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手続の瑕疵と処分の効力とは

てつづきのかしとしょぶんのこうりょく

行政法 行政手続

手続の瑕疵と処分の効力とは、処分の内容が実体法上は正しくても、法律が定めた手続に違反があったときに、その処分が取り消されるかという問題です。理由提示の不備、聴聞の欠缺、諮問手続の瑕疵が典型です。

建築士が本当に違反をしていて免許取消しが妥当だったとしても、通知書に理由がきちんと書かれていなければ、その処分は取り消されます。結論が正しいなら手続はどうでもよい、とはならないのです。理由を書く、聴聞を開く、審議会に諮るという手続は、行政庁に慎重に考えさせ、相手に反論の機会を与え、専門家の目を通すために法律が置いたものだからです。判例は、手続規定の趣旨と、違反が相手方の防御や行政庁の判断に与えた影響を見て、その手続違反が処分の取消しにまで結び付くかを判断しています。

役所の窓口。先生が処分庁役(札「処分庁」)で「営業許可 取消処分 通知書」を差し出しているが、理由欄には「法○条に当たる」の一行だけで、そこを深紅の枠で囲む。受け取る店主の男性(エプロン、札「名あて人」)が困った顔で吹き出し「どの事実が問題

手続の瑕疵は、それだけで独立の取消事由になり得ます

処分の内容が実体法上は正しくても、法律が定めた手続を踏んでいなければ処分は違法になります。実体判断に誤りがないから結論は変わらない、という理屈で手続違反を不問に付すことはできません。これは行政庁に裁量が認められる処分でも同じです。裁量が広い処分ほど裁判所の実体審査が及びにくいので、その分、手続による統制が重みを持つからです。最判昭和60年1月22日は外務大臣の裁量に委ねられた旅券発給拒否処分を、最判平成23年6月7日は国土交通大臣の裁量に委ねられた一級建築士免許取消処分を、いずれも理由付記・理由提示の不備を理由に取り消しました。「処分を行う行政庁に裁量権が認められる場合でも、処分の理由の提示に不備があったときは、当該処分の取消事由となることがある」という肢は正しく、「行政裁量が認められた処分についても、処分の理由提示が不備であることが当該処分の取消事由となることがある」という肢も正しいです。逆に、「処分を行う行政庁に裁量権が認められる場合には、処分が社会通念上著しく妥当性を欠き、裁量権の濫用に当たるものでない限り、処分の理由の提示に不備があったとしても、そのことを理由として処分が違法とされることはない」という肢は誤りです。手続的統制は、裁量権の逸脱・濫用の審査とは別の経路で処分を違法にします。

先生が裁判官役(札「裁判所」)で机の前。机の上に2本の道を描いた図。左の道の札「実体の審査:裁量権の逸脱・濫用があるか」、右の道の札「手続の審査:理由提示に不備があるか」、右の道の先に深紅で「取消し」。大臣役の男性(札「処分庁(裁量あり)」

理由提示の適否は、記載自体から了知できるかで判断します

最判昭和60年1月22日(旅券発給拒否事件)は、旅券法が理由付記を求める趣旨を、外務大臣の判断の慎重と公正妥当を担保して恣意を抑制するとともに、拒否の理由を申請者に知らせて不服申立ての便宜を与えることに求め、単に根拠条文を示すだけでは足りず、いかなる事実関係に基づきいかなる法規を適用して拒否されたかを申請者においてその記載自体から了知し得るものでなければならないとしました。この基準は行政手続法8条・14条にも受け継がれています。処分基準が定められていない場合でも、事実関係と適用法規が読み取れない抽象的な記載で足りることにはなりません。「処分基準が定められていない場合、不利益処分の理由の提示は、抽象的な記載で足り、処分の名宛人において、いかなる事実関係に基づいて、いかなる法規を適用して当該処分が行われたかを知ることができるものである必要はない」という肢は誤りです。詳細は理由提示で扱います。

