不服申立適格・審査請求期間とは
ふふくもうしたててきかく・しんさせいきゅうきかん
不服申立適格・審査請求期間とは、審査請求ができる者の資格と、審査請求ができる期限のことです。適格があるのは処分に不服がある者、すなわち処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者で、期間は処分があったことを知った日の翌日から3か月、処分があった日の翌日から1年です(行政不服審査法18条)。
隣の工場に営業許可が出て、騒音で困っている人が審査請求をしたいと考えたとします。許可の名あて人ではない人が申し立てられるのか、そして処分からどれだけの期間の中で申し立てればよいのかが、まず問題になります。不服申立ては誰でもいつまでも起こせるものではなく、処分に法律上の利益を持つ人が、決まった期間の中で申し立てる仕組みです。処分の効力を早く確定させて行政を安定させる必要と、困っている人を救う必要とを、この二つの決まりで釣り合わせているからです。
「処分に不服がある者」は取消訴訟の原告適格と同じ基準で判断します
不服申立適格とは、審査請求をすることができる者の資格をいいます。行政不服審査法2条は「行政庁の処分に不服がある者」と書くだけですが、判例は、単に不服であるという主観的な不満では足りず、当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者をいうと解しています。最判昭和53年3月14日(主婦連ジュース事件)は、不服申立てができる者について、「当該処分について不服申立をする法律上の利益がある者、すなわち、当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者をいう」とし、一般消費者としての利益は公益の保護を通じて受ける反射的な利益にとどまるとして、公正競争規約の認定に対する不服申立適格を否定しました。この定式は行政事件訴訟法9条1項の「法律上の利益を有する者」と同じもので、行政不服審査でも訴訟でも判断枠組みは共通です。処分の名あて人以外の第三者が申し立てる場合に、根拠法令が当該利益を一般的公益に解消せず個別的利益としても保護しているかを、法の趣旨・目的、考慮されるべき利益の内容・性質から読み取る作業は、原告適格の項目で扱ったとおりです。
処分の名あて人でなくても、処分に法的な地位を左右される者には適格があります
第三者に適格が認められるかは、処分の効果がその者の法的地位にどう及ぶかで決まります。最判平成18年1月19日(第二次納税義務者による不服申立て)は、主たる納税者に対する課税処分について、第二次納税義務者がその告知を受ける立場にあることを踏まえて不服申立適格を認めました。主たる納税者の税額がそのまま第二次納税義務者の納付すべき額を決めるので、処分の効果が連鎖して自己の義務に直結する場合には、名あて人でなくても救済の途が開かれるという考え方です。逆に、事業者に対する処分について、一般消費者や単なる競争上の関心を持つ者が申し立てることはできません。もっとも、行政不服審査は違法だけでなく不当も審査の対象とする点で取消訴訟より広く、処分の当不当を争いたい者にとっては審査請求のほうが実効的な場面があります。訴訟と不服申立ての使い分けは不服申立てと取消訴訟の関係の項目で扱います。
期間は3か月と1年の二重で、短いほうが先に満ちれば申立てはできません
審査請求期間は18条が定めます。同条1項の3か月は処分があったことを知った日の翌日から、同条2項の1年は処分があった日の翌日から起算します。両者は別の制限で、知った日から3か月が先に経過すれば、処分の日から1年以内でも申立てはできません。処分を知った本人にはすぐに動いてもらい、知らなかった人についても1年で処分の効力を確定させるためです。審査請求書を郵便や信書便で提出した場合には、送付に要した日数は期間に算入しません(18条3項)。再調査の請求の期間も同じく、知った日の翌日から3か月、処分の日の翌日から1年です(54条)。取消訴訟の出訴期間が知った日から6か月、処分の日から1年である(行政事件訴訟法14条)のと比べると、主観的期間が短い点が違います。なお出訴期間の徒過は取消訴訟の道を閉ざすだけで、国家賠償請求で処分の違法を主張することまで妨げません。国家賠償請求は処分の効力を否定するものではなく、損害の賠償を求めるだけだからです。「処分の取消しの訴えを提起して当該処分の効力を争うことができなくなるとともに,国家賠償請求訴訟を提起して当該処分の違法性を主張することもできなくなる」という肢は誤りです。審査請求をした場合の出訴期間は裁決があったことを知った日から起算し直され、「これに対する裁決があったことを知った日から6か月を経過するまでは,処分があったことを知った日から6か月を経過した後であっても,適法に提起することができる」という肢は正しいです(同条3項)。審査請求の結果を待っている間に出訴期間が過ぎてしまうと、不服申立てを使った人が不利になるからです。期間の枠組みは次のとおりです。
- 主観的期間処分があったことを知った日の翌日から起算して3か月(再調査の請求をしたときは、その決定があったことを知った日の翌日から起算して1か月)
