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用語集 / 行政法 / 申請と届出

申請と届出とは

しんせいととどけで

行政法 行政手続

申請とは、法令に基づき、行政庁の許可・認可・免許その他の自己に対し何らかの利益を付与する処分を求める行為であって、行政庁が諾否の応答をすべきこととされているものです(行政手続法2条3号)。届出とは、行政庁に一定の事項を通知する行為で、法令により直接にその通知が義務付けられているもののうち申請に当たらないものです(2条7号)。

飲食店を開くには保健所に営業許可を申請し、許可か不許可かの返事を待ちます。店をやめるときは廃業届を出せば終わりで、返事は要りません。申請と届出の分かれ目は、行政庁が応答するかどうかです。申請は行政庁が諾否の応答をすべきものなので、返事がなければ不作為として争えますし、拒否されれば取消訴訟で争えます。届出は応答を予定しないので、法令の形式上の要件を満たした書類が役所に届いた時点で手続は終わります。役所が「受け取らない」と言って申請や届出を宙に浮かせないよう、行政手続法はどちらも到達を基準に手続を組み立てています。

保健所の窓口。先生が役人役(札「行政庁」)でカウンターの中。左に開業する店主の男性(エプロン、札「申請者」)が「営業許可申請書」を出し、吹き出し「許可か不許可か、返事をください」。先生の吹き出し「申請は届いた時から審査を始める。諾否の応答を

申請は到達した時から審査が始まり、行政庁は受け取りを拒めません

行政手続法は第2章(5条〜11条)で申請に対する処分の手続を、第6章(37条)で届出を定めています。行政庁は、申請がその事務所に到達したときは遅滞なく審査を開始しなければならず、形式上の要件に適合しない申請については速やかに補正を求めるか、許認可等を拒否しなければなりません(7条)。受理しない、返戻するという運用で申請を宙に浮かせることを禁じ、要件を欠くなら拒否処分をして争う道を開けという規定です。行政指導で申請を止める場面も同じ問題です。33条は、申請者が行政指導に従う意思がない旨を表明したときは、行政指導を継続して申請者の権利の行使を妨げてはならないと定めます。最判昭和60年7月16日(品川区マンション事件)は、建築主が行政指導に従わない意思を真摯かつ明確に表明し、申請に対し直ちに応答すべきことを求めているときは、建築主の不協力が社会通念上正義の観念に反するといえるような特段の事情がない限り、行政指導が行われているとの理由だけで確認処分を留保することは違法だとしました。裏返せば、特段の事情があれば留保が違法にならないこともあります。「行政指導を継続しているという理由でなお処分を留保しても、処分の留保が違法とは評価されない場合がある」という肢は正しいです。

区役所の建築課。先生が役人役(札「行政庁」)で「建築確認申請」の書類を机に置いたまま持っている。建築主の男性(ヘルメット、札「申請者」)が吹き出し「近隣との話し合いを求める行政指導にはもう応じられません。すぐ申請に応答してください」。先生の

審査基準は定めて公にする義務、標準処理期間は定める努力義務です

行政庁は、申請により求められた許認可等をするかどうかを法令の定めに従って判断するために必要な基準(審査基準)を定め、できる限り具体的なものとし、公にしておかなければなりません(5条)。これは「しなければならない」義務です。一方、申請が事務所に到達してから処分をするまでに通常要すべき標準的な期間(標準処理期間)は、定めるよう「努める」とともに、定めたときは公にしておかなければなりません(6条)。定める方は努力義務ですが、定めた以上は申請者の予測可能性のために公にする方は義務です。「当該期間を公にするよう努めなければならない」という肢は誤りです。標準処理期間には、経由機関に到達してから行政庁に到達するまでの期間も含まれます。経由機関での滞留も申請者にとっては処分を待たされる時間だからです。「市町村長を経由して都道府県知事に申請を提出するよう法律が定めている場合、標準処理期間には市町村長に到達してから知事に到達するまでの標準的な期間も含まれる」という肢は正しいです。審査基準は、行政庁の恣意を防ぎ申請者に見通しを与えるための仕組みなので、法令の定めが十分具体的で判断基準を要しない場合には定めなくてもよいと解されています。「法の定めが十分具体的でそれ以上判断基準を必要としない場合には、知事が審査基準を定めないことも許される」という肢は正しいです。法律の委任による省令は法規命令であって、審査基準には当たりません。

先生が役人役(札「行政庁」)で掲示板の前に立つ。掲示板に2枚の紙。左「審査基準」に「定める=義務/公にする=義務」、右「標準処理期間」に「定める=努力義務/公にする=義務」。申請者の男性(札「申請者」)が掲示板を見ている。先生の吹き出し「審

審査基準は申請に対する処分の基準、処分基準は不利益処分の基準で、義務の強さも違います

審査基準(5条)は申請に対する処分の基準で、処分基準(12条)は不利益処分をするかどうか、どのような不利益処分とするかの基準です。審査基準は設定・公表とも義務ですが、処分基準は設定・公表とも努力義務です。不利益処分の基準を細かく公にすると、基準ぎりぎりの行為を誘発するおそれがあるからです。「審査基準は申請に対する処分の審査手続に関する基準、処分基準は申請に対する処分の内容に関する基準であり、行政庁はそのいずれもあらかじめ定めておかなければならない」という肢は、対象も義務の強さも取り違えており誤りです。どちらも「命令等」に当たるので(2条8号)、定めるときは意見公募手続(39条)を経る必要があります。「審査基準及び処分基準を定めるに当たり、意見公募手続を経なければならない」という肢は正しいです。公にした基準と異なる扱いは、平等原則や信頼保護から裁量の逸脱・濫用になり得るので、裁量基準の項目とあわせて理解します。

