憲法総論
8語立憲的意味の憲法・硬性憲法
立憲的意味の憲法・硬性憲法とは、憲法を内容と改正手続という二つの物差しで分けたときの呼び名です。立憲的意味の憲法は国家権力を制限して国民の権利を保障するという思想に基づく近代以降の憲法で、国家の統治の基本を定めた固有の意味の憲法と対になり、硬性憲法は改正に法律の改正より加重された手続を要する憲法で、法律と同じ手続で改正できる軟性憲法と対になります。
憲法の最高法規性と尊重擁護義務
憲法の最高法規性とは、憲法が国法秩序において最も強い効力を持ち、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為が効力を持たないことをいいます(98条1項)。この形式的な効力の優位のほかに、基本的人権を保障する内容から導かれる実質的最高法規性があり、99条は公務員に憲法を尊重し擁護する義務を課しています。
国民主権
国民主権とは、国政の在り方を最終的に決定する力ないし権威が国民に存することをいいます(前文1項・1条)。主権という語は、統治権・国家権力の最高独立性・国政の最高決定権という三つの意味で使われ、国民主権の主権は最高決定権を指します。
平和主義と9条の規範構造
平和主義とは、前文2項の平和的生存権の確認と9条の具体的規定から成る日本国憲法の基本原理です。9条1項は国権の発動たる戦争と武力の行使・武力による威嚇を国際紛争を解決する手段としては放棄し、2項は戦力の不保持と交戦権の否認を定め、1項の放棄の範囲と2項の「前項の目的」の読み方の組合せで自衛戦争の可否が決まります。
日本憲法史と成立の法理
日本憲法史と成立の法理とは、天皇主権を採り権利を法律の留保の下に置いた明治憲法から、国民主権の日本国憲法へ移った経緯と、その移り変わりを法的にどう説明するかという問題です。日本国憲法は明治憲法73条の改正手続を経て成立しており、その法的な説明として八月革命説が説かれます。
明治憲法下の法令・占領法規の効力
明治憲法下の法令・占領法規の効力とは、明治憲法の下で作られた法令と占領中に効力を認められた法令が、日本国憲法の下でどこまで効力を持つかという問題です。明治憲法下の法令は日本国憲法の条規に反しない限り効力を維持し(98条1項の反対解釈)、占領法規は平和条約の発効によって当然にその効力を失います。
天皇の国事行為と内閣の助言と承認
天皇の国事行為と内閣の助言と承認とは、天皇が行える行為を憲法の定める国事に関する行為に限り、そのすべてに内閣の助言と承認を必要として内閣が責任を負う仕組みです。天皇は国政に関する権能を有しません。
憲法尊重擁護義務
憲法尊重擁護義務とは、天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員が、憲法を尊重し擁護する義務を負うことをいいます(99条)。列挙されているのは公権力を担う側で、国民は含まれていません。
人権総論
7語外国人の人権享有主体性
外国人の人権享有主体性とは、憲法第3章の人権規定の保障が、我が国に在留する外国人にも及ぶかという問題です。判例は、権利の性質上日本国民のみを対象としていると解されるものを除き、外国人にも等しく及ぶとし、どの権利が及ぶかは権利ごとに性質で判断します。
法人の人権享有主体性
法人の人権享有主体性とは、憲法第3章の人権規定の保障が、会社や税理士会のような法人にも及ぶかという問題です。判例は、性質上可能な限り法人にも適用されるとしたうえで、団体の活動が目的の範囲内かどうかと、構成員にどこまで協力義務を課せるかを、強制加入団体かどうかで分けて判断します。
公共の福祉の意義
公共の福祉の意義とは、憲法が12条・13条と22条1項・29条2項に置いた「公共の福祉」の文言を、人権制約の根拠としてどう理解するかという問題です。通説の一元的内在制約説は、公共の福祉を人権相互の矛盾衝突を調整するための実質的公平の原理と解し、全ての人権に論理必然的に内在するものと位置付けます。
特別な法律関係と公務員の人権
特別な法律関係と公務員の人権とは、公務員や在監者のように国と特別な法律関係にある者の人権を、どこまで制約できるかという問題です。法律の根拠なく包括的に制限することはできず、制約は、その関係を設けた憲法上の根拠と目的から、必要な限度で認められます。
私人間効力
私人間効力とは、憲法の人権規定が、国と個人の間ではなく、会社と従業員のような私人相互の関係にどこまで及ぶかという問題です。判例は、人権規定は私人相互の関係を直接規律するものではないとしつつ、民法90条などの私法の一般条項を通じて憲法の趣旨を及ぼす間接適用説に立ちます。
制度的保障の理論
制度的保障の理論とは、憲法が個人の権利とは別に一定の制度そのものを客観的な法として保障し、法律によってもその核心的部分を侵すことができないとする理論です。政教分離、私有財産制、大学の自治、地方自治がその例で、人権そのものの保障とは区別されます。
国家の私法上の行為と憲法の適用
国家の私法上の行為と憲法の適用とは、国が私人と対等の立場で結ぶ契約に憲法が直接適用されるかという問題です。判例は、契約が実質的にみて公権力の発動たる行為と何ら変わりがないといえる特段の事情がない限り、憲法の直接適用を受けず、私法の適用を受けるにすぎないとします。
包括的基本権・平等
7語幸福追求権と新しい人権
