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用語集 / 行政法 / 執行停止

執行停止とは

しっこうていし

行政法 取消訴訟の審理・判決

執行停止とは、取消訴訟などを起こしても処分の効力・執行・手続の続行は止まらないという執行不停止原則の例外として、裁判所が申立てにより決定で、処分の効力、処分の執行又は手続の続行を暫定的に止める制度です(行政事件訴訟法25条)。

営業許可を取り消された店主が裁判を起こしても、判決が出るまでの間、店を開けることはできません。訴えを起こしただけでは処分は止まらないのが原則だからです。しかし判決を待つ間に客が離れて店がつぶれてしまっては、勝っても意味がありません。そこで裁判所は、重大な損害を避けるため緊急の必要があるときに、申立てを受けて判決までの間だけ処分を止めることができます。これが執行停止です。

裁判所の前の場面。先生が裁判官役(札「裁判所」)で「決定 営業許可取消処分の効力を停止する」と書いた紙を掲げる。左に店主の男性(札「原告」)が閉じたシャッターの前に立ち、吹き出し「訴えを起こしただけでは処分は止まらない。判決まで待つと客が離

執行不停止が原則で、執行停止は三つの対象を暫定的に止める例外です

処分の取消しの訴えを起こしても、処分の効力、処分の執行、手続の続行は妨げられません(行政事件訴訟法25条1項)。これが執行不停止原則です。行政の円滑な運営を、訴えの提起だけで止めさせないためです。その例外として、裁判所が申立てにより決定で暫定的に処分を止めるのが執行停止で、停止の対象は三つに分かれます。

  • 効力の停止処分の効力そのものを止める。営業許可取消処分を止めれば許可が生きているものとして扱われる
  • 執行の停止処分の内容を実現する行為を止める。退去強制令書に基づく送還の停止が典型
  • 手続の続行の停止その処分を前提に続く後続手続を止める。課税処分を前提とする滞納処分の停止

本案訴訟が適法に係属していなければ、執行停止は申し立てられません

執行停止は本案訴訟に付随する仮の救済なので、取消訴訟等が提起されていることが前提です。「自己が受けた行政処分に不服がある者は、当該処分の執行により生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要があるときは、当該処分の取消訴訟を提起することなく、裁判所に対し、当該処分の執行停止決定をするよう申し立てることができる」という肢は誤りです。しかも本案の訴えは適法でなければなりません。本案判決による救済を見越して、それまでの損害を防ぐのが執行停止の根拠なので、出訴期間の徒過や原告適格の欠如で本案が不適法なら、仮の救済を認める基礎がないからです。「執行停止の決定をする場合においては、本案の訴えが提起されていなければならないが、当該訴えが適法であるか否かは問題とならない」という肢は誤りです。申立ては本案の係属する裁判所にします(28条)。本案の見通しや損害の程度を最も適切に判断できるのが本案の裁判所だからで、緊急の必要があっても例外はありません。「執行停止の申立ては、処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要があるときは、本案の係属する裁判所以外の裁判所にすることが許される」という肢は誤りです。無効等確認訴訟にも執行停止の規定が準用されます(38条3項)。無効かどうかは本案の審理を経て初めて決まり、それまでは行政庁が有効な処分として扱って執行する危険があるからです。「無効な処分の効力につき執行停止を観念することはできないから、Xは、本件無効確認訴訟を提起した上で、本件建築確認の処分の効力の停止を申し立てることはできない」という肢は誤りです。他方、当事者訴訟には執行停止の規定が準用されていません(41条1項)。執行停止は公権力の行使である処分があることを前提とする制度だからです。「公権力の行使に関わらない公法上の法律関係に関する確認の訴えについて、執行停止に関する行政事件訴訟法の規定は準用されないから、同訴えと併せて執行停止の申立てをすることは不適法である」という肢は正しいです。