拒否処分には理由を示さなければならず、書面なら書面で示します

申請を拒否する処分をするときは、申請者に対し同時にその理由を示さなければなりません(8条1項)。処分を書面でするときは理由も書面で示します(8条2項)。最判昭和60年1月22日(旅券発給拒否事件)は、いかなる事実関係に基づきいかなる法規を適用して拒否したかを申請者が記載自体から了知し得るものでなければならないとし、条文を引用しただけの理由付記を違法としました。この基準は不利益処分の理由提示(14条)に引き継がれ、最判平成23年6月7日(一級建築士免許取消処分事件)で処分基準の適用関係まで求める形になりました。詳しくは理由提示の項目で扱います。申請拒否処分は不利益処分に当たらないので(2条4号ロ)、聴聞や弁明の機会の付与は要りません。申請者は自分から利益を求めている立場で、拒否されても申請前の状態に戻るだけだからです。

届出は到達で手続が完了し、受理は処分ではありません

届出は、法令に定められた形式上の要件に適合している場合、法令により提出先とされている機関の事務所に到達したときに、届出をすべき手続上の義務が履行されたものとされます(37条)。受理は法的効果を持つ行為ではありません。「知事が届出を受理する行為は行政処分である」という肢は誤りです。7条が申請について到達で審査を開始すると定めているのと同じく、行政手続法は受理・不受理という中間段階の行為を認めていないからです。もっとも、法律が「届出」という名前を使っていても、行政庁が内容を審査して応答する仕組みなら実質は申請です。逆に、勧告や指導のように応答を伴わない行為でも、後続の不利益が確実に及ぶなら処分性が認められることがあり、最判平成17年7月15日(病院開設中止勧告)がその例です。

県庁の窓口。先生が役人役(札「行政庁」)。男性(札「届出をする者」)が「岩石採取廃止届」を差し出し、書類はカウンターに置かれた瞬間の絵。カウンターの上に札「到達=手続上の義務は履行された(37条)」。男性の吹き出し「受理してもらえないと届出

応答がなければ不作為の違法確認と申請型義務付け、拒否されたら取消訴訟です

申請に対して相当の期間内に何らの処分もされないときは、不作為の違法確認の訴え(行政事件訴訟法3条5項・37条)を提起できます。「水俣病と認定すべき旨の申請を知事に行ったものの、何らの応答処分を相当期間内に受けなかった場合、不作為の違法確認の訴えを適法に提起できる」という肢は正しいです。実務では申請型義務付け訴訟(37条の3)を併合します。仮の義務付け(37条の5)を申し立てるには義務付けの訴えを提起していることが要件です。「不作為の違法確認の訴えを提起するだけでは足りず、更に義務付けの訴えを提起する必要がある」という肢は正しいです。拒否処分がされた後は、行政庁は応答をしているので不作為はもう存在しません。「認可を拒否する処分を受けた場合、不作為の違法確認の訴えを提起して同処分の違法を主張することができる」という肢は誤りで、拒否処分の取消訴訟と申請型義務付け訴訟によります。申請を放置された精神的損害の国家賠償では、最判平成3年4月26日(申請処理の遅延による精神的損害の賠償)が、処分庁が相当期間内に応答すべき条理上の作為義務を認めつつ、不作為の違法確認訴訟の違法と国家賠償法上の違法は別の判断だとしました。「前者の訴訟の認容判決の既判力は後者の訴訟の当事者及び裁判所に及ぶ」という肢は誤りです。申請権のない隣地所有者が是正命令を求める場面は、不作為の違法確認ではなく非申請型義務付け(37条の2)です。

先生が裁判官役(札「裁判所」)で中央。左に申請者の男性(札「申請者」)が2つの吹き出し。上「申請したのに相当期間内に何の応答もない」、下「申請したら拒否処分が来た」。先生の吹き出し「応答がないなら不作為の違法確認と申請型義務付け。拒否処分が

行政手続法 第2条 第3号

申請 法令に基づき、行政庁の許可、認可、免許その他の自己に対し何らかの利益を付与する処分(以下「許認可等」という。)を求める行為であって、当該行為に対して行政庁が諾否の応答をすべきこととされているものをいう。

論文ではこう使う

論文では、申請に対する処分の手続違反が取消事由になるかを、理由提示(8条)と審査基準(5条)から組み立てます。理由提示の不備は処分を取り消すべき独立の瑕疵で、後の裁決で理由が明らかにされても治癒されないこと(最判昭和47年12月5日)、審査基準と異なる処分は基準を公にした趣旨から合理的な理由を要することを規範にします。行政指導による申請留保の事案では、品川区マンション事件の「真摯かつ明確な不服従の意思表明」と「特段の事情」を規範として立て、留保の期間・行政指導の内容・申請者の不利益を当てはめます。訴訟選択では、不作為なら不作為の違法確認+申請型義務付け、拒否なら取消訴訟+申請型義務付け、と申請の有無で分けて書きます。

試験ではこう問われる

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