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用語集 / 行政法 / 義務付け訴訟

義務付け訴訟(申請型・非申請型)とは

ぎむづけそしょう

行政法 その他の抗告訴訟・当事者訴訟

義務付け訴訟とは、行政庁が一定の処分又は裁決をすべき旨を命ずることを求める抗告訴訟です(行政事件訴訟法3条6項)。法令に基づく申請をした者がその申請に対する処分を求める申請型と、申請を前提としない非申請型に分かれます。

隣の空き地に違法な建物が建ち始めて、役所に「止めさせてほしい」と頼んでも動いてくれないとします。取消訴訟は行政庁がした処分を消す道具なので、何もしてくれない行政庁には使えません。そこで、裁判所が行政庁に「この処分をしなさい」と命じる訴訟が置かれました。ただし、裁判所が行政庁の仕事を丸ごと肩代わりすると権限の分担が崩れるので、誰が、どんな損害があるときに、何と一緒に訴えるかが細かく決められています。申請をした人が使う型と、申請をしていない第三者が使う型で、その決まりが大きく違います。

裁判所の受付の場面。先生が裁判官役(札「裁判所」)で受付台の奥に立ち、左右二つの窓口を指し分けている。左の窓口の看板「申請型(37条の3) 申請をした者が使う」に、男性(札「申請をした者」)が「営業許可申請書」の控えを持って並び、吹き出し「

申請の有無で申請型と非申請型に分かれ、要件は別々に定められています

義務付け訴訟とは、行政庁が一定の処分又は裁決をすべき旨を命ずることを求める訴訟です(行政事件訴訟法3条6項)。平成16年改正で法定され、行政庁に作為を命じる道が開かれました。条文は申請の有無で二つに割れており、法令に基づく申請をした者がその申請に対する処分を求めるのが申請型(3条6項2号・37条の3)、申請を前提とせずに処分を求めるのが非申請型(3条6項1号・37条の2)です。どちらの型かを見誤ると要件を丸ごと取り違えます。

  • 非申請型(3条6項1号・37条の2)申請を前提としない。第三者への規制権限の発動を求める場面が典型。重大な損害・補充性・法律上の利益が要件
  • 申請型(3条6項2号・37条の3)法令に基づく申請をした者が、その申請に対する処分を求める。応答がない場合と拒否処分がされた場合があり、それぞれ不作為の違法確認の訴えまたは取消訴訟等の併合提起が要件

非申請型の義務付け訴訟は、重大な損害と補充性と法律上の利益の三つで絞られます

37条の2は、一定の処分がされないことにより重大な損害を生ずるおそれがあり、かつ、その損害を避けるため他に適当な方法がないときに限り提起できるとし、さらに3項で、処分を命ずることを求めるにつき法律上の利益を有する者に原告適格を限りました。申請権のない者が行政庁に処分を求める訴えなので、行政庁の第一次的な判断に裁判所が立ち入る度合いが大きく、入口を厳しく絞る必要があるからです。「法第3条第6項第1号の義務付けの訴え(いわゆる非申請型義務付けの訴え)は、行政庁が一定の処分をすべき旨を命ずることを求めるにつき法律上の利益を有する者に限り、適法に提起することができる」という肢は正しいです。「非申請型義務付け訴訟を提起しようとする者は、少なくとも、行政庁が処分をすべき旨を命ずることを求めるにつき法律上の利益を有する者である必要がある」という肢も正しいです。重大な損害の判断では、損害の回復の困難の程度を考慮し、損害の性質及び程度並びに処分の内容及び性質をも勘案します(37条の2第2項)。原告適格の判断には9条2項が準用されるので(同条4項)、取消訴訟の原告適格と同じ道具で考えます。第三者に対する規制権限の発動を求める場面が典型ですが、それに限られません。「非申請型義務付け訴訟は、行政庁が第三者に対する規制権限の行使をしない場合に、その行使を求めて提起することが想定されていますので、自己に対する処分の義務付けを求めて提起することはできません」という肢は誤りです。条文は法律上の利益を有する者としか定めておらず、自己に対する処分でも法律上の利益があれば提起できます。

