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違憲判決の効力とは

いけんはんけつのこうりょく

憲法 憲法訴訟・憲法保障

違憲判決の効力とは、最高裁判所がある法令を違憲と判断したとき、その判断が当該事件でその法令を適用しないという効果にとどまるのか、法令そのものが一般的に効力を失うのかという問題です。通説は個別的効力説をとりますが、事実上は一般的効力に近い状態が生じます。

先生が「この校則は生徒手帳の基本方針に反する」と判断してある生徒への処分を取り消したとき、その校則そのものが消えるのか、その生徒に適用しないだけなのかで、他の生徒への扱いが変わります。最高裁判所が法律を違憲と判断した場合も同じ問題があり、通説は当該事件で適用しないだけだとする個別的効力説をとります。ただ実際には行政も国会もその判断に従って動くので、一般的に失効したのに近い状態になります。どこまで遡るのか、どう救済するのかも、ここで問われます。

最高裁判所の法廷の場面。先生が裁判官役(札「最高裁判所 81条」)で法壇に座り、「法律○条」と書かれた紙に深紅の判「違憲」。判の効果を示す二本の矢印。太い矢印は目の前の当事者の男性(札「当該事件の当事者」)へ「この事件では適用しない(個別的

通説は個別的効力説をとります

個別的効力説は、付随的審査制のもとで裁判所は事件の解決に必要な限りで判断するという理解から導かれます。もっとも、この説に立っても、違憲とされた法令が当事者以外との関係で生き続けるわけではありません。「a.最高裁判所が法令を違憲無効とする判決をした場合,その判決の効力が及ぶのは当該事件限りであり,違憲と判断された法律は当該事件の訴訟当事者との関係においてのみその適用を排除される」という見解が個別的効力説です。その根拠は、付随的審査制のもとでは審査が事件の解決に必要な限りで行われること、法令を一般的に失効させることは法律の廃止と同視され国会を唯一の立法機関とする41条に反する消極的立法になること、憲法にも法律にも一般的効力を定めた規定がないことにあります。法的安定性のために最高裁判所が違憲判断の効力の及ぶ範囲を制限する旨を説示できるという見解は、効力が当該事件に限られていないことを前提にするので、個別的効力説の根拠にはなりません。実際には、行政は違憲とされた規定の適用を控え、国会は改廃に動きますから、事実上は一般的効力に近い状態が生じます。下級裁判所も最高裁の判断に従うのが通例ですから、同種の事件では同じ結論が繰り返されます。個別的効力説の実益は、法令の改廃を国会の手に残す点にあります。

  • 個別的効力説違憲判断の効力は当該事件に限られ、法令は当然には失効しない。付随的審査制と、41条が国会を唯一の立法機関とした趣旨に沿う。通説
  • 一般的効力説違憲と判断された法令は一般的に効力を失う。98条1項の文言と法的安定に沿うが、裁判所が消極的立法を行うことになる
  • 法律委任説どちらの効力を与えるかは法律の定めに委ねられる
先生が憲法の先生役(札「個別的効力説の根拠」)で黒板の前に立ち、黒板に三本の柱「付随的審査制:事件の解決に必要な限りで審査」「41条:一般的失効は消極的立法」「一般的効力を定めた規定がない」が「個別的効力説」の屋根を支える図。黒板の隅に別の

一部違憲という形で、規定の一部だけを無効とすることがあります

最大判平成20年6月4日(国籍法違憲判決)は、国籍法3条1項全体を無効とせず、準正要件の部分だけを違憲無効としました。「国籍法第3条第1項を全体として違憲無効とせず,同項の規定の一部である準正要件を違憲無効とすることで,日本国民である父と日本国民でない母との間に出生し,かつ,その後に父から認知された子は,準正要件を除いた所定の要件を満たすときには,日本国籍の取得が認められる」という肢は正しいです。「日本国民である父と外国人である母との間に生まれた嫡出でない子につき,父母の婚姻及びその認知等所定の要件を備えた場合に届出により日本国籍が取得できる旨定めた国籍法(平成20年法律第88号による改正前のもの,以下同じ,)第3条第1項は,憲法第14条第1項に違反するが,血統主義を補完するために出生後の国籍取得の制度を設けた国籍法の趣旨に照らし,同法第3条第1項を全部無効とする解釈は採り得ない」という肢も正しいです。他方で「国籍法の規定に関し,日本国民である父と日本国民でない母との間に出生した子の国籍取得に過剰な要件を設けることにより区別を生じさせている部分のみを除いて合理的に解釈することは,裁判所が法律にない新たな国籍取得の要件を創設するもので,国会の本来的な機能である立法作用を行うものとして許されない」という肢は誤りです。全部無効とすれば届出による国籍取得の道が閉ざされ、救済にならないという判断が働いています。