幸福追求権とは、憲法13条後段が定める生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利をいい、14条以下の個別の人権規定に列挙されていない権利の根拠となる包括的基本権です。新しい人権とは、この幸福追求権を根拠に憲法上の権利として認められる、明文で規定されていない権利・自由のことです。
プライバシー権・自己情報コントロール権
プライバシー権・自己情報コントロール権とは、私生活をみだりに公開されない法的保障ないし権利として出発し、現在は自己に関する情報をコントロールする権利として構成される権利です。判例は13条を根拠に、容ぼうを撮影されない自由や個人情報をみだりに開示されない自由といった個別の自由として承認してきました。
自己決定権
自己決定権とは、個人が一定の私的事項について、公権力の介入を受けずに自ら決定する権利をいい、13条の幸福追求権から導かれるとされます。判例は自己決定権という語を用いず、人格権や個別の利益として処理してきました。
人格権と名誉権
人格権と名誉権とは、人が個人として尊重されるために守られる人格的な利益を内容とする権利で、13条により保障され、名誉権はそのうち人の品性、徳行、名声、信用等の人格的価値について社会から受ける客観的評価を保護する権利です。名誉は表現の自由と衝突するため、事後の損害賠償で処理するか事前の差止めを認めるかで審査の厳しさが変わります。
法の下の平等の意義
法の下の平等の意義とは、14条1項の「法の下に平等」が国に何を求めているかという問題で、判例は、事柄の性質に即応した合理的な根拠に基づくものでない限り、法的な差別的取扱いを禁止する趣旨だと解しています。平等は、すべての人を機械的に等しく扱う絶対的平等ではなく、合理的な理由のある区別は許される相対的平等を意味します。
後段列挙事由と審査密度
後段列挙事由とは、14条1項後段が挙げる人種、信条、性別、社会的身分又は門地のことで、判例はこれを例示と解しています。審査密度とは、区別に合理的な理由があるかをどれだけ厳しく検討するかのことで、判例は、自らの意思や努力によっては変えられない事柄や、日本国籍のように重要な法的地位に関わる区別については慎重な検討を求め、租税や社会保障の区別については立法裁量を広く認めています。
租税立法の合憲性
租税立法の合憲性とは、租税に関する法律が14条1項の平等や84条の租税法律主義に適合するかという問題です。租税立法は国政全般からの総合的政策判断と専門技術的な判断を必要とするため立法府に広い裁量が認められ、区別の態様が著しく不合理であることが明らかな場合に限り違憲となります。
精神的自由
4語思想・良心の自由
思想・良心の自由とは、内心におけるものの見方や考え方を国家が侵してはならないという憲法19条の自由です。内心にとどまる限り制約は許されず、内心の告白を強制されない自由も含みます。
信教の自由の内容と限界
信教の自由の内容とは、憲法20条1項が保障する信仰の自由、宗教的行為の自由、宗教的結社の自由の三つです。その限界とは、内心の信仰は絶対的に保障される一方で、外部に現れる宗教的行為は他者の生命や身体などとの関係で必要な制約を受けることです。
政教分離原則と目的効果基準
政教分離原則とは、国家と宗教との結び付きを排除して、信教の自由を制度の面から支える原則です(憲法20条1項後段・3項、89条)。目的効果基準とは、国とその機関の行為が禁止される宗教的活動に当たるかを、行為の目的が宗教的意義をもつか、効果が宗教に対する援助、助長、促進又は圧迫、干渉等になるかで判断する基準です。
学問の自由と大学の自治
学問の自由とは、学問研究の自由、研究発表の自由、教授の自由を内容とする憲法23条の保障です。大学の自治とは、大学における学問の自由を守るために、教授その他の研究者の人事や施設と学生の管理を大学が自主的に決める制度の保障です。
表現の自由
9語知る権利とアクセス権
知る権利とは、表現の自由を受け手の側からとらえ直した権利で、妨げられずに情報を受け取る自由権の面と、情報の公開を求める請求権の面をもち、請求権の面は法律による具体化を必要とします。アクセス権とは、さらに進んでマス・メディアに紙面や電波の利用を求める権利で、判例はこれを憲法から直接導くことを認めていません。
報道の自由・取材の自由
報道の自由・取材の自由とは、報道機関が事実を報道する自由と、その報道のために情報を集める自由をいいます。事実の報道の自由は憲法21条の保障のもとにあり、報道のための取材の自由は憲法21条の精神に照らし十分尊重に値するものとされ、取材資料の提出命令や差押え、証言拒絶の可否は比較衡量で決まります。
検閲の禁止と事前抑制の理論
検閲の禁止と事前抑制の理論とは、憲法21条2項前段が行政権による検閲を絶対的に禁止し、それに当たらない表現の事前抑制も憲法21条1項のもとで原則として許されないとする考え方です。検閲には公共の福祉による例外もなく、事前抑制は厳格かつ明確な要件のもとでだけ例外的に認められます。
明確性の理論と過度の広汎性
明確性の理論とは、表現を規制する法令は、何が禁じられているかを通常の判断能力を有する一般人が読み取れる程度に明確でなければならないという考え方です。過度の広汎性とは、規制の範囲が必要な限度を超えて保護されるべき表現にまで及んでいることをいい、不明確な法令も過度に広汎な法令も、文面上無効とされ得ます。
