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明治憲法下の法令・占領法規の効力とは

めいじけんぽうかのほうれい・せんりょうほうきのこうりょく

憲法 憲法総論

明治憲法下の法令・占領法規の効力とは、明治憲法の下で作られた法令と占領中に効力を認められた法令が、日本国憲法の下でどこまで効力を持つかという問題です。明治憲法下の法令は日本国憲法の条規に反しない限り効力を維持し(98条1項の反対解釈)、占領法規は平和条約の発効によって当然にその効力を失います。

会社が新しい定款を作ったからといって、それまでの社内規則を全部書き直すことはできません。新しい定款に反する規則だけを無効にして、あとはそのまま使うのが現実的です。日本国憲法の施行のときも同じで、明治憲法の下で作られた法律や勅令をすべて作り直すことは不可能でした。そこで、98条1項が効力を否定するのは憲法の条規に反する法令だけだと読み、内容が抵触しない限り旧法令はそのまま効力を持ち続けると扱いました。占領中だけ特別に効力を認められた政令は、占領が終われば根拠を失うので、それとは別の理由で効力を失います。

役所の文書倉庫の場面。先生が法制局の職員役(札「法制局」)で、棚に並んだ古い法令の綴りを一冊ずつ確かめている。綴りの背に「明治○年 勅令」「明治○年 法律」の札。先生の手元の一冊には深紅の付箋と札「憲法の条規に反する部分だけ効力を失う(98

旧法令は、憲法の条規に反しない限り効力を維持します

明治憲法下の法令の効力は、日本国憲法の施行によって一律に失われるわけではありません。98条1項が効力を否定するのは憲法の条規に反する法令ですから、反対に、内容が抵触しない限り旧法令はそのまま効力を持ち続けます。最大判昭和27年12月24日は、この考え方を前提に、明治憲法下で制定された法令が日本国憲法の下でも効力を有する場合があることを認めました。形式が法律でない勅令等であっても、内容が憲法に反しなければ法律としての効力を認め、憲法に反する部分だけが効力を失うという処理がとられました。基準は形式ではなく内容ですから、明治憲法下で作られたという一事から失効が導かれることはありません。逆に、内容が憲法の条規に反する場合には、その部分は日本国憲法の施行の日にさかのぼって効力を失います。さらに、明治憲法の下では法律の委任がなくても天皇の大権に基づく独立命令を出すことができ、国民の権利義務に関わる事項が勅令や省令で定められていました。日本国憲法は41条で国会を唯一の立法機関とし、法律事項を命令で定めることを認めていません。そこで、施行の際に効力を有していた命令のうち法律事項を定めるものは、法律としての効力を有するものとして扱われ、改廃には法律が必要になりました。命令の形式にとどまるものは命令として存続します。旧法令の効力の問題は、失効するかどうかだけでなく、どの時点でどの範囲が失われ、どの法形式のものとして存続するかという問いでもあります。

同じ文書倉庫で、先生が法制局の職員役(札「法制局」)が机の上に二つの箱を置いている。左の箱の札「法律事項を定めた旧命令→法律としての効力。改廃には法律が要る(41条)」、右の箱の札「命令の形式にとどまるもの→命令として存続」。先生が「勅令」

占領法規は平和条約の発効によって効力を失いました

占領期には、占領目的に有害な行為を処罰する政令が、憲法の規定にかかわらず効力を認められていました。最大判昭和28年7月22日(政令325号事件)は、占領管理体制の終了、すなわち平和条約の発効によって、この政令は当然その効力を失うとしました。占領下でその政令に違反した行為も、失効後は処罰できません。ここで大切なのは、失効の理由が違憲だからではなく、効力の根拠であった占領管理体制が消滅したからだという点です。憲法違反を理由に遡って無効とする筋道とは区別して覚えます。

裁判所の法廷の場面。先生が裁判官役(札「裁判所」)で法壇に座り、机の上に「政令325号」と書かれた書類と、その横に「平和条約 発効」と書かれたカレンダーの絵。左に被告人の男性(札「被告人」)が「占領中の違反で起訴」と書いた紙を持ち、吹き出し

