判決の効力(既判力・拘束力・第三者効)とは
はんけつのこうりょく
判決の効力とは、取消訴訟の判決が生じさせる三つの効力で、訴訟物について当事者と裁判所を縛る既判力、処分をした行政庁その他の関係行政庁を判決の趣旨に従わせる拘束力(行政事件訴訟法33条)、処分の効力を初めから失わせて第三者にも及ぶ形成力・第三者効(32条)をいいます。既判力は認容判決にも棄却判決にも生じますが、拘束力と第三者効は処分を取り消す判決にだけ生じます。
営業停止処分を裁判で争って勝ったら、その日から営業を再開できます。役所がもう一度「処分を取り消します」と言い直す必要はなく、判決そのものが処分を初めからなかったことにするからです。役所は判決が違法と決めた理由をもう一度持ち出して同じ処分を繰り返すこともできません。さらに、その処分に利害のある第三者にも判決の結果が及びます。行政上の法律関係は誰との関係でも同じ内容で決まっていなければ困るので、法律はこの三つの効力を判決に持たせています。
取消判決には三つの効力が重なり、どの判決に生じるかがそれぞれ違います
取消訴訟の判決には、既判力、形成力とその第三者効、拘束力の三つが重なります。既判力は民事訴訟の判決一般に生じる効力で(行政事件訴訟法7条、民事訴訟法114条1項)、訴訟物である処分の違法性の有無について当事者と裁判所を拘束し、認容判決にも棄却判決にも生じます。形成力は取消訴訟が形成訴訟であることから生じ、処分を初めからなかったことにし、その効力は第三者にも及びます(32条1項)。拘束力は取消判決の実効性を確保するために法が特に認めた効力で、処分をした行政庁その他の関係行政庁を判決の趣旨に従わせます(33条1項)。形成力・第三者効と拘束力は処分を取り消す判決にだけ生じ、棄却判決には生じません。行政上の法律関係は誰との関係でも同じ内容で決まっていなければならず、しかも判決で違法とされた処分が行政庁の手で繰り返されては取消訴訟を設けた意味がなくなるので、法律は認容判決にこの二つの効力を持たせています。
- 既判力認容判決にも棄却判決にも生じる。訴訟物である処分の違法性の有無について当事者と裁判所を拘束する
- 形成力・第三者効取消しの認容判決にのみ生じる。処分は初めからなかったことになり、効力は第三者にも及ぶ(32条1項)
- 拘束力認容判決にのみ生じる。処分庁その他の関係行政庁を判決の趣旨に従わせる(33条1項)
取消判決の形成力は処分を遡って消し、後続の処分も維持されません
取消訴訟は処分の効力を判決によって失わせる形成訴訟なので、取消判決が確定すると、処分は行政庁が改めて取り消さなくても、初めからなかったことになります。「処分の取消判決が確定した場合、処分行政庁は、判決の拘束力により当該処分を取り消さなければならない」という肢は誤りです。判決自体が処分を消すのですから、行政庁が取消しの行為をする必要はありません。処分を前提として積み重ねられた後続の処分も基礎を失います。課税処分が取り消されれば、それを前提とする差押処分は前提を欠くことになり、行政庁は拘束力によって差押処分を取り消して法律関係を整える義務を負います。「課税処分を取り消す判決が確定した場合、当該課税処分を前提とする滞納処分としての差押処分がそのまま維持されることはない」という肢は正しいです。形成力は第三者にも及びます(32条1項)。行政上の法律関係は画一的に規律されなければならないので、処分が消えたかどうかが人によって違ってはいけないからです。他方、この効力は認容判決にだけ生じます。棄却判決については規定がなく、民事訴訟の原則どおり当事者の間でしか効力を持ちません。「処分の取消しの訴えにおいて、請求を棄却する判決が確定した場合、当該判決は、第三者に対しても効力を有する」という肢は誤りです。
拘束力は関係行政庁を判決の理由に従わせ、同じ理由での再処分を封じます
