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用語集 / 憲法 / 被選挙権・立候補の自由

被選挙権・立候補の自由とは

ひせんきょけん・りっこうほのじゆう

憲法 参政権と選挙

被選挙権・立候補の自由とは、公職の選挙に候補者として名乗り出て選ばれる資格と自由のことです。憲法に明文はありませんが、判例は、立候補の自由が選挙権の自由な行使と表裏の関係にあることから、憲法15条1項がこれを保障していると解しています。

市議会議員になりたい人が、勤め先の労働組合から「組合の推す候補以外は出るな」と言われ、従わなければ処分すると告げられる場面を考えてみます。選ぶ側の自由がいくらあっても、選ばれる側に出る自由がなければ、有権者は限られた候補からしか選べません。憲法は被選挙権を条文に書いていませんが、判例は、立候補の自由が選挙権の裏側にあたるものとして、15条1項の保障する重要な基本的人権だと考えています。

市役所の選挙管理委員会の受付の場面。カウンターに看板「立候補の届出」。立候補者の男性(札「立候補者」)が「立候補届」と書いた紙をカウンターに出し、吹き出し「組合から出るなと言われたけれど、市議会議員に立候補したい」。先生が裁判官役(札「裁判

立候補の自由は15条1項によって保障されます

憲法15条1項は、公務員を選定し罷免することを国民固有の権利と定めるだけで、立候補の自由については直接には規定していません。しかし最大判昭和43年12月4日(三井美唄労組事件)は、立候補の自由は選挙権の自由な行使と表裏の関係にあり、自由かつ公正な選挙を維持するうえで極めて重要であるから、15条1項は被選挙権者、特にその立候補の自由も、同項の保障する重要な基本的人権の一つとして保障していると解すべきだとしました。「いわゆる立候補の自由は,選挙権の自由な行使と表裏の関係にあり,自由かつ公正な選挙を維持する上で極めて重要であるとして,憲法第15条第1項によって保障されていると解すべきである」という肢は正しいです。これを否定する形で、「立候補の自由について,最高裁判所は,選挙権の自由な行使と表裏の関係にあり,自由かつ公正な選挙を維持する上で極めて重要であることを認めつつ,憲法が立候補の自由について明文では規定していないので,立候補の自由は憲法の保障する基本的人権とまではいえないと判示した」という肢は誤りです。明文がないことは保障を否定する理由になりません。なお、最大判昭和30年2月9日は、選挙の公正を害した者の被選挙権を一定期間停止することを、選挙権・被選挙権の本質から説明しています。立候補の自由に対する制限は、公権力によるものと私人によるものに分かれ、制度の設計から生じる差異も争われます。

  • 憲法上の位置づけ15条1項が被選挙権、特に立候補の自由を保障する
  • 公権力による制限年齢・供託金・兼職禁止・連座制など。選挙の公正の確保が正当化理由になる
  • 私人による制限労働組合の統制権や政党の除名。私人間でも立候補の自由の重要性が考慮される
  • 制度による差異候補者届出政党にだけ認められる選挙運動など。政党本位の制度設計として許容される

労働組合の統制権も立候補の自由を奪うことはできません

労働組合は憲法28条の団結権の保障を受け、その団結を維持し目的を達成するために必要かつ合理的な範囲で組合員に対する統制権をもちます。三井美唄労組事件の判決も、組合が統一候補を決めて組合を挙げて選挙運動を進め、統一候補以外に立候補しようとする組合員に立候補を思いとどまるよう勧告し説得することは、組合の政治活動の一環として許されるとしました。しかし、立候補の自由は憲法の保障する重要な権利なので、これに対する制約は特に慎重でなければならず、統制権の行使による制約であっても、その必要性と立候補の自由の重要性とを比較衡量して許否を決めるべきだとしました。そのうえで、勧告や説得の域を超えて立候補を取りやめることを要求し、従わないことを理由に統制違反者として処分することは、統制権の限界を超えて違法だと判断しています。「労働組合の組合員に対する統制権は,労働者の団結権保障の一環として,憲法第28条の精神に由来するものであるが,労働組合が,公職選挙における統一候補を決定し,組合を挙げて選挙運動を推進している場合であっても,組合の方針に反して立候補した組合員を統制違反として処分することは,労働組合の統制権の限界を超えるものとして,違法といわなければならない」という肢は正しいです。裏返した「労働組合は、団結権が保障されており、組合の団結を維持するための統制権の行使によって公職選挙における組合員の立候補の自由を制約することができるので、公職選挙において統一候補を擁立した場合、当該候補以外の組合員が立候補をやめなかったことを理由にその組合員を処分することができる」という肢は誤りです。組合の側から見た限界は労働組合で扱います。