法令の公布は、官報が一般の閲覧しうる状態に置かれた時に生じます

公布とは、成立した法令の内容を国民が知りうる状態に置くことをいい、天皇の国事行為として行われます(7条1号)。最大判昭和32年12月28日(政令の公布)は、公布の効力が生じる時点について、官報が印刷局を離れて一般に閲覧しうる状態に置かれた時、具体的には官報を掲載した印刷物が発送され、一般の希望者が最初に閲覧または購入しうる時であるとしました。施行日が公布の日とされている法令では、この時点の認定が罪の成否を左右します。なお、条約についても公布は必要で、別途の立法措置を要しない条約は公布された後に国内法的効力を生じると解されていますから、「公布は事実上内容を周知させるために行われるにすぎず、施行とは無関係である」という肢は誤りです。

国家無答責の原則は17条によって否定されました

明治憲法には国又は公共団体の賠償責任の規定がなく、公権力の行使による損害について国は賠償責任を負わないという国家無答責の原則が妥当すると解されていました。もっとも、国又は公共団体の行為が非権力的な管理作用に属する場合は、明治憲法下でも判例上民法709条以下の規定による不法行為責任がある程度まで認められていました。それゆえ、17条の意義は、権力作用に属する不法行為との関係で国家無答責の原則を否定し、国家の賠償責任を明記した点にある、という肢は正しいです。旧制度の下でも非権力的作用については救済の途があったからこそ、新憲法の規定の意義は権力作用の側にあると述べることができます。

役所の窓口の場面を左右に分けた図。左半分の看板「非権力的な管理作用(学校の遊具の管理など)」で、市の職員の男性(札「市」)が壊れた遊具の絵の前で「民法709条」と書いた札を持ち、札「明治憲法下でも判例上ある程度認められた」。右半分の看板「権

明治憲法下の行政裁判所は特別裁判所として禁止されました

76条2項前段が特別裁判所の設置を禁じたのは、司法権の強化を図るために、明治憲法下で認められていた行政裁判所のような特別裁判所を禁止する趣旨です。そのため、法律により、司法権を行使する通常裁判所の系列に属する下級裁判所として行政事件や労働事件を専門に扱う裁判所を設置しても違憲とはならない、という肢は正しいです。禁止されるのは通常裁判所の系列から独立した裁判機関であって、専門的な事件を扱う裁判所を系列の中に置くことではありません。家庭裁判所や知的財産高等裁判所が合憲とされるのも同じ理由です。

天皇大権に属した作用は内閣の権能に移されました

明治憲法が天皇大権としていた作用の多くは、日本国憲法で内閣の権能に移されました。恩赦もその一つで、73条7号により内閣が決定し、天皇が認証します。恩赦は立法権及び司法権の作用を行政権者の判断で変動させるものですから、憲法が定める恩赦の各種類の内容と手続について法律で定めることが必要である、という肢は正しいです。統帥権、栄典の授与、条約の締結といった旧大権事項が、日本国憲法の下でどの機関の権限になり、天皇の関与がどの範囲に限られるかは、天皇の国事行為と内閣の助言と承認で整理します。

日本国憲法 第98条 第1項

この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。

論文ではこう使う

論文でこの論点が正面から問われることはありませんが、法令の効力の及ぶ時的範囲を論じる場面で考え方が使えます。ある法令が違憲とされたとき、その効力がいつから失われるのかを、遡及して無効となる場合と、将来に向かって失われる場合とに分けて書きます。また、罪刑法定主義との関係で、行為時に効力を有していた法令が後に失効した場合の処罰の可否を論じるときにも、政令325号事件の処理が参考になります。法令の効力を論じるときは、効力の根拠、効力を失う事由、失効の時点という三つをそれぞれ分けて書くと、議論が混ざりません。

試験ではこう問われる

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