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用語集 / 行政法 / 無効等確認訴訟

無効等確認訴訟とは

むこうとうかくにんそしょう

行政法 その他の抗告訴訟・当事者訴訟

無効等確認訴訟とは、処分若しくは裁決の存否又はその効力の有無の確認を求める抗告訴訟です(行政事件訴訟法3条4項)。取消訴訟の出訴期間に縛られない代わりに、提起できる者は36条で、当該処分に続く処分により損害を受けるおそれのある者と、現在の法律関係に関する訴えによって目的を達することができない者に絞られています。

税務署から届いた課税処分が、実は他人の所得を自分のものと取り違えたものだったと、1年たってから気づいたとします。取消訴訟の出訴期間は過ぎていますが、重大で明白な誤りのある処分をそのまま有効と扱うのは行き過ぎです。そこで法律は、出訴期間に縛られずに処分が無効であることの確認を求める訴えを用意しました。ただし期間の壁を外す代わりに、無効の主張立証は原告が負い、使える人も、続く処分を止めたい人と他の訴えでは目的を達せられない人に絞られています。

裁判所の法廷の場面。先生が裁判官役(札「裁判所」)。左に納税者の男性(札「納税者」)が「課税処分の無効確認」と書かれた訴状を差し出し、その横に「処分から3年」と書かれたカレンダー。男性の吹き出し「他人の所得を私のものと取り違えた課税処分だ。

出訴期間はありませんが、無効原因の主張立証は原告が負います

38条は取消訴訟の規定を選んで準用しますが、出訴期間の14条は準用されていません。したがって処分から何年経っていても無効等確認訴訟は提起できます。その代わり、単に違法というだけでは足りず、最判昭和34年9月22日(農地買収処分無効確認事件)が示したとおり、瑕疵が重大かつ明白であることが必要です。取消訴訟の排他的管轄と出訴期間の外で処分の効力を争わせる以上、その入口を広げすぎるわけにはいかないからです。そして無効原因を主張し立証するのは原告です。同判決は、無効原因は無効を主張する者において具体的事実に基づいて主張すべきだとし、最判昭和42年4月7日(無効確認訴訟における主張・立証責任)も、裁量処分の無効確認を求める訴訟では「その無効確認を求める者において」裁量権の逸脱濫用と瑕疵の重大明白性を主張立証すべきだとしました。ですから「処分の無効確認を求める訴えにおいては、被告において当該処分が適法かつ有効なものであることを具体的事実に基づき主張する必要があり、原告は、当該処分の無効原因の主張として、抽象的に当該処分に重大かつ明白な瑕疵があると主張すれば足りる」という肢は誤りです。出訴期間の壁が外れる分、中身の要求が重くなるという関係にあります。なお明白性については、処分の外形上客観的に誤認が一見して看取できるかで判断するのが判例の基本線ですが、課税処分のように第三者の信頼保護を考える必要が乏しい類型では、明白性を緩めて無効を認めた判断も示されています。

後続処分が予定されている場面は、補充性を問わずに無効確認ができます

36条は無効等確認訴訟を提起できる者を二つに分けて定めています。前段の、当該処分又は裁決に続く処分により損害を受けるおそれのある者による予防的無効確認は、続く処分による損害を先回りして防ぐためのものです。課税処分の無効を確認しておけば滞納処分を止められますし、原子炉設置許可の無効を確認しておけば後続の規制手続を封じられます。後続処分を待って争わせるのでは救済が遅すぎるので、この場面では、現在の法律関係に関する訴えで足りるかどうかを問いません。もんじゅ訴訟(最判平成4年9月22日)は、周辺住民が設置者に対して建設・運転の民事差止訴訟を起こしていても、それは設置許可の無効を前提とする現在の法律関係に関する訴えとはいえず、目的も要件も異なるから、より直截的で適切な争訟方法ともいえないとしました。だから「原子炉の周辺に居住する住民は、同原子炉の設置者に対しその建設又は運転の差止めを求める民事訴訟を提起していたとしても、同原子炉の設置許可処分の無効確認を求める訴えを適法に提起することができる」という肢は正しいです。

  • 予防的無効確認当該処分又は裁決に続く処分により損害を受けるおそれのある者。課税処分に続く滞納処分のように、後続処分が予定されている場面
  • 補充的無効確認その他無効等の確認を求めるにつき法律上の利益を有する者で、処分の存否や効力を前提とする現在の法律関係に関する訴えによって目的を達することができないもの
裁判所の法廷の場面。先生が裁判官役(札「裁判所」)。左に納税者の男性(札「納税者」)が「課税処分」と書かれた紙を持ち、その後ろから税務職員の男性(札「税務署」)が「滞納処分(差押え)」と書かれた札を掲げて迫っている。納税者の吹き出し「課税処

補充性は、現在の法律関係の訴えで目的を達せられるかで決まります

36条後段の補充的無効確認では、現在の法律関係に関する訴え、すなわち争点訴訟や当事者訴訟、民事訴訟で救済できるなら、無効確認は使えません。処分の効力を前提問題として判断すれば足りる紛争に、わざわざ抗告訴訟の枠を開く必要がないからです。ここで判例は、形式的に他の訴えが可能かではなく、紛争の実効的な解決にふさわしいかで判断します。最判昭和62年4月17日(換地処分無効確認訴訟の訴えの利益)は、換地処分が多数の権利者に対して「通常相互に連鎖し関連し合っている」ことを重く見て、個々の所有権確認訴訟では紛争を解決できないとし、登記等の手続が終了した後でも無効確認の道を認めました。ですから「土地改良事業の施行に伴い土地改良区から所有地の換地処分を受けた者は、同処分に基づく登記等の手続が全て終了したときは」照応の原則違反を理由とする無効確認の訴えを提起できないという肢は誤りです。