重大な損害と緊急の必要が積極要件、公共の福祉と本案の理由が消極要件です

積極要件は、処分等により生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要があることです(25条2項)。平成16年改正前の「回復の困難な損害」から要件が緩和され、回復の困難さは重大性を判断する際の考慮要素になりました。「執行停止決定がされるための要件の一つとして、当該処分、処分の執行又は手続の続行により重大な損害を生ずるおそれがあることが必要であるが、その有無を判断するに当たっては、損害の回復の困難の程度を考慮するものとし、損害の性質及び程度並びに当該処分の内容及び性質をも勘案するものとされている」という肢は正しいです(25条3項)。最決平成19年12月18日(弁護士懲戒処分の執行停止)は、弁護士の業務停止の懲戒処分について、停止期間中に依頼者や顧問先を失い社会的信用が低下する損害は金銭で償えないとして、重大な損害を認めました。他に適当な方法がないことは要件ではありません。「執行停止は、処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる重大な損害を避けるため他に適当な方法がないときに限り、することができる」という肢は誤りです。消極要件は、公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるときと、本案について理由がないとみえるときで、このいずれかに当たれば停止できません(25条4項)。消極要件は執行停止の効果の発生を妨げる事実なので、被申立人である行政庁の側が疎明します。「処分の執行停止の申立人は、当該執行停止が公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれのないことを疎明する責任を負う」という肢は誤りです。仮の差止めと比べると要件の厳しさが違います。「執行停止は、処分の執行等により生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要があることが要件となっているが、仮の差止めは、処分がされることにより生ずる償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があることが要件となっている」という肢は正しいです(37条の5第2項)。仮の差止めは処分の前に行政庁の権限行使を封じる強い救済なので、償うことのできない損害と、本案について理由があるとみえることが積極要件になっています。「執行停止及び仮の差止めのいずれについても、本案について理由があるとみえるときでなければ、裁判所はその決定をすることができない」という肢は誤りです。執行停止では、本案について理由がないとみえないことが消極要件であるにとどまります。

法廷の場面。先生が裁判官役(札「裁判所」)で法壇に座り、左右に二枚の板を掲げる。左の板は「積極要件」の見出しで「重大な損害を避けるため緊急の必要(25条2項)」、その下に小さく「回復の困難の程度・損害の性質と程度・処分の内容と性質を勘案(3

効力の停止は補充的で、手続は疎明と意見聴取に基づく決定で進みます

効力の停止は処分そのものの効力を暫定的に失わせる最も強い介入なので、補充的です。25条2項ただし書は、処分の効力の停止は、処分の執行又は手続の続行の停止によって目的を達することができる場合にはすることができないとします。「処分の効力の停止は、処分の執行又は手続の続行の停止によって目的を達することができる場合には、することができない」という肢は正しいです。補充的なのは効力の停止の側だけです。「処分の執行又は手続の続行の停止は、処分の効力の停止によって目的を達することができる場合には、することができない」という肢は誤りです。手続の面では、執行停止の決定は疎明に基づいてされ、口頭弁論を経ないですることができますが、あらかじめ当事者の意見をきかなければなりません(25条5項・6項)。迅速さが求められる仮の救済なので口頭弁論は必要ではありませんが、口頭弁論を開くことが禁じられているわけでもありません。「執行停止決定は、原則として口頭弁論を経てする必要があり、緊急の必要がある場合に限り、口頭弁論を経ないですることができる」という肢は誤りです。「処分の執行停止の決定は、口頭弁論を経ないでしなければならない」という肢も誤りです。意見聴取は必須なので、「執行停止の申立てについては、裁判所は、一定の場合には、相手方の意見を聴かないで、執行停止を命ずる決定をすることができる」という肢は誤りです。この意見聴取の規定は仮の差止めと仮の義務付けにも準用されています(37条の5第4項)。「執行停止は、あらかじめ当事者の意見をきかなければ、裁判所はその決定をすることができないが、仮の差止めは、あらかじめ当事者の意見をきかなくても、裁判所はその決定をすることができる」という肢は誤りです。執行停止の決定が確定した後に、その理由が消滅し、その他事情が変更したときは、裁判所は相手方の申立てにより決定で執行停止の決定を取り消すことができます(26条1項)。「執行停止決定が確定した後に、事情が変更したときは、裁判所は、相手方の申立てにより、当該決定を取り消すことができる」という肢は正しいです。本案の取消訴訟が訴えの取下げで係属を失ったことも、この事情の変更に当たります。しかし取消しの契機は相手方の申立てだけで、裁判所が職権で取り消すことはできません。「裁判所は、本案である処分の取消訴訟の係属が、執行停止の決定の確定後、訴えの取下げにより消滅したときは、相手方の申立て又は職権により、決定をもって、執行停止の決定を取り消すことができる」という肢は誤りです。停止の決定とこれを取り消す決定は第三者にも効力を有します(32条2項)。仮の差止めと仮の義務付けには32条2項が準用されていないので、「執行停止を認める決定は、第三者に対しても効力を有するが、仮の差止め及び仮の義務付けを認める決定は、いずれも第三者に対しては効力を有しない」という肢は正しいです。執行停止の効力については最判昭和29年6月22日(執行停止の効力)が判断を示しています。公権力の行使に当たる行為には民事保全法の仮処分は使えず(44条)、「民事保全法に規定する仮処分をもっては、裁判所は、処分の執行停止を命ずることはできない」という肢は正しいです。行政事件訴訟法が執行停止・仮の義務付け・仮の差止めという固有の仮の救済を整えている以上、仮処分でその枠組みを潜脱させないためです。

法廷の場面。先生が裁判官役(札「裁判所」)で机の上に三枚の紙を並べる。左から「執行の停止」「手続の続行の停止」「効力の停止」で、「効力の停止」の紙だけ一段奥に置かれ、その上に札「補充的:執行・続行の停止で目的を達せられるならできない(25条

