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用語集 / 民法 / 相続人の不存在と特別縁故者

相続人の不存在と特別縁故者(951条〜959条)とは

そうぞくにんのふそんざいととくべつえんこしゃ

民法 親族・相続

相続人の不存在とは、相続人のあることが明らかでない場合のことで、相続財産は法人となり、家庭裁判所が選任した相続財産清算人が清算をし、相続人が現れなければ、特別縁故者の請求により家庭裁判所が残った財産の全部又は一部を分与し、それでも残った財産は国庫に帰属します(951条〜959条)。

身寄りのない人が亡くなり、相続人がいるかどうか分からないとき、財産を放っておくわけにはいきません。そこで民法は、遺産そのものを法人として扱い、家庭裁判所が選んだ相続財産清算人に借金の返済などの清算をさせます。相続人が名乗り出なければ、生前に一緒に暮らしたり介護をしたりした特別縁故者が、家庭裁判所に申し立てて財産を分けてもらえます。最後に残った財産は国のものになります。

家庭裁判所の窓口の場面。カウンターの奥に裁判官役の男性(札「家庭裁判所」)。手前で、エプロン姿の女性(札「療養看護に努めた者」)が「特別縁故者への財産分与の申立書」を差し出している。その横にスーツの男性(札「相続財産清算人」)が帳簿を持って

相続人のあることが明らかでないときは相続財産が法人となりますが、相続財産全部の包括受遺者がいれば法人は成立しません

相続人のあることが明らかでないときは、相続財産は法人となります(951条)。判例は、相続人は存在しないが相続財産全部の包括受遺者が存在する場合は、「相続人のあることが明かでないとき」に当たらないとしています(最判平成9年9月12日)。包括受遺者は相続人と同一の権利義務を持ち(990条)、遺言者の死亡の時から財産に属した一切の権利義務を承継するので、清算の手続をさせる必要がないからです。「相続財産全部の包括受遺者があることは明らかである場合には,相続財産法人は成立しない」という肢と、「相続財産全部の包括受遺者が存在するときは,相続財産法人は成立しない」という肢は正しいです。判例は、被相続人から抵当権の設定を受けても、被相続人の死亡前に仮登記がされていた場合を除き、相続財産法人に対して抵当権設定登記手続を請求できないとしています(最判平成11年1月21日)。相続債権者の間の優劣は被相続人の死亡の時を基準に決まるからで、「Bは,相続財産法人に対して抵当権設定登記手続を請求することができない」という肢は正しいです。

相続財産清算人は家庭裁判所が選任し、売却には許可が要り、代理権は相続人が現れただけでは消えず相続の承認をした時に消滅します

家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって相続財産清算人を選任し、その旨と、相続人があれば6か月以上の一定期間内に権利を主張すべき旨を公告します(952条)。令和3年改正で、従来の相続財産管理人は相続財産清算人に改められ、選任の公告と相続人捜索の公告が一つにまとめられました。清算人には不在者の財産管理人の規定が準用され(953条)、保存行為など103条の権限を超える行為には家庭裁判所の許可が要るので(28条)、「相続財産に属する財産を売却するときは,家庭裁判所の許可を得なければならない」という肢は正しいです。相続人のあることが明らかになったときは、相続財産法人は成立しなかったものとみなされますが、清算人がその権限内でした行為の効力は妨げられません(955条)。清算人の代理権は、相続人が相続の承認をした時に消滅します(956条1項)。現れた相続人が放棄するかもしれないからです。相続人のあることが明らかになった時点で代理権が消滅するとする肢は誤りです。相続財産に関しては、相続人が確定した時、管理人が選任された時又は破産手続開始の決定があった時から6か月を経過するまで時効は完成しません(160条)。清算人が選任されれば相続人が確定していなくてもその時から6か月で時効が完成しうるので、「相続人が確定するまでの間は,時効は完成しない」という肢は誤りです。

期間内に権利を主張しなかった相続人は失権し、特別縁故者は請求によって清算後に残った財産の全部又は一部の分与を受けられます

952条2項の期間内に相続人としての権利を主張する者がないときは、相続人並びに清算人に知れなかった相続債権者及び受遺者は、その権利を行使することができません(958条)。判例は、公告期間内に相続人であることの申出をしなかった者は、特別縁故者への分与後に残余財産があっても相続権を主張できないとしています(最判昭和56年10月30日)。この肢は正しいです。家庭裁判所は、相当と認めるときは、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者の請求によって、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができます(958条の2第1項)。請求は952条2項の期間の満了後3か月以内にしなければなりません(同条2項)。「職権で,特別縁故者に相続財産の分与をすることができる」という肢と、「清算後残存すべき相続財産の全部を与えることはできない」という肢は誤りです。法人を除く規定はないので、「法人は特別縁故者として相続財産の分与を受けることができる」という肢は正しいです。特別縁故者への分与は相続人がいない場合の制度なので、被相続人に兄弟姉妹などの相続人がいれば内縁の妻が療養看護に努めていても分与はなく、「家庭裁判所は,Gの請求により,Cの遺産の全部又は一部をGに与えることができる」という肢は誤りです。分与されなかった相続財産は、不動産か動産かを問わず国庫に帰属するので(959条)、動産は占有を始めた者に帰属するとする肢は誤りです。

板書の図解の場面。黒板に「甲土地 A持分1/2・B持分1/2」の箱。Aの持分から矢印が「1 特別縁故者への分与」へ伸び、その下に点線の矢印で「2 分与されなければ他の共有者Bへ(255条)」と書かれている。先生が指し棒で「1 特別縁故者への

共有者の一人が相続人なく死亡したときの持分は、まず特別縁故者への分与の対象となり、分与されないときに初めて他の共有者に帰属します

共有者の一人がその持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は他の共有者に帰属します(255条)。判例は、共有者の一人が死亡し、相続人の不存在が確定して清算手続が終了したときは、その共有持分は他の相続財産とともに特別縁故者への財産分与の対象となり、分与されず承継すべき者のないまま残ることが確定したときに初めて255条により他の共有者に帰属するとしています(最判平成元年11月24日)。清算手続が終了すれば持分は他の共有者に帰属し「特別縁故者への財産分与の対象にはならない」という肢と、Aの債権者も受遺者もいないときに「その持分は他の共有者に帰属し,特別縁故者への分与の対象とならない」という肢は誤りです。この点の見解を問う問題で、共有関係は完全な財産権が他の共有持分によって制約されているにすぎず共有者間に相互連帯的な特別関係があるという理由は、持分は直ちに他の共有者に帰属するという見解の根拠に親しむものです。判例はこれと逆に特別縁故者への分与を優先させています。255条との関係は前半の共有持分の処分と放棄の語で扱います。

民法951条

相続人のあることが明らかでないときは、相続財産は、法人とする。

民法956条1項

相続財産の清算人の代理権は、相続人が相続の承認をした時に消滅する。

民法958条の2第1項

前条の場合において、相当と認めるときは、家庭裁判所は、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者の請求によって、これらの者に、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる。

論文ではこう使う

論文では、共有者の一人が相続人なく死亡した場合にその持分が他の共有者と特別縁故者のどちらに帰属するかを論じるときに使います。255条の「相続人がないとき」の意味を、958条の2の特別縁故者への分与の制度との関係で考え、特別縁故者への分与を優先させても255条の趣旨に反しないこと、共有持分とそれ以外の財産とで扱いを分ける合理的理由がないことから、清算後の持分はまず特別縁故者への分与の対象となり、分与されなかったときに初めて他の共有者に帰属するとする判例に当てはめます。

試験ではこう問われる

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読んだあとに、民法の肢別演習を

この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。

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