処分基準が公にされ、複雑な内容なら、適用関係まで示さなければ足りません

最判平成23年6月7日(一級建築士免許取消処分事件)は、公にされた処分基準が多様な事例に対応するため複雑な内容を定めている場合には、処分の原因となる事実と根拠法条を示すだけでは、どの基準の適用を受けて当該処分が選択されたのかを知ることが困難だとして、処分基準の適用関係まで示すことを求めました。「国土交通大臣が一級建築士免許取消処分をする場合、建築士に対する懲戒に係る処分基準が公表されているのであれば、当該処分の通知書において、同処分基準の適用関係を全く示さなかったとしても、行政手続法上の理由の提示として不足することはない」という肢は誤りです。他方、この要求は常に働くわけではありません。判例は、どの程度の理由を示すべきかを、処分の根拠法令の規定内容、処分基準の存否・内容・公表の有無、処分の性質・内容、原因となる事実関係の内容等を総合考慮して決めるとしています。「行政手続法の規定により処分基準が定められ公にされている場合において、不利益処分の理由の提示は、処分基準の内容にかかわらず、処分の原因となる事実と処分の根拠法条が示されるのみでは足りず、処分基準の適用関係が示されていない限り、同法の要求する理由の提示として十分ではない」という肢は誤りであり、「処分基準が定められ、公にされていても、不利益処分の理由の提示として、処分基準の適用関係まで摘示する必要がない場合がある」という肢は正しいです。基準が単純であれば、根拠法条と事実の摘示で足ります。

諮問手続の瑕疵は、審議を尽くしたといえない場合に取消事由になります

法律が審議会への諮問や公聴会を要求している場合、形式だけ踏めば足りるわけではありません。最判昭和50年5月29日(群馬中央バス事件)は、法が公聴会審理を定めた趣旨は単なる資料収集の一形式にとどまらず、関係者が決定の基礎となる諸事項に関する資料と意見を十分に提出し、これを審議会の決定に反映させることにあるとし、審議が尽くされていないときは諮問を経た処分も違法となり得るとしました。もっとも、同事件では、審議の不備が結論に影響を及ぼしたとはいえないとして、処分の取消しまでは認めませんでした。規範は厳しく、結論は請求棄却です。審議会の判断過程に看過し難い過誤があり、大臣の判断がこれに依拠してされた場合には、裁量権の逸脱として違法になるという教科書検定の判断(最判平成5年3月16日)とも接続します。

公聴会の会場。先生が裁判官役(札「裁判所」)で手前に立ち、奥に「運輸審議会 公聴会」の看板の下で委員たちが座り、バス会社の男性(札「関係者」)が資料を持って発言を求めている。先生の吹き出し「公聴会は資料集めの形式ではなく、関係者が資料と意見

聴聞や弁明の欠缺は、防御の機会を奪う瑕疵として重く扱われます

行政手続法は、許認可等を取り消す処分など重い不利益処分には聴聞を、それ以外には弁明の機会の付与を求めます(13条1項)。処分の重さに応じた手続を踏まないことは、防御の機会を奪う瑕疵です。聴聞は口頭で主宰者の前で意見を述べ、文書を閲覧できる手厚い手続で、弁明は原則として書面の提出で足りる簡易な手続です。したがって、弁明の手続で予定していた処分より重い処分に切り替えるなら、改めて手厚い聴聞を執らなければなりませんが、聴聞の手続で予定していた処分より軽い処分に切り替えるときは、すでに手厚い手続を与えているので改めて弁明の手続を執る必要はありません。「行政庁は、免許停止のための弁明手続の進行中に免許取消処分とすることが妥当であると判断した場合であっても、免許取消処分を行うことはできず、改めて聴聞手続を執ることが必要となる」という肢は正しく、逆に「免許取消のための聴聞手続の進行中に免許停止処分とすることが妥当であると判断した場合であっても、免許停止処分を行うことはできず、改めて弁明手続を執ることが必要となる」という肢は誤りです。参加の範囲も争われます。処分の原因となる事実を証する資料の閲覧を求められるのは、当事者と、その不利益処分がされた場合に自己の利益を害されることとなる参加人に限られます(18条1項)。「不利益処分の発動に強い関心を持っているライバル事業者Cは、聴聞手続において、A県知事に対し、当該処分の原因となる事実を証する資料の閲覧を求めることができる」という肢は誤りです。ライバル事業者は処分がされても自己の利益を害されないからです。一方、主宰者は、その不利益処分の根拠となる法令に照らし利害関係を有すると認められる者に参加を許可することができ、参加人は聴聞の期日に出頭して意見を述べることができます(17条1項・20条2項)。「サービスを受けている高齢者Dは、サービスを受けられなくなると日常生活に困難を来すことから、主宰者の許可を得て聴聞手続に参加し、口頭で意見を述べることができる」という肢は正しいです。

