二院制の趣旨とは
にいんせい
二院制の趣旨とは、国会を衆議院と参議院の二つの議院で構成すること(憲法42条)によって、多角的かつ長期的な視点から民意を反映させ、両院の権限の抑制と均衡を図り、国政の運営の安定性と継続性を確保することです。両院は同時に召集され同時に閉会する同時活動の原則と、それぞれ別々に議事と議決を行う独立活動の原則に従います。
学校で大きな決まりを作るとき、生徒会だけで決めずに、別の委員会にももう一度見てもらうことがあります。一つの会議の勢いで決めてしまった内容を、別の顔ぶれが落ち着いて点検できるからです。国会も同じ考えで、衆議院と参議院という二つの議院を置いています。衆議院は任期4年で解散があり、参議院は任期6年で3年ごとに半数を改選し解散がありません。選ばれる時期と方法が違う二つの合議体が互いの審議を点検することで、その時々の民意だけでなく長い目で見た民意も国政に入り、国政が安定して続くようになっています。
二院制の趣旨は、多角的かつ長期的な民意の反映と、両院の抑制・均衡、国政の安定にあります
憲法42条は「国会は、衆議院及び参議院の両議院でこれを構成する」と定めます。最大判平成24年10月17日(参議院議員定数不均衡事件)は、憲法が二院制を採った趣旨について、議院内閣制の下で限られた範囲についてだけ衆議院の優越を認めて機能的な国政の運営を図る一方、立法をはじめ多くの事柄について参議院にも衆議院とほぼ等しい権限を与え、参議院議員の任期をより長期にすることで、多角的かつ長期的な視点からの民意を反映させ、衆議院との権限の抑制、均衡を図り、国政の運営の安定性、継続性を確保しようとしたものと述べました。最大判平成26年11月26日も同じ趣旨を繰り返しています。「日本国憲法が二院制を採用したのは,異なる選挙制度や議員の任期が異なること等によって,多角的かつ長期的な視点からの民意を反映させ,衆議院と参議院との権限の抑制,均衡を図り,国政の運営の安定性,継続性を確保しようとしたものと解される」という肢は正しいです。選挙制度や任期が異なることが、多角的かつ長期的な視点からの民意の反映につながるという説明です。抑制と均衡、そして国政運営の安定性・継続性の確保という三つの言葉が判例と学説に共通して現れます。逆に、二院制には審議の遅延と費用の増大という短所があり、両院の意思が異なるときに国政が停滞するという批判も向けられます。衆議院の優越の仕組みは、この短所を抑えるために置かれたものです。
- 慎重な審議一方の議院の行き過ぎや過誤を他方が是正する
- 民意の多元的反映任期と選挙時期の違いにより、異なる時点の民意が国会に入る
- 同時活動の原則両院は同時に召集され、衆議院が解散されれば参議院も同時に閉会する(54条2項本文)
- 独立活動の原則議事と議決はそれぞれ独立して行う。例外が両院協議会と合同審査会
両院は任期・解散・被選挙権年齢が違いますが、どちらの議員も全国民の代表です
両院の差異は、任期6年と4年(45条・46条)、解散の有無、被選挙権が30歳以上と25歳以上(公職選挙法10条)という点にあります。選挙権の年齢や選挙人の資格には差がなく、両議院の議員はいずれも「全国民を代表する選挙された議員」です(43条1項)。参議院に解散がなく半数改選であることは、選挙区の定数配分の設計にも影響します。最大判昭和58年4月27日は、3年ごとの半数改選という憲法上の要請から各選挙区に偶数の定数を配分せざるを得ないこと、都道府県を単位とする選挙区に事実上都道府県代表的な意義ないし機能を有する要素を加味しても全国民の代表という性格と矛盾しないことを挙げて、広い立法裁量を認め、最大較差約1対5.26を合憲としました。「①は,地方選出議員の地方代表的性格は否定したが,半数改選制,参議院に解散を認めない二院制の本旨といった参議院議員選挙の特殊性を重視して,合憲とした」という肢は誤りです。この判例は地方選出議員の地方代表的性格を重視したのであって、否定したとはいえないからです。もっとも、参議院の特殊性が投票価値の平等を後退させる理由になるかは別の問題で、最大判平成24年10月17日は、参議院議員の選挙であること自体から直ちに投票価値の平等の要請が後退してよいと解すべき理由は見いだし難いと述べています。「a.参議院議員選挙においては,二院制の下,地域代表の性質を有するという参議院の特殊性により,投票価値の平等の要請が後退するのもやむを得ない」という見解の根拠として、「b.参議院は,国権の最高機関として適切に民意を国政に反映する義務を負っており,衆参両院の選挙制度は同質的とされるべきである」という見解を挙げる肢は誤りです。両院の選挙制度が同質的であるべきだと考えるなら、参議院についてだけ投票価値の平等を緩める理由は失われ、bはaの根拠ではなく反対の方向を向く見解だからです。判例も、近時は都道府県を各選挙区の単位としなければならないという憲法上の要請はないと明言するに至っています。
両院は同時に召集されて同時に閉会し、それぞれ独立して議事と議決を行います
両議院は同時に召集され、衆議院が解散されたときは参議院も同時に閉会となります(54条2項本文)。これを同時活動の原則といい、その例外が衆議院の解散中に内閣の求めで開かれる参議院の緊急集会です(54条2項ただし書)。また、両議院はそれぞれ独立して審議し、独立して議決するのが原則で、両院の意思が一致したときに国会の意思が成立します。これを独立活動の原則といい、その例外が両院協議会です。「両議院は,それぞれ独立して活動し,独立して意思決定を行うのが原則である」とし、続けて「ただし,両議院の議決が異なった場合に必要的又は任意的に開かれる両院協議会は,各議院において選挙グされた委員によって構成される」という肢は正しいです。両院協議会は各議院で選挙された各10人の委員で組織されます(国会法89条)。同時活動の原則からは、一方の議院だけが会期の延長を決めることもできません。会期の決定と延長は両議院一致の議決によるとされ、意見が一致しないときは衆議院の議決が国会の議決となります。
