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議員定数不均衡と投票価値の平等とは

ぎいんていすうふきんこう

憲法 参政権と選挙

議員定数不均衡とは、選挙区ごとの議員1人あたりの人口に差があるために、一票の重みが選挙区によって異なる状態です。投票価値の平等とは、選挙権の平等の内容として、各選挙人の投じる一票が選挙結果に及ぼす価値も等しくあるべきだという憲法14条1項の要請です。

同じ議員を選ぶのに、ある選挙区では10万人で1人、別の選挙区では30万人で1人を選ぶとすると、後者の一票は前者の3分の1の重さしかありません。憲法14条1項の平等は、投票所に行ける資格が同じというだけでなく、投じた一票が選挙結果に及ぼす力も等しいことを求めます。ただし、選挙区の区切りと議員の割当ては国会が法律で決める事柄なので、どこからが違憲になるかが問題になります。

投票所の場面。中央に二つの投票箱が並び、左の箱の上に看板「A選挙区:10万人で議員1人」、右の箱の上に看板「B選挙区:30万人で議員1人」。右の箱の前に有権者の男性(札「B選挙区の有権者」)が立ち、手に持つ投票用紙が左の有権者のものより明ら

選挙権の平等には投票価値の平等も含まれます

憲法15条1項や44条ただし書の文言は、選挙人の資格で差別してはならないと定めているにすぎません。しかし最大判昭和51年4月14日(衆議院議員定数不均衡事件)は、代表民主制のもとで国民の意思を公正かつ効果的に国政に反映させるには、選挙人としての地位が形式的に等しいだけでは足りず、一人一人の投じた一票の影響力も等しく扱われる必要があるとしました。「憲法第14条第1項に定める法の下の平等は,選挙権に関しては,国民は全て政治的価値において平等であるべきとする徹底した平等化を志向するものであり,選挙権の内容,すなわち各選挙人の投票の価値の平等も,憲法が要求するところである」という肢は正しく、この判決の判示そのものです。もっとも、徹底した平等化を志向するという言葉は、較差を一切許さないという意味ではありません。「a.衆議院議員選挙においては,各選挙区間の議員1人当たりの有権者数の比率の較差が1対1を超えることは,憲法上正当化されない」という見解は、投票価値の完全な平等を求める立場です。これに対して、投票価値の平等は国会が正当に考慮することのできる他の政策的な目的との関連において調和的に実現されるべきだという見解からは、較差が1対1を超えても直ちに平等が侵されたとはいえないことになるので、後者の見解は前者の根拠になりません。判例の立場も、この点で前者の見解とは異なります。

投票価値の平等は唯一絶対の基準ではなく、他の政策目的と調和的に実現されます

昭和51年判決は、選挙制度の仕組みをどう定めるかについて国会に広い裁量を認め、投票価値の平等も、選挙制度を決める唯一絶対の基準ではなく、国会が正当に考慮することのできる他の政策的目的ないし理由との関連において調和的に実現されるべきものだとしました。ただし判決は続けて、このことは投票価値の平等が単に国会の裁量権の行使の際における考慮事項の一つにとどまり、憲法上の要求としての意義と価値を有しないことを意味するものではないと述べています。「議員定数配分に際しては,人口比例の原則が最も重要かつ基本的な基準ではあるが,投票価値の平等は,国会が正当に考慮することのできる他の政策的な目的ないし理由との関連において調和的に実現されるべきものであり,国会の裁量権の行使の際における考慮要素にとどまる」という肢は誤りです。判例は、投票価値の平等を国会が考慮し得る一要素にとどめたのではなく、最も重要かつ基本的な基準としつつ、他の政策目的との調和のもとで実現されるとしました。考慮要素に格下げする肢と、絶対視する肢の両方向から誤りが作られます。較差の数値だけでは結論が出ないことも問われます。「衆議院議員選挙において,選挙区間の投票価値の最大格差が3倍を超える場合には,憲法の要求する投票価値の平等に反する程度に至っているといえるが,必ずしもそれだけでは,当該議員定数配分規定が憲法に違反しているということまではできない」という肢は正しいです。最大判平成5年1月20日は、最大較差が約3.18倍に達した衆議院議員選挙について、投票価値の平等の要求に反する程度に至っていたとしつつ、憲法上要求される合理的期間内の是正が行われないときに初めて定数配分規定が違憲になるとしました。なお、衆議院と参議院では判例の言い回しが違います。「議員定数をどのように配分するかは,立法府である国会の権限に属する立法政策の問題であるが,衆議院議員選挙において,選挙区間の投票価値の格差により選挙人の選挙権の享有に極端な不平等を生じさせるような場合には,例外的に,立法府の裁量の範囲を超えるものとして,憲法違反となる」という肢は誤りです。選挙権の享有に極端な不平等を生じさせるような場合は格別として各選挙区への議員数の配分を立法政策の問題だと述べたのは、参議院議員選挙が争われた最大判昭和39年2月5日であり、衆議院については昭和51年判決が、国会において通常考慮し得る諸般の要素をしんしゃくしてもなお一般的に合理性を有するとは考えられない程度という言い回しを使っています。