裁判所の受付の場面。先生が裁判官役(札「裁判所」)で「非申請型(37条の2)」の看板の窓口に座る。目の前に三つの門のように並んだ深紅の枠、それぞれ札「重大な損害」「他に適当な方法がない(補充性)」「法律上の利益」。窓口の前の男性(札「近隣住

申請型の義務付け訴訟では重大な損害は要件でなく、申請をした者による併合提起が要件です

申請型は、申請をした者に応答を得させる仕組みですから、重大な損害は要件になっていません。「法第3条第6項第2号の義務付けの訴え(いわゆる申請型義務付けの訴え)は、一定の処分がされないことにより重大な損害を生ずるおそれがあり、かつ、その損害を避けるため他に適当な方法がないときに限り、適法に提起することができる」という肢は誤りです。同じ理由で「いずれの訴訟も、それを提起するためには、少なくとも、処分がされないことにより重大な損害を生ずるおそれがある必要がある」という肢も誤りですし、拒否処分がされた場合について「申請された処分がなされないことにより重大な損害を生ずるおそれがあり、かつ、その損害を避けるため他に適当な方法がないときに限り、提起することができる」という肢も誤りです。代わりに要求されるのが併合提起で、応答がない場合は不作為の違法確認の訴えを、拒否処分がされた場合は取消訴訟又は無効等確認の訴えを必ず併せて提起します(37条の3第3項)。ですから「却下処分の取消しの訴えに代えて、生活保護開始決定の義務付けの訴えを適法に提起することができる」という肢は誤りですし、「申請拒否処分が無効である場合には、義務付けの訴えを単独で提起することができる」という肢も、無効等確認の訴えの併合が要るので誤りです。拒否処分を放置したまま義務付けだけを認めると、有効に残っている拒否処分と矛盾する判断が生まれるからです。原告になれるのも申請者本人に限られます(同条2項)。「申請型義務付け訴訟を提起しようとする者は、少なくとも、法令に基づく申請又は不服申立てをした者である必要がある」という肢は正しく、「その申請をした者だけではなく、申請された処分をすべき旨を命ずることを求めるにつき法律上の利益を有する者も提起することができる」という肢は誤りです。

裁判所の受付の場面。先生が裁判官役(札「裁判所」)で「申請型(37条の3)」の看板の窓口に座る。窓口の前に男性(札「申請をした者」)が「認可拒否処分」の通知書と「義務付けの訴え」の訴状を一枚だけ持って差し出し、吹き出し「拒否処分は無効だから

非申請型には併合提起の要件がなく、単独で提起できます

これに対し非申請型には併合提起の定めがありません。近隣住民が違反建築物の是正命令を求める場面では、建築確認を取り消してもらう必要はなく、是正命令の義務付けだけを求めれば足ります。「建築確認を受けて建築された建築物について、近隣住民は、建築確認の取消訴訟又は無効確認訴訟を併合提起しなくても、違反是正命令の義務付け訴訟を適法に提起することができる」という肢は正しいです。もっとも補充性の壁があり、他に適当な方法があれば却下されます。ここでいう他の方法とは、法が特別の救済手続を用意している場合を指し、民事訴訟が一般的に使えることは補充性を否定する理由になりません。規制権限の不行使が問題になる事案では、規制権限を定めた法令の趣旨・目的や権限の性質に照らして不行使が著しく合理性を欠くかを問う最判平成16年4月27日(筑豊じん肺訴訟)の枠組みが本案の議論に接続します。