内容規制と内容中立規制
内容規制とは、表現が何を言っているかに着目してこれを制限する規制で、内容中立規制とは、表現の内容にかかわりなく、いつ、どこで、どのような方法で表現するかに着目する規制です。内容規制には厳格な審査、内容中立規制にはより緩やかな審査が妥当するとして両者を分ける考え方を二分論といいます。
わいせつ表現と青少年保護
わいせつ表現と青少年保護とは、わいせつ文書の頒布処罰が性的秩序と最小限度の性道徳の維持という公共の福祉によって正当化され、青少年の健全な育成を目的とする有害図書の規制が成人の知る自由への制約を伴いつつ合憲とされてきた、性表現の規制をめぐる問題です。
集会の自由とパブリックフォーラム
集会の自由とパブリックフォーラムとは、多数人が共同の目的で一定の場所に集まる自由(21条1項)と、道路や公園、公の施設のように一般公衆が出入りする場所を表現の場として使う権利をめぐる問題です。集会は場所の確保なしには成り立たないため、公の施設の利用拒否や集団行進の許可制が実質的な表現規制として審査されます。
選挙運動の自由と戸別訪問の禁止
選挙運動の自由とは、候補者や支持者が投票を得るために意見を表明し働きかける自由で、政治的表現の自由の中核にあります。戸別訪問の禁止とは、公職選挙法138条1項が投票を得るなどの目的で家々を訪ねることを一律に禁じる規制で、判例は意見表明の手段方法の規制として合理的関連性の基準により合憲としています。
結社の自由と通信の秘密
結社の自由とは、共同の目的のために継続的な団体を結成し、これに加入し、団体として活動する自由と、団体を結成せず加入せず脱退する自由をいい、憲法21条1項が保障します。通信の秘密とは、公権力が通信の内容や存在を探索することを禁じる保障で、通信の内容だけでなく差出人や日時など通信に関する一切の事項に及びます(憲法21条2項後段)。
経済的自由
8語職業選択の自由と規制目的二分論
職業選択の自由とは、職業を選ぶ自由と、選んだ職業を遂行する営業の自由を含む、憲法22条1項の自由です。規制目的二分論とは、職業の自由への規制の目的を国民の生命健康への危険の防止という消極目的と社会経済政策という積極目的に分け、審査の厳しさを変える考え方です。
職業の自由の規制態様
職業の自由の規制態様とは、許可制、資格制、免許制、営業方法の規制など、職業の自由に加えられる制限の形のことです。判例は規制の目的だけでなく、制約の強さと職業の性質を併せて見て、審査の厳しさを決めています。
居住・移転の自由と海外渡航の自由
居住・移転の自由とは、住む場所を定め、移動する自由で、憲法22条1項が保障します。海外渡航の自由とは、一時的に外国へ渡航する自由で、判例は22条2項の外国移住の自由に含めています。
財産権の保障と制度的保障
財産権の保障とは、憲法29条1項が私有財産制度を制度として保障するとともに、個人が現に有する具体的な財産上の権利を基本的人権として保障することです。制度的保障とは、立法によっても私有財産制の核心を廃止できないという意味で、制度そのものを憲法が守る考え方です。
財産権の事後的制限
財産権の事後的制限とは、財産権を取得した後に、法律や条例がその内容を変更したり行使を制限したりすることです。判例は、その変更や制限が公共の福祉に適合するかを、目的、権利の性質、変更の程度、保護される公益などの諸事情を総合して判断しています。
損失補償の要否と特別の犠牲
損失補償の要否とは、適法な公権力の行使によって財産上の損失が生じたときに、憲法29条3項の正当な補償が必要かどうかという問題で、その制限が特別の犠牲に当たるかで決まります。特別の犠牲とは、侵害が特定の者に向けられ、受忍すべき限度を超えて財産権の本質的内容を侵すものをいいます。
正当な補償と補償規定を欠く場合
正当な補償とは、憲法29条3項が私有財産を公共のために用いる場合に要求する補償で、その水準について財産の客観的な市場価格を全額補償すべきだとする完全補償説と、合理的に算出された相当な額で足りるとする相当補償説が対立します。補償規定を欠く場合とは、財産権を制限する法律に補償の定めがない場合のことで、判例は同項を直接の根拠として補償を請求する余地を認めています。
予防接種禍と国家補償の谷間
予防接種禍とは、国が勧める予防接種の副反応によって生命や身体に重い被害が生じることです。国家補償の谷間とは、適法な行政活動によって生命や身体に被害が生じたのに、過失が認められず補償の規定も置かれていないために、国家賠償も損失補償も届かない領域のことです。
人身の自由・国務請求権
6語適正手続と告知・聴聞
適正手続とは、何人も法律の定める手続によらなければ生命若しくは自由を奪われ、又はその他の刑罰を科せられないという31条の保障です。判例と通説は、手続の法定にとどまらず、手続の適正、実体の法定、実体の適正までを要求し、手続の適正の中心には告知・弁解・防御の機会があると解しています。
行政手続と刑事手続上の保障
行政手続と刑事手続上の保障とは、刑事手続のために置かれた31条、35条、38条の保障が行政手続にも及ぶかという問題です。判例は、行政手続であることのみを理由に保障の枠外とはせず、行政手続にも保障が及び得るとしつつ、常に事前の告知や令状が必要になるわけではないとしています。
国務請求権
