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用語集 / 憲法 / 権力分立の原理

権力分立の原理とは

けんりょくぶんりつのげんり

憲法 国会

権力分立の原理とは、国家の作用を立法・行政・司法に分け、それぞれを国会・内閣・裁判所という別の機関に担わせたうえで、相互に抑制と均衡を働かせる仕組みです。憲法41条・65条・76条1項がこの配分を定めています。

学校で、テストの問題を作る先生と、答案を採点する先生と、成績に文句を言う生徒の訴えを聞く先生が、全部同じ一人だったら、生徒は安心できません。国の仕組みも同じで、法律を作る力、法律を実行する力、争いを裁く力を一つの機関に集めると、力が濫用されやすくなります。そこで憲法は、立法を国会に、行政を内閣に、司法を裁判所に分け、互いに見張り合わせることで国民の自由を守ろうとしています。

国会議事堂・首相官邸・裁判所の三つの建物が三角形に並ぶ場面。先生が裁判官役(札「裁判所(司法権 76条1項)」)で右下の裁判所の前に立ち、左下に「内閣(行政権 65条)」の札を掛けた男性、上に「国会(立法権 41条)」の札を掛けた男性が立つ

権力分立の目的は、権力の集中を防いで国民の自由を守ることにあります

権力分立は、国民主権のように統治の正統性を語る原理ではなく、権力をどう組み立てるかという技術です。そのため、どの機関が優位するかという発想とはなじみません。「a.憲法は国会を国権の最高機関としているが、ここでの国権とは統治権を意味しており、国会は立法機関であるだけでなく、この意味での国権の発動全般を統括すべき地位にある」という見解は、国会を国権の発動全般を統括する地位に置くもので、内閣が衆議院を解散でき、裁判所が法律を違憲と判断できるという憲法の仕組みと整合しません。したがって、相互の抑制・均衡を説く見解は、この見解の根拠にはなりません。他方、「憲法第41条の「国権の最高機関」につき,国政全般を統括する機関であるとの見解に立たないとしても,どの国家機関に帰属するのか不明確な権能については国会に属するものと推定することは可能である」という肢は正しく、最高機関という語に政治的美称以上の意味を読まなくても、権能の帰属が不明確な場合に国会を推定するという限りでの意味は残ります。

  • 立法権と行政権内閣の法律案提出権、委任立法、国政調査権、内閣不信任決議と衆議院の解散
  • 立法権と司法権裁判所の違憲審査権、最高裁判所規則制定権、議院による弾劾裁判
  • 行政権と司法権裁判官の指名と任命、恩赦、行政機関による前審としての裁判
  • 現代的変容行政国家化・政党国家化・司法国家化の三つ。分立の対抗軸が移動する

行政国家化により、立法府が行政府をどこまで統制できるかが課題になります

「20世紀の積極国家・社会国家の要請に伴って行政活動の役割が飛躍的に増大し,行政府が国の基本政策の形成決定に事実上中心的役割を営むようになっている,そのような状況のもとでは,立法府が行政府をどこまでコントロールできるかが問題となる」という肢は正しいです。社会国家の要請で行政の役割が拡大すると、法律は大綱を定めるにとどまり、具体的な規律は命令に委ねられます。委任立法の限界や国政調査権の運用が、ここで意味をもつことになります。官僚機構が法律案の大部分を準備し、国会はそれを審議するという実態も、行政国家化の一面です。分立の形が変わっても、統制の実効性を確保するという目的は変わりません。行政が政策形成の中心を担うようになった結果、国会は法律の制定より、予算の審議、国政調査、大臣への質疑を通じた監視に重きを置くようになりました。統制の手段が立法から監督へ移ったと見ることもできます。

国会の委員会室の場面。先生が国会議員役(札「国会(立法府)」)で質問席に立ち、正面の答弁席に大臣の男性(札「内閣(行政府)」)が分厚い書類の山「基本政策」「法律案」を抱えて座っている。書類の山は大臣の側に高く積まれ、先生の机の上は薄い。先生

政党国家化により、対抗軸は議会と政府から与党と野党へ移ります

「議会の多数党が政府を形成する議院内閣制の下では,とりわけ,伝統的な議会と政府の対抗関係は機能不全に陥りがちである,政治部門における権力分立は,むしろ,政府・与党と野党の対抗関係へと機能的に変化する」という肢は正しいです。議院内閣制のもとでは、内閣は議会の多数派から生まれますから、議会が内閣を統制するという古典的な図式は働きにくくなります。少数派の権利を制度で保障することが重要になるのはこのためで、臨時会の召集要求、国政調査権の発動要件、議事の公開といった仕組みが野党の武器になります。政党を通じて有権者が政治を統制するという回路も加わるため、選挙制度の設計や政党への助成の在り方が、分立の実効性に直結することになります。