本案では、根拠法令から処分すべきことが明らかか、しないことが裁量の逸脱濫用になるかを見ます

訴訟要件を満たしても、直ちに処分が命じられるわけではありません。37条の2第5項と37条の3第5項は、行政庁がその処分をすべきであることがその処分の根拠となる法令の規定から明らかであると認められるか、又はその処分をしないことがその裁量権の範囲を超え若しくはその濫用となると認められるときに、義務付けを命ずるとしています。条文の言葉に注意が要ります。「明らか」が付いているのは根拠法令から処分すべきことがいえる場合だけで、裁量の逸脱濫用の側には付いていません。「訴訟要件を充足して適法に提起された処分の義務付けの訴えに係る請求が認容されるためには、行政庁がその処分をすべきであることがその処分の根拠となる法令の規定から明らかであると認められるか、又はその処分をしないことがその裁量権の範囲を超え若しくはその濫用となることが明らかであると認められることを要する」という肢は、裁量の逸脱濫用が明らかであることまで要求している点で誤りです。裁量が広い処分でも義務付けの余地はありますが、処分をしないことが逸脱濫用になるといえる事情、つまり裁量の幅が事実上なくなったといえる事情が要ります。そこまで至らなければ、裁判所は拒否処分を取り消すにとどめます。

法廷の場面。先生が裁判官役(札「裁判所」)で法壇に座り、目の前に「37条の3第5項」と書いた条文の紙を広げている。紙には二つの文が上下に書かれ、上「根拠となる法令の規定から明らか」の「明らか」の文字に深紅の下線、下「裁量権の範囲を超え若しく

併合された訴えは分離できませんが取消しの訴えだけ先に判決でき、認容判決は処分そのものを作り出しません

申請型では、義務付けの訴えと併合された取消訴訟等の弁論及び裁判は分離しないでしなければなりません(37条の3第4項)。もっとも例外があり、「処分の取消しの訴えといわゆる申請型義務付けの訴えに係る弁論及び裁判は、分離しないでしなければならないが、裁判所は、審理の状況その他の事情を考慮して、処分の取消しの訴えについてのみ終局判決をすることがより迅速な争訟の解決に資すると認めるときは、処分の取消しの訴えについてのみ終局判決をすることができる」という肢は正しいです(同条6項)。したがって「両訴訟の弁論及び裁判は、分離しないでしなければならないから、裁判所は、両訴訟に係る判決を同時にしなければならない」という肢は誤りです。義務付けの認容判決が確定すると、33条の拘束力により行政庁は判決の趣旨に従って処分をする義務を負いますが、判決自体が処分の効果を生むのではありません。「義務付け訴訟において請求を認容する判決が確定した場合、当該処分がされたのと同様の効果が生ずる」という肢は誤りです。第三者効も当然には及びません。取消判決の第三者効を定める32条は38条1項で準用されていないからです。「行政庁が一定の処分をすべき旨を命ずる判決は、常に第三者に対しても効力を有するから、行政庁が判決に従って当該処分をした場合、当該処分の名宛人は当該処分の効力を争うことはできない」という肢は誤りです。訴訟に関わる機会のなかった名宛人は、判決に従ってされた処分を自ら争うことができます。判決を待てないときは、37条の5第1項の仮の義務付けで暫定的な地位を確保します。

法廷の場面。先生が裁判官役(札「裁判所」)で法壇に立ち、判決書「行政庁は営業許可をせよ」を掲げている。判決書から被告席の役所職員の男性(札「行政庁」)へ矢印が伸び、職員は「営業許可書」の判を押そうとしていて、吹き出し「判決の拘束力(33条)

行政事件訴訟法 第37条の3 第3項

次の各号に掲げる場合において、それぞれ当該各号に定める訴えをその義務付けの訴えに併合して提起しなければならない。一 当該法令に基づく申請又は審査請求に対し相当の期間内に何らの処分又は裁決がされないこと 当該不作為の違法確認の訴え 二 当該法令に基づく申請又は審査請求を却下し又は棄却する旨の処分又は裁決がされた場合 当該処分又は裁決に係る取消訴訟又は無効等確認の訴え

論文ではこう使う

論文では、依頼者が申請をしたかどうかで書き出しが変わります。申請をしていれば申請型に進み、拒否処分があれば取消訴訟と、応答がなければ不作為の違法確認の訴えと併合して提起する旨を37条の3第3項で示します。申請をしていない第三者なら非申請型に進み、重大な損害を損害の回復の困難の程度から、補充性を法定の特別手続の有無から、原告適格を9条2項準用で論じます。そのうえで本案に移り、根拠法令の文言と裁量の幅を確かめ、裁量が認められる処分では権限不行使が著しく合理性を欠くといえるかを具体的事実で押し切ります。

試験ではこう問われる

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