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用語集 / 憲法 / 議院の自律権

議院の自律権(議院規則・懲罰・資格争訟)とは

ぎいんのじりつけん

憲法 国会

議院の自律権とは、衆議院と参議院のそれぞれが、自らの組織と運営について他の国家機関の干渉を受けずに決める権能です。憲法は、議員の資格に関する争訟の裁判(55条)、会議その他の手続及び内部の規律に関する議院規則の制定と、院内の秩序をみだした議員の懲罰(58条2項)をその内容として定めています。

学校の生徒会が、会議の進め方を自分たちで決め、会議を妨げた委員に注意や出席停止を言い渡すことがあります。先生や校長がそこに口を出しはじめると、生徒会は自分たちで議論する場ではなくなります。国会の各議院も同じで、独立して審議し議決するためには、会議の手続や院内の秩序を自分たちで整えられなければなりません。そこで憲法は、議院規則の制定、議員の懲罰、議員の資格争訟の裁判を各議院に任せ、裁判所も原則としてそこに立ち入らないことにしています。

国会の議場の場面。先生が議長役(札「衆議院議長」)で議長席に座り、右手に「衆議院規則」と書かれた冊子、左手に「懲罰」と書かれた紙を持つ。議席には議員たちが小さく描かれ、一人の男性議員(札「議員」)が立って野次を飛ばしている。議場の外、扉の向

議院規則は、議事と内部規律を各議院の自主的なルールに委ねる趣旨です

「議院の規則制定について規定している憲法第58条第2項は,各議院が独立して議事を審議し議決する以上,当然のことを定めた規定であり,「各々その会議その他の手続及び内部の規律に関する」事項について,原則として両議院の自主的なルールに委ねる趣旨である」という肢は正しいです。議院規則の制定は、国会中心立法の原則の例外として憲法が明文で認めたものですが、その内容は議院の内部に関する事項に限られます。この点で、訴訟手続という国民の権利義務に直接関わる事項まで定められる最高裁判所規則とは性質が異なります。「最高裁判所の制定する規則は,その対象となる事項が規則を制定した機関の内部事項に限られないという点で,議院規則と異なる性質を有する」という肢が正しいとおりです。

  • 組織自律権議員の資格争訟の裁判、役員の選任、会期中の逮捕許諾
  • 運営自律権議院規則の制定、議員の懲罰、議事手続の決定
  • 懲罰の種類公開議場における戒告、公開議場における陳謝、一定期間の登院停止、除名(国会法122条)
  • 除名の要件出席議員の3分の2以上の多数による議決(58条2項ただし書)
  • 資格争訟議席を失わせるには出席議員の3分の2以上の多数が必要(55条ただし書)

議院規則と国会法の優劣が争われます

国会法は法律ですから両議院の議決を経て成立し、参議院の意思が反映されます。これに対し議院規則は各議院が単独で定めます。「議院規則について,両議院の会議その他の手続及び内部の規律に関する国会法の規定に法的効力を認めると,国会法の改廃について両議院の意思が異なる場合に,参議院の自主性が損なわれるおそれがある」という肢は正しいです。議院規則優位説は、国会法に法的効力を認めると参議院の自主性が損なわれるという点を根拠にします。もっとも、この立場からただちに国会法が無効になるわけではありません。「議院規則と国会法の関係についていずれが優位するかの対立の前提として、院内手続準則につき国会法との競合的所管が認められるか争いがあるところ、これを認めず院内手続準則は議院規則の排他的所管と解する立場からは、国会法所定の院内手続部分については、違憲無効と解するほかない」という肢は誤りで、国会法の当該部分を紳士協定的な取決めと解するなど、無効とせずに説明する道があります。

先生が参議院議員役(札「参議院」)で机に着き、左に「参議院規則」の冊子、右に「国会法(法律)」の分厚い冊子が並ぶ。国会法の冊子の上には「衆議院の優越 59条」の札が付いた天秤の絵が小さく載り、衆議院側に傾いている。先生の吹き出し「国会法は法

懲罰は議場外の行為にも及び、除名には3分の2以上が必要です

「議員の懲罰について規定している憲法第58条第2項は,議院がその組織体としての秩序を維持し,その機能の運営を円滑ならしめるためのものであるため,議場内に限らず,議場外の行為でも懲罰の対象となるが,会議の運営と関係のない個人的行為は懲罰の対象とならない」という肢は正しいです。院内の秩序との関連があるかどうかが基準であり、場所が議場の内か外かで決まるわけではありません。「両議院は、各々、院内の秩序をみだした議員を懲罰することができ、現行法上、公開議場における戒告、公開議場における陳謝、一定期間の登院停止及び除名の4種類の懲罰が規定されているところ、懲罰は院内の秩序の維持に関連して議員に科される制裁であり、議員の院外での行動は懲罰の対象とはならず、議員が正当な理由なく召集に応じない場合であっても懲罰の対象とはならない」という肢は誤りです。「院内」とは建物としての議事堂ではなく組織体としての議院を指すので、正当な理由なく召集に応じない場合も懲罰の対象になり、国会法124条はこの場合を懲罰委員会に付すると定めています。議決要件については、「議院による懲罰について,公開議場における戒告,公開議場における陳謝,一定期間の登院停止,除名の4種のいずれの懲罰を科すにも,議院がその組織体としての秩序を維持するため,出席議員の過半数の議決を要する」という肢は誤りで、除名だけは出席議員の3分の2以上が必要です。