国会の委員会室の場面。先生が裁判官役(札「裁判所」)で大きな天秤を持ち、左の皿に大きな札「投票価値の平等(最も重要かつ基本的な基準)」、右の皿に小さな札「行政区画」「地域の一体性」「交通事情」が三つ載っている。向かいに国会議員の男性(札「国

違憲状態と違憲は二段階で判断され、違憲でも選挙は直ちに無効になりません

昭和51年判決は、投票価値の不平等が、国会において通常考慮し得る諸般の要素をしんしゃくしてもなお一般的に合理性を有するとはとうてい考えられない程度に達しているときは、国会の合理的裁量の限界を超えていると推定され、これを正当化すべき特段の理由が示されない限り憲法違反と判断するほかないとしました。そのうえで、較差がその程度に至ったからといって直ちに定数配分規定が違憲になるのではなく、人口の変動の状態も考慮して、合理的期間内における是正が憲法上要求されているのにそれが行われない場合に初めて違憲と断ぜられるとしました。「投票価値の不平等が,国会において通常考慮し得る諸般の要素をしんしゃくしてもなお,一般的に合理性を有するものとは考えられない程度に達し,かつ,合理的期間内における是正が憲法上要求されているのに行われない場合,当該選挙は違憲無効となる」という肢は誤りです。二つの要件を満たせば定数配分規定が違憲となるのであって、選挙が当然に無効となるわけではありません。同判決は、約1対4.99の較差があった定数配分規定を全体として違憲としながら、選挙を無効にしても直ちに違憲状態が是正されるわけではなく、かえって憲法の所期するところに適合しない結果を生ずるとして、行政事件訴訟法31条の事情判決の法理により、選挙は違法であると主文で宣言するにとどめて無効とはしませんでした。較差の数値から直ちに結論を出す「選挙権に関しては、憲法第14条第1項に定める法の下の平等は、国民はすべて政治的価値において平等であるべきとする徹底した平等化を志向するもので、各選挙人の投票の価値の平等も憲法の要求するところであるから、両議院の議員一人当たりの人口が最大の選挙区と最小の選挙区との間で、一票の重みの較差がおおむね2対1以上に開いた場合、投票価値の平等の要請に正面から反し、違憲といわざるを得ない」という肢も誤りです。判例は、おおむね2対1以上で直ちに違憲になるという数値基準を採用していません。違憲状態にあたるかの判断と、合理的期間を徒過したかの判断は別々に行われます。

  • 第一段階較差が、国会において通常考慮し得る諸般の要素をしんしゃくしてもなお一般的に合理性を有するとは考えられない程度に達しているか(違憲状態)
  • 第二段階その状態が、憲法上要求される合理的期間内に是正されなかったか(違憲)
  • 第三段階違憲であっても選挙を無効とするか。事情判決の法理により違法の宣言にとどめる
  • 較差の目安衆議院は2倍、参議院は5倍前後が一つの手がかり。数値だけで結論は決まらない
裁判所の法廷の場面。先生が裁判官役(札「裁判所」)で法壇に座り、法壇の横に三段の階段の絵。下の段に札「①違憲状態:合理性を有するとは考えられない程度の較差」、中の段に札「②違憲:合理的期間内に是正されない」、上の段に札「③選挙の効力:事情判

一人別枠方式の合理性には時間的な限界があります

一人別枠方式とは、衆議院小選挙区選挙の区割りにあたり、まず各都道府県に1議席ずつを配分し、残りを人口に比例して配分する仕組みです。最大判平成23年3月23日(一人別枠方式の合理性)は、この方式を、小選挙区比例代表並立制という新しい制度を導入するにあたり、直ちに人口比例のみで配分すると人口の少ない県の定数が急激かつ大幅に削減されるため、国政の安定性と連続性を確保する必要から採られた暫定的な措置だと位置づけました。そのうえで、この方式はおのずからその合理性に時間的な限界があり、新しい制度が定着して安定した運用がされる段階に至ればその合理性は失われるとし、平成21年の総選挙の時点では合理性が失われて投票価値の平等に反する状態に至っていたと判断しました。「最高裁判所は、1人別枠方式の意義は、衆議院議員選挙制度の変更に伴い、国政における安定性、連続性の確保を図るための暫定的な措置であるということにあると解されるから、その合理性には時間的な限界があり、新しい選挙制度である小選挙区比例代表並立制が定着し、安定した運用がされるようになった段階ではその合理性が失われるとした」という肢は正しいです。「判例は,衆議院議員選挙におけるいわゆる1人別枠方式について,小選挙区比例代表並立制の導入に当たり,直ちに人口比例のみに基づいて定数配分を行った場合の影響に配慮するための方策であり,新選挙制度が定着し運用が安定すればその合理性は失われるとしている」という肢も正しいです。他方、「衆議院議員選挙における1人別枠方式については,人口の少ない県に居住する国民の意思をも十分に国政に反映させるという目的は合理的であるが,その結果生じる投票価値の較差が過大であるから違憲である」という肢は誤りで、判決は目的の合理性がすでに失われたとみており、較差の大きさだけを理由にしてはいません。また同判決は、違憲状態にあるとしながら、合理的期間内に是正がされなかったとはいえないとして、区割規定を違憲とはしませんでした。