労働組合の事務所の場面。壁に「統一候補を応援しよう」のポスター。組合の役員の男性(札「労働組合」)が「処分通知」と書いた紙を突き出し、吹き出し「統一候補以外の立候補をやめなかったから、統制違反で処分する」。向かいに組合員の男性(札「立候補し

拡大連座制は、選挙の公正を保つ手段として合憲とされました

公職選挙法251条の3は、組織的選挙運動管理者等が買収などの選挙犯罪を犯して禁錮以上の刑に処せられたときは、候補者本人に故意や過失がなくても、その当選を無効とし、同じ選挙区で行われる同じ公職の選挙に5年間立候補できないと定めています。「組織的選挙運動管理者等が、買収等所定の選挙犯罪を犯して禁錮以上の刑に処せられた場合に、公職の候補者等であった者の当選を無効とし、かつ、これらの者が5年間当該選挙に係る選挙区において行われる当該公職に係る選挙に立候補することを禁止する旨を定めた公職選挙法の規定は、民主主義の根幹をなす公職選挙の公正を保持する極めて重要な法益を実現するための規定であり、立法目的は合理的であるとともに、立法目的を達成する手段として必要かつ合理的なものといえるから、憲法第15条に違反しない」という肢は正しいです。最判平成9年3月13日(連座制)は、この規定が民主主義の根幹をなす公職選挙の公明、適正を厳粛に保持するという極めて重要な法益を実現するためのものであって立法目的は合理的だとしました。手段についても、候補者に組織的選挙運動管理者等の選挙運動を管理し監視する義務を課して選挙の公正を担保する仕組みであり、連座の対象を悪質な選挙犯罪に限り、立候補禁止の期間と対象となる選挙の範囲を限定し、おとり行為や寝返り行為の場合には免責され、候補者が相当の注意を尽くせば連座を免れる道も設けられていることから、全体としてみれば必要かつ合理的だとしました。及ぶ範囲が同一の選挙区の同一の公職に限られ、期間も5年に限られることが理由に挙がります。

選挙事務所の場面。机の上に「当選証書」があり、その上に深紅の斜線が引かれている。候補者の男性(札「候補者」)が頭を抱え、吹き出し「運動を任せていた管理者が買収で有罪になった。私は知らなかったのに当選が無効になり、5年間この選挙区で立候補でき

政党本位の選挙制度による差異も、立法裁量の範囲とされました

衆議院の小選挙区選挙では、候補者本人のほか、所属する候補者届出政党にも選挙運動が認められ、政見放送は候補者届出政党にしか認められません。この仕組みは無所属候補に不利に働きます。最大判平成11年11月10日(衆議院小選挙区比例代表並立制の合憲性)は、選挙運動を誰にどのような態様で認めるかも選挙制度の仕組みの一部として国会が裁量で決められるとし、候補者届出政党に所属する候補者とそれ以外の候補者との間に選挙運動上の差異が生ずることは避け難いから、その差異が一般的に合理性を有するとは到底考えられない程度に達している場合に初めて裁量の逸脱になるという枠組みを示しました。政党その他の政治団体の国政上の役割に照らして、選挙制度を政策本位・政党本位のものとする目的には合理性があるとしています。「衆議院議員選挙では,小選挙区の候補者のほか,所属する候補者届出政党にも選挙運動が認められており,無所属の候補者は政見放送ができないなど非常に不利であるが,他に十分な手段があるため,政策・政党本位の選挙制度の実現のための立法裁量の範囲を逸脱していない」という肢は正しいです。判決は、政見放送という手段に限ってみれば、候補者届出政党に所属する候補者とそれ以外の候補者との間に単なる程度の違いを超える差異を設ける結果になることを認めました。しかし、政見放送は選挙運動の一部にすぎず、自動車や拡声機、文書図画、新聞広告、演説会などその余の選挙運動は無所属の候補者も自ら十分に行えることから、差異が合理性を有するとは到底考えられない程度に達しているとまでは断定し難いとして、憲法14条1項に違反しないとしました。これを違憲とする「衆議院の小選挙区選挙について,候補者届出政党にのみ政見放送を認め,候補者を含むそれ以外の者には政見放送を認めないものとする公職選挙法の規定は,選挙運動をする上で,候補者届出政党に所属する候補者とこれに所属しない候補者との間に単なる程度の違いを超える差異を設ける結果となり,国会に与えられた合理的裁量の限界を超えるものであるから,憲法第14条第1項に違反する」という肢は誤りです。差異があることは認めながら、裁量の限界は超えていないというのが結論です。

