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不服申立てと取消訴訟の関係(自由選択主義・前置)とは

ふふくもうしたてととりけしそしょうのかんけい

行政法 行政不服審査

不服申立てと取消訴訟の関係とは、処分を争う人が審査請求と取消訴訟のどちらを先にするかについての決まりです。処分の取消しの訴えは、審査請求ができる場合でも直ちに提起できるのが原則で(行政事件訴訟法8条1項本文)、法律が審査請求前置を定めるときは裁決を経る必要がありますが、8条2項の例外があります。

税務署から更正処分を受けた人が、役所の中で見直してもらう審査請求と、裁判所で争う取消訴訟のどちらを使うか迷ったとします。原則はどちらを先にしてもよく、両方を同時に進めることもできます。行政の救済と裁判の救済のどちらを選ぶかは本人に委ねるのが筋だからです。ただし税金のように件数が多く専門的な分野では、法律が先に審査請求を済ませるよう求めることがあります。その場合でも、裁決が長く出ないときや急ぐ事情があるときまで裁判を待たせるのは酷なので、直ちに訴えられる例外が用意されています。

分かれ道の場面。先生が納税者役(札「更正処分を受けた人」)で「更正処分」の紙を持ち、二本の道の分岐に立っている。左の道の先に役所の建物と看板「審査請求(審査庁)」、右の道の先に裁判所の建物と看板「取消訴訟(裁判所)」。先生の吹き出し「どちら

原則は自由選択で、審査請求中でも取消訴訟を提起できます

処分の取消しの訴えは、当該処分につき法令の規定により審査請求をすることができる場合においても、直ちに提起することを妨げられません(行政事件訴訟法8条1項本文)。これを自由選択主義といい、行政上の救済と裁判上の救済のどちらを選ぶかを国民に委ねる建前です。審査請求をした後でも、裁決を待たずに訴えを起こすことができ、両者が並行して進むこともあります。「当該処分につき審査請求がされているときは,その審査請求に対する裁決があるまで,提起することができない」という肢は誤りです。審査請求がされていることは訴えの提起を妨げる事由ではなく、裁判所は、その審査請求に対する裁決があるまで、審査請求があった日から3か月を経過しても裁決がないときはその期間を経過するまで、訴訟手続を中止することができるにとどまります(8条3項)。例外として、法律に当該処分についての審査請求に対する裁決を経た後でなければ取消しの訴えを提起できない旨の定めがあるときは審査請求前置となります(8条1項ただし書)。かつての異議申立てと審査請求の関係についても自由選択が原則とされたわけではなく、旧法では処分庁に上級行政庁がある場合に異議申立てができるときは、その決定を経た後でなければ審査請求ができませんでした。「法は,自由選択主義を採用しているので,当該処分に不服のある者は,異議申立てについての決定を経た後で審査請求をすることも,直ちに審査請求をすることもできる」という肢は誤りです。平成26年の全部改正で異議申立ては廃止され、不服申立ては審査請求に一元化されたので、この肢の前提自体が現行法では成り立ちません。異議申立てに代わる再調査の請求は審査請求との自由選択ですが、再調査の請求をした場合には原則としてその決定を経てから審査請求をします(行政不服審査法5条2項)。

前置が定められていても、3か月の経過や緊急の必要があれば直ちに出訴でき、執行停止も申し立てられます

8条2項が掲げる三つの場合には、前置の定めがあっても裁決を経ずに出訴できます。1号は審査請求があった日から3か月を経過しても裁決がないときで、2号と3号はこれと並ぶ独立の事由です。したがって1号だけに限る「審査請求があった日から3か月を経過しても裁決がないときに限り,裁決を経ないで,処分の取消しの訴えを適法に提起することができる」という肢は誤りです。前置の趣旨は、行政の自主的な再考の機会を確保し、専門技術的な判断を先に得ることにありますが、審理が遅れている場合や緊急の必要がある場合にまで前置を貫くと、裁判を受ける権利を不当に制約することになるからです。行政不服審査法25条の執行停止と行政事件訴訟法25条の執行停止は別の制度で、要件も異なります。審査請求中は審査庁が職権でも停止できますが、審査庁が処分庁でも上級行政庁でもないときは職権による停止はできません。訴訟の執行停止は、処分の取消しの訴えの提起があった場合に、重大な損害を避けるため緊急の必要があるときに認められます。執行停止の申立ては本案の取消訴訟が適法に係属していることを要件としますが、前置が定められている処分についても、8条2項の要件を満たして裁決を経ずに出訴し、併せて執行停止を求めることは可能です。「審査請求に対する裁決を経ない段階において,処分の取消しの訴えを提起し,併せて当該処分につき執行停止を求める申立てをしても,当該申立てが適法とされる余地はない」という肢は誤りです。緊急の必要があるときは8条2項2号が働く場面そのものだからです。