聴聞の場面。先生が行政庁役(札「行政庁」)で机の前。左に名あて人の男性(札「名あて人(当事者)」)が「免許停止の弁明書」を持っている。先生の吹き出し「弁明の途中で免許取消しにしたいなら、改めて聴聞を執る。重い処分に見合った防御の機会が要るか

法律に規定がなくても、憲法上の手続的保障が要請されることがあります

最大判平成4年7月1日(成田新法事件)は、憲法31条の定める法定手続の保障は直接には刑事手続に関するものであるが、行政手続についてもそれが当然に同条の保障の枠外にあると判断すべきではないとしつつ、行政手続は行政目的に応じて多種多様であるから、常に必ず告知・弁解・防御の機会を与えることを必要とするものではないとしました。判断に当たっては、制限を受ける権利利益の内容・性質、制限の程度、達成しようとする公益の内容・程度・緊急性等を総合較量するとします。この判決が総合較量の対象としたのは、事前の告知・弁解・防御の機会を与えるかどうかです。「成田新法事件判決は、行政庁が不利益処分をする場合に、その名宛人に対し当該不利益処分の理由を示さなければならない旨を定める法令が存しなくても、総合較量した結果に基づき、当該不利益処分の理由の提示が憲法上要請される場合があると判示している」という肢は誤りです。理由の提示が憲法上要請される場合があるとまでは述べていません。なお、行政手続法3条の適用除外に当たる処分でも、憲法上の要請や個別法の手続規定は別に働きます。

先生が裁判官役(札「裁判所」)で中央。左に工作物の使用禁止命令の紙(札「使用禁止命令(成田新法)」)を持つ男性(札「名あて人」)の吹き出し「法律に告知や弁解の定めがないのは憲法31条違反だ」。先生の吹き出し「憲法31条は行政手続にも及び得る

最判平成23年6月7日(一級建築士免許取消処分事件)

処分の理由が、当該処分の根拠法条に加えて処分基準の適用関係が示されなければ、名宛人において如何なる理由に基づいてどのような処分基準の適用を受けて当該処分が選択されたのかを知ることは困難である。

論文ではこう使う

論文では、まず手続違反を特定し、その手続規定の趣旨を述べます。理由提示であれば行政庁の判断の慎重と合理性の担保および不服申立ての便宜、聴聞であれば防御の機会の保障、諮問であれば専門的知見の反映です。次に、違反がその趣旨を損なったといえるかを検討します。理由提示については、記載自体から事実関係と適用法規を了知できるかを規範とし、公にされた処分基準が複雑であれば適用関係の摘示まで求めます。聴聞の欠缺については、処分の重さに対応する手続が踏まれたかを見ます。諮問の瑕疵については、審議が尽くされたといえるかを規範にしつつ、結論への影響という限定が付くことを示します。最後に、手続の瑕疵は実体判断が正しくても独立の取消事由になり、後の裁決で理由が明らかにされても治癒されない(最判昭和47年12月5日)、と結んで救済に接続します。

試験ではこう問われる

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