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用語集 / 行政法

行政法の用語集

短答式で問われる行政法の用語を章ごとに。全86語。定義・条文・判例と図解で、肢の正誤を判断する根拠を押さえます。

行政組織

3語

行政庁・行政機関

行政庁・行政機関とは、国や地方公共団体の仕事を分担する各部分を、国民との関係で果たす役割によって分けた呼び名です。そのうち行政庁は、行政主体の意思を決定してこれを外部に表示する権限をもつ機関で、補助機関・諮問機関・参与機関・執行機関・監査機関とともに作用法的な機関概念を構成します。

権限の委任・代理・専決

権限の委任・代理・専決とは、法律が行政庁に与えた権限を、他の機関が行使するときの三つの仕組みです。権限の委任は法律の根拠に基づいて権限そのものを受任機関に移し、権限の代理は権限を移さずに代理機関が本来の行政庁に代わって行使し、専決は権限も名義も動かさずに補助機関が内部で決裁します。

国の行政組織

国の行政組織とは、行政権が属する内閣を頂点に、内閣府と各省、その外局である委員会と庁、さらに地方支分部局が置かれる仕組みです。国家行政組織法は、法律で置かれる3条機関と、法律又は政令で置かれる8条機関を区別しています。

行政法の一般原則

4語

法律による行政の原理(法律の留保)

法律による行政の原理とは、行政活動が国会の制定した法律に従って行われなければならないという原則です。行政活動は法律に違反してはならないという法律の優位と、一定の行政活動には法律の根拠がなければならないという法律の留保を内容とします。

信義則

信義則とは、相手方に与えた信頼を裏切る行為を違法とする一般原則で、民法1条2項に定められ、行政上の法律関係にも及びます。行政は法律に従って動くのが原則ですから、法律どおりの処分を信義則で違法とするには、厳しい条件が要ります。

行政上の法律関係と私法の適用

行政上の法律関係と私法の適用とは、国や地方公共団体が当事者となる法律関係に民法などの私法の規定が適用されるかという問題です。判例は、公法関係か私法関係かで一律に決めるのではなく、その規定の趣旨がその関係にも妥当するかを事案ごとに見て決めています。

権限濫用の禁止

権限濫用の禁止とは、行政機関に与えられた権限を、それを与えた法律の目的のためにだけ行使しなければならず、他の目的のために用いてはならないという原則です。形式的に法律の要件を満たしていても、本来の目的と異なる動機でされた権限行使は違法になります。

行政立法

5語

委任命令の限界

委任命令の限界とは、法律の委任を受けて国民の権利義務を定める政令・省令・規則が、授権した法律の趣旨からみて許される範囲のことです。範囲を超えた部分は法律の委任の範囲を逸脱した違法な規定として無効になります。

行政規則(通達・要綱・審査基準)と外部効果

行政規則とは、行政機関が定める一般的な定めのうち、国民の権利義務を直接に規律せず、行政の内部でだけ効力をもつものです。通達・要綱・審査基準・処分基準がこれに当たり、法律の委任を受けて国民を拘束する法規命令と区別されます。

通達・訓令・告示

通達・訓令・告示とは、行政機関が発する文書をその働きで分けた呼び名です。訓令とは上級行政機関が下級行政機関の権限行使を指揮するために発する命令で、そのうち書面の形式をとるものが通達です。告示とは行政機関が一定の事項を公示するための形式で、内容によっては法規としての性質をもちます。

条例と規則

条例とは、地方公共団体が議会の議決によって定める自主法で、法令に違反しない限りにおいて制定でき、住民に義務を課し権利を制限することも罰則を設けることもできます。規則とは、地方公共団体の長がその権限に属する事務について定めるもので、条例と所管を分けます。

法定受託事務と自治事務・国の関与

法定受託事務とは、地方公共団体が処理する事務のうち、国が本来果たすべき役割に係るものであって、国においてその適正な処理を特に確保する必要があるものとして法律又はこれに基づく政令に特に定めるものです。自治事務とは、地方公共団体が処理する事務のうち法定受託事務以外のものをいい、どちらも地方公共団体の事務です。