内閣総理大臣の異議があれば裁判所は停止できず、決定への即時抗告に停止の効力はありません

27条は、執行停止の申立てがあった場合に内閣総理大臣が裁判所に異議を述べることができるとし、異議があったときは裁判所は執行停止をすることができず、すでに決定をしているときはこれを取り消さなければならないと定めます。異議には理由を付さなければならず、やむを得ない場合でなければ異議を述べてはならず、次の常会で国会に報告しなければなりません。決定の後でも異議を述べることができ、この規定は仮の差止めと仮の義務付けにも準用されています(37条の5第4項)。「仮の差止めの申立てがあった場合には、内閣総理大臣は、裁判所に対し、異議を述べることができるが、仮の差止めを認める決定があった後には、もはやこれを述べることができない」という肢は誤りです。司法権との緊張が大きい制度で、実際に用いられた例はごくわずかです。執行停止の申立てに対する決定には即時抗告ができますが(25条7項)、その即時抗告は決定の執行を停止する効力を有しません(25条8項)。抗告をするだけで仮の救済が失われては制度の実効性がないからです。執行停止の決定には33条1項の拘束力も準用されるので(33条4項)、抗告審が決定を取り消すまで行政庁は停止に従わなければなりません。「執行停止の申立ての相手方は、申立てを認容する決定に対して即時抗告をすることができるが、当該即時抗告は、その決定の執行を停止する効力を有しないから、相手方が、即時抗告後、その決定が取り消される前に、処分の執行を継続することは許されない」という肢は正しいです。

法廷の場面。先生が裁判官役(札「裁判所」)で「執行停止の決定」を掲げている。右に内閣総理大臣役の男性(札「内閣総理大臣」)が「異議(理由付き)」と書いた紙を差し出し、吹き出し「やむを得ない場合だから異議を述べる。決定の後でも述べられる。次の

審査請求では審査庁が職権でも執行停止をすることができます

行政不服審査法にも執行不停止原則と執行停止の規定があります(25条)。訴訟と違うのは、審査庁が自ら判断して職権で停止できる点です。処分庁の上級行政庁または処分庁である審査庁は、処分庁に対する指揮監督権をもつか自ら処分権限をもつので、必要があると認める場合に、審査請求人の申立てにより又は職権で、処分の効力、処分の執行、手続の続行の全部又は一部の停止その他の措置をとることができます(25条2項)。停止にとどまらないその他の措置までできる点も裁判所と違います。効力の停止が補充的である点は同じです(25条6項)。「処分の取消しを求める審査請求が適法にされた場合において、処分庁の上級行政庁又は処分庁である審査庁は、必要があると認める場合には、当該処分の効力、処分の執行又は手続の続行の全部又は一部の停止その他の措置をとることができる」とし、続けて「ただし、処分の効力の停止は、それ以外の措置によって目的を達することができるときは、することができない」と述べる肢は正しいです。上級行政庁でも処分庁でもない審査庁は、審査請求人の申立てにより、処分庁の意見を聴いた上で執行停止をすることができますが、停止以外の措置はとれません(25条3項)。審査請求人の申立てがあり、処分等により生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要があると認めるときは、公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるときや本案について理由がないとみえるときを除き、審査庁は執行停止をしなければなりません(25条4項)。裁判所の執行停止が申立てによるのに対し、行政不服審査では職権が働き、義務的な執行停止もあるという点が二つの制度の違いです。

役所の審査庁の部屋の場面。先生が審査庁役(札「審査庁(処分庁の上級行政庁)」)で机に座り、自ら「執行停止 職権」と書いた紙に判を押している。左に審査請求人の男性(札「審査請求人」)が「審査請求書」を持ち、吹き出し「申立てをしなくても止めても

行政事件訴訟法 第25条 第2項

処分の取消しの訴えの提起があつた場合において、処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要があるときは、裁判所は、申立てにより、決定をもつて、処分の効力、処分の執行又は手続の続行の全部又は一部の停止をすることができる。

論文ではこう使う

論文では、まず執行不停止原則を述べ、判決を待つ間に生ずる不利益を救う仕組みとして25条を挙げます。要件は積極要件と消極要件に分けて立て、重大な損害の有無は損害の回復の困難の程度を中心に、損害の性質と程度、処分の内容と性質を勘案して判断すると規範を示します。営業停止による顧客の喪失や信用の低下は金銭賠償で回復しがたいとして重大な損害を肯定し、公益への影響と衡量します。停止の対象は、執行や手続の続行の停止で目的を達せられないかを確かめてから効力の停止を選びます。処分前の段階なら仮の差止め、給付を求めるなら仮の義務付けと、仮の救済の類型を訴訟類型に対応させて選択します。

試験ではこう問われる

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