国会の会議室の場面。壁に日本地図が掛かり、各都道府県の上に「1」と書いた小さな札が並ぶ。国会議員の男性(札「国会議員」)が地図を指して吹き出し「人口の少ない県の議席が急に減らないように、まず各都道府県に1議席ずつ配る一人別枠方式にした」。先

参議院にも投票価値の平等は及び、地方議会でも同じです

投票価値の平等の要請は参議院議員選挙にも及びます。判例は、参議院が3年ごとの半数改選制をとること(憲法46条)や、都道府県を単位とする選挙区の仕組みが長く採られてきたことを考慮して、衆議院より広い立法裁量を認め、較差の是正について緩やかな態度をとってきました(最大判昭和58年4月27日)。しかし「判例は,参議院議員選挙における定数不均衡の問題について,参議院の半数改選制の要請を踏まえれば投票価値の平等が一定の限度で譲歩を求められても憲法に違反するとはいえないとして,衆議院の場合よりも広い立法裁量を認めてきており,これまで違憲状態を認定したことはない」という肢は誤りです。最大判平成24年10月17日(参議院議員定数不均衡事件)は、平成22年選挙当時の較差が示す投票価値の不均衡は投票価値の平等の重要性に照らしてもはや看過し得ない程度に達しており、違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態に至っていたとして、違憲状態を認定しています。「a.参議院議員選挙においては,二院制の下,地域代表の性質を有するという参議院の特殊性により,投票価値の平等の要請が後退するのもやむを得ない」という見解は、参議院についてだけ平等の要請を緩めるものです。これに対して、参議院も国権の最高機関として適切に民意を国政に反映する義務を負い衆参両院の選挙制度は同質的とされるべきだという見解からは、参議院についてだけ要請を緩める理由が失われるので、後者の見解は前者の根拠になりません。地方議会についても同じ要請が及びます。「a.地方議会議員選挙においては,当該地方公共団体の住民が,選挙権行使の資格だけでなく,投票価値においても平等に取り扱われるべきである」という見解は、憲法14条1項の平等が選挙権に関して徹底した平等化を志向するという理解から導かれるので、後者の理解が前者の根拠となります。最判昭和59年5月17日(議員定数不均衡と地方議会の特殊性)も、地方議会議員の選挙で投票価値の平等が要求されること自体は認めたうえで、公職選挙法が特別の事情があるときに人口比例によらない配分を許していることを踏まえ、地方議会の裁量を認めています。数値の目安は手がかりにすぎず、最大判平成27年11月25日(議員定数不均衡と改正の合理的期間)は、平成26年の衆議院議員選挙について違憲状態を認めながら、選挙区割りの見直しに向けた立法の取組が進んでいることを考慮して、合理的期間内に是正がされなかったとはいえないとしました。是正の作業が進んでいるかどうかも判断に影響します。選挙の効力の処理は選挙訴訟で扱います。

最大判昭和51年4月14日(衆議院議員定数不均衡事件)

憲法一四条一項に定める法の下の平等は、選挙権に関しては、国民はすべて政治的価値において平等であるべきであるとする徹底した平等化を志向するものであり、選挙権の内容、すなわち各選挙人の投票の価値の平等もまた、憲法の要求するところである。

論文ではこう使う

論文では、まず14条1項と15条1項から投票価値の平等を導き、選挙制度の仕組みが国会の裁量に委ねられることを前提として、昭和51年判決の二段階の枠組みを規範として立てます。当てはめでは、較差の数値、較差が生じた原因が人口移動にあるのか配分方式そのものにあるのか、配分方式それ自体の合理性、是正のための立法作業の進み具合、前回判決からの経過期間を拾います。違憲と判断した場合でも、事情判決の法理により選挙を無効とせず主文で違法を宣言する処理まで書くと、結論が実務とつながります。

試験ではこう問われる

「議員定数不均衡と投票価値の平等」が短答式でどう出題されてきたか、ひっかけの型11件と関係する過去問の肢20本は、無料のアカウントでログインすると読めます。

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