不作為の違法確認訴訟とは
ふさくいのいほうかくにんそしょう
不作為の違法確認訴訟とは、行政庁が法令に基づく申請に対し相当の期間内に何らかの処分又は裁決をすべきであるのにこれをしないことについて、その違法の確認を求める抗告訴訟です(行政事件訴訟法3条5項)。
飲食店の営業許可を申請したのに、半年たっても許可も不許可も返ってこないとします。不許可なら取消訴訟で争えますが、返事がないままでは争う相手の処分がありません。そこで、行政庁が動かないこと自体を違法だと裁判所に確認してもらう訴訟が用意されています。申請をした人には応答を受ける権利があり、行政庁には応答する義務があるので、返事をしないまま時間だけが過ぎる状態を放っておけないからです。
申請をしたこと、相当の期間が過ぎたこと、応答がないことの三つがそろって初めて訴えられ、訴訟の前に審査請求という道もあります
不作為の違法確認訴訟は、行政庁が法令に基づく申請に対し相当の期間内に何らかの処分又は裁決をすべきであるのにこれをしないことについて、その違法の確認を求める訴訟です(行政事件訴訟法3条5項)。行政庁が動かないまま時間だけが過ぎる場面の救済として置かれました。訴訟要件は37条に集約され、申請をしたこと、相当の期間が経過したこと、何らの処分もされていないことの三つを満たす必要があります。行政庁が応答しないときの救済は訴訟だけではありません。行政不服審査法3条は、法令に基づく申請に対して相当の期間内に何らの処分もされない場合に、不作為についての審査請求を認めています。訴訟と審査請求のどちらを選ぶかは自由で、不服申立てと取消訴訟の関係と同じ自由選択主義が働きます。もっとも不作為の審査請求には審査請求期間の定めがなく、不作為が続く限りいつでもできる点が処分についての審査請求と異なります。行政手続法の側では、6条が標準処理期間の設定と公表を、7条が到達した申請の審査開始義務を定めており、申請を受け取らずに返す、いわゆる受理拒否は許されません。訴訟で相当の期間の経過を主張するときは、これらの規定が行政庁の応答義務を裏づける材料になります。
- 申請をしたこと処分又は裁決についての申請をした者に限り提起できる(37条)。法令に基づく申請権が前提
- 相当の期間の経過申請から社会通念上相当と認められる期間が過ぎていること
- 応答がないこと何らの処分又は裁決もされていないこと。拒否処分がされれば不作為ではなくなる
提起できるのは申請をした者だけで、第三者は使えません
37条の「申請をした者」は、法令に基づく申請をした本人を指します。申請権のない第三者が行政庁を動かしたいときは、非申請型の義務付け訴訟によるほかありません。したがって「行政庁が一定の処分をすべきであるにかかわらずこれがされないときは、原告が当該処分についての申請をしたか否かにかかわらず、適法に不作為の違法確認の訴えを提起することができる」という肢は誤りです。「建築基準法令に違反した建築物の敷地の隣地所有者は、当該建築物が倒壊する危険があるのに特定行政庁が違反是正措置としての処分をしないのは違法であるとして、不作為の違法確認の訴えを適法に提起することができる」という肢も、隣地所有者に申請権がないので誤りです。建築基準法9条の是正命令は特定行政庁が職権で行うもので、隣地所有者に命令を求める申請権を与えた規定はないからです。原告適格の絞り方も取消訴訟とは違います。38条4項が準用するのは8条と10条2項だけで、9条2項は準用されていません。ですから「法律上の利益の有無の判断については、取消訴訟の原告適格に関する行政事件訴訟法第9条第2項の規定が準用されます」という肢は誤りです。
拒否処分がされた時点で、争う相手は不作為ではなく処分になります
不作為とは「何らの処分もされていない」状態です。申請が拒否されれば、行政庁は応答したことになるので、不作為の違法確認の訴えは訴えの利益を失います。「Aは、認可を拒否する処分を受けた場合、不作為の違法確認の訴えを提起して同処分の違法を主張することができる」という肢は誤りです。この場面で争うべきは拒否処分の取消訴訟と申請型義務付け訴訟の併合です。逆に、応答がない段階では拒否処分が存在しないので、取消訴訟は使えません。ただし義務付け訴訟まで使えないわけではありません。「申請型義務付け訴訟は、申請拒否処分がされたことが前提となるので、申請に対する応答がない段階では提起することができず、その場合には不作為の違法確認訴訟によることとなります」という肢は、37条の3第1項1号が応答のない場合の申請型義務付け訴訟を認めているので誤りです。
相当の期間は、処分の性質と行政庁側の事情から判断されます