行政行為

8語

公定力

公定力とは、行政行為に違法があっても、権限ある機関が取り消すまでは有効なものとして通用する効力です。条文に公定力という言葉はなく、法が取消訴訟という特別の仕組みを用意したこと、つまり取消訴訟の排他的管轄から導かれる裏返しの効力だと説明されます。

違法性の承継

違法性の承継とは、先に行われた処分の違法を、後に続く処分の取消訴訟の中で後行処分の違法事由として主張できるかという問題です。原則として否定され、二つの処分が同一の目的のための一連の手続を構成し、先行処分を争う手続的保障が十分でない場合に例外的に認められます。

職権取消しと撤回

職権取消しとは、行政行為の成立時からあった瑕疵を理由に、行政庁が自らその効力を失わせることです。撤回とは、成立時には適法だった行政行為を、その後の事情の変化を理由に、行政庁が将来に向かって失効させることです。

行政行為(処分)の意義

行政行為とは、行政庁が法令に基づき、優越的な意思の発動として、国民に対し具体的に権利義務を形成し又はその範囲を確定する行為です。講学上の概念で、取消訴訟の対象となる「処分」(行政事件訴訟法3条2項)とほぼ重なります。

無効と取消しの区別(重大明白説)

無効と取消しの区別とは、瑕疵のある行政行為のうち、瑕疵が重大でかつ明白なものは初めから無効となり、それ以外は権限ある機関が取り消すまで有効なものとして通用するという区別です。無効の行政行為には公定力も不可争力もありません。

附款

附款とは、行政行為の主たる内容に付加される従たる定めで、行政行為の効果を制限したり、相手方に特別の義務を課したりするものです。条件・期限・負担・撤回権の留保・法律効果の一部除外の五つが挙げられます。

瑕疵の治癒・違法行為の転換

瑕疵の治癒・違法行為の転換とは、瑕疵のある行政行為の効力を取り消さずに維持するための二つの考え方です。瑕疵の治癒とは、行政行為に瑕疵があっても、その後に要件が備わったことや瑕疵が実質的な不利益をもたらさないことを理由に、処分を適法なものとして維持する考え方です。違法行為の転換とは、ある行政行為としては違法でも、別の行政行為としてなら適法な要件を満たしているとして、その別の行為としての効力を認める考え方です。

許可・認可・特許(講学上の分類)

許可・認可・特許とは、行政行為を国民の法的地位に何をするかで分けた講学上の分類です。許可とは法令による一般的な禁止を特定の場合に解除して本来の自由を回復させる行為、認可とは私人の法律行為の効力を補充して完成させる行為、特許とは本来なかった権利や法的地位を新たに設定する行為で、法令上の名称と講学上の分類は一致しません。

行政裁量

5語

行政裁量

行政裁量とは、法律が行政庁に認めた判断の幅です。裁量がある処分について、裁判所は行政庁の判断が枠を外れていないか、すなわち裁量権の範囲をこえ又はその濫用があったかだけを審査します(行政事件訴訟法30条)。

裁量基準

裁量基準とは、行政庁が裁量を行使するときの物差しとして自ら定める基準です。行政手続法は、申請に対する処分についての基準を審査基準、不利益処分についての基準を処分基準と呼び分けており、いずれも法規命令ではなく行政規則です。

裁量権の逸脱・濫用の審査(行訴法30条)

裁量権の逸脱・濫用の審査とは、行政庁に裁量が認められる処分について、裁判所が当不当までは判断せず、裁量権の範囲をこえ又はその濫用があった場合に限って取り消すという審査の枠組みです(行政事件訴訟法30条)。社会観念審査と判断過程審査がその二つの柱です。

時の裁量

時の裁量とは、処分をするかどうかやどの処分を選ぶかではなく、いつ処分をするかについての行政庁の裁量です。申請に対する応答を行政指導のために留保できるか、という形で争われます。

公務員の懲戒処分と分限処分

公務員の懲戒処分とは、職員の義務違反に対する制裁として行う免職・停職・減給・戒告の処分です(国家公務員法82条1項)。分限処分とは、勤務実績が良くない場合や心身の故障がある場合などに公務の能率を維持するために行う措置で、制裁ではありません(同法78条)。