裁判所の法廷の場面。先生が裁判官役(札「裁判所」)。左に農家風の男性(札「換地処分を受けた者」)が「換地処分の無効確認」と書かれた訴状を持ち、その横に多数の区画が鎖でつながった土地の地図の絵と札「登記は全部終了」。男性の吹き出し「換地が従前

執行停止は準用されますが、事情判決と第三者効は準用されません

準用の有無は38条の条文を数えるしかありません。38条3項は25条から29条までを準用するので、無効等確認訴訟を本案として執行停止を申し立てられます。無効かどうかは本案の審理を経てはじめて決まり、それまでは行政庁が有効な処分として執行を進める現実の危険があるからです。「無効な処分の効力につき執行停止を観念することはできないから、Xは、本件無効確認訴訟を提起した上で、本件建築確認の処分の効力の停止を申し立てることはできない」という肢は誤りです。他方、事情判決の31条は準用対象に入っていません。無効な処分ははじめから効力がなく、判決で効力を維持する余地がないからです。「当該処分が違法かつ無効なものであるものの、これを無効とすることにより公の利益に著しい障害を生ずる場合であって、処分を無効とすることが公共の福祉に適合しないと認めるときは、請求を棄却することができる旨条文上規定されている」という肢は誤りです。取消判決の第三者効を定める32条1項も準用されていません。無効確認判決は処分がはじめから効力をもたないことを確認するだけで、取消判決のような形成力がないので、その効力を第三者に及ぼす規定を要しないからです。「取消判決の第三者効を定めた行政事件訴訟法第32条第1項は、無効確認訴訟にも準用されるから、本件無効確認訴訟につき認容判決がされた場合、Xは、Aに対して、本件建築確認の効力が無効である旨の主張をすることができる」という肢は誤りです。33条1項の拘束力は38条1項で準用されるので、関係行政庁は判決の趣旨に従う義務を負います。

裁判所の法廷の場面。先生が裁判官役(札「裁判所」)で、横に「38条が準用する規定」と題した大きな板を掲げている。板には「25条〜29条 執行停止 ○」「33条1項 拘束力 ○」「31条 事情判決 ×」「32条1項 第三者効 ×」「14条 出

出訴期間内であれば、無効を理由とする取消訴訟も選べます

処分が無効であることと、取消訴訟で争えることは両立します。出訴期間内なら、原告は重大明白な瑕疵を主張して取消訴訟を提起してかまいません。無効な処分にも取り消すべき違法はあるからで、これを無効宣言的取消訴訟と呼びます。逆に期間が過ぎてから提起された取消訴訟でも、主張された瑕疵が無効原因に当たるなら、無効等確認訴訟として扱えないかを裁判所は検討します。訴訟類型の選択を誤っただけで救済を閉ざさないという運用です。執行停止についても、期間が経過していること自体は緊急の必要を否定しません。「処分の取消しの訴えについて出訴期間が経過している場合、当該処分につき無効確認の訴えを提起した上で執行停止の申立てをすることが適法であるとしても、緊急の必要を欠くため、執行停止の決定を得ることはできない」という肢は誤りです。緊急の必要は、停止しなければ生じる損害の内容と切迫の度合いから個別に判断され、処分から時間が経ったという事情だけで一律に否定されるものではありません。

他の訴えとの併合提起で、無効の主張と賠償請求を一度に運べます

13条と16条から19条までは38条1項で準用されるので、関連請求に係る訴えの併合ができます。処分の違法を理由とする損害賠償の請求は13条1号の関連請求ですから、無効等確認訴訟と国家賠償請求訴訟が抗告訴訟と民事訴訟という違う手続でも、一つの訴訟で審理できます。同じ処分をめぐる紛争を一回で解決したほうが当事者にも裁判所にも都合がよいからです。「無効確認訴訟と国家賠償請求訴訟とは同種の訴訟手続ではないものの、Xは、本件無効確認訴訟の提起後に、本件建築確認が違法であることを理由として、それにより生じた損害について、Y市に対する国家賠償法第1条第1項に基づく損害賠償請求に係る訴えを本件無効確認訴訟に併合して適法に提起することができる」という肢は正しいです。

行政事件訴訟法 第36条

無効等確認の訴えは、当該処分又は裁決に続く処分により損害を受けるおそれのある者その他当該処分又は裁決の無効等の確認を求めるにつき法律上の利益を有する者で、当該処分若しくは裁決の存否又はその効力の有無を前提とする現在の法律関係に関する訴えによつて目的を達することができないものに限り、提起することができる。

論文ではこう使う

論文では、まず取消訴訟が使えるかを確かめます。出訴期間が経過していれば、無効と取消しの区別に戻り、重大明白説を規範として立てて瑕疵の性質を当てはめます。無効といえそうなら、36条の前段と後段のどちらで原告適格を基礎づけるかを決めます。後続処分が予定されていれば前段で押し切り、そうでなければ後段に進んで、争点訴訟や当事者訴訟で目的を達せられるかを紛争の実効的解決という視点から検討します。訴訟選択を書き切ったうえで、執行停止が使えること、事情判決はないことを準用規定から確認して結びます。

試験ではこう問われる

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