  • 1号審査請求があった日から3か月を経過しても裁決がないとき
  • 2号処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる著しい損害を避けるため緊急の必要があるとき
  • 3号その他裁決を経ないことにつき正当な理由があるとき
先生が裁判官役(札「裁判所」)で法壇に着く。左に「審査請求書」と「訴状」を両手に持つ男性(札「原告」)の吹き出し「法律で審査請求を先にしろと決まっているが、3か月たっても裁決が出ない。もう訴えたい」。先生の吹き出し「前置の定めがあっても、3

却下裁決でも、裁決庁が誤って却下したのであれば前置を満たします

前置の要件を満たすには、適法な審査請求を経て裁決がされたことが原則として必要です。もっとも、前置の趣旨が行政庁に実体審理の機会を与えることにある以上、適法な審査請求がされたのに裁決庁が誤って却下した場合には、機会は与えられていたといえます。最判昭和36年7月21日(不服申立前置の意義)は、国税局長が適法な審査請求を誤って不適法として却下した事案で、本来行政庁は処分について再審理の機会を与えられていたのだから、却下の決定であっても前置の規定にいう審査の決定に当たるとしました。「適法な審査請求がされたにもかかわらず、裁決庁が誤って審査請求を却下した場合には、裁決庁は実体審理の機会を与えられていたのであるから、審査請求人は、直ちに処分の取消しの訴えを提起することができる」という肢は正しく、その前半の「審査請求が不適法として却下されたときは、審査請求前置を満たしたことにはならない」という部分も正しいです。逆に、不適法な審査請求であったのに裁決庁が誤って棄却の裁決をした場合は、前置が満たされたことにはなりません。最判昭和48年6月21日は、審査請求期間を過ぎた不適法な審査請求について裁決庁が誤って実体審理をして棄却した場合でも、前置の要件を満たしたとは認められないとしました。裁決庁の過誤という偶然の事情で、期間を徒過した人に出訴の途を回復させるのは筋が通らないからです。「不適法な審査請求がされたにもかかわらず,裁決庁が誤って審査請求を棄却する旨の裁決をしたときは,適法に処分の取消しの訴えを提起することができる」という肢は誤りです。判断の基準は、裁決の種類ではなく、申立人の側に適法な申立てがあったかどうかに置かれます。

先生が裁判官役(札「裁判所」)で中央。左に「却下裁決」の紙を持つ男性(札「適法な審査請求をした人」)の吹き出し「適法に審査請求したのに、審査庁が間違えて却下した」。先生の吹き出し「審査庁には実体審理の機会が与えられていたのだから、却下でも前

裁決取消訴訟では裁決固有の瑕疵しか主張できません

行政事件訴訟法10条2項は、処分の取消しの訴えと裁決の取消しの訴えの両方を提起できる場合に、裁決の取消しの訴えでは処分の違法を理由として取消しを求めることができないとします。これを原処分主義といい、同じ違法事由を二つの訴訟で重ねて審理する無駄と判断の食い違いを避け、争点を原処分の取消訴訟に集中させる趣旨です。「原処分の取消訴訟と原処分についての審査請求を棄却した裁決の取消訴訟とを提起することができる場合,裁決の取消訴訟においては,原処分の違法を理由として取消しを求めることができない」という肢は正しいです。原処分の違法は原処分の取消訴訟で、裁決固有の瑕疵は裁決の取消訴訟で、それぞれ主張するという役割分担なので、原処分の取消訴訟で裁決固有の瑕疵を主張することもできません。「原処分の取消訴訟においては、裁決固有の瑕疵を主張することもできる」という肢は誤りです。裁決固有の瑕疵とは、審理手続の違法、審査庁の権限の欠缺、裁決書の理由の不備、不利益変更禁止違反などをいいます。