その他の行為形式

12語

行政指導

行政指導とは、行政機関がその任務又は所掌事務の範囲内において一定の行政目的を実現するため、特定の者に一定の作為又は不作為を求める指導、勧告、助言その他の行為であって、処分に当たらないものです。相手方の任意の協力によってのみ実現される働きかけで、法的拘束力はありません。

行政計画

行政計画とは、行政権が一定の公の目的のために目標を設定し、その目標を達成するための手段を総合的に提示するものです。都市計画のように私人を法的に拘束する拘束的計画と、行政内部の指針にとどまる非拘束的計画があります。

行政契約

行政契約とは、行政主体が当事者となる契約で、相手方の同意に基づく非権力的な行為形式です。公定力も自力執行力もなく、行政手続法には行政契約の定義も手続規定も置かれていません。

行政上の強制執行

行政上の強制執行とは、行政上の義務が履行されないときに、行政が裁判所の力を借りずに自らその内容を実現する仕組みです。代執行・執行罰・直接強制・強制徴収の四つがあり、一般法があるのは代執行だけです。

即時強制と行政調査

即時強制とは、義務を命じていては目的を達せられない緊急の場面で、行政が義務を課すことなく直接に人の身体や財産へ実力を加える作用です。行政調査とは、処分や立法の前提となる情報を集める作用で、罰則の裏づけがある権力的なものには法律の根拠が要ります。

行政調査の他目的利用と調査の瑕疵

行政調査の他目的利用と調査の瑕疵とは、ある行政目的で集めた情報を犯罪捜査など別の目的に使ってよいか、また違法な調査で得た資料に基づく処分が効力を失うかという問題です。調査権限を犯罪捜査の手段として行使することは許されませんが、調査の違法が直ちに処分の違法になるわけではありません。

行政上の制裁・公表

行政上の制裁・公表とは、義務違反者の氏名や違反の事実などを行政が広く知らせることで、間接的に義務の履行を確保する仕組みです。国民に危険を知らせる情報提供としての公表と、違反者に不利益を与える制裁としての公表を区別します。

秩序罰・行政刑罰・反則金・加算税・課徴金

秩序罰・行政刑罰・反則金・加算税・課徴金とは、行政上の義務違反に対して科される制裁の呼び名で、刑罰であるものが行政刑罰、刑罰でない金銭的負担が秩序罰・反則金・加算税・課徴金です。刑罰かどうかで、適用される法律も、科す主体と手続も、争い方も変わります。

建築確認と検査済証

建築確認とは、一定の建築物について、その計画が建築基準関係規定に適合するかどうかを建築主事又は指定確認検査機関が審査し、適合すると認めて確認済証を交付する行為です(建築基準法6条、6条の2)。検査済証とは、工事完了後の完了検査で計画どおり適合していると認められたときに交付される証書です(7条)。

開発許可

開発許可とは、主として建築物の建築又は特定工作物の建設の用に供する目的で行う土地の区画形質の変更について、都道府県知事等が与える許可です(都市計画法29条1項)。無秩序な市街化を防ぎ、道路や排水施設を備えた良好な宅地を確保するための制度です。

土地区画整理事業

土地区画整理事業とは、道路や公園を整備しながら宅地の区画形質を整えるために、従前の宅地に代わる土地を定めてそこへ権利を移す事業です。事業計画の決定、仮換地の指定、換地処分の順に進みます。

行政財産と普通財産

行政財産と普通財産とは、公有財産を用途で分けた区別で、公用又は公共用に供される財産が行政財産、それ以外が普通財産です。行政財産は原則として貸付け・譲渡ができず、第三者の使用は目的外使用の許可という行政処分によりますが、普通財産の貸付けや売払いは私法上の契約です。

行政手続

10語

理由提示

理由提示とは、行政庁が不利益処分をするとき、また申請を拒否する処分をするときに、どの事実にどの法規を当てはめてその処分をしたのかを、名あて人に示すことです。不利益処分では処分と同時に理由を示すのが原則です。

申請と届出

申請とは、法令に基づき、行政庁の許可・認可・免許その他の自己に対し何らかの利益を付与する処分を求める行為であって、行政庁が諾否の応答をすべきこととされているものです(行政手続法2条3号)。届出とは、行政庁に一定の事項を通知する行為で、法令により直接にその通知が義務付けられているもののうち申請に当たらないものです(2条7号)。