先生が懲罰委員長役(札「懲罰委員会」)で席に着き、前に4枚の札を並べている。「公開議場における戒告」「公開議場における陳謝」「一定期間の登院停止」の3枚は「出席議員の過半数」の帯、「除名」の1枚だけ深紅の帯で「出席議員の3分の2以上(58条

資格争訟の裁判に司法審査は及びません

「議員の資格争訟の裁判について規定している憲法第55条は,議員資格に関する判断を議院の自律的な審査に委ねる趣旨のものであるが,議員の選挙に関する争訟の裁判は裁判所の権限に属するので,各議院の下した議員資格に関する判断についても裁判所で争うことができる」という肢は誤りです。55条が議院に裁判権を与えた以上、その判断を裁判所で争うことはできません。議員の被選挙権の有無や兼職禁止に触れるかといった資格の問題を議院自身が判断するのが資格争訟で、選挙の効力を争う選挙訴訟とは別の制度です。選挙訴訟は裁判所の権限に属しますが、そのことから資格争訟の裁判まで裁判所で争えることにはなりません。裁判所法3条1項が「日本国憲法に特別の定のある場合を除いて」と定めるとおり、55条がこの特別の定めに当たるからです。議事手続の瑕疵についても、「警察法改正無効事件判決(最大判昭和37年3月7日)は,警察法改正が衆参両院において議決を経たとされ,適法な手続で公布されている以上,裁判所は両院の自主性を尊重すべきであり,議事手続に関する事実を審理してその有効無効を判断すべきでないとしたものである」という肢が正しいとおり、裁判所は立ち入りません。

地方議会の懲罰は、国会とは異なり司法審査の対象になります

「地方議会の議員に対する出席停止の懲罰に関し、その懲罰を受けた議員が取消しを求める訴えは、法令の適用によって終局的に解決し得る法律上の争訟に当たるところ、議会により出席停止の懲罰処分を科されると、その議員は、住民の負託を受けた議員としての責務を十分に果たすことができなくなるから、当該処分が議会の自律的な権能に基づいてなされたものとして、議会に一定の裁量が認められるとしても、裁判所は、常にその適否を判断することができ、司法審査の対象となる」という肢は正しいです。最大判令和2年11月25日(岩沼市議会事件)は、出席停止の懲罰について、議員が住民の負託を受けた責務を果たせなくなることを理由に、常に司法審査の対象になるとしました。これにより、除名だけが司法審査の対象で出席停止は対象外としていた最大判昭和35年10月19日(地方議会議員の懲罰と司法審査)の枠組みは変更されました。「地方議会における自律的な法規範の実現については,内部規律の問題として自治的措置に任せるのが適当であるが,数日間に及ぶ議会への出席停止の懲罰は,議員の重大な権利行使に対する制限であり,単なる内部規律の問題に止まらないから,司法審査の対象となる」という肢は、昭和35年判決を前提に誤りとされていました。現在の判例では出席停止も司法審査の対象になりますが、その理由は権利制限の重大さではなく、議員が住民の負託を受けた責務を果たせなくなる点に求められています。地方議会には憲法上の自律権の規定がないことが、国会との違いの出発点です。

先生が裁判官役(札「裁判所」)で中央の法廷に座る。左に市議会議員の男性(札「市議会議員」)が「出席停止 3日」と書かれた通知を持ち、吹き出し「議会に出席停止にされた。取消しを求めたい」。右奥に「市議会」の看板の建物と、その隣に半透明で小さく

憲法 第58条 第2項

両議院は、各々その会議その他の手続及び内部の規律に関する規則を定め、又、院内の秩序をみだした議員を懲罰することができる。但し、議員を除名するには、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする。

論文ではこう使う

論文では、議院の行為の適否が争われたとき、まず自律権の範囲に属するかを検討し、属するなら司法審査を否定します。属するかどうかは、憲法が明文で議院に委ねた事項か、議院の組織と運営に関する内部の問題かで判断します。地方議会が問題になる場合は、憲法上の自律権の規定がないことを出発点に、法律上の争訟にあたるかを正面から判断し、議員の責務の遂行に与える影響の大きさから審査の可否を導きます。

試験ではこう問われる

「議院の自律権」が短答式でどう出題されてきたか、ひっかけの型10件と関係する過去問の肢11本は、無料のアカウントでログインすると読めます。

読んだあとに、憲法の肢別演習を

この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。

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