国務請求権とは、裁判を受ける権利(32条)、請願権(16条)、国家賠償請求権(17条)、刑事補償請求権(40条)のように、国家に対して積極的な行為を求める権利をまとめた呼び名です。いずれも法律の定めるところにより具体化されますが、その法律が憲法の趣旨に反すれば違憲となります。
令状主義と逮捕・捜索
令状主義とは、逮捕や住居の捜索・押収を捜査機関の判断だけでは行えないようにし、権限を有する司法官憲が発する令状を要求する原則です。逮捕の令状は理由となっている犯罪を明示し、捜索・押収の令状は正当な理由に基づいて発せられ捜索する場所と押収する物を明示しなければならず、現行犯の場合が例外とされます(33条・35条)。
被疑者・被告人の権利
被疑者・被告人の権利とは、身体を拘束され刑事裁判にかけられる人のために憲法が34条から39条で具体的に定めた保障です。抑留拘禁の理由告知と弁護人依頼権(34条)、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利と証人審問権・証人喚問権(37条)、自己負罪拒否特権と自白法則(38条)、遡及処罰の禁止と一事不再理(39条)が置かれています。
人身保護請求と残虐な刑罰の禁止
人身保護請求とは、法律上正当な手続によらずに身体の自由を拘束されている者が、人身保護法により裁判所に速やかな解放を求める救済です。残虐な刑罰の禁止とは、36条が公務員による拷問とともに絶対にこれを禁ずると定めた、例外を認めない保障です。
社会権
8語生存権の法的性格(25条)
生存権の法的性格とは、憲法25条1項の「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を、国民が裁判でどこまで使えるかという問題です。プログラム規定説・抽象的権利説・具体的権利説が対立し、判例は同項が直接個々の国民に具体的権利を賦与したものではないとしつつ、裁量権の逸脱・濫用があれば司法審査の対象になるとします。
生存権の合憲性判定基準と1項2項分離論
生存権の合憲性判定基準とは、憲法25条を具体化する法律や、それに基づく処分の合憲性をどの密度で審査するかの枠組みで、判例は立法府の広い裁量を前提に、著しく合理性を欠き明らかに裁量の逸脱・濫用と見ざるを得ない場合に限って違憲とします。1項2項分離論とは、25条1項を救貧、2項を防貧の規定と読み分け、1項の場面では審査を厳しくすべきだとする学説で、判例はこれを採用していません。
制度後退禁止原則
制度後退禁止原則とは、憲法25条を具体化する法律が制定されると、その法律は25条と一体をなして生存権の内容を具体化するので、法律の定める給付水準を正当な理由なく引き下げることは憲法上許されないとする考え方です。判例はこの原則を採用せず、引下げも厚生労働大臣の裁量権の逸脱・濫用の有無として総合的に判断します。
教育を受ける権利と教育権の所在(26条)
教育を受ける権利とは、すべて国民がその能力に応じてひとしく教育を受ける権利(憲法26条1項)で、その背後には、自ら学習することのできない子どもが教育を自己に施すことを大人一般に対して要求する学習権があります。教育権の所在とは、この権利を実現する教育の内容を国が決めるのか国民が決めるのかという問題で、判例は国家教育権説・国民教育権説のいずれも極端として退け、国は必要かつ相当と認められる範囲で教育内容を決定する権能をもつとしました。
労働基本権(28条)と公務員の争議行為
労働基本権とは、憲法28条が勤労者に保障する団結権・団体交渉権・団体行動権のことで、国家に対する自由権の面と、国に積極的な措置を求める社会権の面を併せもち、使用者との私人間にも直接に及びます。公務員の争議行為の一律禁止について、判例は全農林警職法事件で、地位の特殊性・職務の公共性と代償措置を理由に合憲としました。
労働組合と組合員(28条・労働組合法)
労働組合と組合員とは、労働者が主体となって自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織する団体と、その構成員です。労働組合は憲法28条の団結権保障の効果として組合員に対する統制権をもち、組合員は組合活動への協力義務を負いますが、いずれも組合員個人の基本的自由との調和で限界づけられます。
教育制度(義務教育・教科書検定・学習指導要領)
教育制度とは、憲法26条の教育を受ける権利を現実に支えるための仕組みのことで、義務教育の無償(26条2項後段)、検定を経た教科書の使用(学校教育法34条)、教育内容の大綱を定める学習指導要領がその柱です。義務教育の無償は授業料の不徴収を意味し、教科書検定は検閲にあたらず、学習指導要領には法規としての性質が認められています。
国民の義務(26条2項・27条・30条)
国民の義務とは、権利の保障を中心とする憲法が例外的に国民の側に課した義務のことで、保護する子女に普通教育を受けさせる義務(26条2項前段)、勤労の義務(27条1項)、納税の義務(30条)の三つです。いずれも具体的な内容は法律によって定まり、勤労の義務に強制力はありません。
参政権と選挙
8語選挙権の法的性格
選挙権の法的性格とは、公務員を選定する権利(憲法15条1項)である選挙権を、国政への参加を国民に保障する個人の権利とみるか、選挙人という公の地位に基づいて選挙という国家作用に関与する公務とみるかという問題です。通説は両方の面を合わせもつとする二元説で、判例は、選挙権やその行使を制限するにはやむを得ないと認められる事由が必要だとします。