先生が最高裁判所の裁判官役(札「最高裁判所 大法廷」)で法壇に座り、机の上に「国籍法3条1項」の条文が書かれた紙。条文の中の「父母の婚姻(準正)」の部分だけに深紅の線が引かれ「この要件のみ違憲無効」の札、残りの部分に「有効:認知+届出で国籍

選挙無効の場面では、事情判決の法理が用いられてきました

定数配分規定を違憲としながら選挙を無効としない処理が、事情判決の法理です。「衆議院の議員定数配分規定が選挙権の平等に反して違憲と判断された場合,行政事件訴訟法の事情判決の規定には,一般的な法の基本原則に基づくものとして理解すべき要素も含まれていると考えられ,公職選挙法も選挙関係訴訟については上記規定の準用を明示的に排除していないため,事情判決の法理により,その選挙の違法を主文で宣言することができる」という肢は誤りです。最大判昭和51年4月14日(衆議院議員定数不均衡事件)は、行政事件訴訟法31条1項の事情判決の規定に一般的な法の基本原則に基づく要素が含まれているとして、主文で違法を宣言しつつ請求を棄却しましたが、公職選挙法219条1項が選挙の効力に関する訴訟について同条の準用を明示的に排除していることは正面から認めています。準用を排除していないという理由づけの部分が誤りです。「選挙権の平等に反する定数配分規定を是正するための合理的期間が経過したにもかかわらず,現行規定のままで選挙が施行された場合,判決確定により直ちに当該選挙を無効とすることが相当でないとみられるときは,選挙を無効とするがその効果は一定期間経過後に初めて発生するという内容の判決をすることも許される」という肢は誤りで、最大判昭和60年7月17日も主文で選挙の違法を宣言するにとどめており、将来効的な無効判決を認めた判例はありません。学説には将来効判決を認めるべきだという主張がありますが、判例は事情判決の法理で処理しています。

先生が最高裁判所の裁判官役(札「最高裁判所」)で法壇に座り、判決文の主文に「本件選挙は違法である」と深紅で書き、その下に「請求は棄却する(選挙は無効としない)」。左に選挙人の男性(札「選挙人:定数配分は違憲、選挙は無効だ」)。机の上に二枚の

違憲判断の遡及効は、法律関係の安定との調整を受けます

違憲と判断された規定は、判決の時点から無効になるのではなく、もともと違憲だったことになるのが理屈です。そのまま遡及させると、過去に確定した法律関係まで覆りかねません。「嫡出でない子の相続分を嫡出子の相続分の2分の1とした民法の法定相続分規定は,遅くとも当該規定が違憲とされた事案の相続が開始した当時に憲法第14条第1項に違反していたため,その当時以降に開始された他の相続につき,関係者間の法律関係が確定的な段階に至っていない事案であれば,違憲無効とされた当該規定の適用を排除した上で法律関係を確定的なものとするのが相当である」という肢は正しいです。最大決平成25年9月4日(嫡出でない子の法定相続分差別違憲決定)は、違憲の判断が遺産分割の審判などで確定的となった法律関係には影響を及ぼさないとして、調整を図りました。いつの時点から違憲であったかを判示することも、この調整の一部です。同決定は、遅くとも当該事案の相続が開始した時点では違憲であったとして、違憲状態の始期を明示しました。遡及の範囲を判決自身が線引きするという手法です。線引きの基準は、関係者の間で法律関係が確定的な段階に至っているかどうかに置かれています。

刑事事件では、再審によって救済されるかが問題になります

違憲とされた規定によって有罪判決が確定していた場合、その救済をどうするかという問題があります。大阪高決平成16年5月10日(違憲判決の効力と再審開始決定)は、この場面を扱った裁判例として知られます。刑事訴訟法の再審事由に違憲判断が直接には挙げられていないため、無罪を言い渡すべき明らかな証拠を新たに発見したときに当たるかという形で議論されます。個別的効力説を前提としても、確定判決の効力をどこまで維持するかは別に検討すべき問題です。刑罰法規が違憲とされた場合には、刑の執行を続けること自体が新たな人権侵害になりますから、救済の必要は民事の場面より強く働きます。

憲法 第98条 第1項

この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。

論文ではこう使う

論文では、違憲の結論を出した後の処理を論じる場面で使います。まず個別的効力説を立て、その理由を付随的審査制と41条から示します。そのうえで、事実上の一般的効力が生じることに触れ、法的安定の要請に応えます。救済の方法を論じるときは、全部無効と一部無効のどちらが原告の救済につながるかを考え、国籍法違憲判決の処理を参照します。遡及効については、すでに確定した法律関係にまで影響を及ぼすかを、法的安定と個別の救済の必要性を比べて決める、という枠組みで書きます。

試験ではこう問われる

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