- 客観的期間処分があった日の翌日から起算して1年(再調査の請求についての決定があった日の翌日から起算して1年)
- 例外正当な理由があるときは、いずれの期間も経過後の審査請求が認められる(18条1項ただし書・2項ただし書)
- 不作為不作為が続いている限り申し立てられ、期間の制限はない
起算点は処分を現実に知った時で、告示による処分は告示の日です
「知った日」とは、処分があったことを現実に知った日をいい、知り得たはずの日ではありません。もっとも、処分が個別の通知ではなく告示によって行われる場合には、相手方が不特定多数となるため、告示があった日に処分があったことを知ったものと扱われます。最判平成14年10月24日(処分の告示と不服申立期間の起算点)は、告示により効力を生ずる処分について、告示があった日を起算点としました。一人一人が現実に知った日を基準にすると、同じ処分の効力が人によって確定したりしなかったりして、告示で一律に処分をする意味がなくなるからです。再調査の請求をした場合は、その決定があったことを知った日の翌日から1か月という短い期間になります(18条1項括弧書き)。処分庁がすでに一度見直した後なので、審査請求に踏み切るかは短い期間で決めさせる趣旨です。再調査の請求が前置ではないことは不服申立ての種類の項目のとおりで、「当該処分に不服がある者は、原則として、審査請求をする前に、再調査の請求をしなければならない」という肢は誤りです。
正当な理由があれば、期間経過後の審査請求も認められます
18条1項ただし書と2項ただし書は、正当な理由があるときは期間経過後でも審査請求ができるとします。天災や本人の重い疾病のように客観的に申立てが不可能であった場合のほか、行政庁が誤った教示をしたために期間を徒過した場合も正当な理由に当たり得ます。教示を怠った場合には、処分庁に不服申立書を提出できる仕組みが用意されており(83条)、これらの救済は教示の項目で扱います。正当な理由の有無は、徒過の原因が申立人の責めに帰すべきものかどうかと、その間に処分の効力を確定させる公益上の必要がどの程度あるかを比べて判断されます。取消訴訟の出訴期間に関する正当な理由よりも緩やかに解されるわけではありませんが、審査請求は書面の提出だけで足りる簡易な手続である点が考慮されます。
期間内の申立てかどうかは、裁決で却下するかどうかの分かれ目になります
審査請求が期間を徒過している場合や不服申立適格を欠く場合、審査庁は本案の審理に入らず、裁決で当該審査請求を却下します(45条1項)。要件を満たすが理由がないときは棄却、理由があるときは認容で、この振分けは裁決と決定の項目のとおりです。申し立てる相手方である審査庁は4条が処分庁との関係で定めるもので、独立した第三者機関に限られません。「審査請求は,建築基準法に基づいて設置される建築審査会のような,独立して職権を行使する第三者機関に対して行われる不服申立てを意味する」という肢は誤りです。なお、不作為についての審査請求には期間の制限がなく、「申請に対する不作為についての審査請求に理由があるときは,審査庁は裁決で当該不作為が違法又は不当であることを宣言する」という部分自体は条文どおりです(49条3項)。もっとも、審査庁が処分を命じ又は自ら処分をするのは、申請に対して一定の処分をすべきものと認めるときに限られるので、「審査庁は当該不作為庁に対して申請された処分をすべき旨を命じなければならず」という肢は誤りです。誤って却下された場合の扱いも重要で、審査請求前置が法定されている処分について審査庁が適法な審査請求を誤って却下したときは、請求人は前置の要件を尽くしている以上、直ちに取消訴訟を提起できるとされています。
行政不服審査法 第18条 第1項
処分についての審査請求は、処分があったことを知った日の翌日から起算して三月(当該処分について再調査の請求をしたときは、当該再調査の請求についての決定があったことを知った日の翌日から起算して一月)を経過したときは、することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。
最判昭和53年3月14日(主婦連ジュース事件)
当該処分について不服申立をする法律上の利益がある者、すなわち、当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者をいう。
論文ではこう使う
論文では、審査請求の適法性を、対象、適格、期間の順に点検します。適格については、主婦連ジュース事件の定式を規範として掲げ、当該処分の根拠法令が申立人の主張する利益を個別的利益として保護しているかを、法の趣旨・目的と侵害される利益の内容・性質から検討します。取消訴訟の原告適格と同じ基準であることを明示し、行政事件訴訟法9条2項の考慮事項を援用して論じても差し支えありません。期間については、起算点が現実に知った日であること、告示による処分では告示の日であることを確定し、3か月と1年のいずれが先に満ちるかを当てはめます。徒過している場合は、誤った教示や不教示が原因であれば正当な理由に当たると構成し、救済を導きます。
この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。