テレビ局のスタジオの場面。カメラの前に「政見放送」の看板があり、候補者届出政党の男性(札「候補者届出政党」)がマイクの前で話している。スタジオの外に無所属の候補者の男性(札「無所属の候補者」)が立ち、吹き出し「政党だけが政見放送をできて、私

重複立候補ができる政治団体には要件があり、天皇には選挙権も被選挙権も認められません

公職選挙法は、二つ以上の選挙に同時に候補者となることを原則として禁じ、例外として、衆議院議員選挙で候補者届出政党の届け出た小選挙区の候補者が、衆議院名簿届出政党等の名簿に登載されて比例代表選挙にも重複して立候補することを認めています。これらの届出ができる政治団体には、所属する国会議員が5人以上であること、または直近の国政選挙での得票率が2パーセント以上であることといった要件が定められています。「立候補の自由が選挙権の自由な行使と表裏の関係にある重要な基本的人権であることからすると、選挙制度を政党本位のものとするという国会の裁量にも限界がある」ことを理由に「立候補の自由に配慮して、公職選挙法上、衆議院議員選挙における重複立候補者が所属する政治団体については、一定数以上の国会議員を有することを要するといった限定は課されていない」という肢は誤りです。国会の裁量に限界があること自体は否定されませんが、限定は実際に課されています。最大判平成11年11月10日は、重複立候補ができる者を候補者届出政党と衆議院名簿届出政党等の両方の要件を満たす政党等に所属する者に限ることには相応の合理性があるとしました。被選挙権の主体についても問われます。天皇も日本国民として人権の享有主体ですが、国政に関する権能を有しないため(憲法4条1項)、選挙権も被選挙権も認められないと解されています。「天皇も日本国民であることから基本的人権は保障されており、例えば表現の自由や選挙権は保障されるものの、その職務の特殊性から一定の例外があり、例えば被選挙権は認められない」という肢は誤りです。被選挙権だけでなく選挙権も認められないからです。

被選挙権の停止や供託金も、選挙の公正の確保から説明されます

公職選挙法は、選挙犯罪で処罰された者の選挙権と被選挙権を一定期間停止し、一般の犯罪で処罰された者より厳しく扱っています。最大判昭和30年2月9日は、選挙犯罪はいずれも選挙の公正を害する犯罪であり、その処刑者は現に選挙の公正を害した者として選挙に関与させるのに不適当だから、一定期間排除するのは相当であって、一般の犯罪の処刑者の停止とは別個の事由に基づくものだとして、条理に反する差別待遇ではないとしました。「選挙権の法的性格について,国政への参加を国民に保障する権利という面のみを有すると考える見解に立っても,かかる権利であると同時に選挙人としての地位に基づいて公務員の選挙に関与する公務という側面も併せ有すると考える見解に立っても,選挙犯罪による被処罰者の選挙権及び被選挙権の停止を定める公職選挙法の規定が,憲法第14条及び第44条ただし書に違反する差別的待遇ではないと解することは可能である」という肢は正しいです。権利と公務の両面をもつという見解からは公務としての性格に基づく最小限度の制約として、権利という面のみをもつという見解からも選挙の公正確保を目的とする必要最小限度の制限として、どちらの説で理解しても停止は正当化できます。供託金の制度も、売名目的の無責任な立候補を防ぎ選挙の秩序を保つ目的で説明されます。ただし額が高すぎれば、資力のない者の立候補を事実上締め出すことになり、立候補の自由との緊張が生じます。選挙権の側の議論は選挙権の法的性格で扱います。

最大判昭和43年12月4日(三井美唄労組事件)

立候補の自由は、選挙権の自由な行使と表裏の関係にあり、自由かつ公正な選挙を維持する上で、極めて重要である。このような見地からすると、憲法一五条一項には、被選挙権者、特にその立候補の自由についても、同様に、これを保障していると解すべきである。

論文ではこう使う

論文では、まず立候補の自由が15条1項で保障されることを三井美唄の規範から示します。制限が公権力によるものなら、選挙の公正の確保という目的の重要性と、制限の範囲・期間・免責の余地という手段の相当性を検討します。私人による制限なら、団体の目的と自律権を一方に置き、立候補の自由が民主政の過程に直結することを他方に置いて比較衡量します。政党本位の制度設計が争われる場合は、選挙制度の仕組みが国会の裁量に委ねられることを前提に、単なる程度の違いを超える差異かどうかで判断します。

試験ではこう問われる

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読んだあとに、憲法の肢別演習を

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