被選挙権・立候補の自由
被選挙権・立候補の自由とは、公職の選挙に候補者として名乗り出て選ばれる資格と自由のことです。憲法に明文はありませんが、判例は、立候補の自由が選挙権の自由な行使と表裏の関係にあることから、憲法15条1項がこれを保障していると解しています。
議員定数不均衡と投票価値の平等
議員定数不均衡とは、選挙区ごとの議員1人あたりの人口に差があるために、一票の重みが選挙区によって異なる状態です。投票価値の平等とは、選挙権の平等の内容として、各選挙人の投じる一票が選挙結果に及ぼす価値も等しくあるべきだという憲法14条1項の要請です。
自由委任の原則
自由委任の原則とは、両議院の議員は全国民を代表する者であって(憲法43条1項)、選挙区や選出母体、所属政党の指示に法的に拘束されず、自らの判断で職務を行うという原則です。選挙人の指示に拘束され、違反すれば議席を失う命令委任は、この原則によって否定されます。
政党(政党助成・党議拘束・除名)
政党とは、政治上の信条や意見を共通にする者が任意に結成する政治結社で、国民の政治意思を国政に媒介する役割を担うものです。憲法に政党の明文はありませんが、判例は議会制民主主義を支える不可欠の要素として政党の存在を当然に予定しているとし、政党助成法・政治資金規正法・公職選挙法がそれぞれの目的に応じた定めを置いています。
選挙制度(小選挙区比例代表並立制・名簿式)
選挙制度とは、議員の定数や選挙区、投票の方法など、選挙人の投票をどのように議席に結びつけるかを定めた仕組みで、憲法47条により法律で定めるものとされています。現行法では、衆議院は小選挙区と拘束名簿式比例代表を組み合わせた小選挙区比例代表並立制、参議院は選挙区と非拘束名簿式比例代表で構成されます。
選挙訴訟と事情判決の法理
選挙訴訟とは、選挙の効力に関する争いを裁判で解決する手続で、選挙人または公職の候補者が高等裁判所に提起する客観訴訟です(公職選挙法204条)。事情判決の法理とは、定数配分規定が違憲とされた場合に、選挙を無効とせず請求を棄却したうえで主文で選挙の違法を宣言する処理をいいます。
投票の秘密(15条4項)
投票の秘密とは、選挙人が誰に投票したかを他人に知られない利益で、憲法15条4項が「すべて選挙における投票の秘密は、これを侵してはならない」と定め、選挙人はその選択について公的にも私的にも責任を問われないとしています。自由な投票を実質的に確保するための制度的な保障です。
国会
12語権力分立の原理
権力分立の原理とは、国家の作用を立法・行政・司法に分け、それぞれを国会・内閣・裁判所という別の機関に担わせたうえで、相互に抑制と均衡を働かせる仕組みです。憲法41条・65条・76条1項がこの配分を定めています。
唯一の立法機関・「立法」の意義(41条)
唯一の立法機関・「立法」の意義とは、憲法41条が国会を国権の最高機関であって国の唯一の立法機関と定めることの中身で、「立法」は法律という形式ではなく一般的・抽象的な法規範を定立する実質的意味の立法をさし、「唯一」は国の立法を憲法に特別の定めがある場合を除いて常に国会が行うという国会中心立法の原則と、国会の立法が国会以外の機関の参与を要せずに成立するという国会単独立法の原則の二つを意味します。「国権の最高機関」は、国会が国民に直結し国政の中心にあることを政治的に述べた言葉と解するのが通説です。
委任立法(委任命令)の限界
委任立法とは、法律が一定の事項の規律を命令(委任命令)に委ねることです。国会を唯一の立法機関とする41条から白紙委任は許されず、委任を受けた命令が委任の趣旨の範囲を超えれば違法となるという、委任する法律の側と委任を受けた命令の側の二つの限界があります。
二院制の趣旨
二院制の趣旨とは、国会を衆議院と参議院の二つの議院で構成すること(憲法42条)によって、多角的かつ長期的な視点から民意を反映させ、両院の権限の抑制と均衡を図り、国政の運営の安定性と継続性を確保することです。両院は同時に召集され同時に閉会する同時活動の原則と、それぞれ別々に議事と議決を行う独立活動の原則に従います。
国会の会期と参議院の緊急集会(52条〜54条)
国会の会期とは、国会が活動能力をもつ期間であり、憲法は常会(52条)・臨時会(53条)・特別会(54条1項)の三つを定めています。参議院の緊急集会とは、衆議院の解散中に国に緊急の必要があるとき、内閣の求めにより参議院が国会を代行する仕組みです(54条2項・3項)。
法律の成立・公布・署名連署(59条・74条)
法律の成立・公布・署名連署とは、法律案が両議院で可決されて法律になり(59条1項)、主任の国務大臣が署名して内閣総理大臣が連署し(74条)、天皇が公布する(7条1号)までの一連の手続です。署名と連署は執行の責任を明らかにするもので、法律の効力要件ではありません。
衆議院の優越(59条〜61条・67条)
衆議院の優越とは、両議院の議決が異なった場合に、衆議院の意思を国会の意思とする仕組みです。法律案では衆議院が出席議員の3分の2以上の多数で再議決すれば法律となり(59条2項)、予算の議決・条約の承認・内閣総理大臣の指名では両院協議会を開いても意見が一致しないときに衆議院の議決がそのまま国会の議決となります(60条2項・61条・67条2項)。