33条1項は、処分を取り消す判決がその事件について処分をした行政庁その他の関係行政庁を拘束すると定めます。拘束力は、取消判決の実効性を確保するために法が特に認めた効力で、既判力とは別のものです。拘束されるのは主文だけではありません。「処分を取り消す判決が確定した場合、その拘束力により、当該処分をした行政庁は、その事件につき当該判決の主文が導き出されるのに必要な事実認定及び法律判断に従って行動すべき義務を負う」という肢は正しいです。最判平成4年4月28日は、拘束力が判決主文が導き出されるのに必要な事実認定及び法律判断に及ぶことを明らかにし、最判令和3年6月24日(取消判決の拘束力)もこの理解に立ちつつ、行政庁が法令上の根拠を欠く行動まで義務づけられるわけではないと述べました。したがって行政庁は、判決が違法と判断したのと同一の事情の下で、同一の理由により同一の処分を繰り返すことができません。別の理由があれば再処分は許されます。申請を却下し又は棄却した処分が取り消された場合には、行政庁は判決の趣旨に従い、改めて申請に対する処分をしなければなりません(33条2項)。「申請を却下し又は棄却した処分が判決により取り消された場合には、その処分をした行政庁は、改めて当該申請に対する処分をしなければならないが、必ずしも当該判決の趣旨に従った処分をする必要はない」という肢は誤りです。手続の違法を理由に取り消された場合は、判決の趣旨に従い、違法とされた手続をやり直した上で改めて処分をします(33条3項)。やり直した結果として再び申請を拒否することもあり得るので、「その処分をした行政庁は、判決の趣旨に従い、違法とされた手続を改めて履践した上で、申請を認容する処分をしなければならない」という肢は誤りです。競願関係では拘束力が実質的な救済になります。「AとBが同一周波の無線局の開設に係る免許をめぐって競願関係にある場合は、免許付与と免許申請拒否処分は表裏の関係にあるので、Bに与えられた免許が、Aの提起した免許取消訴訟に係る判決で取り消されると、免許申請拒否処分を受けたAには、取消判決の拘束力による再審査の結果、免許を与えられる可能性がある」は正しいです。最判昭和43年12月24日は、拒否処分だけの取消しを求める場合でも、再審査の結果によっては競願者への免許を取り消して原告に免許を付与することがあり得るとしました。他方、拘束力は行政庁に新たな権限行使を義務づけるものではありません。開発許可の存在は違反是正命令を発する上で法的障害にならず、開発許可が判決で取り消されても違反是正命令を発すべき法的拘束力は生じません(最判平成5年9月10日)。「開発許可が判決で取り消されたときは、当該取消判決に違反是正命令を発すべき法的拘束力が生ずることになる」という肢は誤りです。
既判力は処分の違法性について生じ、国家賠償の違法とは別に判断されます
既判力は訴訟物である処分の違法性の有無について生じ、当事者と裁判所を拘束します。棄却判決が確定すれば処分が適法であることが確定し、原告はもはや同じ処分の違法を前提とする主張をできません。既判力は判決の主文中の判断について生じるのが原則です(行政事件訴訟法7条、民事訴訟法114条1項)。事情判決は請求を棄却しますが、主文で処分の違法を宣言するので、その違法の判断に既判力が生じます。「当該処分が違法であるとの当該判決における判断について既判力は生じない」という肢は誤りです。他方、取消訴訟の違法と国家賠償法上の違法は同じではありません。国家賠償の違法は公務員の職務上の注意義務違反として判断されるので、処分が取り消されても直ちに賠償が認められるわけではなく、逆も同じです。最判平成5年3月11日(所得税更正処分と国家賠償法上の違法)はこの相対性を示しました。不作為の違法確認訴訟でも同じで、最判平成3年4月26日は、応答処分の遅延による精神的損害の賠償を求める国家賠償請求では、処分庁に作為義務があるだけでは足りず、不作為が不法行為として成立するかを別に判断するとしました。「水俣病患者認定申請に対する応答処分をしない行政庁の不作為の違法確認を求める訴訟における違法と、当該認定申請に対する行政庁の応答処分の遅延による精神的損害につき賠償を求める国家賠償請求訴訟における違法は同じであるから、前者の訴訟に係る認容判決の既判力は、後者の訴訟の当事者及び裁判所に及ぶとされている」という肢は誤りです。
第三者効があるからこそ、訴訟参加と再審の訴えが用意されています