会議は公開が原則で、秘密会の記録も特に秘密を要するもの以外は公表します
両議院の会議は公開とし、傍聴と報道が認められます(57条1項本文)。国民が審議の過程を知ることで、代表者を監視し統制できるようにするためです。会議の記録は保存し、秘密会の記録の中で特に秘密を要すると認められるもの以外は公表し、かつ一般に頒布しなければなりません(57条2項)。「両議院の会議は公開が原則であり,本会議については傍聴が認められているほか,その記録は公表され,かつ一般に頒布されなければならない」とし、続けて「ただし,出席議員の3分の2以上の多数 で議決したときは秘密会を開くことができる」という肢は正しいです。これに対し「両議院の会議は公開が原則であるが、出席議員の3分の2以上の多数で議決したときは秘密会を開くことができる」とし、続けて「秘密会では傍聴及び報道が制限され、会議の記録も公表されることはない」という肢は誤りです。秘密会でも記録は原則として公表と頒布の対象になるので、記録が一切公表されないと書く点が条文に反します。秘密会を開くには出席議員の3分の2以上の多数による議決が必要で(57条1項ただし書)、過半数では足りません。また、出席議員の5分の1以上の要求があれば各議員の表決を会議録に記載しなければならず(57条3項)、議員の責任を有権者が追跡できるようにしています。
先議権は予算についてだけ認められ、両院協議会が必ず開かれるのは三つの場合です
衆議院の先議権は予算についてのみ認められ(60条1項)、法律案にはありません。条約の承認も、61条が60条2項だけを準用して1項を準用していないので、先議権はありません。両院協議会は、予算の議決(60条2項)、条約の承認(61条)、内閣総理大臣の指名(67条2項)で両議院の議決が異なったときは必ず開かれ、法律案では衆議院が開くことを求めることができるにとどまります(59条3項)。「衆議院と参議院の関係について,日本国憲法は,衆議院に法律案及び予算の先議権を認めているが,法律案及び予算について両議院の意見が対立した場合には,両院協議会を開かなければならないとしている」という肢は誤りです。前段は法律案に先議権があるとする点で、後段は法律案の両院協議会を必要的とする点で、いずれも条文に反します。参議院の特殊性を強調しすぎた「参議院議員選挙に関して,判例は,半数改選という憲法上の要請,そして都道府県を単位とする参議院の選挙区選挙における地域代表的性格という特殊性を重視して,都道府県を各選挙区の単位とする仕組みを維持することを是認し続けている」という肢も誤りです。最大判平成24年10月17日は、都道府県を各選挙区の単位とする仕組みを維持しながら投票価値の平等の実現を図ることはもはや著しく困難な状況に至っているとして、仕組み自体の見直しを求めました。会期と緊急集会の仕組みは同時活動の原則を具体化したものであり、議決が異なった場合の処理は衆議院の優越で扱います。
定足数と表決数は、両議院に共通して定められています
両議院とも、総議員の3分の1以上の出席がなければ議事を開き議決することができません(56条1項)。議事は出席議員の過半数で決し、可否同数のときは議長が決します(56条2項)。これより重い表決数が要求されるのは、議員の資格争訟で議席を失わせる場合、秘密会を開く場合、議員を除名する場合、法律案を衆議院で再議決する場合のいずれも出席議員の3分の2以上、そして憲法改正の発議の各議院の総議員の3分の2以上です。総議員を基準とするのか出席議員を基準とするのかが条文ごとに違うので、それぞれの条文で確かめます。
憲法 第54条 第2項
衆議院が解散されたときは、参議院は、同時に閉会となる。但し、内閣は、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができる。
最大判平成24年10月17日(参議院議員定数不均衡事件)
立法を始めとする多くの事柄について参議院にも衆議院とほぼ等しい権限を与え、参議院議員の任期をより長期とすることによって、多角的かつ長期的な視点からの民意を反映し、衆議院との権限の抑制、均衡を図り、国政の運営の安定性、継続性を確保しようとしたものと解される。
論文ではこう使う
論文で二院制そのものが正面から問われることは多くありませんが、参議院の定数配分や、衆議院の解散、緊急集会の権限が問題になる場面で、趣旨からの理由づけが効きます。参議院の特殊性を主張するときは、半数改選と解散の不存在という制度上の事実から出発し、それが投票価値の平等をどこまで譲らせるかを慎重に評価します。緊急集会の権限の範囲を論じるときは、暫定的な代行という位置づけと、衆議院の同意を要する仕組みから限界を導きます。参議院の権能が衆議院より弱いのは議決の場面に限られ、国政調査権や自律権では両院が対等です。両院の意思が食い違ったときの調整が制度の要ですから、二院制を書いたら優越と両院協議会まで視野に入れます。
この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。