両院協議会(59条〜61条・67条)
両院協議会とは、両議院の議決が異なったときに双方の意見を調整するために開かれる機関で、各議院で選挙された10人ずつの委員で組織されます(国会法89条)。法律案では衆議院が求めることができるにとどまり、予算・条約の承認・内閣総理大臣の指名では必ず開かれ、成案は出席協議委員の3分の2以上の多数で議決して両議院がこれを可決したときに国会の議決となります。
議員の不逮捕特権・免責特権・歳費(49条〜51条)
議員の不逮捕特権・免責特権・歳費とは、国会議員が、法律の定める場合を除いて会期中逮捕されない(50条)、議院で行った演説・討論・表決について院外で責任を問われない(51条)、国庫から相当額の歳費を受ける(49条)という三つの特権です。いずれも議員個人の利益のためではなく、議院の審議を確保し、議員の職務執行の自由を守るために置かれています。
議院の自律権(議院規則・懲罰・資格争訟)
議院の自律権とは、衆議院と参議院のそれぞれが、自らの組織と運営について他の国家機関の干渉を受けずに決める権能です。憲法は、議員の資格に関する争訟の裁判(55条)、会議その他の手続及び内部の規律に関する議院規則の制定と、院内の秩序をみだした議員の懲罰(58条2項)をその内容として定めています。
国政調査権(62条)
国政調査権とは、各議院が国政に関する調査を行い、これに関して証人の出頭・証言と記録の提出を要求できる権能です(憲法62条)。立法や行政監督といった議院の権能を実効的に行使するための補助的権能と解するのが通説で、司法権の独立や個人の人権による限界があります。
条約の締結と国会の承認(61条・73条3号)
条約の締結と国会の承認とは、内閣が条約を締結し(73条3号)、これについて事前に、時宜によっては事後に国会の承認を経る仕組みです。承認には衆議院の優越が及び(61条)、批准書の認証と条約の公布は天皇の国事行為です(7条8号・1号)。
内閣・裁判所
17語行政権の概念(控除説)
行政権の概念とは、憲法65条が内閣に属するとした「行政権」が何を指すかという問題です。通説の控除説は、すべての国家作用から立法作用と司法作用を除いた残りが行政権であるとします。
議院内閣制の本質
議院内閣制の本質とは、内閣が議会の信任に依拠して存立し議会に対して責任を負うという議院内閣制の核心を何に求めるかという問題です。議会に対する責任に求める責任本質説と、政府が議会の解散権をもち両者が均衡することにまで求める均衡本質説が対立します。
内閣総理大臣の権限
内閣総理大臣の権限とは、内閣の首長(66条1項)として内閣総理大臣がもつ、国務大臣の任免権(68条)、内閣を代表しての議案の提出・国務の報告・行政各部の指揮監督(72条)、国務大臣の訴追に対する同意権(75条)などの権限です。明治憲法下の同輩中の首席と異なり、内閣の一体性と統一性を支える地位にあります。
司法権の意味(法律上の争訟)
司法権の意味とは、76条1項が裁判所に属させた「司法権」を、具体的な争訟について法を適用し宣言することによってこれを裁定する国家の作用と理解することです。その対象である法律上の争訟は、当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争であって、かつ法令の適用により終局的に解決できるものに限られます。
司法権の限界(統治行為・部分社会)
司法権の限界とは、法律上の争訟に当たる紛争であっても、事柄の性質上、裁判所の審査が及ばない場合をいいます。憲法が明文で定める議員の資格争訟(55条)と弾劾裁判(64条)のほか、統治行為、議院の自律権に属する事項、団体の内部事項という解釈上の限界が論じられます。
司法権の独立
司法権の独立とは、裁判所が立法権・行政権から独立して自主的に活動すること(司法府の独立)と、個々の裁判官が裁判にあたって何人からも指示や命令を受けないこと(裁判官の職権の独立)をあわせた原則です。76条3項がその中核で、身分保障がこれを制度面から支えます。
内閣の総辞職と衆議院の解散(69条・7条3号)
内閣の総辞職とは、内閣が全員そろって職を辞することをいい、衆議院の解散とは、任期満了前に衆議院議員全員の資格を失わせることをいいます。衆議院が不信任決議案を可決し、または信任決議案を否決したときは、10日以内に衆議院が解散されない限り、内閣は総辞職しなければなりません(69条)。
内閣総理大臣の指名と国務大臣の任免(67条・68条)
内閣総理大臣の指名と国務大臣の任免とは、内閣総理大臣を国会議員の中から国会の議決で指名して天皇が任命し(67条・6条1項)、国務大臣を内閣総理大臣が任命し罷免する(68条)という内閣の組織の仕組みです。国務大臣の過半数は国会議員でなければならず、内閣総理大臣その他の国務大臣は文民でなければなりません(66条2項)。
独立行政委員会
独立行政委員会とは、内閣から一定の独立性をもって職権を行使する合議制の行政機関です。人事院や公正取引委員会などがあり、行政権は内閣に属するとする65条との整合が論じられます。
裁判官の身分保障(78条・79条・80条)
裁判官の身分保障とは、裁判官がその意に反して職を失ったり不利益を受けたりしないことを制度として保障する仕組みです。裁判官は、心身の故障による分限裁判と公の弾劾による場合のほかは罷免されず、懲戒処分を行政機関が行うことはできず、在任中の報酬も減額できません。