先生が裁判官役(札「裁判所」)で法壇に着き、法壇の前に二つの箱、左の箱に札「原処分の取消訴訟」、右の箱に札「裁決の取消訴訟」。左の箱には「処分の違法」と書かれた紙、右の箱には「裁決固有の瑕疵」と書かれた紙が入っている。男性(札「原告」)が「

個別法が裁決主義を採るときは、裁決だけを争います

個別の法律が、処分ではなく裁決に対してのみ取消訴訟を認める場合があり、これを裁決主義といいます。電波法や特許法の審決に対する訴えが例で、この場合は裁決の取消訴訟で原処分の違法も主張できます。原処分主義は一般原則にすぎず、個別法がこれと違う定めを置けばそちらが優先するからです。人事院の修正裁決については、最判昭和62年4月21日(懲戒処分と人事院の修正裁決)が、修正裁決は原処分を一体として取り消して新たな処分をするものではなく、原処分の法律効果の内容を一定の限度に変更するにとどまり、原処分は当初から修正どおりの内容で存在していたものとみなされるとしました。したがって修正裁決の後も、争いの対象は修正後の内容で存続する原処分であり、その取消しを求める訴えの利益は失われません。「修正裁決が出された後において懲戒権者の行った懲戒処分の取消しを求める訴えは、訴えの利益を欠くものとして却下されることになる」という肢は誤りです。どちらの制度かは個別法の規定から読み取ります。

審査請求をしたときは、出訴期間が裁決を基準に起算し直されます

処分について審査請求ができる場合に適法な審査請求があったときは、その審査請求をした者についての取消訴訟の出訴期間は、裁決があったことを知った日から6か月、裁決の日から1年で計算されます(行政事件訴訟法14条3項)。処分を知った日から6か月が既に過ぎていても、裁決を基準に改めて起算されるので訴えを起こせます。「これに対する裁決があったことを知った日から6か月を経過するまでは,処分があったことを知った日から6か月を経過した後であっても,適法に提起することができる」という肢は正しいです。審査請求の結果を待っている間に出訴期間が過ぎたとすると、不服申立てを利用した人の出訴の機会を不当に奪うことになるからです。出訴期間の原則と個別法の特則の関係については、最判平成24年11月20日(出訴期間の原則と特則――収用裁決取消訴訟)が、特則が置かれた趣旨に即して起算点を判断しています。期間の計算は不服申立ての側と訴訟の側で別なので、不服申立適格・審査請求期間の項目と並べて整理します。

先生が裁判官役(札「裁判所」)で、机の上の長い横線のカレンダーを指している。線上に札「処分を知った日」、そこから6か月の目盛りの先に薄い札「6か月経過」、その後に札「裁決を知った日」、そこから新しく伸びる矢印の先に札「裁決から6か月」。左に

行政事件訴訟法 第8条 第1項

処分の取消しの訴えは、当該処分につき法令の規定により審査請求をすることができる場合においても、直ちに提起することを妨げない。ただし、法律に当該処分についての審査請求に対する裁決を経た後でなければ処分の取消しの訴えを提起することができない旨の定めがあるときは、この限りでない。

行政事件訴訟法 第10条 第2項

処分の取消しの訴えとその処分についての審査請求を棄却した裁決の取消しの訴えとを提起することができる場合には、裁決の取消しの訴えにおいては、処分の違法を理由として取消しを求めることができない。

論文ではこう使う

論文では、訴訟要件のうち不服申立てとの関係を順に検討します。まず個別法に審査請求前置の定めがあるかを確認し、なければ自由選択主義により直ちに出訴できると述べます。前置がある場合は、8条2項各号の該当性を検討し、3か月の経過、著しい損害を避けるための緊急の必要、正当な理由のいずれかがあれば裁決を待たずに出訴できると構成します。審査請求が却下された事案では、前置の趣旨が行政庁に実体審理の機会を与えることにあるとの規範を立て、適法な請求を誤って却下したのであれば機会は与えられていたとして前置を満たすと当てはめます。裁決取消訴訟を選んだ場合は10条2項の原処分主義から主張できる違法が裁決固有の瑕疵に限られることを述べ、個別法が裁決主義を採る場合との切り分けを示します。最後に出訴期間を14条3項で計算し、仮の救済として執行停止の要件を検討します。

試験ではこう問われる

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