不利益処分

不利益処分とは、行政庁が法令に基づき、特定の者を名あて人として、直接に、これに義務を課し、又はその権利を制限する処分です(行政手続法2条4号)。申請により求められた許認可等を拒否する処分は、不利益処分に含まれません。

手続の瑕疵と処分の効力

手続の瑕疵と処分の効力とは、処分の内容が実体法上は正しくても、法律が定めた手続に違反があったときに、その処分が取り消されるかという問題です。理由提示の不備、聴聞の欠缺、諮問手続の瑕疵が典型です。

行政指導の中止等の求め・処分等の求め

行政指導の中止等の求め・処分等の求めとは、平成26年改正で行政手続法に加わった2つの申出の制度です。中止等の求めは、法令違反の是正を求める行政指導を受けた者が、その指導が法律の要件に適合しないと思うときに、指導をした行政機関へ中止その他必要な措置を申し出る制度で(36条の2)、処分等の求めは、法令に違反する事実があるのに是正のための処分や行政指導がされていないと思うときに、何人でも権限のある行政庁や行政機関へ処分や行政指導をすることを申し出る制度です(36条の3)。

行政手続法の適用除外

行政手続法の適用除外とは、処分・行政指導・届出・命令等の手続の一般法である行政手続法の規定を、その手続になじまない領域には及ぼさないとする仕組みです(3条・4条)。除外された領域は、個別法の定める手続や地方公共団体の行政手続条例が規律します。

聴聞と弁明の機会の付与

聴聞と弁明の機会の付与とは、行政庁が不利益処分をしようとするときに、名あて人となるべき者にあらかじめ意見を述べさせる手続です。許認可等の取消しのような重い処分では聴聞を、それ以外の処分では弁明の機会の付与を執ります(行政手続法13条1項)。

意見公募手続(パブリックコメント)

意見公募手続とは、命令等制定機関が命令等を定めようとするときに、案と関連資料をあらかじめ公示し、30日以上の意見提出期間を定めて広く一般の意見を求める手続です(行政手続法39条)。定めた後は、提出された意見を考慮した結果と理由を命令等の公布と同時期に公示します。

情報公開請求と不開示決定

情報公開請求とは、何人も、行政機関の長に対し、その行政機関の保有する行政文書の開示を求めることができる制度です(情報公開法3条)。不開示決定とは、請求された行政文書に5条各号の不開示情報が記録されているときなどに、行政機関の長が開示しない旨を決める処分です。

保有個人情報の開示・訂正・利用停止請求

保有個人情報の開示・訂正・利用停止請求とは、本人が、行政機関等の保有する自己を本人とする保有個人情報について、開示(個人情報保護法76条)、訂正(90条)、利用停止(98条)を求めることができる制度です。誰でも請求できる情報公開法と違い、請求できるのは本人と代理人に限られます。

行政不服審査

6語

不服申立ての種類(審査請求・再調査の請求・再審査請求)

不服申立ての種類とは、行政庁の処分又は不作為に不服がある者が行政機関に救済を求める手続の区分で、審査請求・再調査の請求・再審査請求の三つがあります。原則は審査請求で、再調査の請求と再審査請求は法律に定めがある場合に限られます(行政不服審査法2条〜6条)。

不服申立適格・審査請求期間

不服申立適格・審査請求期間とは、審査請求ができる者の資格と、審査請求ができる期限のことです。適格があるのは処分に不服がある者、すなわち処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者で、期間は処分があったことを知った日の翌日から3か月、処分があった日の翌日から1年です(行政不服審査法18条)。

審理員と行政不服審査会

審理員と行政不服審査会とは、審査請求の審理を公正にするために平成26年全部改正で導入された二つの仕組みです。審理員は処分に関与していない職員として審査請求の審理手続を行う者で(行政不服審査法9条)、行政不服審査会は審査庁が裁決の前に諮問する第三者機関です(43条)。