相当の期間は一律の日数ではなく、処分に必要な調査や判断の難度、同種事案の処理期間から測ります。行政手続法6条の標準処理期間は目安になりますが、それを超えれば直ちに違法になるわけでもありません。最判昭和57年4月23日(申請に対する応答の留保)は、特殊車両の通行認定が裁量の余地のない確認的行為であることを前提にしながら、周辺住民との紛争を解決するために行政指導を続けて認定を留保したことについて、社会通念上合理的な期間内であれば直ちに違法とはいえないとしました。応答を留保する理由が申請に対する審査と無関係なものであれば、留保は相当の期間を超えた違法な不作為になります。「公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法又は公害健康被害の補償等に関する法律に基づき、水俣病と認定すべき旨の申請を知事に行ったものの、何らの応答処分を相当期間内に受けなかったという場合、申請者としては、不作為の違法確認の訴えを適法に提起することができる」という肢は正しいです。水俣病の認定は申請者が補償を受ける地位を決める処分で、その申請は法令に基づく申請だからです。水俣病の認定については、最判平成25年4月16日(水俣病の認定と裁判所の審査)が、認定は行政庁の裁量ではなく裁判所が自ら判断すべき事柄だとしています。長期間の放置が続く事案では、審査に必要な資料が揃っているか、他の申請より不当に後回しにされていないかを具体的に拾って、相当の期間を超えたことを基礎づけます。
違法性の判断は事実審の口頭弁論終結時が基準で、国家賠償の違法とは別物です
取消訴訟では処分時が基準ですが、不作為の違法確認は現に応答がない状態を問題にするので、判断の基準時は口頭弁論終結時になります。「不作為の違法確認の訴えにおける当該不作為の違法性の判断は、事実審の口頭弁論終結時を基準にすべきである」という肢は正しいです。訴訟の途中で応答があれば、訴えの利益は失われます。なお、ここでいう違法と国家賠償法上の違法は同じではありません。不作為の違法確認で確認されるのは、申請に応答すべき行政手続上の義務に違反しているという状態です。これに対し国家賠償で問われるのは、申請者の利益に向けられた作為義務に違反したかどうかです。最判平成3年4月26日は、水俣病認定申請の放置について不作為の違法確認の確定判決があっても、それが直ちに国家賠償法上の違法を確定するものではないとしました。「水俣病患者認定申請に対する応答処分をしない行政庁の不作為の違法確認を求める訴訟における違法と、当該認定申請に対する行政庁の応答処分の遅延による精神的損害につき賠償を求める国家賠償請求訴訟における違法は同じであるから、前者の訴訟に係る認容判決の既判力は、後者の訴訟の当事者及び裁判所に及ぶとされている」という肢は誤りです。両訴訟は訴訟物が違うので、既判力が及ぶこともありません。
認容判決は応答を義務づけるだけで、中身までは命じません
認容判決が確定すると、38条1項が準用する33条の拘束力により、行政庁は何らかの応答をする義務を負います。しかし許可か拒否かまでは決まりません。求める処分そのものを得たいなら、申請型義務付け訴訟を併合提起する必要があります(37条の3第3項1号)。仮の救済も同じ構造で、仮の義務付けは義務付けの訴えの提起があった場合にしか申し立てられません(37条の5第1項)。「当該処分につき仮の義務付けの申立てをするには、併せて不作為の違法確認の訴えを提起するだけでは足りず、更に義務付けの訴えを提起する必要がある」という肢は正しいです。実務でも、不作為の違法確認だけを単独で立てることは少なく、義務付け訴訟の併合が基本形です。併合された両訴えの弁論と裁判は分離しないでしなければならず(37条の3第4項)、義務付けの請求に理由があれば、不作為の違法確認の請求にも当然に理由があることになります。
行政事件訴訟法 第37条
不作為の違法確認の訴えは、処分又は裁決についての申請をした者に限り、提起することができる。
論文ではこう使う
論文では、申請から応答がないという事実を拾ったら、まず申請権の有無を根拠法令の文言から確認します。申請権があれば37条の原告適格を満たすと書き、標準処理期間と処分の性質を並べて相当の期間の経過を当てはめます。そのうえで、依頼者が本当に欲しいのは応答ではなく処分だと指摘し、37条の3第1項1号の申請型義務付け訴訟を併合提起すること、緊急なら仮の義務付けも申し立てることを訴訟選択として示します。申請権がない第三者の事案なら、不作為の違法確認は使えないと切り、非申請型義務付け訴訟に進みます。
この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。