最高裁判所規則制定権(77条)
最高裁判所規則制定権とは、最高裁判所が、訴訟に関する手続、弁護士、裁判所の内部規律および司法事務処理に関する事項について規則を定める権限です(77条1項)。国会を唯一の立法機関とする41条の例外として憲法が自ら認めたもので、司法権の独立と専門性を支えています。
最高裁判所と下級裁判所の構成(79条・80条)
最高裁判所と下級裁判所の構成とは、最高裁判所がその長たる裁判官と法律の定める員数のその他の裁判官で構成され(79条1項)、下級裁判所の裁判官は最高裁判所の指名した者の名簿によって内閣が任命し、任期10年で再任されることができる(80条1項)という裁判所の組織の仕組みです。
国民審査(79条2項)
国民審査とは、最高裁判所の裁判官について、その任命後初めて行われる衆議院議員総選挙の際に国民の審査に付し、その後10年を経過した後初めて行われる総選挙の際にさらに審査に付す制度です。投票者の多数が罷免を可とするときは、その裁判官は罷免されます。
裁判の公開と対審(82条)
裁判の公開とは、裁判の対審および判決を、国民一般が傍聴できる公開の法廷で行うことです。裁判官の全員一致で公の秩序または善良の風俗を害するおそれがあると決したときは対審を非公開にできますが、判決は常に公開されます。
特別裁判所の禁止と終審裁判の禁止(76条2項)
特別裁判所の禁止と終審裁判の禁止とは、通常裁判所の系列から独立した裁判機関を設けることができず(76条2項前段)、行政機関が終審として裁判を行うこともできない(同項後段)という原則です。司法権を最高裁判所を頂点とする一つの系列に統一し、法の適用の統一と裁判を受ける権利の保障を図る趣旨で、前審としてなら行政機関が裁断することも許されます。
裁判員制度
裁判員制度とは、一定の重大な刑事事件について、国民から選ばれた裁判員が裁判官とともに合議体を構成し、事実の認定、法令の適用および刑の量定を行う制度です。判例は、憲法が一般的に国民の司法参加を許容しているとして、この制度を合憲としました。
恩赦(73条7号)
恩赦とは、大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除および復権をいい、内閣がこれを決定し、天皇が認証する制度です。裁判によって確定した刑罰の効果を、行政権の判断によって消滅させたり軽くしたりします。
財政・地方自治
10語予算の法的性格
予算の法的性格とは、内閣が作成し国会の議決を経る予算(86条)が、法律とは異なる独自の法形式か、それとも法律の一種かをめぐる議論です。通説の予算法形式説と予算法律説が対立し、国会の修正権の範囲や予算と法律の不一致の処理をどう説明するかが変わります。
「公の支配」(89条後段)の意義
「公の支配」とは、憲法89条後段が、慈善・教育・博愛の事業に公金その他の公の財産を支出し、またはその利用に供するための条件として求める公的な関与です。これを緩やかに解する緩和説と厳格に解する厳格説の対立が、私立学校への助成の合憲性の結論を分けます。
地方自治の本旨と制度的保障
地方自治の本旨とは、憲法92条が地方公共団体の組織及び運営の基準として掲げる原理で、地方の政治を住民の意思に基づいて行う住民自治と、国から独立した団体が自らの意思と責任で行う団体自治の二つからなります。通説は、憲法が地方自治という制度を保障したものと解する制度的保障説をとります。
条例(94条・地方自治法14条)
条例とは、地方公共団体がその事務に関し、法令に違反しない限りにおいて制定する自主法です(94条、地方自治法14条1項)。住民の権利を制限し義務を課すことも、法律の相当程度具体的な授権があれば罰則を定めることもでき、法律に違反するかは趣旨・目的・内容・効果の比較で判断されます。
予算・決算・予備費(86条・87条・90条)
予算・決算・予備費とは、内閣が予算を作成して国会に提出しその議決を経る(86条)、予見し難い予算の不足に充てるため国会の議決に基づいて予備費を設け内閣の責任で支出し事後に国会の承諾を得る(87条)、決算を会計検査院の検査を経て内閣が国会に提出する(90条)という、国の財政を国会の統制下に置く一連の仕組みです。国の財政を処理する権限は国会の議決に基づいて行使されるという財政民主主義(83条)がこれらを貫きます。
租税と租税法律主義(84条・30条)
租税とは、国や地方公共団体が、経費に充てる資金を調達する目的で、特別の給付に対する反対給付としてではなく、一定の要件に該当するすべての者に課する金銭給付です。租税法律主義とは、新たに租税を課し、または現行の租税を変更するには法律または法律の定める条件によることを要するという原則で(84条)、国民は法律の定めるところにより納税の義務を負います(30条)。
地方公共団体の組織(長・議会・直接請求)
地方公共団体の組織とは、議事機関としての議会を置き(93条1項)、長と議会の議員および法律の定めるその他の吏員を住民が直接選挙する(93条2項)という憲法上の仕組みと、条例の制定改廃請求や解職請求といった地方自治法上の直接請求の制度からなります。長と議会がともに住民から選ばれる二元代表制が、国の議院内閣制と異なる点です。
皇室財産と皇室の費用(88条)