裁決と決定

裁決と決定とは、不服申立てに対する行政庁の答えのことで、審査請求・再審査請求に対する審査庁の応答が裁決、再調査の請求に対する処分庁の応答が決定です。いずれも却下・棄却・認容に分かれ、認容では処分の取消し・変更をします(行政不服審査法45条〜49条)。

不服申立てと取消訴訟の関係(自由選択主義・前置)

不服申立てと取消訴訟の関係とは、処分を争う人が審査請求と取消訴訟のどちらを先にするかについての決まりです。処分の取消しの訴えは、審査請求ができる場合でも直ちに提起できるのが原則で(行政事件訴訟法8条1項本文)、法律が審査請求前置を定めるときは裁決を経る必要がありますが、8条2項の例外があります。

教示

教示とは、行政庁が処分を書面でするときに、不服申立てができる旨・不服申立てをすべき行政庁・不服申立てができる期間を相手方に書面で知らせる義務です(行政不服審査法82条)。取消訴訟についても、被告とすべき者と出訴期間を知らせる同様の教示が要ります(行政事件訴訟法46条)。

取消訴訟の訴訟要件

6語

処分性

処分性とは、ある行為が取消訴訟の対象となる「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」(行政事件訴訟法3条2項)に当たることです。

原告適格

原告適格とは、処分の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者(行政事件訴訟法9条1項)として、取消訴訟を起こせる資格です。

訴えの利益

訴えの利益とは、処分を取り消すことによって現実に回復される法律上の利益があることです。処分の効果が期間の経過などで消えた後も、なお取消しによって回復すべき法律上の利益があれば訴えの利益は残ります(行政事件訴訟法9条1項括弧書)。

被告適格・管轄・出訴期間

被告適格・管轄・出訴期間とは、取消訴訟を誰に対し(行政事件訴訟法11条)、どの裁判所に(12条)、いつまでに(14条)起こすかを定める入口の三つの要件です。

取消訴訟の排他的管轄

取消訴訟の排他的管轄とは、違法な行政処分の効力を否定するには、行政事件訴訟法が定める取消訴訟(3条2項)によらなければならないという建前です。処分が違法でも権限ある機関が取り消すまでは有効なものとして扱われる公定力は、この排他的管轄の反射的効果として説明されます。

訴えの変更・請求の併合・被告の変更

訴えの変更・請求の併合・被告の変更とは、取消訴訟に関連する請求を一つの手続にまとめ、途中で訴えの形を組み替えるための仕組みです。行政事件訴訟法13条の関連請求を軸に、併合提起(16条・19条)・訴えの変更(21条)・被告の変更(15条)が並びます。

取消訴訟の審理・判決

7語

違法判断の基準時

違法判断の基準時とは、取消訴訟で処分が違法かどうかを、いつの時点の法令と事実に照らして判断するかという問題です。判例は取消訴訟では処分時を基準とし、義務付け訴訟・不作為の違法確認訴訟・差止訴訟では判決時(事実審の口頭弁論終結時)が基準になります。

理由の追加・差替え

理由の追加・差替えとは、取消訴訟で被告が、処分の際に示した理由とは別の理由を持ち出して処分の適法性を主張することです。判例は処分の同一性が保たれる限りこれを認めますが、別の懲戒事由への差替えのように処分の同一性を失わせるものは許されません。

取消訴訟における主張制限

取消訴訟における主張制限とは、取消訴訟の原告は自己の法律上の利益に関係のない違法を理由として取消しを求めることができないという規律です(行政事件訴訟法10条1項)。処分の取消訴訟と裁決の取消訴訟の双方を提起できる場合に、裁決の取消訴訟では処分の違法を主張できないという規律(同条2項、原処分主義)も、主張制限と呼びます。

取消訴訟の立証責任

取消訴訟の立証責任とは、取消訴訟で処分の適法性を基礎づける事実を原告と被告のどちらが主張立証するかという問題です。明文の規定はなく、法律要件分類説を出発点に、処分の性質や資料の偏在を考えて個別に決めます。

判決の効力(既判力・拘束力・第三者効)