司法国家化により、違憲審査制が権力分立の一部を担います

「とりわけ第二次世界大戦後,議会が制定する法律自体の合憲性を通常裁判所あるいは憲法裁判所が審査する制度を採用する国が増えている,日本の場合は,最高裁判所だけに違憲審査権が付与されているが,立法府と行政府のすべての行為の合憲性を審査しているわけではない」という肢は誤りです。日本では最高裁判所だけでなく下級裁判所にも違憲審査権があり、最大判昭和25年2月1日も、違憲審査権は司法権の作用として下級裁判所にも認められるとしています。違憲審査が立法府と行政府に対する抑制として働く一方、政治部門の判断を尊重すべき場面もあり、統治行為や立法裁量の議論につながります。最大判昭和35年6月8日(苫米地事件)が衆議院の解散を審査の対象から外したのは、この抑制が働いた場面です。最大判昭和27年10月8日(警察予備隊違憲訴訟)が抽象的審査を否定したのも、裁判所が政治部門の判断に先回りしないという分立の要請から説明されます。

独立行政委員会は、準立法的・準司法的作用を行っても分立に反しません

「独立行政委員会が規則制定という準立法的作用を行うことは,国会を唯一の立法機関と定める憲法第41条に反するものではない」という肢は正しいです。「独立行政委員会が裁決や審決という準司法的作用を行うことは,たとえ前審であっても,全て司法権は裁判所に属する旨を定める憲法第76条第1項に反し,許されない」という肢は誤りで、76条2項が禁じるのは行政機関が終審として裁判することだけですから、前審としてならできます。「行政権は内閣に属すると定める憲法第65条により,独立行政委員会の職務全般に対しては,内閣の直接的な指揮監督権が及ぶ」という肢も誤りです。委員会の職権行使には独立性が認められ、内閣の直接的な指揮監督は及びません。65条との整合は、内閣が委員の任命権と予算の編成権を通じて民主的統制を及ぼしていることから説明されます。分立は、ある作用を一つの機関が独占することまで要求するものではなく、終局的な判断と統制の所在が確保されていれば足りる、という理解がここでも働いています。立法権の側から見た限界は唯一の立法機関で扱います。

先生が公正取引委員会の委員長役(札「独立行政委員会」)で審判席に座り、机の上に「規則」と書いた冊子と「審決」と書いた紙が並ぶ。左に内閣総理大臣役の男性(札「内閣 65条」)が立ち、先生への指揮の矢印に深紅の×印と札「職権行使に直接の指揮監督

分立の形は国により異なり、日本は議院内閣制を採ります

厳格な分立を採るアメリカの大統領制では、大統領と議会がそれぞれ国民に責任を負い、相互の人的な結びつきがありません。これに対し議院内閣制では、内閣が国会の信任に基づいて存立し、国会議員が国務大臣を兼ねます。日本国憲法は、内閣総理大臣を国会議員の中から国会が指名し(67条1項)、国務大臣の過半数を国会議員とし(68条1項ただし書)、衆議院の内閣不信任決議と内閣の解散権を対応させて、両者を結びつけました。権力分立を厳格な分離ではなく、抑制と均衡の関係として組み立てているのが特徴です。

最大判昭和35年6月8日(苫米地事件)

司法権が国家統治の基本に関する高度に政治性のある国家行為を審査の対象から除外するのは、三権分立の原理に由来し、当該国家行為の高度の政治性、裁判所の司法機関としての性格、裁判に必然的に随伴する手続上の制約等にかんがみ、特定の明文による規定はないけれども、司法権の憲法上の本質に内在する制約と理解すべきである。

論文ではこう使う

論文では、統治機構の問題を書くとき、条文の文言だけでなく権力分立の目的から結論を支えます。ある機関に他の機関の作用の一部を担わせる制度が問題になったら、その作用の性質、担わせる範囲、終局的な判断を誰が握るか、統制の手段が残されているかを順に検討します。分立の例外が許されるかは、権力の集中による自由の侵害という弊害が現実に生じるかどうかで判断する、という筋を通すと、条文のない場面でも書けるようになります。権力分立は答案の結論そのものにはなりませんが、結論を支える理由として毎回顔を出します。条文の文言で決まらない場面ほど、この原理から書き起こす価値があります。条文の配分と実際の権力の動きがずれている場面ほど、この原理が働きます。

試験ではこう問われる

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