判決の効力が訴訟に関与していない第三者にまで及ぶ以上、その第三者に言い分を述べる機会を保障しなければなりません。22条は、訴訟の結果により権利を害される第三者があるときは、裁判所が当事者若しくはその第三者の申立てにより又は職権で、決定をもって第三者を訴訟に参加させることができると定めます。「処分を取り消す判決は第三者に対しても効力を有することから、訴訟の結果により権利を害される第三者は、自ら訴訟参加の申立てをすることができる」という肢は正しいです。行政庁の訴訟参加も同様で、23条は当事者若しくはその行政庁の申立てにより又は職権で参加させることができるとします。「処分をした行政庁以外の行政庁は、当事者の申立て又は職権による裁判所の決定があった場合に訴訟に参加することはできるが、自ら訴訟参加の申立てをすることはできない」という肢は誤りです。参加できなかった第三者のために、34条は再審の訴えを用意しました。「処分を取り消す判決により権利を害された第三者は、自己の責めに帰することができない理由により訴訟に参加することができなかったため判決に影響を及ぼすべき攻撃又は防御の方法を提出することができなかったことを理由として、再審の訴えを提起することができる」は正しいです。第三者効は処分性の判断にも影響します。市立保育所の廃止条例の制定行為に処分性を認めた最判平成21年11月26日は、その根拠の一つとして、取消判決に第三者効があるので取消訴訟で争わせるほうが紛争を画一的に解決できることを挙げました。無効確認判決についても、最判昭和42年3月14日(無効確認判決の第三者効)は、行政上の法律関係は画一的に規律されるべきだとして、その効力が第三者にも及ぶとしました。
取消判決以外の判決や決定にも、それぞれの効力が定められています
32条2項は、執行停止の決定とこれを取り消す決定に第三者効を準用します。これに対し、仮の差止めと仮の義務付けの決定には32条が準用されていません(37条の5第4項)。「執行停止を認める決定は、第三者に対しても効力を有するが、仮の差止め及び仮の義務付けを認める決定は、いずれも第三者に対しては効力を有しない」という肢は正しいです。差止判決にも第三者効は準用されません(38条1項)。「取消判決の第三者効を定めた行政事件訴訟法第32条第1項は、差止めの訴えにも準用されるから、Aが原告として提起したBの申請に対する許可処分の差止めの訴えに係る請求を認容する判決が確定した場合、当該判決の効力は、Bにも及ぶ」という肢は誤りです。差止判決に準用されるのは33条1項の拘束力で、行政庁は処分をしてはならない義務を負いますが、それは行政庁に向けた効力であって、私人であるBに判決の効力が及ぶ根拠にはなりません。33条は無効等確認訴訟、不作為の違法確認訴訟、義務付け訴訟、差止訴訟に準用され(38条1項)、当事者訴訟にも33条1項が準用されるので(41条1項)、関係行政庁は判決の趣旨に従わなければなりません。義務付け判決が確定すれば行政庁は命じられた処分をしなければなりませんが、判決自体が処分をしたことになるわけではありません。「義務付け訴訟において請求を認容する判決が確定した場合、当該処分がされたのと同様の効果が生ずる」という肢は誤りです。また義務付け判決には32条が準用されないので、第三者に当然には及びません。「行政庁が一定の処分をすべき旨を命ずる判決は、常に第三者に対しても効力を有するから、行政庁が判決に従って当該処分をした場合、当該処分の名宛人は当該処分の効力を争うことはできない」という肢も誤りで、名宛人となった第三者はその処分の効力を争うことができます。事情判決は請求を棄却しますが主文で違法を宣言するので、その判断には既判力が生じます。
行政事件訴訟法 第32条 第1項
処分又は裁決を取り消す判決は、第三者に対しても効力を有する。
行政事件訴訟法 第33条 第1項
処分又は裁決を取り消す判決は、その事件について、処分又は裁決をした行政庁その他の関係行政庁を拘束する。
論文ではこう使う
論文では、求められた救済が判決のどの効力で実現するかを示します。処分を消したいだけなら形成力で足り、行政庁の取消行為は不要だと述べます。申請を認めさせたい事案では、33条2項の再処分義務を挙げ、拘束力が判決の理由中の事実認定と法律判断に及ぶことから、同一理由での再度の拒否は許されないと論じます。その上で、別の理由による再拒否は妨げられないので、確実に処分を得るには申請型義務付け訴訟を併合すべきだと訴訟選択に結びつけます。第三者が現れる事案では、32条の第三者効を指摘し、22条の訴訟参加と34条の再審の訴えによって手続保障が図られていると補います。
この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。