皇室財産と皇室の費用とは、すべて皇室財産は国に属し、すべて皇室の費用は予算に計上して国会の議決を経なければならないという88条の仕組みです。皇室に財産を譲り渡し、皇室が財産を譲り受け、または賜与するにも国会の議決に基づくことを要します(8条)。
特別法の住民投票(95条)
特別法の住民投票とは、一の地方公共団体のみに適用される特別法について、その地方公共団体の住民の投票で過半数の同意を得なければ国会が制定できないとする制度です(95条)。国会の議決だけで法律が成立するという国会単独立法の原則の例外であり、住民自治の現れです。
会計検査院(90条)
会計検査院とは、国の収入支出の決算を毎年検査する機関です(90条1項)。内閣に対し独立の地位を有し、その組織および権限は法律で定められ(90条2項)、検査を経た決算は検査報告とともに内閣が国会に提出します。
憲法訴訟・憲法保障
12語違憲審査制の性格(81条)と仕組み
違憲審査制の性格とは、憲法81条が定める、法令その他の国家行為が憲法に適合するかを裁判所が審査する制度が、具体的な事件の解決に必要な限りで審査する付随的審査制なのか、事件を離れて抽象的に審査する抽象的審査制なのかという問題です。判例は付随的審査制と解し、審査権は最高裁判所だけでなく下級裁判所にもあります。
三段階審査の手順(保障・制約・正当化)
三段階審査の手順とは、人権の制約が争われる問題を、主張する行為が人権の保障範囲に入るかの画定、制約の有無の認定、制約の正当化という三つの段階に分けて検討する手順です。どの段階の議論をしているかを自覚するための答案の骨格で、日本の判例が常にこの形をとるわけではありません。
利益衡量・比較衡量論
利益衡量・比較衡量論とは、人権の制約が問題になる場面で、制約によって得られる利益と制約によって失われる利益とを比べ、前者が大きい場合に制約を合憲とする手法です。判例はこの手法を広く用いますが、衡量の基準が示されないと国家の利益に傾きやすいという批判があります。
二重の基準論と審査基準
二重の基準論とは、精神的自由に対する制約の合憲性は、経済的自由に対する制約の合憲性よりも厳しい基準によって審査されるべきだとする考え方です。精神的自由が制約されると民主政の過程による回復が期待できないことと、裁判所が社会経済政策の当否を判断する能力に限界があることが根拠とされ、審査基準は厳格審査・中間審査・合理性の基準に分かれます。
立法裁量と審査密度
立法裁量とは、憲法の規定を具体化する立法について、立法府に認められる判断の幅です。審査密度とは、裁判所がその立法の合憲性をどこまで踏み込んで審査するかの度合いで、社会権・選挙制度・租税の分野では広い裁量が認められ、審査密度はその分だけ下がります。
憲法判断の方法(回避・合憲限定解釈・適用違憲)
憲法判断の方法とは、違憲の疑いのある法令をめぐって、裁判所が憲法判断そのものを避ける憲法判断の回避、意味を限定して読むことで合憲とする合憲限定解釈、当該事案に適用する限りで違憲とする適用違憲、法令そのものを違憲とする法令違憲という選び方です。付随的審査制のもとでは、法令違憲は最後の手段と位置づけられます。
第三者の違憲主張適格
第三者の違憲主張適格とは、訴訟の当事者が、自分に適用される法令ではなく第三者に適用される部分の違憲性を主張できるかという問題です。付随的審査制のもとでは自己の権利に関わる限りで違憲を主張するのが原則ですが、第三者所有物没収事件(最大判昭和37年11月28日)のように例外が認められる場合があります。
違憲判決の効力
違憲判決の効力とは、最高裁判所がある法令を違憲と判断したとき、その判断が当該事件でその法令を適用しないという効果にとどまるのか、法令そのものが一般的に効力を失うのかという問題です。通説は個別的効力説をとりますが、事実上は一般的効力に近い状態が生じます。
判例の拘束力と判例変更
判例の拘束力とは、先に示された最高裁判所の判断が後の裁判をどこまで縛るかという問題で、判例に法律上の拘束力はなく事実上の拘束力にとどまります。判例変更とは最高裁判所が従来の判例を改めることで、大法廷で行わなければなりません(裁判所法10条3号)。
立法不作為の違憲性
立法不作為の違憲性とは、国会が憲法上必要とされる立法をしないこと、または違憲な状態を是正せずに放置することが憲法違反になるかという問題です。立法の内容が違憲であることと、国会議員の立法行為が国家賠償法上違法であることは別に判断され、争い方としては国家賠償請求と権利があることの確認の訴えが用いられます。
憲法改正の限界と条約の違憲審査
憲法改正の限界とは、96条の手続を踏めば憲法のどの部分でも改正できるのかという問題で、改正権が憲法によって与えられた権限である以上基本原理を壊す改正はできないとする限界説と、改正権と憲法制定権力を同質とみて限界を否定する無限界説が対立します。条約の違憲審査とは、81条に列挙されていない条約が違憲審査の対象になるかという問題で、憲法優位説からも肯定説と否定説があります。
憲法改正手続(96条)
憲法改正手続とは、各議院の総議員の3分の2以上の賛成で国会が発議し、特別の国民投票または国会の定める選挙の際の投票で過半数の承認を得ることで憲法を改正する手続です(96条1項)。承認を経た改正は、天皇が国民の名で、この憲法と一体を成すものとして直ちに公布します(96条2項)。
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