって行うことができない」という肢は正しいです。一方、判例は、共同相続人の一人から遺産である特定の不動産の共有持分を譲り受けた第三者が共有関係を解消するためにとるべき手続は、遺産分割審判ではなく共有物分割訴訟であるとしています(最判昭和50年11月7日)。第三者は相続人ではなく、遺産分割の当事者になれないからです。「その不動産の共同所有関係の解消を求めるためには,共有物分割訴訟によらなければならない」という肢と、「EがC及びDとの共有関係の解消のためにとるべき裁判手続は,共有物分割訴訟である」という肢は正しく、「A及びBとの共有関係の解消のためにとるべき裁判手続は,遺産分割審判である」という肢は誤りです。共有物の持分が相続財産に属する場合、相続開始の時から10年を経過したときは、相続人が異議を申し出ない限り、その持分についても258条による分割ができます(258条の2第2項・3項)。
所在のわからない共有者がいる不動産は、裁判所の裁判を得て、その持分を取得し又は第三者に譲渡できます
令和3年改正で、不動産の共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、その共有者にその所在等不明共有者の持分を取得させる裁判ができるようになりました(262条の2第1項)。所在等不明共有者は、持分を取得した共有者に時価相当額の支払を請求できます(262条の2第4項)。また、所在等不明共有者以外の共有者全員が特定の者に持分の全部を譲渡することを停止条件として、所在等不明共有者の持分をその特定の者に譲渡する権限を共有者に与える裁判もできます(262条の3第1項)。不動産全体をまとめて売れるようにするためです。所在等不明共有者の持分が相続財産で遺産分割をすべき場合には、相続開始から10年を経過するまでこれらの裁判はできません(262条の2第3項・262条の3第2項)。
- 分割請求(256条)いつでもできる。不分割特約は5年以内(更新も5年以内)
- 裁判による分割の方法(258条2項・3項)現物分割・賠償分割(全面的価格賠償を含む)。できないか著しく減価するおそれがあれば競売を命ずることができる
- 当事者共有者全員(固有必要的共同訴訟)
- 分割の効果原始取得ではない(持分の交換・売買)。持分に応じた担保責任(261条)
- 遺産共有(258条の2)遺産分割の手続による。持分を譲り受けた第三者は共有物分割訴訟。相続開始から10年経過後は持分について258条の分割も可
- 所在等不明共有者(262条の2・262条の3)裁判で持分の取得・譲渡権限の付与ができる
民法256条1項
各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる。ただし、五年を超えない期間内は分割をしない旨の契約をすることを妨げない。
民法258条2項
裁判所は、次に掲げる方法により、共有物の分割を命ずることができる。一 共有物の現物を分割する方法 二 共有者に債務を負担させて、他の共有者の持分の全部又は一部を取得させる方法
民法258条3項
前項に規定する方法により共有物を分割することができないとき、又は分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるときは、裁判所は、その競売を命ずることができる。
民法258条の2第1項
共有物の全部又はその持分が相続財産に属する場合において、共同相続人間で当該共有物の全部又はその持分について遺産の分割をすべきときは、当該共有物又はその持分について前条の規定による分割をすることができない。
論文ではこう使う
論文では、共有物分割の方法が争点になる場面で、まず遺産共有かどうかを確認し、遺産共有なら遺産分割の手続によること(258条の2)、持分を譲り受けた第三者が関わるなら共有物分割訴訟によることを示します。そのうえで、現物分割・賠償分割(全面的価格賠償)・競売の順に、258条2項・3項の要件を事案に当てはめます。全面的価格賠償では、共有物の性質と共有関係の発生原因、取得者の支払能力、価格の適正な評価から、他の共有者の実質的公平を害しないかを検討します。
この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。