判決の効力とは、取消訴訟の判決が生じさせる三つの効力で、訴訟物について当事者と裁判所を縛る既判力、処分をした行政庁その他の関係行政庁を判決の趣旨に従わせる拘束力(行政事件訴訟法33条)、処分の効力を初めから失わせて第三者にも及ぶ形成力・第三者効(32条)をいいます。既判力は認容判決にも棄却判決にも生じますが、拘束力と第三者効は処分を取り消す判決にだけ生じます。

事情判決

事情判決とは、処分が違法であっても、これを取り消すと公の利益に著しい障害を生ずるときに、判決の主文で処分が違法であることを宣言したうえで、取消しの請求を棄却する判決です(行政事件訴訟法31条1項)。

執行停止

執行停止とは、取消訴訟などを起こしても処分の効力・執行・手続の続行は止まらないという執行不停止原則の例外として、裁判所が申立てにより決定で、処分の効力、処分の執行又は手続の続行を暫定的に止める制度です(行政事件訴訟法25条)。

その他の抗告訴訟・当事者訴訟

9語

無効等確認訴訟

無効等確認訴訟とは、処分若しくは裁決の存否又はその効力の有無の確認を求める抗告訴訟です(行政事件訴訟法3条4項)。取消訴訟の出訴期間に縛られない代わりに、提起できる者は36条で、当該処分に続く処分により損害を受けるおそれのある者と、現在の法律関係に関する訴えによって目的を達することができない者に絞られています。

不作為の違法確認訴訟

不作為の違法確認訴訟とは、行政庁が法令に基づく申請に対し相当の期間内に何らかの処分又は裁決をすべきであるのにこれをしないことについて、その違法の確認を求める抗告訴訟です(行政事件訴訟法3条5項)。

義務付け訴訟(申請型・非申請型)

義務付け訴訟とは、行政庁が一定の処分又は裁決をすべき旨を命ずることを求める抗告訴訟です(行政事件訴訟法3条6項)。法令に基づく申請をした者がその申請に対する処分を求める申請型と、申請を前提としない非申請型に分かれます。

差止訴訟・仮の義務付け・仮の差止め

差止訴訟・仮の義務付け・仮の差止めとは、行政庁が一定の処分又は裁決をすべきでないにかかわらずこれがされようとしている場合に、その処分又は裁決をしてはならない旨を命ずることを求める抗告訴訟である差止訴訟と、義務付けの訴え又は差止めの訴えの本案判決を待てないときに裁判所が決定で仮に処分を命じ又は禁ずる仮の義務付け・仮の差止めをあわせた呼び名です(行政事件訴訟法3条7項・37条の4・37条の5)。

当事者訴訟(形式的・実質的)

当事者訴訟とは、対等な当事者の間で公法上の法律関係を争う訴訟です(行政事件訴訟法4条)。法令が処分の当事者の一方を被告と定める形式的当事者訴訟と、公法上の法律関係に関する確認の訴えその他の訴訟である実質的当事者訴訟に分かれます。

争点訴訟(行訴法45条)と当事者訴訟の振分け

争点訴訟とは、私法上の法律関係に関する訴訟で、処分若しくは裁決の存否又はその効力の有無が前提問題として争われているものです(行政事件訴訟法45条)。訴訟自体は民事訴訟ですが、行政庁の訴訟参加などの規定が準用されます。

民衆訴訟・機関訴訟(住民訴訟・選挙訴訟)

民衆訴訟・機関訴訟とは、国又は公共団体の機関の法規に適合しない行為の是正を求める訴訟で選挙人たる資格その他自己の法律上の利益にかかわらない資格で提起する民衆訴訟と、国又は公共団体の機関相互間における権限の存否又はその行使に関する紛争についての訴訟である機関訴訟をあわせた呼び名で、二つをまとめて客観訴訟といいます(行政事件訴訟法5条・6条)。いずれも法律に定める場合において、法律に定める者に限り提起することができます(同法42条)。

住民訴訟(住民監査請求)

住民訴訟とは、地方公共団体の財務会計上の行為が違法であるとして、住民監査請求を経た住民が裁判所にその是正を求める民衆訴訟です(地方自治法242条の2)。自分の権利利益が害されたかどうかを問わず、住民であれば一人でも提起できます。

住民訴訟における原因行為の違法と財務会計行為の違法

住民訴訟における原因行為の違法と財務会計行為の違法とは、住民訴訟で争えるのが支出命令などの財務会計上の行為の違法に限られるため、その原因となった先行行為の違法がどこまで財務会計行為の違法につながるかという問題です。先行行為が違法でも、財務会計行為が当然に違法になるわけではありません。

国家賠償・損失補償

11語

国賠法1条「公権力の行使」

国賠法1条「公権力の行使」とは、国家賠償法1条1項が賠償責任の対象とする国又は公共団体の作用の範囲を画す要件です。判例と通説は、純粋な私経済作用と2条の対象となる公の営造物の設置管理作用を除く一切の作用を含むとする広義説に立ちます。

国賠法1条の違法性(職務行為基準説)

国賠法1条の違法性とは、国家賠償法1条1項にいう「違法」の有無を、処分が客観的に法規に反するかではなく、公務員が職務上通常尽くすべき注意義務を尽くしたかで判断する考え方で、判例のこの立場を職務行為基準説といいます。取消訴訟で処分が違法とされることと、国家賠償法上の違法があることとは一致しません。

国賠法1条「その職務を行うについて」(外形標準説)

国賠法1条「その職務を行うについて」とは、国家賠償法1条1項が求める職務関連性の要件です。判例は、公務員が主観的に権限行使の意思をもっていなくても、客観的に職務執行の外形を備えていれば足りるとする外形標準説に立ちます。

国賠法1条の法的性質(代位責任説)と加害公務員の特定

国賠法1条の法的性質とは、1条の責任が加害公務員個人の責任を国・公共団体が肩代わりするものか(代位責任説)、国・公共団体自身の責任か(自己責任説)という争いです。判例は代位責任説を前提にしつつ、加害公務員を特定できなくても一定の条件のもとで責任を認めます。

規制権限の不行使

規制権限の不行使とは、国民の生命・健康や財産を守るために法令が行政庁に与えた監督・規制の権限を、行政庁が行使しなかったことをいい、その不行使が許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠くと認められるときに、被害を受けた者との関係で国家賠償法1条1項の適用上違法となります。

国賠法2条「公の営造物の設置管理の瑕疵」

国賠法2条「公の営造物の設置管理の瑕疵」とは、道路・河川その他の公の営造物の設置又は管理に瑕疵があったために他人に損害が生じたとき、国又は公共団体がその損害を賠償する責任です(国家賠償法2条1項)。設置又は管理の瑕疵とは営造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいい、公務員の過失を要しない無過失責任とされています。

求償・賠償責任者(国賠法3条)

求償・賠償責任者とは、公務員の選任監督者や営造物の設置管理者と、俸給・費用の負担者が異なるときに、その双方が賠償責任を負い、被害者はいずれにも請求できるという国家賠償法3条1項の仕組みと、賠償した者が内部関係で最終的な負担者や加害公務員に清算を求める求償の仕組みです。

国賠法4条〜6条(民法の適用・他の法律・相互保証主義)

国賠法4条〜6条とは、国家賠償法のうち、1条・2条の賠償責任と民法・他の法律・外国人との関係を整える三つの規定です。4条は前三条に定めのない事項について民法の規定によるとし、5条は他の法律に別段の定めがあるときはその定めによるとし、6条は外国人が被害者である場合には相互の保証があるときに限り適用するとしています。

損失補償の要否(特別の犠牲)

損失補償の要否とは、適法な公権力の行使によって財産に加えられた損失のうち、どれが憲法29条3項の「正当な補償」を要する特別の犠牲に当たるかという問題です。財産権に内在する制約として受忍すべき範囲にとどまる損失には補償は要りません。

補償の内容(完全補償・相当補償)

補償の内容とは、憲法29条3項の正当な補償として何をどこまで補償するかという問題で、完全補償とは収用の前後を通じて被収用者の財産価値を等しくさせる補償を、相当補償とはその当時の経済状態において合理的に算出された相当な額の補償をいいます。

国家補償の谷間(予防接種禍)

国家補償の谷間とは、適法で過失もない公権力の行使によって生命・身体に被害が生じ、違法と故意過失を要件とする国家賠償にも、財産上の損失を前提とする損失補償にも乗らない領域です。予防接種の副反応被害が代表例です。

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